「相手の話を真に受けない…」それがデキる人に共通する“聴き方”の極意ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第14回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「人の悩みはその時の気分で変わる」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア19より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を排出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

1度や2度の話し合いで「相手を理解した」と思うのは間違い

井野が次に担当することになった、中堅工作機械メーカーの設計エンジニア・斉藤。斉藤のために、井野は営業の田口に「50代エンジニアの職があるかどうか」を訪ねます。すると、田口からは「相当厳しい」との返事が。

田口から「そもそも、斉藤が本当に転職したいのかどうかを、まずは確認したほうがいい」とのアドバイスを受けた井野。メールで呼び出すと、斉藤は「メールに『本当に転職したいのか?』と書かれていてドキッとした」ことを打ち明け、自分の気持ちを正直に話します。「今の生活自体に不満はない。でも時々、『誰かに客観的に自分の仕事を評価してもらいたい』という思いが頭をかすめるのだ」と。

その話を聞いて、感動した井野は「必ずいい仕事を紹介する」と伝えます。ところが、海老沢から「それだけで相手の本心が分かったと思うのは間違いだ」と叱責されます。「おそらく向こうは、この次、会えばまた違うことを言ってくる。人間とは本来、そんなに意志が強い生き物ではない」と言うのでした。

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人が転職しようと思う理由は、ほとんどが「その場の思いつき」

多くのビジネスパーソンは、毎日同じ場所に通い、同僚も顧客も同じ人、ということが往々にしてあります。日々、同じことを続けていると、人はやがて「この人はこういう人だ」「これはこういうものだ」といったように認識がパターン化していきます。

しかし、そもそも人間とはそんなに単純なものではありません。調子がいい時もあれば悪い時もあり、同じ事象に対しても、いつも同じ反応をするとは限りません。もともと、人の気分はちょっとしたことで変わりやすいものです。

転職活動をする場合も、理由の多くは、やはり「その時の気分」の延長が多くの部分を占めています。たとえば「上司に怒られた」とか「あの人とはもう一緒に働きたくない」「どこかにもっといい職場や仕事があるのではないか」等々。そのほとんどが、実際は、自分がもっているキャリアビジョンや理想のストーリーとはまったく無関係であることが多いのも事実です。

そして、今回登場した斉藤氏を含め、その場の思いつきの根源にあるのが、「誰かに認められたい」という承認欲求です。いつも同じ場所にいると、どうしてもお互いの評価は固定化してしまいがちです。
それに抗う唯一の方法は、新しい評価者や評価軸を増やしていくこと。これが自分の評価を常に客観的に保つことであり、市場に対して緊張感を持ち続けることでもあります。

他人の話を聞くコツとは「相手の話を真に受けない」こと

私は仕事柄、自社の社員や顧客からの相談事など、他人の話を聞く機会が多々あります。自分の経験から申しますと、他人の話を聞くコツとは、「相手が言っていることを真に受けない」ということです。たとえ相手が「自分は本心を話している」と思っていたとしても、本当に本心を話せているとは限りません。人が自分の思っていることを言葉に表現する、というのは、想像しているよりもずっと難しいのです。

一つ、事例をお話しますと、クレーム処理などが分かりやすいでしょう。私はかつて会社員時代に興した社内ベンチャー事業で小売チェーン店を経営しており、お店で時々クレームを受けることがありました。小売のクレームとは、たいていは商品から始まります。顧客は「自分の想像と違った」「商品の調子が悪い」などといった理由で、不安になってお店にやってきます。ところが、それが「店頭にいた店員の対応が気に入らない」という単純な理由から、人のクレームへと変わってしまうことがありました。この時に起きていることがまさに、顧客の言葉尻だけを拾って本心を分かろうとしていないということが原因です。

万一、そこを見極められずに「交換します」「返金します」と言っても、顧客の不満は解消されません。大事なことは、顧客の言葉を額面通りに受け取るのではなく、そこから「相手の本音を推測」し、そこにどのようにアプローチしていくかということがプロのなせる技です。

仕事や人間関係を円滑にする“話の聞き方”とは

今回の話でお伝えしたいのは、「人は必ずしも真実を話しているとは限らない」と言うこと。この話をご自身に応用するのであれば、誰かと話をする時は、「この人が困っていることは何だろう?」「本当に言いたいことは何だろう?」という点に意識を集中することです。

以後、誰かと話をする際は、あなたもぜひ、ここに注意を向けるようにしてみてください。仕事や人間関係を前進させる上で、必ず役立つに違いありません。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は39万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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