東大→マッキンゼーのパンツ屋社長が勧める「はみ出す生き方」とは

東京大学卒業後、マッキンゼー、レアジョブ、ライフネット生命を経て、現在メンズアンダーウェアブランド「TOOT」の社長を務める枡野恵也さん。

2年前の取材で桝野さんは、この一見すると一貫性のない職歴を振り返り、「キャリアは人生におけるグリコのおまけのようなもの。徹底的にやりたいことをやり、楽しみ尽くしたい」という独自のキャリア観を語ってくれました

そんな枡野さんはこのほど、自分が進むべき道を見つけるためのノウハウをまとめた著書『人生をはみ出す技術』(日経BP社)を出版、話題を集めています。自身の経験を交えながら、人生をはみ出し、自分らしく働くことがこの時代を生き抜く術だと説きます。
今回はその中から、枡野さんの「キャリアに関する考え方」の一部を抜粋し、ご紹介します。

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自分の「目標」を重視しつつも、「ご縁」も大切にする

枡野さんは、キャリアの築き方について「大きく2つの考え方がある」としている。
一つは、最終的な「目標」を決めて、そこから逆算してキャリアを積み上げていくという考え方。もう一つは、「ご縁」を大切にして、その都度自分が面白そうだと思った仕事を選択していくという考え方だ。

ただ、「どちらの考え方にも一長一短がある」とのこと。前者の場合は、目標がはっきり決まっていても時間とともにやりたいことが変わってくることもあり、その場合はどう軌道修正するかが問題になる。後者の場合は、行き当たりばったりの側面があるので、それまで自分が培ってきたスキルが活かせない支離滅裂なキャリアになる恐れがある。

枡野さんは、この2つの考え方をハイブリッドにした「第3の道」を勧めている。

「目標」から逆算して、どんなスキルを身に着けるべきかを考えるものの、その「目標」自体は大まかにしておく。それにプラスして、「ご縁」も重視して選択肢を検討する…という方法だ。

枡野さん自身、学生時代から「国際的に活躍したい」「社会の問題を解決したい」という大まかな目標を持ち続けているが、転職を含めた偶然の出会いが「パンツブランドの社長」という仕事に導いてくれた…と振り返る。

マッキンゼーでは国際的な舞台での問題解決の仕事に携わることができ、その経験から「世のなかを動かすのはビジネスだ」と気づいて、オンライン英会話サービスを手掛けるレアジョブに転身。法人事業を立ち上げ1年で黒字化させた。その後、転職したライフネット生命では、海外展開の検討段階から携わることができ、「目標につながる部分が大いにあった」とのこと。

そして、これらの経験があったからこそ「TOOT」との出会いにつながったという。TOOTとの出会いは、「ご縁」。自分が「できること」と「求められること」が一致したから、経営後継者として声がかかったのだと実感しているという。

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枡野流・ご縁のつかみ取り方とは?

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前述したキャリアの築き方のうち、「目標」から逆算してキャリアを積み上げていくという方法は比較的真似しやすいが、「ご縁」を大切にするという部分は、「ご縁なんてどうやって築いていいかわからない」と感じる人が多いだろう。

そこで枡野さんは本書の中で、自身の経験をもとにした「ご縁をつかみ取る方法」を指南している。

●外側にアンテナを張る

自分が普段、仕事をしている範囲の「外側」にアンテナを張り、自分が興味を持てそうなものがないかを探すといい。面白そうなものが引っ掛かったら、それにとりあえず首を突っ込んでみる。仕事とは直接関係がなさそうでも、後から自分のキャリアにつながっていく可能性がある。

枡野さんはレアジョブ勤務時代、海外での社会貢献活動に興味を持ったことをきっかけとして、貧困問題の解決に取り組むNPOにプロボノとして参加。その活動を通して知り合ったのが、ライフネット生命現社長の岩瀬大輔氏。岩瀬氏とアフリカに視察に行くなど行動を共にする中で、「一緒に働かないか」と声を掛けられた。「NPOの活動は本業ではないが、それを通じて次の本業となる会社に出会えた」という。

