リブセンス桂大介が語る、フリーランスの経験で築いた特殊な精神的構造と美学の話

CTOを務めたあと、Webマーケティング部門を立ち上げてきたというリブセンスの取締役・桂大介氏。今回は桂氏に、結果を出したいエンジニアに必要な「実力出しきり力」について、語っていただいた。

フリーランスで身に付けた「厳しさに対する免疫」

リブセンス創業時は、エンジニアとしてコーディング業務に徹していました。その後、4~5年のCTO経験を経て開発チームを他のメンバーに託し、Webマーケティング部門の立ち上げに取り組みました。

リブセンスに参画する前は、個人事業主としてフリーランスで仕事をしていました。とはいっても高校生の頃の話です。当時はホームページ制作バブルの時代で、中小企業が自社のホームページを作り始めた頃でした。ですので、高校生の私にも仕事が回ってくるような状況だったんです。孫請けとして、制作会社が引き受けた案件のプログラム部分だけを受託開発していました。

フリーランスというと、自由な印象を受けるかもしれませんが、実はすごく大変なんです。例えば企業であれば、インフルエンザにかかると1週間休みましょうとなります。しかしフリーランスの場合は自分しか作業者はいないので、風邪は絶対にひけません。1週間の休みは、仕事がなくなることを意味します。

そのような環境で仕事をしていると、良くも悪くも「特殊な精神構造」が築かれていきます。「厳しさに対する免疫」のようなものですね。当時の経験は今でも役に立っています。

株式会社リブセンス 取締役 桂 大介氏
中学生の頃からプログラミングを始め、高校時代にはフリーランスとして受注委託の仕事を請け負う。大学時代にリブセンス代表の村上氏と出会い、共同で創業。CTOの役回りやマーケティングの部署立ち上げを経て現職

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自信がないと、実力も30%しか出せない

フリーランス時代に学んだこととして、厳しい環境での結果の出し方があります。例えば、「空中を走る車」を想像してみてください。私はそのような車を想像しても、創りたいとはあまり思えません。

なぜなら「そんなものは創れない」と心のどこかで思っているからです。創ることに自信が持てない、ゆえに情熱も湧いてこない。ある程度の自信がないと、情熱も湧いてこないのです。

結果を出すためには、自信を持つことが大事だと思っています。その大切さは誰もが思っていることですが、自信を持てるようになるのはなかなか難しいことです。

自信というと、根拠が求められるイメージがありますが、まずは根拠のない自信が大事なのではないでしょうか。人間は、誰もがそれなりの能力を備えて生まれてきていると思うんですね。

ですので、誰もが自分なりに納得感を持って、わがままなくらいに自己主張しても、意外に周囲は承認してくれるんじゃないかと。逆に自信が持てていない状況だと、何をやるにも30%程度の実力しか出せず周囲からも承認されない。

自信を持たず踏み出してみて力が発揮できないのであれば、根拠はなくても良いので自信を持つことから始める。そして第一歩を踏み出してみることが大切だと考えています。

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美学が自信を、そして結果を生み出す

自信は、美学や美意識に近いものだと捉えています。根拠のない自信も、美学や美意識、自分なりの価値観が生み出すものだと考えています。

例えば、作家さんは「自分で本を書ける」とか「こんな本が欲しい、書きたい」という気持ちがモチベーション。誰かに承認されたり、多数決でその作家さんが最も良いと評価されたりしなくても、本を書こう、書きたい、と思っているはずです。

それは自分なりの価値観、美学や美意識がそうさせているんじゃないでしょうか。

エンジニアで「創りたいものが思い浮かばない」方は、本当は何かあるのに気づいていないだけなのでは?と感じています。誰もが、もっと世の中のものを改善したいはずです。

しかし、本当に改善出来ると思って意識を働かせるのか、それとも無意識のままその気持ちを忘れ去ってしまうのか?ただそれだけの差で、改善する意識に気付けていない方がたくさんいらっしゃいます。例えば、車について考えてみます。

実際に車の構造を知っていれば、課題の捉え方も大きく変わるはずです。車の構造を知らないと、そこにある課題に気がつかない。またその課題に、そもそも取り組んでみようとは思えない。

知っているか知らないかで、課題を捉えられるかどうかも大きく変わります。興味があること、アプリでもゲームでも動画でもなんでもいい。自分の好きなものを突き詰めて考えていけば、それで良いと思います。

興味があるからこそ、その課題を解決したくなるし、細部まで追求したいと思えます。情熱というと違う気もしますし、好奇心というと薄っぺらい。美学や美意識のようなものが、自信に繋がってくるのです。

インスピレーションが人間を醸成させる

美学や美意識を持つためには、ある種の刺激が必要です。先日、金沢の21世紀美術館に行ってきました。すごいアートを観ると「そういえば、これやりたいな」と思えてくるんですよね。

別に油絵を描きたいとかそういったことではないのですが、日常で触れないものに刺激されることによって、ふと自分のやりたいことを考えるきっかけとなりました。

リブセンス内でも、そういった刺激を受けられる機会があります。社内では「勉強会文化」が醸成され、仲間同士でお互いに刺激し合っています。

また、Innovation Adoption Supportという制度もあって、3Dプリンターやオキュラスリフトなどの最先端のデバイスの購入補助を、会社として実施しています。別に、業務では全然使わないんですよね。

使わないのですが、そこから受けるインスピレーションはとにかく各々の創造力を醸成します。大切なのは、人の創造性を刺激するかどうかだと。実力を出し切るためには自信が必要です。

その自信を付けるためには美学が重要です。その美学を見つけるために、創造性を刺激する機会や習慣を作ってみてはいかがでしょうか?実力を出し切れるようになってくると思います。

※本記事はエンジニアのためのTechLife Magazine「motech」(※2014年12月9日掲載)からの提供記事です

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