自分に自信がもてない人は「なにを」変えればいいのか? | 西條美穂(教育コンサルタント)

出会った人のほとんどをファンにしてしまう女性がいる。幼児~高校生までの共育に取り組む西條美穂さんだ。彼女は今、子どもたちとの対話を通じて、強く幸せに生きていける「心」を育む活動をしている。
人生の悩みの大部分は人間関係だといわれるが、今回は彼女がどのように人に向き合い、良好な関係性を築いているのか。周りの評価を気にしすぎず、自分に自信を持つためにはどうすればいいのか、お話を伺った。

西條美穂さん
株式会社キッズインスパイアー 代表取締役
教育コンサルタント/米国教育管理学修士(MA)

日本の中高英語教員免許取得後、米国大学院に留学し、教育管理学MAを取得。卒業後、医療と教育に取り組むベンチャーに10年間勤務。インターナショナルスクールの校長としてグローバル教育に取り組み、その傍ら医療と教育に関連する数々の新規事業立ち上げを経験。
2012年株式会社Kids Inspireを立ち上げ、「個別化」をテーマに幼児から高校生までの教育/共育に取り組む。また、企業、プレスクール、学校、塾、親子を対象にした教育コンサルタントとしても活動。
2016年より、脳神経科学、教育、テクノロジーを繋ぎ合わせ人の成長と幸せに貢献する株式会社DAncing Einsteinにも参画し、プロフェッショナルエデュケイターとしても活動中。

自分にとっての「安心・安全」とは何か?

西條さんの仕事は、子どもたち一人ひとりと向き合い、本人の支えとなる「心」を育むことと、その経験をアウトプットすること。幼児~高校生を中心に、大学生や社会人、子どもたちの親御さんとも向き合っているという。
いわゆる学習塾とは違う。英語の教員免許を持っているため、英語を教えることもあるが、基本的には対話を通じ、ときには一緒にプログラムを作りながら、共創・共育を進めている。

ホームページもパンフレットもなく、新規の生徒は口コミで集まる。両親いずれかが経営者であることが圧倒的に多く、ある親御さんは彼女のことを「子どもに対して、エグゼクティブ・コーチングのようなことをやってくれる人」と表現する。

「対話の中で意識しているのは、自分に自信を持てるようにすること。どうやったら自信がつくのかは一人ひとり違うし、同じ子どもでもタイミングによって異なりますが、とにかくそれを意識しています。
子ども本人が『そんなことでいいんですか?』というような目標を立ててもらいます。例えば、手品が好きな子なら新しい手品を一つ覚える、ゲームが好きな子なら次のレベルに上げるなど、本人がワクワクするような目標から始めるんです。私も自分でそういう目標を立てて翌週にお互い報告し合います」

自分に自信をつけることは、自己肯定感を養うことにも影響がありそうだ。
西條さんは自己肯定感をつけたいと思う人には、まず、その人の今ある状態、そのままのその人を肯定し認めるところからスタートする。何を言われても否定せず、多様な価値観があるという共通認識をつくる。そして、「導くのではなく、たくさん質問する」という。壁打ち相手として、自分の状態を認識し、何に苦しんでいるのかを言語化した上で一緒に考え、どうしたいかを確認していく。答えはいつも自分の中にあるからだ。

では、自己肯定感が低いと自覚しながら、西條さんのような壁打ち相手がいない人はどうすればいいのか。今日からできることはないか聞いてみた。

「よく言われていることですが、自分の力を発揮するには『安心・安全』をつくることがとても大事です。生徒と学びを始める際も、『安心・安全』をつくることに1年かけることもあります。なぜなら、『安心・安全』がないままでは、自分の内側からの強い興味やモチベーションが湧かず、本当の学びにはつながりにくいからです。仕事でも同じことが言えると思います。
だから、自分に自信がないと思っている人は、まず自分の『安心・安全』はどうやったら作れるのかを考えていくといいのではないでしょうか」

誰かに話してもいいし、書き出してみるのでもいいので、どんなときにリラックスしているか? どんな自分が好きか? つまり自分の『安心・安全』は何かを明らかにし、それに近づくよう行動していってみてはどうかとアドバイスしてくれた。

人間関係が上手くいかないのではなく
「相手を知る過程」と考える

人生の悩み事の大半は人間関係と言われる。
実際、転職理由の上位には、上司や同僚との人間関係に関する悩みが並ぶ。

人間関係に悩んだときにも、西條さんが勧める「誰かに壁打ち相手になってもらう」もしくは「自問自答して紙に書き出す」という方法は有効だ。

たとえば、同僚と仕事上で意見が対立し、気まずくなってしまい、「きっと自分のことを鬱陶しいと思っているに違いない。明日会社に行くのが憂鬱だ……」と感じている場合。
紙に書き出す方法であれば、まず「今どういう状態か」「なぜそう思うのか」「相手は何%くらい自分のことが嫌いなのか」などを言語化していく。

書き出していくうちに、「でも、結局相手がどう思っているかは分からない」ということに気づくはずだ(もし気づかない場合、さらに「なぜそう感じるのか」「それは何%くらい確かなことなのか」、など自問を繰り返そう)。

西條さんは「でも、人は一人ひとり違うから、ノウハウなんてないと思うんです」と語る。
実際、プリスクールで校長先生を務めていたときも、マニュアルは作らなかったという。先生一人ひとりが自分で感じて考えて、自分で決めて行動することがとても大切だと考えていたからだ。自分で考えられる子どもを育てたいなら、まずは周りにいる大人がそうなる必要がある。

