ちょまどさん、11月からMicrosoftの「クラウド デベロッパー アドボケイト」にロールチェンジ!

プログラミング言語擬人化漫画「はしれ!コード学園」でおなじみ、マイクロソフト社員の「ちょまど」さんこと、千代田まどかさん。海外で英語登壇を多数こなしたり、「デベロッパーズサミット2017」でベストスピーカー総合第1位を受賞するなど、絶妙なトークでエバンジェリズムを発揮し、多くのファンを持つちょまどさんが、この11月からマイクロソフトの「クラウド デベロッパー アドボケイト」(CDA)という、日本でまだ2人目の職位に就いた。

CDAとはどのような役割で、以前のテクニカル・エバンジェリストと何が違うのか、そしてちょまどさんはどのように活動していくのか、直撃取材した。

マイクロソフト コーポレーション クラウド デベロッパー アドボケイト
千代田まどか(ちょまど)さん

文系出身エンジニア兼マンガ家。2016年3月~2017年6月:デベロッパー・エバンジェリズム統括本部の『テクニカル・エバンジェリスト』、2017年7月~2018年10月:コマーシャル・ソフトウェア・エンジニアリング本部の『ソフトウェア・エンジニア』(『テクニカル・エバンジェリスト』)、2018年11月:『クラウド・デベロッパー・アドボケイト。
Twitter:chomado/ホームページ:ちょまど帳

「アドボケイト」はデベロッパー・コミュニティを鼓舞し、サポートする人

マイクロソフトの「クラウド デベロッパー アドボケイト」(Cloud Developer Advocate=以下、CDA)は、2017年初頭から米国本社でスタートした、DevRel系の新たな職位。

DevRel(デブレル)とは、Developer Relations (デベロッパー・リレーションズ) の略で、テクノロジーを提供するベンダー(マイクロソフトやGoogleなど)が、開発者と良好な関係を築くことを目的とするマーケティング活動である。それによって、自社サービスの認知度が向上したり、デベロッパー・コミュニティのトレンドを把握して自社製品に取り入れるよう働きかけたり、また、ユーザの人たちのフィードバックを製品チームに伝えて製品の質の向上に貢献したりする。

「DevRelは、その名の通り、開発者との関係性が重要です。マイクロソフトのデベロッパー分野の窓口として、皆さんの声を直接お聞きし、製品に活かしたりドキュメントを用意したりして、より生産的に開発できるよう働きかけることがミッションの一つです。つまり、DevRelとは、開発者の皆さんと『一緒に』創っていく人たちのことです」(ちょまどさん)

「そのDevRelの具体的なタイトルとして、マイクロソフトは『デベロッパー・アドボケイト』を使っていますし、Google社も『Developer Advocate』、IBM社も『IBM Developer Advocate』ですね。今大手外資系では、DevRelの新しいタイトルとして『アドボケイト』を採用する企業が増えてきているように思います」

また、マイクロソフトのアドボケイト職は、マイクロソフト・テクノロジーだけでなく、OSS(オープンソース・ソフトウェア)、機械学習/AI、コンテナ、Go、Java、Webの技術、ゲーミングなど、あらゆる分野のデベロッパー・コミュニティを「アドボケイト」として盛り上げる役目がある。英語のAdvocateには複数の意味があるが、ここでは「鼓舞する人」という意味が一番近いだろう。

「マイクロソフトは以前からデベロッパー・コミュニティを大切にしており、コミュニティの方々の意見やフィードバックを製品に活かし、製品をより良くしたいと常々考えている企業です。CDAは、自身がデベロッパーとして実際にコミュニティと接して、みんなの生の声を聞いて、製品チームにフィードバックをすることがミッションの一つです」と、ちょまどさん。

「知識をシェアする文化を強く持つエンジニアの世界では、技術は、SNSや勉強会など、コミュニティベースで盛り上がることが多いものです。私個人としても、デベロッパーのツール/サービスを提供している会社としても、デベロッパー・コミュニティはとても大切なのです。技術が好きでたまらない人たちが集まるところから、何か新しいものが生まれるものです」

CDA(クラウド・デベロッパー・アドボケイト)は、具体的に何をするのか

「私たちCDAのゴールは『開発者の皆さまが、クラウドの技術を使い、より多くのことをできるようにご支援する』ことですが、それを実現するために、私たちは以下の3つのエリアに注力しています」

① デベロッパー・コミュニティの支援
② 技術ドキュメント/サンプルの充実
③ Microsoftの製品チームとの橋渡し

1. デベロッパー・コミュニティの支援

「私たちCDAチームのモットーは『Go where developers are. (デベロッパーのいるところに行く) 』です。要するに、机上でいろいろ考える人ではなく、実際にコミュニティの皆さまのもとに伺って、実際の生の声を聴く。これがとても大切だと考えています。また、勉強会やカンファレンスでの登壇もして、技術やノウハウのシェアのお役に立てればと思います」

