本気で評価されたかったら、自分の価値を見極めて「戦う戦場」を変えろ!ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第18回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

 

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「総合職と同じかそれ以上の仕事をしても、一般職は評価もされない」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第2巻 キャリア15より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

一般職と総合職の間に横たわる大きな溝

転職代理人・井野が次に担当することになった北川は、大手商事に10年勤めるOLです。大企業への転職にこだわる北川は、新米の井野を見くびり、「大手の求人だけ渡してくれればいい」と言うと、さっさと帰ってしまいます。履歴書を見た海老沢は、「北川の転職は難しい」と判断。その理由は、「北川が一般職だから」というものでした。

海老沢は、井野に「最近、一般職の仕事は派遣社員などが代わってやるようになっているから、ただでさえ求人が少なくなっている。ましてや一般職から総合職への転職など、難しいのが現実」なのだと説明します。

海老沢の言葉は、北川が陥っているジレンマそのものでした。北川は、並みの総合職社員よりも仕事ができるにもかかわらず、「一般職だから」という理由でいつもアシスタント程度にしか扱われず、正当な評価を受けられないことに憤りを感じていました。

井野に対して「僕が担当なら、彼女にベンチャー起業家の社長秘書を勧める」と言う海老沢。その言葉に呆れた井野は、とにかく自分がピックアップしたリストをもとに、北川に打診してみることにしたのでした。

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どちらを選んでも、決められた価値基準から容易には抜け出せない

実のところ、一般職と総合職の違いは明確でないことが多く、仕事内容と給与が必ずしもリンクしているとは限りません。両者の区別が法律で決まっているワケではなく、決めているのは企業です。法律上、「『一般職は女性で、総合職は男性』といった区分けをしてはならない」ことになっていますが、実際はしばしば法律に抵触している例も見受けられるようです。

「一般職か総合職か?」のどちらを選んだとしても、必ずメリットとデメリットの両方があります。方法の一つとしては、「一般職と総合職のレールチェンジを容易にする」ことが挙げられるでしょう。しかし企業側からしてみれば、同じ人間の待遇を頻繁に変えることは難しいのが実情です。結局、その仕組みの中にいる限り、どこまでいってもその価値基準からは逃れられません。

これは、たとえば「高卒か大卒か?」で給料が決められている場合も同様です。もとから学歴が評価基準になっている会社に対して、「学歴と仕事の出来は関係ないはず」と抗議したところで、意味はありません。

「それ以外の選択肢」とは何なのか?

海老沢が切り出した提案は、次元が異なるものでした。つまり「一般職か総合職か?」という価値基準で判断されることなく、なおかつ「北川が一番力を発揮できる場所はどこか?」と考えたのです。それが「ベンチャー企業の社長秘書になる」というアイデアでした。

人は、たとえ現在の場所では評価の対象になっていなくても、場所を変えることによって、急に評価されるようになることがあります。それは「何と比較されているのか?」という比較対象を変える、ということです。もしくは「戦う戦場を変える」と言い換えてもいいでしょう。私自身の事例をお話しましょう。

私はサラリーマンだった19年間のうち、最初の9年間は平社員のままで、管理職にすらなれませんでした。それもそのはず。老舗の百年企業では、40歳で課長になれば同期一番の出世頭というのが常識でしたから。私の前には、管理職になるための人々の長い列が延々と続いていたのです。

ところが、私が周りから散々止められた社内ベンチャーを創業した途端に、新しい可能性が開かれました。そこには、これまでのしがらみとは一切、関係のない別世界が広がっていました。そこで私はそれまで気づくことがなかった自分の新たなマネジメントの才能と出会うことができました。

外へ目を向けてみれば、世間は広い

前回、「真のアドバイスとは『足りない“視点”を指摘してくれるか』で決まる!」ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネスの中で、「いいアドバイスとは、相手の見えていないことを見せること」だというお話をしました。結局のところ、「一般職か総合職か?」という議論は、長い期間を経て決まり切った世界を力づくでルール変更させようとしている行為です。既得権益をひっくり返そうとする世界は、TVドラマの中だけに留めておきましょう。

新しい競技でより高い評価を受けるために、視野が狭まっている人に対して、新しい世界を指し示すこと。

これができるかどうかで、その人が腕のいいエージェントかどうかが決まるのです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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