【俺の行きつけ】金儲けよりも“人儲け”。五反田の串焼き屋「日南」

 人間関係でつまづいたとき、誰かにエネルギーをもらいたいとき、そして仕事のヒントを得たいとき…そんな時に気軽に飲みに行ける「行きつけ」を持っていますか?

【俺の行きつけ】金儲けよりも“人儲け”。五反田の串焼き屋「日南」_イメージ画像1

 料理とお酒が美味しいのはもちろんのこと、雰囲気が良くて、ふとした瞬間に仕事の“気づき”をもらえる場所…なんて最高ですよね。リクナビネクストジャーナルでは、いろんな業界の第一線で活躍するビジネスパーソンの「俺の行きつけ」をストーリー形式で紹介します。第1回は新規事業のコンサルティングに従事する坪井聡一郎さんの行きつけ。東京・五反田駅にある串焼き屋の「日南」です。

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<今回紹介してくださった方>

坪井 聡一郎(つぼい そういちろう)氏

一橋大学大学院商学研究科修了。2004年株式会社ニコン入社。ブランディング、コミュニケーション、消費者調査、デジタルカメラのプロダクト・マネジャー等を歴任。2012年より新事業開発本部。2014年、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構より「センシングによる農作物高付加価値化」の研究委託を受け、コンソーシアムの代表研究員を務めた。経産省主催の「始動Next Innovator2015」のシリコンバレー派遣メンバーであり、最終報告会の発表者5名にも選抜された。現在、大阪イノベーションハブにて「OIH大企業イントルプレナーミートアップ」を主宰。

『成功をつかむ店』日南

 五反田駅のゆうらく通りにいくと、いかがわしい案内所が立ち並ぶ。本当にこの場所にあるのかと焦ったが、路地裏にそれると赤レンガの「日南」はあった。店内に入って驚いたのは、壁から天井までお客さんの書き込みがびっしりあったこと。坪井さんいわく「日南」は、大企業の経営者や野球選手、俳優、女優が有名になる前から通うお店だそうで、界隈では『成功をつかむ店』と言われているらしい。

お店の一角には、赤いシャツを来た男性の写真とおちょこと野球ボールが数個飾られている。

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 店主の貴和子さんにご挨拶し、お話を伺った。写真は数年前に他界した「日南」の前・店主の小夫家 良晴(こぶけ よしはる)さんだそうだ。その笑顔からは想像できない口ベタだそうで、坪井さんは新入社員のときに当時の先輩に連れて来られてから、かれこれ25年通っているが、二言三言くらいしか言葉を交わしたことがないという。今は奥さんの貴和子さんがお店を引き継いでいる。(「日南」の名前の由来も、貴和子さんの出身地が宮崎県日南市であることに由来している。)

 壁と天井の書き込みについて伺うと、貴和子さんは、「この店はお客様に恵まれたお店です」と話してくれた。

「この店では名刺交換もしませんし、肩書きも関係ありませんが、成功されている方の雰囲気はわかります。よくお店にこられていた方が、この前ニュースで社長に就任されたことをみて驚きました。社長になっても昔と変わらず謙虚でいらっしゃいます。謙虚で周りに気遣いができる方は、部下にも慕われて成功されていますね。

 何十年もお店を続け、たくさんのお客様と対応してきた貴和子さんの言葉は重たかった。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

頼んでいない料理がテーブルに。アルバイトにも裁量を与える、日南の接客ポリシー

二階に通していただき、料理を頼む。まずは日南の定番である牛ハラミ串焼 ポテトサラダ付き(800円)。それから、日南オススメの牛ナンコツ串焼き(400円)や牛タン串焼(1400円)。お酒は日南市の焼酎製造蔵元酒蔵・王手門の超不阿羅王(チョウ・ファラオ)をボトルでいただく。

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△牛ハラミ串焼き。複数人のお客様に対しては、ひとり分ずつに取り分けて提供するのだそう。

牛ハラミ串焼がとどく。脂がのってやわらかくて美味しい。さすが看板料理なだけある。他の料理もいただいていると、頼んだ覚えのない料理がテーブルに並んだ。

店員「こちらはアゴ(とび魚)の煮干しです」

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私「あ、あのたぶん頼んでいないですが」

店員「こちらは店からのサービスになります」

私「!!」

 なんでも、団体のお客様が入っていてゆっくり対応できないので、お店のはからいでご用意してくださったとのこと。貴和子さんに聞くと、「日南の二階は、一階とくらべてスタッフの数が少ない分、ゆっくり接客できない。そこでお客様の状況を鑑みて、アルバイトでも料理を持っていって良い裁量を与えている」とのこと。

 お肉を食べながら、またアゴを少しかじるとお肉の味が口の中で広がっていく。気遣いも染み渡る。

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金儲けよりも“人儲け”。お店を作っているのはお客様。

 小夫家ご夫婦は、お店を通じてさまざまなお客様と出会うことが何よりも喜びだそうだ。「日南」は22時ラストオーダーと、居酒屋にしては閉店時間が早いが、お客様と意気投合したときはそのまま朝まで飲むこともあるそうだ。それでも閉店時間以降の飲食代については受け取らない。

 「金儲けよりも“人儲け”。営業時間外はお客様ではなく、ひとりの人間として向き合っているのでお代はいただきません。こうして何十年間もお店が成り立っているのは、ひとえにお客様のおかげです。お店を作っているのはお客様ですから、何よりもお客様との出会いとお付き合いを大切にしています。(貴和子さん談)

 スタッフも、日南のお客様に対する姿勢に共感して働いている。良晴さんが亡くなったあとに日南に入った福田 厚さんは、住まいが遠くて終電で帰れない可能性があるため、一度面接で断られたそうだ。その面接でサンダルをお店に忘れ、あらためて取りにいったときに「遅くなる日は自転車で通うので働かせてほしい」と嘆願し日南で働くことになったそうだ。

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△1階カウンターで接客と調理を行う福田 厚さん

 以来、雨の日以外は夏も冬も自転車で通い、働くきっかけとなったサンダルはボロボロになっても修理しながら履いている。良晴さんと会ったことはないが、墓参りにも行かれるとのこと。

貴和子さん「言ったことを実行し続けるスタッフを誇りに思います」

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 ある調査によると、正社員の職場・仕事のストレス原因として最も影響が強いのは「職場の人間関係」だそう。確かに仕事はいろんな利害関係を持った人たちと仕事をしないといけないため、軋轢は大なり小なり生じるものだ。

 そんなときは日南に行ってみてほしい。ひとりでしっぽり飲むもよし。後輩を連れて行って、後輩の相談に乗るもよし。きっと日南に行けば、仕事をする上でなにが大切かが見えてくるはずだ。オーナーとスタッフとお客さんからやさしい雰囲気が出ている。金儲けよりも人儲け。明日からまた仕事ががんばれそうだ。

店名  : 日南 (にちなん)

電話番号: 03-3449-4425

住所  : 東京都品川区東五反田1-13-6

営業時間: 18:00~22:00(LO)

定休日 : 土曜・日曜・祝日

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