【マンガ】適切なコストと労力で、ITサービスを提供し続けるには?―『運用☆ちゃん』Incident 011

いつもサービスを支えてくれているシステム運用の人たち。いったいどんなコトしているんだろう? 運用の仕事の苦労や醍醐味などなど、妖精「運用☆ちゃん」が、2年目システム運用担当者 海野 遥子(うんの ようこ)と体当たりでお伝えします。

ITサービスマネジメントって、なあに?

ビジネスフォーカスのムーブメント「DevOps」を知った遥子。
エバンジェリスト長沢氏に「自分の価値に気づくこと」「自己肯定感を持つこと」の大切さを教わる。とはいえ、遥子の仕事は地道な運用作業……。「自分は価値があるの?」理想と現実のギャップに大いに悩み、そしてヘコむのでした。



そもそも、ITサービスマネジメントって何?
(また、新しいコトバが出てきたぞ…)


顧客のビジネスニーズに合った、適切なITサービスを提供し続けるためのマネジメント活動のことをITサービスマネジメントと言うわ。代表的なフレームワークとしては、ITIL(R)(※)が有名ね。

ITIL(R)とは
Information Technology Infrastructure Libraryの略。通称「アイティル」。1980年代後半に、英国政府によりまとめらたITサービスマネジメントの好事例集(書籍群)。バージョンアップを重ね、IT運用管理のデファクトスタンダード(事実上の標準)として世界中の企業・官公庁・公共機関で用いられている。


???(ぽかーん)


わかりやすくいえば、ITシステムを使ったサービスを、「適切なコストで」「適切な労力で」「ビジネス活動を円滑に行うための、適切な品質で」提供するためのやり方ってところかしら。


あ、その説明でピンときたかも!私が毎日やっている、認証基盤システムのプロセス監視やログ監視も、日景エレクトロニクスの社員や協力会社の人が、ITシステムを使って業務がきちんとできるようにやっているのよね。


そういうこと!でも、たとえば監視対象が多すぎて、運用担当者が毎日深夜残業しなければならなかったり、休めなかったりしたらどう?


い、イヤすぎます!オペミス(オペレーションミス)も多発しそう……。


でしょ。そうならないように、適切なコストで」「適切な労力で」ITサービスを回せるようにするためのマネジメントが必要なわけ。


納得!

8,568通り、あなたはどのタイプ?

ITサービスマネジメントの5つのサイクル


で、ITサービスマネジメントって具体的に何をするの?


そうね。ITIL(R) V3で定義している、5つのライフサイクルがわかりやすいわ。
ITサービスマネジメントは、この5つのライフサイクルで成り立っているの。(リリっす!)


なんか、また横文字がたくさん出てきたぞ……。


英国生まれだから、そういうものだと割り切って!(あたしは宇宙生まれだけれど)遥子の国のコトバに置きかえるなら、戦略⇒設計⇒運用準備/移行⇒運用⇒測定・報告・改善ってところかしら。


それなら、わかりそう!


そして、遥子もこのライフサイクルの中で価値を発揮しているのよ!


な、なんですと!?

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「サービスストラテジ」(戦略)とは


まずはサービスストラテジ。どんなに立派な運用部隊でも、ビジネス戦略やゴールと整合したサービスを提供しないと意味がないわよね。かつ、需要に見合った予算を確保し、適切な運用体制や投資計画を作って運営しないと、「やり漏れ」「やり過ぎ」が起こってしまう。


たしかに!


そうならないように、サービスストラテジでは次のプロセスを推奨しているわ。

サービスストラテジの主なプロセスと機能

* 戦略策定
* サービスポートフォリオ管理
* 需要管理
* 財務管理

「サービスデザイン」(設計)とは


戦略の次は設計。


んんん???


そうね。たとえば、新たにハンバーガーショップを立ち上げたい人がいるとする。でもって、遥子が店長を任されたとする。


うふふ。チーズバーガー、美味しいよね♪


(うっとりしなくてよろしい!)コホン。で、お店をオープンするためにどうする?


ええっ!? そうね、メニューを考えなきゃよね。チーズバーガー以外にも、ポテトとかも提供したいな。


それだけ? テイクアウトOKにする?しない? あとデリバリーは?


あ、そういうのも考えなきゃよね。あと営業時間も考えないと。デリバリーをするとなると、注文を受けてからお届けするまでの目安の時間も考えないとだわ。
ああ、店長1人じゃできない。アルバイトを採用しないと!


そういうこと。ITの運用サービスも、運用項目決めたり、監視項目決めたり、サービスレベル決めたりするよね。これら、運用サービスをデザインする活動をサービスデザインって呼ぶの。

サービスデザインの主なプロセス

* サービスカタログ管理
* サービスレベル管理
* 可用性管理
* キャパシティ管理
* サービス継続性管理
* 情報セキュリティ管理
* サプライヤ管理


でも、どんなメニューを提供するかってよく考えないとだよね。お店のコンセプトや雰囲気に合っていない商品は提供したくないなぁ。


そう!だから、サービスストラテジ、すなわちビジネス戦略との整合性を確認するのが大事なの。

「サービストランジション」(運用準備/移行)とは


メニューやサービスが決まったら、さっそく開店に向けた準備をしないとね。


その通り!必要な調理器具や清掃用具をそろえたり、テイクアウト用の包装紙や紙袋を準備したり、POSレジを設定したり。お店のスタッフの教育もはずせないわね。


あとは、お店や商品を知ってもらうWebサイトや、POP、のぼり、チラシも必要ね。開店記念キャンペーンもやりたいな。ああ、なんだかやることが多すぎて、絶対抜け漏れさせちゃいそうだよ~(泣)。


