デキない人は仕事がうまくいかないワケを他人のせいにするーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。三田紀房先生の『マネーの拳』、第8回目をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「商売をするなら絶対に人のせいにするな。失敗はすべて自分の能力不足のせいだ」

(『マネーの拳』第2巻 Round.12より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

花岡が命運を賭けた商売とは?

縫製工場の元社長・西野の借金を肩代わりした花岡は、ともに西野の縫製工場を訪れます。ところが、行ってみると工場はもぬけの殻。実は、西野に愛想をつかして出て行った妻が、西野が失踪したと知って工場に戻り、会社の資産であるミシンや縫製機械をすべて売り払ってしまったのでした。

途方にくれる花岡と西野。「工場は畳むしかない」と諦めて外へ出ると、取引先の社長にばったり出くわします。社長から「何とかTシャツを300枚お願いできないか」と言われ、口ごもる西野。そこへ、花岡がすかさず「ご注文ありがとうございます!」とその注文を引き受けてしまいます。

あぜんとする西野に向かって、花岡は「今すぐ機械を買い戻し、明日には工場を稼働できる状態にするように」言い渡します。こうして、自身のビジネスの命運をアパレル業界に賭けることにしたのでした。

事の顛末を、塚原会長に伝える花岡。「アパレル業界は斜陽で、ライバルも多い」ことを心配していた花岡でしたが、意外なことに、会長の反応は好意的なものでした。「モノを作って売る、これこそ商売の王道だ」と言う塚原会長。「人が欲しいと思っているものを作って売れば、どんな時代でも必ず売れる。売れない理由を景気や消費のせいにするのは愚か者のすることだ」と語るのでした。

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「起業した会社の半分が20年後には存在していない」という現実

以前、「『残念な人は、失敗の原因を“自ら”引き起こしている』ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス」のところで、商売の三原則として「設備投資があまりかからないこと」「売り上げが季節変動を受けないこと」「商品のロスが少ないこと」の3つについて説明しました。

しかし、花岡が始めたアパレル事業は、この三原則のどれにも当てはまっていません。つまり初期費用が必要な上に、季節によって売り上げにバラツキが出ます。商売を始めたばかりの者にとっては、ビジネスのサイクルが回り始めて、お金が潤沢に入ってくるようになるまで会社が持ちこたえられるかどうかが、一つの山場となります。

中小企業庁の「2016年版 中小企業白書、小規模企業白書について(概要)」によると、「創業20年後には、約半数の企業が事業を畳んでいる」とあります。果たして、花岡のビジネスは成功するのでしょうか?

失敗の要因を外に求めると、改善にはつながらない

今回、「本日の一言」に選んだ「失敗を他人のせいにするな」というこの言葉は、実際は商売人だけにとどまりません。投資の世界でもまったく同じことが言えますし、本来は、経営者やマネジャーこそ必ず心に刻むべきものです。人の上に立つ者は、自らを厳しく律しない限り、部下に対しても示しがつかないことは、誰もが実感していることと思います。

私たちは普段、商売や仕事がうまくいかない原因を、つい自分の外に求めがちです。たとえば「経済が低迷している」「海外製品のほうが安い」「部下が言うことを聞かない」等々。そうやって言い訳をしてしまうのは、私たちの中にもともと備わっている自己防衛本能が働いているせいなのかもしれません。

実は、「失敗の原因を外に求めるべきでない」のには明確な理由があります。
それは「外の要因は、自分では変えることができない」からです。実際、失敗からは多くのことが学べます。それが自らの失敗からなのか、他人の失敗からなのかは別として。
たとえ本当に向うが100%悪いと思ったとしても、「あいつが悪い」と言っているだけでは、いつまで経っても何の学びにもなりません。

「自分で変えられないことで悩まない」

基本的に、人が変えることができるのは自分の行動だけです。仮に、部下を見て「あいつには何度、同じことを言っても効き目がない」と言うのであれば、そんな相手でも動ける仕組みを見つけるつくるほうが建設的です。

そもそも、他人を口先だけで無理やり動かそうとしても、よい結果は望めません。いわゆるボス・マネジメントは、狭い範囲の短距離走でしか結果を出せないということは、数々の現場事例が証明しています。

何を言うかより、誰が言うか。

常日頃より、相手が「この人の言うことなら喜んで聞こう」と思える関係づくりをしておくことが、長生きするマネジメントです。

結局のところ、人も環境も与えられた条件の一つに過ぎません。商売がうまくいかないのを、何かのせいにしてうさを晴らすよりも、ここはあえて自分の能力不足、指導不足だと捉え、「どうしたらこの条件下でもより良い成果が出せるのか?」と思案することで明るい未来が拓けてきます。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が13刷となっている。著作累計は35万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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