過労死認定基準にあたる残業80時間について

 企業に勤めるビジネスパーソンには決められた就業時間があり、その時間は会社にいて仕事をする必要がありますが、決められた就業時間の定時を超えて残業することも珍しくありません。残業することで残業手当がつきますので収入が増えるメリットはありますが、働きすぎは身体に悪影響がありそうです。そこで、残業と健康の関係、残業に関する手続きや労働条件についてお伝えします。

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自分の残業時間を確認しよう

 残業について考える場合、まずは自分の残業時間を正しく把握することが大切です。残業時間は毎月もらう給与明細や勤怠管理システムを見ればすぐにわかります。一般的には、平日の就業時間終了時刻が17時で、その後、法定の休憩時間を除いた時間から退社時間までの分が残業時間となります。深夜の時間帯については、残業手当の割り増し率がアップしますが、残業時間を把握する上では深夜とそれまでの時間帯を区別する必要はないでしょう。休日出勤も残業時間として扱います。平日の21時まで残業すると約4時間弱の残業になりますが、休日出勤して21時まで働くと、残業時間は約12時間にもなります。会社を入退出するデータがそのまま勤怠管理システムに連動していれば問題ありませんが、自己申告で勤怠実績を記入する形態をとっている会社の場合は、申告した残業時間と実際の労働時間が一致しないこともありえます。また、あってはならないことですが、残業したにもかかわらず記録に残さないでサービス残業扱いにしている残業時間がある場合は、公式な残業時間にサービス残業分を加算した時間を実質的な残業時間として把握するようにします。残業時間を正しく把握するためには、サービス残業を含めてカウントすることがポイントです。実際の残業時間の把握は、少なくとも6カ月は続けてみることをおすすめします。

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80時間以上の残業は身体への影響も大きい?

 働きすぎは身体によくないということはわかっていても、どの程度からを働きすぎというのでしょう?もちろん、働いている人の精神状態や健康状態、仕事内容によっても変わってきますが、労働者災害補償法の過労死認定基準の時間が参考になります。労働者災害補償法は一般的に労災と呼ばれていて、仕事中のケガや病気についてサポートしてくれる社会保険です。そのため、働きすぎで体を壊した場合は、労災の給付によって治療や所得補償が行われます。このときに、月45時間、月80時間、月100時間の3つ時間が働きすぎの残業時間の目安として使われています。45時間は、この状態が6カ月以上続くと健康に悪影響が出る可能性があるといわれている残業時間です。健康障害発症の2カ月から6カ月の前に80時間を超える残業を続けていた場合は、働いたことと健康障害の因果関係が認められる可能性があります。つまり、月80時間を超える残業を数か月続けていて死亡した場合、過労死と認定されて労災の補償が得られる可能性があるということです。健康障害が発症する1カ月前から月100時間を超えて残業していた場合も、同様に労災が認められる目安となるラインです。自分の残業時間を把握してみたら、月80時間に近かった、月45時間を超えていたという状況であれば、残業時間を減らす努力をした方がよいでしょう。一生懸命働いて収入を得たとしても、身体を壊してしまえば元も子もありません。働きすぎかどうかについては、労災の残業時間の基準を目安にするとよいでしょう。

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違反しているのであれば、労働環境を見直そう

 自分の残業時間を正しく把握してみたらどう考えても働きすぎだという状況だった場合は、すぐに残業時間を短縮し労働環境を改善する必要があります。しかし、残業というのは、自分で勝手にするものではなく、会社の指示、具体的には上司の指示により行うものです。勝手に短くすることは難しく、上司と相談して残業時間を短くする必要があります。しかし、労働環境や過労に関して意識の低い会社の場合は、残業に関して労働基準監督署に必要な書類を提出しなかったり、実態と違う残業協定の提出を行ったりしている悪質なケースもありえます。会社が社員に残業してもらうときは、労働基準法36条にもとづく労使協定、通称サブロク協定が必要で、この協定を労働基準監督署に提出することになっています。これによって、労働基準監督署が働きすぎを監視することになります。そのため、労使協定が守られていないような状況が発生し残業時間が長くなっている場合は、まずは上司や人事責任者に相談し、それでも労働環境の改善がみられない場合は、労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。労働基準監督署は、労働基準法の番人の役割を負っていますので、サブロク協定を超える残業が行われていると知れば、その会社に残業時間を減らす指導を行ってくれるはずです。自分の健康と生命を守るためには、上司に伝えても労働環境が改善されないからとあきらめて長時間労働を続けてしまうのではなく、健康障害のリスクをしっかり理解した上で対処することが大切でしょう。

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