2. 技術ドキュメント/サンプルの充実

また、実際にデベロッパーの人たちがMicrosoftの技術を始めやすいように、Webで調べたらすぐにドキュメントが出てくる環境を用意することも大切だ。

具体的には下記などが挙げられる。

* ブログや外部メディアで記事を書く
* SNS (ソーシャルメディア) での発信
* 動画でのhow toコンテンツ作成

「実際にコミュニティの皆さんと会話し、どういう問題があるのか、またどういうところが難しいのかを聞き、それらをカバーするドキュメントをご用意して、お役に立てたら幸いです」

3. Microsoftの製品チームとの橋渡し

「私たちCDAチームは、製品チームと密接な関係を築いており、具体的にはAzureチームなどのプロダクトを作っている開発者と気軽に連絡が取れます。製品チームは、自分たちの作っている製品が、皆さまに実際にどのように使われているか、また、どういう機能が求められているかを知りたがっています。それらを私たちが届け、製品の改善に役立てればと思っています」

『テクニカル・エバンジェリスト』とはどう違うのか?

これまでも似たような役割を果たすテクニカル・エバンジェリストという職位があったが、広義的な意味でいうならば、それを引き継ぐかたちで開発者と接するポジションとして新設されたのがCDAだ。

「狭義的には、エバンジェリストはどちらかというと、壇上から啓蒙をするという雰囲気が強かったのですが、CDAはコミュニティの人たちの輪の中に入り双方向で会話をするという感じだと思います」と、ちょまどさんはその違いを説明する。

ちょまどさん

当初、米国本社で始まったCDAは、その後、米国内の各エリア、さらにグローバルに展開、現在は英・仏、豪など世界各地で約80人(2018/10/28現在)のアドボケイトが認定されるまでになった。

日本ではJava Championとして知られる寺田佳央氏が最初のCDAに就任。JavaやKubernetesなどの活性化に取り組んでいる。

その日本で、2人目のCDAとなったのが、ちょまどさんだ。

「最初に、CDAのことを聞いたときは、世界のアドボケイトたちの顔ぶれがとにかく開発が大好きなギーク揃い、かつデベロッパーと接するのが大好きな人たちばかり。まさに綺羅星のごとくで、わぁ、なんて素敵なんだろうと思いました」

例えば、Vue.js のコアチームのエンジニアSarah Drasner、Linux界隈で有名でDocker のコアメンテナーだったこともあるJessica Frazelle、Google Developers Expertにも認定されておりGo言語にも精通しているAshley McNamaraや、他にもLinux on Azure、Python、IoTのスペシャリストなどが並ぶ。必ずしもマイクロソフトの技術にこだわらず、様々なOSSコミュニティに貢献している人が多い。

他の大手ITベンダーのエンジニアとも仲が良く、それらの企業が主催するイベントにも平気で登壇したりする。それぞれ数千~9万人のTwitterフォロワー数を持つなど、エンジニア・コミュニティへの影響力も大きい。

マイクロソフト入社の経緯

CDAへのロールチェンジの話に入る前に、そもそもちょまどさんが、なぜマイクロソフトに入社したのかの話に遡る。

ちょまどさんは私立女子大の英文学科を卒業して、SIerに就職。『システムエンジニア』として雇用された彼女の配属先はテスト部隊で、毎日テスト一覧の書かれたExcelファイルを見ながら、誰かの作ったアプリのテスト画面のスクショをExcelファイルにぺたぺた貼るのが仕事だった。

「多い日は一日に200枚貼っていました。自動化が許されなかったので、全部手動でした。職場の人たちは皆さん真面目で優しい方々だったのですが、もともと私はプログラミングを仕事にしたかったので、入社3カ月で退職し、翌週、他のベンチャー企業に転職しました。その時親は『せっかく就職氷河期のなか大手に入社したのに』と泣いていました…。でも私はプログラミングをやりたかったので迷いませんでした。罪悪感はありましたが」

そしてちょまどさんは2社目のベンチャー企業での話を続ける。そこではモバイルアプリ(Android/iOS)を作る開発者として、毎日コードを書きまくった。ここでは、AndroidやiOSなどのネイティブアプリがC#だけで開発できる、クロスプラットフォーム開発環境の Xamarinを使って、Android/iOS間でコード共通化を図りながら、両プラットフォームのアプリを、開発からリリースまで担当していた。

サーバサイドもC#(ASP.NET)で書いて、クライアントとサーバ間のコード共通化も実現し、また、サーバは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム『Microsoft Azure』 (当時はWindows Azure) を使っていた。

