周りを見ずに“突っ走る”時期があってこそ、「見えてくるもの」もある ――俳優・浅利陽介の仕事観

プロフィール

浅利陽介(あさり・ようすけ)

1987年、東京都出身。1991年、CMでデビュー。NHK連続テレビ小説『あすか』、大河ドラマ『秀吉』、日本テレビ系ドラマ『永遠の仔』など数々の作品に出演。01年、『キッズ・ウォー3』で不良少年役の風間一平役を演じて注目される。近年の出演作にフジテレビ系ドラマ『コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-』、『劇場版コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命–』、TBS系ドラマ『義母と娘のブルース』など。18年10月期のドラマ『相棒 season17』では主人公・杉下右京(水谷豊)のふたり目の「相棒」・青木年男を演じている。『おのれナポレオン』(13年)、『クレシダ』(16年)、『メタルマクベス disc2』(18年)など舞台にも精力的に出演。最近はNHK「ドキュメント72時間」18年10月5日放送回『渋谷“アムラーの聖地”へ』でナレーションを務めるなど活躍の場をさらに広げている。

4歳で芸能界に入り、数々のドラマや映画、舞台に出演してきた浅利陽介さん。幅広い役柄を演じ切る演技力と存在感で注目されており、2018年10月期のドラマ『相棒 シーズン17』では水谷豊さん演じる主人公・杉下右京のふたり目の「相棒」・青木年男役を怪演している。

芸能界デビューは4歳。31歳にして27年のキャリアを持つが、10代後半から20代半ばまでは壁にぶつかることも多かったという。その壁をどう乗り越え、俳優という仕事に今、どのような思いを持っているのかをうかがった。

『相棒』の青木役の面白いのは、いろいろな俳優さんと絡めるところ

――人気ドラマ『相棒』に「シーズン15」(2016年)から青木年男役で出演されていますね。放送中の「シーズン17」では青木が主人公・杉下右京(水谷豊)のいる「特命係」に配属され、より存在感が増しています。撮影現場はどんな感じですか?

水谷豊さん、反町隆さんなどベテランの俳優さんが多く、ピリッとした空気ですが、僕にとってはすごく居心地がいいです。先輩ばかりなので、皆さん、いろいろなことを教えてくれるんですよ。「末っ子」として甘えるところは甘えさせてもらって、のびのびやらせてもらっています。

――青木を演じるにあたって大切にされていることは?

「相棒」は18年も視聴者の方々に愛されてきた作品なので、シリーズを作り上げて来た方々に対して失礼のないよう向き合わなければという思いが常にベースにあります。その上で、青木という曲者役で、思いっ切り遊ばせてもらっています。その方が水谷さん演じる杉下右京や反町さん演じる冠城亘のキャラクターも引き立つと思うので。

実際、青木は演じていてめちゃくちゃ楽しいんですよ。小悪党ぶりがブレなくて(笑)。それに、一番面白いのは、役柄の設定上いろいろな俳優さんと絡めるところ。撮影に向かうたびに「今日はこんなことをしてみようかな」と演技のアイデアが自然と湧いてくるんですけど、それを現場で先輩たちがいじってくれて、青木がさらに面白くなったりする。そうやって、周りとの関係性の中でキャラクターを作り上げていくのが好きなんです。

「俺は俳優なんだ」という思いにがんじがらめになっていた時期も

――浅利さんは4歳で芸能界に入り、子どものころから俳優として活躍されています。当時は仕事に対してどのような意識を持たれていましたか?

小学生のころに舞台『レ・ミゼラブル』で全国を回ったことがあり、お客さんの生の反応を経験して、「芝居って面白い」とは感じていました。ただ、深く考えていたわけではありませんでした。職業という意識が強くなってきたのは、大学に入って、同級生たちが卒業後の仕事について考えるようになったころからだと思います。

――職業意識が強まったことで、変化はありましたか?

「俺は俳優なんだ」「俳優としてきちんとやっていきたい」という思いが強くなり過ぎたんでしょうね。思うような演技ができず、20代半ばまでは壁にぶつかることが多かったです。これまでも何度かお話ししていますが、『コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-』のファースト・シーズンが始まったころは「俳優はやめて、ほかの仕事をした方がいいかな」と考えたこともあります。共演者は同世代の人気のある方ばかりで、「演技では負けられない」と思っていたのに、監督さんが求める演技がなかなかできなくて。現場にいることがつらくて、みんなともほとんど話さず、撮影が終わったらそそくさと帰っていました。

――転機は?

