思い通りに部下が動かない…。あなたの指示には何が足りないのか?ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー()。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第28回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

 

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「湯飲みはお茶の残り具合が見えない。でも飲む時の傾ける角度で残りを推測できる」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第4巻 キャリア27より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。

「お茶の注ぎ方一つ」で、その店が繁盛するかどうかが決まる

海老沢は、井野に「ほんの些細な違いが成功の理由である」ことを実感してもらおうと、2人で行列のできる定食屋に入ります。そこは、味も量も価格も至って普通のお店です。それでも行列ができる理由は「居心地の良さ」でした。女性スタッフが客席をマメに回ってお茶を注ぎ、食べ終わった後も一息つける雰囲気づくりを心がけていることが、リピーターを生んでいたのです。

「消費者にとって、普段よく行くお店はちょっとしたイライラが少ないところを選ぶもの」だと話す海老沢。「例えば業界ナンバーワンの牛丼チェーンでは、アルバイトに変わったお茶の注ぎ方を指導する。それは、『湯飲みを大きく傾ければお茶が少ない証拠だから、注ぎに行く』というルールにしたこと。こうした細かい指導によって、居心地の良い空間づくりに配慮した」のだと言います。

「成功している会社には必ず理由がある。例えばコンビニ業界でも、最大手の会社は『レジに顧客が2人以上並んだら別のレジを開けるように』と明確な指示を出している。指導が具体的であればあるほど、従業員の行動にブレが少なくなり、チェーンのサービスは統一される」と説明するのでした。

顧客のストレスを極限まで小さくした“究極”の商品とは?

普段、私たちは気に留めることが少ないですが、こうした企業努力は日夜続けられています。

「顧客の小さなイライラを取り除くことで、売り上げアップにつなげる」典型的な事例の1つに、アマゾンの「アマゾンダッシュボタン」という商品があります。これは言わば、注文ボタンのことです。

このボタンには洗剤などの消耗品を中心に数十種類のラインナップがあり、「残量が少なくなってきた時点で押せば、事前に設定しておいた通りに商品を自動で注文・発送してくれる」というものです。

「ボタンを押すだけで購買行動が終わる」というこの商品こそ、いかに顧客がストレスなく買い物ができるか?を突き詰めた究極の形と言えるのではないでしょうか。

接客のプロの技を、マニュアルに落とす

飲み物の話に戻しますと、湯呑み茶碗は中のお茶の量が従業員からは見えません。だから、先ほどの牛丼チェーン店では顧客が湯飲みを傾ける角度で中身を判断するようにしたわけです。

実はこうした推測法は、スナックなどの飲み屋でも行われています。

グラスは中身が見えるものの、クラブのホステスなどは、顧客が話し込んでいるときに「ほかの顧客のグラスが空になっていないか」とよそ見をすることはできません。周りをキョロキョロしていては、失礼に当たる可能性もあります。それでは、どうやってお酒の注ぎどきを見極めるのかと言うと、氷の音で判断しているそうです。

氷の入った飲み物を想像していただくとわかると思いますが、通常、中身が少なくなると、氷がカラカラとグラスの中で音を立てます。逆に、飲み物が入っていれば、氷は飲み物の中で浮かんでいるため、あまり音はしません。音で分量を判断することによって、目の前の人から視線を逸らさずに会話を続けることができるのです。

 

©三田紀房/コルク

他人を動かすためには、表現力を磨くことが不可欠

「飲み物をいつ注ぐか?」というのは、接客業では大事なポイントです。しかし、これを従業員に教える際、ただ単に「顧客の飲み物を切らさないように」と言うだけでは、スタッフはどのタイミングで行動を起こせばいいのかがわかりません。顧客に均質なサービスを提供したければ、ルール化が必要です。

実際、教え方としては「顧客のお茶がなくなったら注ぐように」という指導の仕方もあるし、もしくは「顧客が『お茶をください』と言ったら注ぐ」という教え方もできます。けれど、それではどちらもタイムリーではなくなり、顧客にとっては小さなストレスになるでしょう。

今回の話のキモとは、指示を出す側が「どう言えば相手に通じるか?」を研究し、表現力を磨くことが重要だ、ということです。従業員が動きやすくなる明確な指示を出すことによって、たとえ相手がその意味を理解していなくても、会社にとっては自分たちが目指しているサービスを提供することが可能となるのです。

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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