「ここでガッツリ Microsoftテクノロジーを経験できたのが良かったです。MicrosoftのIDE Visual Studioや言語C#の高性能さに感動して、ますますプログラミングが好きになりました。AzureやXamarinもどんどん拡大していっていましたし。まあ当時はまだXamarinはMicrosoftの一員じゃなくてあくまでサードパーティー製だったんですけどね」

また、ちょまどさんは、同時に、マンガ家でもあった。『エンジニア兼マンガ家』の肩書を持って、大好きなプログラミングを題材にした漫画を描き続けた。

その連載マンガの一つ「はしれ!コード学園」をきっかけに、マイクロソフトのエバンジェリストチームの一人の目にとまり、テクニカル・エバンジェリストとして採用面接を受けることを勧められた。漫画やSNSなどを使い、多くの人に分かりやすく技術を広める仕事をして欲しい、ぜひ採用面接を受けてくれと言われた。

「私は既にマイクロソフト大好きなマイクロソフトファンだったので、この私のスキルがマイクロソフトやその周りのデベロッパーの皆さまのお役に立てるのなら、ぜひ採用面接にチャレンジしたいと思いました。正直どうせ落ちるだろうなってダメもとでしたけどね」

結局、コードレビューや英語面接も含む6回の面接を突破し、2016年3月、マイクロソフト入社。その後は、さまざまなイベントに登壇して情報を発信、Twitterフォロワー数も4万6,000人を超えるまでになった。

マイクロソフト入社直後、初登壇のちょまどさん。今から2年半前

ちょまどさんがずっとやりたかったこと

当初ちょまどさんが所属していたのはDevRel系の部署『デベロッパー・エバンジェリズム統括本部』(略称DX)で、当時日本DXには彼女含め『テクニカル・エバンジェリスト』が30人ほど在籍していた。

しかし、1年後に組織変更があり、DXは2つの新設部署に分かれた。ひとつが営業系の部署、そしてもう一つがエンジニア系の『コマーシャル・ソフトウェア・エンジニアリング本部』(略称CSE)だった。彼女はCSEに配属された。それが2017年7月のこと。

肩書きは一応『テクニカル・エバンジェリスト』のまま残っていたが、仕事内容はガラリと変わった。DX在籍時は登壇やSNS/ブログでの情報発信が主な業務だったが、CSEになると、主な業務は企業への技術支援となった。

「最初の部署の時は『対デベロッパー・コミュニティ』という感じでしたが、次の部署、CSEは、その名の”Commercial”の通り、『対企業』でした。お客様の実プロダクトのアーキテクチャに対してアドバイスしたり、実際にコードを書かせていただいたりしました。そう、CSEは、お客様の課題を『code with』で解決する、という、デベロッパー集団の部署です」

CSEになって強化されたのがHackfestと呼ばれる『一気にプロダクト開発を進める』仕組みだ。CSEのエバンジェリストが担当企業を訪問し、必要に応じハンズオントレーニングを行い、そのあとは数日間部屋にこもって一緒に実プロダクトの開発を一気に進める。いわば担当企業向けの特別なハッカソン。

例えばナビタイムジャパンの観光者向けchat botのサービスは『この Hackfest の 2 日間でほとんどの基盤となる部分ができ上がり、これならいけると確信しました』(引用元)。また、ちょまどさんも関わったプロジェクトの中にfreee社とのXamarin導入のHackfestがある。詳細はこちら:『C# によるクロス プラットフォーム開発が可能な Xamarin を採用した結果、プロジェクト工期が当初想定の半分の3か月に短縮。加えて、前年リリースの Windows版との 80% に及ぶコード共有率を達成』(詳細

「これは私にとって新鮮でした。これまではコミュニティのイベントに登壇して話すことがメインでしたが、CSEでは、Hackfestという貴重な機会の中で、現場のエンジニアの方々と一緒にコードを書く。そう、実際にプロダクトを開発している企業の現場のエンジニアの方々と一緒にコードを書いて、一緒にプロダクトを開発できるのです。

CSEにいた1年半弱、様々な現場やプロダクトのアーキテクチャを見てきました。Azureが実プロダクトでこういう風に使われるんだ、と、本当にとても勉強になりました。とくに自分の貢献したプロダクトがリリースされた時は本当に素晴らしい満足感に浸れました。コード書くのが大好きな集団であるCSEの一員になれて本当に幸せでした」

ただ、ちょまどさんは一抹の寂しさも感じていた。

「DX(最初の部署)時代のテクニカル・エバンジェリストの頃は、コミュニティのイベントでの登壇数やTwitterのフォロワー数もKPIの一つでした。でも、組織がCSEになるとそれらはカウントされなくなりましたし、業務内容ではなくなりました。それでも心の中ではもっとデベロッパー・コミュニティの皆さまと接したいし、自分のナレッジを共有したいと思う気持ちが常にありました。