トモ(山下智久さん)や結衣ちゃん(新垣結衣さん)たちがさりげなく近づいてきてくれて、仲間になれたことが大きいですね。芝居というのはひとりではできないということに気づき、共演者やスタッフとの関係性を大切にするようになると、演技も変わっていきました。

現場で生まれるひらめきを大事にした方が芝居は面白くなる

――どのように変わっていったのでしょう?

演技の幅が広がったような気がしています。というのも、以前は演技のプランも自分でかっちりとイメージした上で現場に行き、監督や共演者とのズレを感じて「俺がやろうとしていることと全然違うなあ」と余計なストレスを抱えたりしていたんですね。でも、周囲と意思疎通がうまくいくようになって、アドリブで面白いシーンが生まれたりといったことを何度か経験するうちに、芝居って、現場で生まれるひらめきを大事にした方が絶対に面白くなると気づきました。

だから、今は自分だけでイメージを固め過ぎないようにしています。で、どうしてもこれはやってみたいということだけ「こんなアプローチの仕方もあると思うんですけど、どうですか?」とテストでやってみる。周囲との信頼関係が築けるようになると、そういう「ダメもとでやってみる」みたいなこともやりやすくなってきたような気がします。

例えばドラマ『リッチマン、プアウーマン』(12年)で小栗旬さん演じる主人公のIT企業社長に全く名前を覚えてもらえず、あの手この手で覚えてもらおうとする社員役を演じたのですが、主人公がセリフをしゃべっている間に奥で何かをやるエキストラ芝居も多かったんですね。エキストラ芝居というのはメインで映っている俳優さんより目立ってはいけないし、地味過ぎてもカメラが捉えてくれない。でも、現場に『コード・ブルー』で気心の知れたスタッフが多く、僕のやりたいことを理解してもらいやすかったおかげで、与えられた役を思う存分演じることができました。

周りを見ずに突っ走り、うまくいかないことは人のせい。若さってそんなものかも

――『メタルマクベス disc2』(18年)、『クレシダ』(16年)など舞台にも積極的に出演されていますね。舞台のお仕事ならではの魅力は?

ライブ感です。ドラマや映画にしても、舞台にしても、観てくださる方たちの視点を意識して演技をすることが大事だと僕は思っているんですが、舞台はお客さんの視線の動きがダイレクトにわかる。だから、すごく勉強になりますね。

ドラマや映画と舞台の大きな違いは、俳優にカメラが寄れないこと。カメラの力を借りることができないので、俳優自身の力と照明だけでお客さんの視線を引き寄せなければいけない。インパクトを与えたいシーンで、声を張り上げるのか、小さくするのか。意外と小さく言った方が効果的だったりして、表現の機微を生身でつかんでいけるのが舞台の魅力です。

――演技の勘所がつかめず、悩まれたりしたことは?

舞台でも20代半ばまでは壁だらけでしたよ。『キサラギ』(10年)に出演させていただいた時のこと。お調子者の「スネーク」という役をいただき、一生懸命やってはいたのですが、稽古では声を張り上げてばかりの演技をしていて。ただの「やかましい役」になってしまっていたんですね。もっとこのキャラクターの深みや弱さ、人間性みたいなものも表現したいと思うのに引き出しが少なくてできなくて。「はい。じゃあ、稽古終了です」と言われた途端、トイレに駆け込んで泣いたこともあります。

で、不適切な表現ですけど、「あの野郎! あいつのせいでうまくできないんだ」と自分がうまくできない悔しさを人のせいにしたりして。恥ずかしい思い出ですが、若さってそんなものなのかもしれないなと思ったりもします。周りが見えないほど突っ走る時期があってこそ、見えてくるものもありますから。

30代は「ちょっといろいろなものに手を出してみよう」と思っている

――今後についてイメージされていることはありますか?

最近はいろいろな個性を持った役をいただいたり、ドキュメンタリー番組のナレーションをやらせていただいたりと、自分から「こうしよう」というよりは「棚ボタ」的に面白いことに挑戦させていただく機会が増えていて。そうやって出会いを大切にしつつ俳優を続けていくというのはこの先も変わりませんが、いつかは自分で何かを作ってみたりできるといいなあと思いますね。それが映像を作ることなのか、脚本を書くことなのか具体的にはわからないんですけど。

あと、数年前から落語家の春風亭正太郎さんに落語を習っているのですが、30代はプライべートでも「ちょっといろいろなものに手を出してみよう」と思っています。さまざまなことを吸収することで、その一つひとつが「足し算」や「かけ算」になって、新しいことができると楽しそうだなと。そうやって力を蓄えて、40代になっても50代になっても「次に何をしようかな」と挑戦することを面白がっていたいですね。

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EDIT&WRITING:泉彩子 PHOTO:刑部友康

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