「私は昔も今も『個別化』にこだわっています。一人ひとり違うし、成長して変化していくのが人間だから、毎回言うこと・考えていることが違って当たり前。そう思うと、人とのコミュニケーションがすごく楽しいんです」

さらに彼女は、たとえば相手が怒っている場合でも、人間関係が上手くいかないのではなく、「相手を知っていく過程」と認識しているという。だから、なぜ怒ったのかを考え、そこから学ぼうとするのだ。

基本的に「ちゃんと1対1で話せば、本当に嫌な人はいない」と西條さんは言う。
相手がどう思うかを想像しても仕方がない。そこは相手の領域だと考え、自分は自分のことだけに集中することが大切だ。

素の自分で向き合い、1人と多様な関係性をつくる

人間関係を築く上で、もう1つ西條さんが大切にしていることがある。
それが「1人と多様な関係をつくる」ということ。

「子どもたちが感じていること、悩んでいること、ワクワクすることを何でも話してほしいと思うので、『名前のない関係』をつくりたいと思ったんです。
私が生徒に対してずっと『先生』だったら、『勉強やりたくない』とか『好きな人ができた』なんて言いづらいですよね。
だから、私が先生のこともあれば、生徒から教わる=生徒が先生になることもあります。あるときは友だちのような関係になることも」

これは大人でも同じだという。
たとえば、会社の先輩と話す際、自分が常に後輩として「先輩、頼みますよ」と言っていたら、先輩は「いつも頼られる先輩」でいなければならない。
西條さんは、先輩に対するリスペクトは当然持ちつつ、違う関係性もつくることを意識しているという。

具体的にどうすれば「1人と多様な関係」が作れるのだろうか。
ポイントは「自分の役割や肩書を取っ払って発言すること」だという。

西條さんは会社員時代も、社長に対して常に部下でいるのではなく、「最近どんなことが辛かったんですか?」「大変なこともありますよね」など、相手の感情面にも触れるような会話をするようにしていた。
その際に「社長でもそんなことがあるんですか!」と言うのではなく、「それは腹が立ちますね」など1人の人間としての発言を意識していたという。

このやり方は、「子どもに教えてもらったんですよ」と西條さんは微笑む。

「会社で取締役だったけど、3歳の子どもにとっては役職や年収はどうでもいいですよね。ただ、『僕・私にとって、あなたは信用できる人ですか?』ということを、すごく突きつけられるんです。『プリスクールの校長先生だから、こういう風に振る舞わなきゃ』なんて、子どもたちには関係ありません。
そういうことを一切考えず、あらゆる肩書や外に向けた着ぐるみのようなものを全部脱がされた『裸の自分』で、目の前にいる子どもとの関係に集中しなければ、いい関係は築けません」

常に「『私』としてどうなのか?」を突きつけられるという経験が、彼女の人付き合いのベースになっているのだ。

「内に誇れる自分」をつくる

西條さんは独立する前後の頃から、意識的に「自分と向き合う時間」を増やすようにしていた。
会社に所属していると、どうしても「上司に認められる自分」というように「外に誇れる自分」を求め、そうなるために時間を割きがちだ。
もちろん、それが悪いことではないが、「外に誇れる自分」は何を・誰を・どこを基準にするのか、ブレやすい。さらに評価の仕組みそのものが変わる可能性もあるため、長期的・持続的な評価は得にくい。

一方、「内に誇れる自分」を追求する場合は、ブレることが少ない。それは自分の幸せにつながるのでは、と西條さんは考えている。

「どこに基準を置くか考えたとき、やっぱり自分の内だと思ったんです。内に誇れる自分をつくるためには、時間をかけて自分のことをよく観察し、知る必要があります。だから、自分と向き合う内省の時間を増やしました」

外の評価を気にすることも必要だが、内の評価もバランスよく大事にするのがポイントだ。
では、具体的に「内に誇れる自分」は何をすれば見えてくるのだろうか。

何かずるいことをして対外的な評価を得ても、自分では内に誇れないと分かるはずだ。
だから、まずどういう自分だったら自分に誇れるか? を考えてみよう。

「『今日はこんな自分が好きだったな』、『○○をグッとこらえた』など、些細なことでも大丈夫。そういう自分を貫いていったとき、そのことを自分は評価できるし、同じ部分を評価してくれる人とさらに関係を深めていけばいいと気づいたんです」

西條さんは定期的に、「自分に誇れる自分」だったか振り返っている。その中で、自分が幸せを感じる基準や方向性に気づいたのだという。
もちろん、「内に誇れる自分」は一人ひとり違う。しかし、それを大事にしていくことが自分の幸せにつながる可能性は高い。

最後に、今日からできることとして、西條さんはこんなアドバイスをくれた。

「自分の好きなことはもちろん、違和感のあることや、嫌だと思うことでもいい。『いま緊張している』『力が全然発揮できない』みたいなことでも構わないので、書き出してみること。
自分の心のつぶやきを、一つひとつ大切にしてほしいんです。そうすることで、もっと自分のことを理解でき、何かにつながっていくはずだから」

書き出す=自分の頭の中から出すことで、客観的に自分を見つめる効果もある。
「内に誇れる自分」を知ることで、外からの評価に惑わされにくくなるはずだ。
ぜひ今日からノートとペンを持って、自分との対話を始めてみてほしい。

文・筒井智子 写真・壽福 憲太

Pagetop