たとえば、CSEのメイン業務であるHackfestを通して、こんな新しい知見が得られたということを広くSNSなどで共有したいと思っていましたが、当然、実プロジェクト案件なので、お客様企業の機密情報を外部に共有することはできません。

具体的に言うと、本当は毎回『〇〇社とのHackfestなう!私はクライアントの実装を任されたよ。バックエンドはAzure Functions(C#)とLogic Appsでサーバーレスで固めるよ』『こういう躓きポイントがあったよ』などとコードを見せながら実況したいくらいなんですよね。

でもそんなことできない。もちろん私はプログラミング大好きですし、CSEで様々なお客様企業のプロダクトにプログラミングでコミットできるこの現状に幸せを感じていましたが、私は、入社当初のように、テクノロジーやノウハウをわかりやすく話したり書いたりすることのほうが皆さまのお役に立てると思ったのです。

自分を育ててくれたエンジニアのコミュニティに感謝しているし、その成長にずっとコミットしていきたい。そのために私は何ができるか、ずっと考えていました」

全てのデベロッパーがもっと多くのことを達成できるように、コミュニティと情報をシェアしたい——。ちょまどさんのその思いは変わることがなかった。以前のテクニカル・エバンジェリストのような仕事がマイクロソフト社内にないものかと探しているとき、ちょうどアドボケイトの制度がスタートした。日本でもCDA活動を推進するという方針が下され、少数のCDAが選抜されることになった。

海外でちょまどさんをその候補に推薦する人が複数いて、2018年7月にUS本社にレジュメを提出。本社のリージョナル・マネージャー、本社のドキュメント・チーム、日米の人事部、そして先にCDAに就任していたJava Championの寺田氏などと、Skypeを使った複数回の面接を重ねて、ようやく内定が出たのが10月第1週だった。

「選考までにとても時間がかかりました。これも、すでにCDAとして活躍しているメンバーの顔ぶれをみれば当然ですね。自分もその仲間入りできたという喜びと同時に、イベントへの登壇やテクニカル・ブログ執筆などを、また業務としてできるようになったこと、それをフルパワーで再開できるようになったことが、今は嬉しいです」

ちょまどさん

CSEになった後も、ちょまどさんはエンジニア・コミュニティにちょくちょく顔を出していたので、その変化に気づかなかった人たちも多いはず。しかし、今回のCDA就任によって、彼女の状況は変化した。エバンジェリストから再びアドボケイトとしての活動を再開し、その活躍を楽しみにするちょまどファンも少なくないだろう。

CDAとしてのオフィシャルな活動の最初は、11月5~7日に東京で開かれる「Microsoft Tech Summit 2018」になる予定だ。マイクロソフトのデベロッパー・プラットフォームの紹介を、日本マイクロソフトのドリュー・ロビンスCSE本部長や前述の寺田佳央氏と共に行うほか、「サーバーレスでスマート・スピーカーのアプリを作ってみよう」という自身のセッションも開催する。ここではGoogle Home、LINE Clova、Amazon Echoなどのスマート・スピーカー・アプリをAzure Functions を使用してサーバーレスで実装する作り方を紹介する予定だ。

マイクロソフト・コーポレーションは「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上の全ての個人と全ての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとして掲げている。

「それをベースに私たちCDAのミッションを言い替えると、“Empower every developer on the planet to achieve more.”ということになると思います。全てのエンジニアがより多くのことを達成できるように私にできることを精一杯やりたいです」

ちょまどさんのエンジニア・コミュニティへの復帰を喜ぶと共に、彼女の、やりたいことを貫く、飽くなきキャリア開発の姿勢にもあらためて敬意を表したい。

ちょまどさん

最後に、もう一人のクラウド デベロッパー アドボケイト(CDA)である寺田佳央氏から贈られたメッセージを紹介する。


ちょまどさんは、IT 業界において年齢を問わず幅広い世代の方々から注目されています。これからもその情報発信力をもって、より多くのエンジニアの方々に魅力あるテクノロジーの情報を届けていただければ嬉しく思っています。

そして今後は、私と共にクラウド・デベロッパー・アドボケイトとして、日本のエンジニアの皆様とマイクロソフト本社をつなぐ架け橋になっていただければ嬉しく思います。

クラウド・デベロッパー・アドボケイトはエンジニアの皆様からの声を大切にします。日本で求められている技術情報をお届けする他、必要に応じて皆様からの声を適切に本社へフィードバックし、製品や技術のクオリティ向上につとめます。

そして既存のコミュニティ・メンバーの方々や、これから参加をご検討されている方々と共に、コミュニティを今まで以上に元気に盛り上げていければと考えています。(寺田佳央)

執筆:広重隆樹 撮影:刑部友康 編集:馬場美由紀

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