伝わるプレゼンに欠かせない「第三極の思考」とは?──澤円のプレゼン塾(その7)

プレゼンには、話し手の自分と聞き手となるオーディエンスの二極が存在します。ところが澤さんは、プレゼンを魅力的にするためには、さらに第三者を想定する「第三極の思考」が必要だと言います。
澤円のプレゼン塾・第7回からは、プレゼンの「核」を作る時までの思考プロセスについて、解説していきます。

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プレゼンの「核」を作る時までの思考プロセス

前回(前回記事はこちら)まで、織田信長さんや孫さんを例に、プレゼンテーションの「核」の作り方についてお伝えしました。今回は、皆さんが「核」を作る時までの思考プロセスについて考えたいと思います。

プレゼンテーションを作るきっかけはいろいろありますよね。イベントの登壇を依頼されたり、社内の報告会での発表者に指名されたり、お客様先での製品説明の担当になったり。いずれにせよ、何かしらの「話すべきこと」があってプレゼンを作る場合がほとんどではないかと思います。

「話すべきこと」は、自分が考えた内容のものもあれば、他者から与えられたテーマの場合もあるでしょう。「話すべきこと」がどこからやってきたものであっても、「核」を持つプレゼンテーションを作るのであれば気を付けるべきことは共通しています。

それは、「第三極の思考」です。「なんだそれは?」と思う方がほとんどでしょう。じっくりと説明させていただきます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

エンジニアのプレゼンテーションにありがちな「作り手の論理」

エンジニアが技術・製品・ソリューションなどを題材にプレゼンテーションを行う場合、「エンジニアとしての視点」を活かしてそれらの話をすることになります。

各種機能や設定方法、技術的な優位点や差別化ポイントなど、今まで培った技術力を武器に語りつくすことができるでしょう。

ただここで気を付けなくてはならないのは、「エンジニアの主観」が強くなりすぎることです。

エンジニアの視点は、「作る側の論理」が強くなりがちです。あるいは技術的な傾向が強くなりすぎて、「何のためにその機能が存在するのか」というそもそも論が抜け落ちたり、実際の利用シーンが思いつかないような説明になったりします。

このようなプレゼンテーションをすると、ITに明るくない人は「なんか難しい話をしてるなぁ」と思ってしまい、聞く耳を持たなくなってしまうかもしれません。それどころか「自分に理解させないように話しているのか?」と、あらぬ疑いをかけられてしまうリスクもあります。

ギークな人たちの集まりならそのアプローチもありですが、そこでキラリと光る存在になるためにも、これからお伝えする「第三極の思考」を取り入れてみてほしいと思います。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

技術者のプレゼンテーションを魅力的にする「第三極の思考」

では、「第三極の思考」について説明します。
プレゼンテーションを行う場合、話し手である自分と聞き手となるオーディエンスの二極があるのは、すぐお分かりになることと思います。

プレゼンテーションを作るときにオーディエンスの視点を意識して作る、というのは賢明な読者の皆様なら、すでに実践されていることでしょう。

どのようにオーディエンスはあなたのプレゼンテーションを聴き、感じるのかを意識するのは、必要不可欠なことです。でも、「イケてる」プレゼンテーションを目指すのであれば、もう一歩踏み込んだ思考が必要になります。

ここで取り入れてほしいのが「自分がプレゼンテーションしている姿を、想定オーディエンスとは別の第三者がどう見るのか」という意識です。そして、その「第三者」をいくつも想像して、その人の思考パターンを想像してみるのです。このプロセスを「第三極の思考」と呼んでいます。

この第三者は、本当に自由に、勝手に作ってしまって構いません。突拍子もない誰かを作って楽しみましょう。このプロセスを経ることで、前回までの連載でお伝えした「伝言ゲーム」での勝率が格段に上がるのです。

※前回までの記事はこちらからご覧ください。

分かりやすくて、十分な技術情報が入ったプレゼン

具体的に例を挙げてみましょう。
あなたがデータベース製品の技術者だとして、顧客のIT担当者にプレゼンをするとします。その方は技術的にも明るく、専門用語をふんだんに使って話してもまったく問題ないでしょう。

でも、あえてそこにまったくIT知識を持たない営業部門の部長さんがいると仮定して、その人があなたのプレゼンをどう見るかを想像してみてください。きっと専門用語の嵐に打たれて呆然としてしまうことでしょう。

なので、あえて「誰にでもわかる言葉」に置き換えて話し、その上でディープな技術論を差し挟むと、「分かりやすくかつ十分な技術情報が入ったプレゼン」に昇格するわけです。

では、インメモリデータベースの話題を例にしてみましょう。

「インメモリOLTPエンジンでは、メモリ最適化記憶域の中にテーブルとインデックスを持ち、メモリ上でトランザクション処理を行うため、非常に高速な処理が可能となっています」

上記の説明は、データベースの知識を持っている技術者には伝わりますが、営業部門の部長さんは分からない場合がほとんどでしょう。

ということで、下記のように言い換えてみることにします。

「インメモリOLTPエンジンという素晴らしい技術革新により、多くのデータをより高速に処理することができるようになりました。
その結果として、処理時間が短くなるため、コスト削減やビジネスのスピードアップにもつながります」

このプレゼンテーションなら、仮想的にその場にいる営業部長さんも「専門用語はよくわからんけど、このデータベースが優れものだということは分かった」という状態になるわけです。

インメモリデータベースという技術が開発された本質的な理由は、より高速な処理ができるようにするためなので、そこにフォーカスを当てればいいわけです。その発想を得るために、「第三極の思考」を取り入れてみる価値はあると思います。

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著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術
Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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