そうならないように、サービストランジションってライフサイクルがあるの。
新しいサービス運用準備や、既存サービスやデータの移行。すなわちトランジションに必要なプロセスが定義されているわ。

サービストランジションの主なプロセス

* 構成管理(サービス資産管理)
* 変更管理
* ナレッジ管理
* リリース管理


お店の新規開店時だけではなくて、メニューの追加や廃止、営業時間を変更をするときなどにもサービストランジションのプロセスは役に立つわよ。

「サービスオペレーション」(運用)とは


そして、ついに遥子のお店オープン!(リリっす!)


ふぃ~。お疲れ様でした!


お疲れ……って、何言ってるの!リリースしてからが本番じゃないの!
(あんた、いつから開発担当になったの)


ひぃぃぃ。そうでした!


事前に決めたメニューやサービスを、当たり前に提供するのはもちろん。クレームやトラブルにも対応しなければならない。


ハンバーガーショップだと、いろいろなトラブルがありそうよね。頼んだ品が出てこないとか、品切れしちゃいましたとか、酔ったお客さんが来て騒いでいますとか、トイレが詰まりましたとか……。あと、台風が近づいているけれど、お店開けて大丈夫かしらとか。


当たり前のサービスを、当たり前に提供できるようにするための管理。それをサービスオペレーションというの。

サービスオペレーションの主なプロセスと機能

* 要求実現
* インシデント管理
* 問題管理
* イベント管理
* アクセス管理
* サービスデスク

「継続的サービス改善」(測定・報告・改善)とは


最後は、継続的サービス改善。サービスの価値を上げていくために欠かせないプロセスよ!(れびゅん!)


わおっ!


ハンバーガーショップを運営する場合でも、時間帯別の来店数や、来店客の購入動向、商品別の販売数、ロスの数、お客さんの滞在時間、お待たせした時間、クレームや問い合わせの数、トラブルの発生状況や解決状況、スタッフの残業時間……など、お店が健全に運営できているか? 改善余地がないか? 測定対象を定義して、測定して、報告/共有して、改善するよね。 

継続的サービス改善の主なプロセスと機能

* 7ステップの改善
* サービス測定
* サービス報告
* 文書化


そうしないと、お店の価値が上がらない!


「定義できないものは、管理できない。管理できないものは、測定できない。測定できないものは、改善できない」 これは、W・エドワーズ・デミング博士の言葉よ。


デミグラス博士?


デミング博士! プドゥキャ…じゃなかった…PDCAサイクルの生みの親と言われているわ。


なるほど。定義、測定、改善の流れ、意識します! 価値のあるサービスを提供できる組織にならなくちゃだわ!


この5つのサービスライフサイクルの中で、自分の仕事がどこにあって、どうサービスに貢献しているか? 自分の現在位置を意識するだけでも、運用者としての成長に差が出てくると思う。


うん。なんかいつもの仕事の見え方が変わってくる気がした!


遥子も、ゆくゆくは運用全体を見据えてマネジメントする、ITサービスマネージャを目指してほしいわね。


ITサービスマネージャ!?


ITサービスマネジメントについては、この書籍も参考になるわ。

新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!
(シーアンドアール研究所 沢渡 あまね著)

重大インシデント発生! 次回、どうなる遥子!?

—第12話(Incident 012)につづく
『運用☆ちゃん』連載バックナンバーはこちら

登場人物紹介

運用☆ちゃん

妖精。ある日、遥子のもとにやってきた。システム運用業務の認知の低さ、運用者のモチベーションの低さを嘆き、空から舞い降りた。彼女の使命は、運用のプレゼンス向上、価値向上、そして運用者の誇りの醸成。好きな言葉は「ありがとう」。好物は、かき氷ブルーハワイ(嫌なことがあるとやけ食いする)。
見た目も言動も幼い感じだが、実は65535歳らしい。

海野 遥子(うんの ようこ)23歳

大手製造業 日景(ひかげ)エレクトロニクスの情報システム子会社に勤める2年目社員で、認証基盤システムの運用担当。クラスの端っこで目立たないような女子。今日もサーバルームで、システム監視したりパッチ当てたりと目立たぬ日々を送る。好物はいわた茶。

※この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

湊川あいマンガ:湊川あい(みなとがわ あい)
フリーランスのWebデザイナー・マンガ家・イラストレーター。マンガと図解で、技術をわかりやすく伝えることが好き。
主な著書 わかばちゃんと学ぶ Webサイト制作の基本わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門わかばちゃんと学ぶ Googleアナリティクス〈アクセス解析・Webマーケティング入門〉
Twitter: @llminatoll

沢渡あまね

シナリオ:沢渡 あまね(さわたり あまね)
IT運用エバンジェリスト。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。ITサービスマネジメント/プロジェクトマネジメントのノウハウを応用した、企業の働き方改革・業務プロセス改善・インターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動を行っている。
主な著書:『新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!』、『職場の問題かるた』『働き方の問題地図』『職場の問題地図』『仕事の問題地図』、『チームの生産性をあげる。』、『話し下手のための雑談力
Webサイト「あまねキャリア工房」 / Twitter / Facebook

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