●選択肢を並べてリスク・リターンを検証する

一度きりの人生なのだから、自分がやりたいことに思い切って挑戦することは大切。ただ、だからといってリスクばかりが高く、リターンが小さい仕事は、やはり避けたほうが無難だという。

「TOOTの社長に」と声がかかった時、枡野さんはほかに数社からオファーを受けていた。そこで各オファーについて、会社の倒産、業績低迷による給与低下、得られるスキルが偏っていて思うように成長できないなどといった「リスク」と、給与などの待遇、働きやすさなどの環境面、やりがいや社会的意義などといった「リターン」を分析。

その結果、TOOTは「すでに経営は軌道に乗っており、固定ファンもいる。そのブランドをさらに飛躍させる役割を担うというのは“ミドルリスク・ミドルリターン”だ」と判断し、TOOT社長への転身を決断した。

多くの人は、今いる場所を「ローリスク・ローリターン」と捉えがちだが、現在は、どんな大企業でも安泰ではないし、知らないうちに「その会社以外では通用しない人材になってしまうリスク」がある。しかし、自分で起業するのはまさに「ハイリスク・ハイリターン」であり、誰もがチャレンジできるものではない。

その点、「ミドルリスク・ミドルリターン」の選択肢はチャレンジングであり、かつリスクもある程度抑えられる魅力的な環境といえる。20代のうちに仕事を通じて意識して経営のスキルを身につけ、30代で優良な中小企業の後継者になるのもライフプランとして面白いと、枡野さんは勧めている。

●ときに「流れ」に身を任せる

選択肢を並べてリスク・リターンを検証した時に、「この選択肢は先がどうなるか見えないけれども、面白いことになりそうな気もする…」と悩む場合もあるだろう。そんなときは思い切って「流れ」に身を任せるのも、いいご縁をつかむ方法だという。もし流れに乗って選択した結果、「自分に向いていなかった」と気づいたとしても、次はもっと自分にフィットした環境を選べばいいだけ。そして「飛び込んだからこそ、見える世界がある」という。

枡野さんにとって「TOOT」は、まさに「思い切って飛び込まないと分からない世界」だった。グローバル化を進めることで、ブランドを飛躍させたいと考え飛び込んだが、TOOTならではの立体裁断による高いフィット感は、職人による高度な縫製技術によるものだと気付き、「始めに手がけたのは、業務委託先だった工場をM&Aで自社工場にすること」だったという。需要に供給を追いつかせるためには、量産体制を整えなければならないが、TOOTのフィット感はベテランの職人による高度な縫製技術によるもの。時間をかけて人を増やし、製品に愛着を持ちながら丁寧に製品を作れる人材を育てる必要があると気付いたという。

「入社前は、ここまでモノづくりに深く入り込むと思わなかった」という枡野さん。飛び込んでみたことで、予想していなかった新たなスキルや視点が養われたのだ。

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「ベスポジパンツ」社長の「はみ出すススメ」に刺激を得よう

独自の立体裁断で、どんな人が履いても「ベスポジ」に収まることで有名な「TOOT」。その社長が指南する「はみ出すススメ」は、今後のキャリアに悩む人たちにとって大きな刺激になりそうです。

ここで紹介した枡野さんならではの「ご縁のつかみ取り方」は一部であり、本書ではさらにさまざまな方法が紹介されています。また、異色ともいえる自身のキャリアの変遷や、キャリアを自分らしく生きぬく方法、「はみ出す生き方」が求められている理由など、自身の経験を交えながら解説しています。「このままこの仕事を続けていていいのだろうか」「上司や先輩を見ていても自分の将来がイメージできない」などとモヤモヤを抱えながら働いている人は、手に取ってみてはいかがでしょうか?

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参考書籍:『人生をはみ出す技術』/枡野恵也/日経BP社

EDIT&WRITING:伊藤理子

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