70万円で世界一周したら人生かわった!TABIPPO代表に聞く「世界一周のススメ」

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若者にとって世界一周旅行や、ひとり旅をすることは、10年前と比べて珍しいことではなくなりました。書店では世界一周に関する書籍や写真集が数多く並び、世界一周経験者の体験談を聞くイベントも頻繁に開催されています。

そんな“世界一周ブーム”や、”旅ブーム”の立役者が、“世界一周団体TABIPPO ”。毎年5,000人以上の旅好きが集まる、旅をテーマにした日本最大の野外フェス「旅祭」の運営や、ウユニ塩湖本格写真集『UYUNI IS YOU』の出版など、「旅で世界を、もっと素敵に」というコンセプトのもと、さまざまな取り組みをしています。

なぜいま、多くの若者が旅に惹かれるのか。旅は若者のキャリアにどのような影響を与えるのか……。今回は自らも世界一周の経験者であり、旅先で出会った友人たちとTABIPPOを立ち上げたという清水直哉さんに、“旅とキャリア”について聞きました。

旅で世界を、もっと素敵に

—現在のTABIPPOの取り組みについて教えて下さい。

TABIPPOは「旅」を軸にしながらも、領域を絞らずに現在は5つの事業を展開しています。

わかりやすいところで言うと、日本で一番大きな旅をテーマにした野外フェスである「旅祭」の主催や、TABIPPO2016という全国3都市で学生を6,000人集める大規模イベント。そして、旅大学という名のコミュニティイベントなど、年間で1.5万人以上の人と接することで旅の魅力を伝えています。

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そうしたイベント事業の他に、メディア事業、プロダクト事業、キャリア事業、マーケティング事業という、5つの事業を行っています。

全ては「旅で世界を、もっと素敵に」という、僕らが掲げる理念を実現するための活動です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

70万円で14カ国を巡った

—清水さん自身も世界一周の経験者とのことですが、最初に旅に出ようと思ったきっかけは?

サッカー部に所属していた大学2年生のときに、ヨーロッパへサッカーを見に行こうと思ったのがきっかけです。もともと両親がバックパッカーで、世界を旅する話は小さい頃から聞いていました。そのため、初めての一人旅でヨーロッパを周ることにしました。

そんな旅の途中で、世界一周のひとり旅をしている大学生と知り合いました。当時は大学生が世界一周できるなんて思ってもみなかったので、衝撃的で、「自分もいつかやってみたいな」と思うようになったんです。

ヨーロッパ旅行から帰国して、サッカー部を引退した翌日から、世界一周に旅立ちました。

—世界一周って、お金も時間もかかりますよね?

40万円くらいで16フライト乗ることができる“世界一周航空券”というものがあるので、トータルでかかったのは70万円くらいです。めちゃくちゃ安いですよね。約3ヶ月間で14カ国に行きました。

—意外と手軽に行けるものなんですね! 

実際、どんな国へ行かれたのですか?

東南アジアはいつでも行けるだろうと一旦飛ばして、いきなりインドから入りました。その後、ヨルダン、エジプト、イスラエル、トルコを陸路でまわって、ヨーロッパのスペインに入り、サッカーを少し観たあとにアフリカのモロッコへ渡り、南米のペルーに行ってからは陸路でボリビア、チリ、イースター島へ行ってから、アメリカに行っておしまいです。短期間だったので、行きたいところだけ都市を絞って周りました。

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—世界一周旅行に出る前に、何か目標やテーマは決めて行ったのですか?

いえ、何も。ただの好奇心だけですね。

最初ヨーロッパへ行ったときに、「ヨーロッパと一口に言っても、実際はオランダとスペインとドイツって、こんなに違うんだ!」と感動したので、「それなら世界の国々を比べたら、どんなに違うんだろう」と思ったんです。

あとは、旅に出る前に就活で挫折した経験があったので、自分探し的な側面はあったかな。サッカーしかやってこなかったので、なりたい職業もまったくないし、将来の夢なんてわからなかったんです。

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世界には“やりたいことをやれない人たち”がたくさんいた

—旅の前後で、ご自身の考え方に変化はありましたか?

大きな変化としては、旅に出る前は変なプライドが邪魔をして、就活で大手志向の呪縛のようなものに囚われていたんですけど、そういうのは一切なくなりましたね。年収も一切気にならなくなりました。

あとは自分の人生の価値観が明確になりましたね。旅をする中で、「僕の人生は『やりたいことをやる!』というのを大切にしよう」と心に誓ったんです。

—それは、なぜですか?

世界のいろんなところを旅していると、“やりたいことをやれない人たち”をいたるところで、たくさん目にすることがありました。そしてそうした人たちは、どんなに望んでも、本当にやりたいことができない宿命にある。

—最も印象に残っているエピソードは?

インドの床屋さんの話ですね。インドにはカースト制度の名残があって、なぜか床屋さんに生まれるとカースト上では低い位なんですよ。宗教的に髪の毛を触るのは汚いというのがあるそうで。床屋さんの子供に生まれただけで、大学にも行けないし、一生金銭的に裕福になれることもない。

インドでは、“死後、火葬されてガンジス川に流される”というのが最高の名誉らしいのですが、火葬はお金がかかるので、裕福な人しかできないそうなんです。僕が話を聞いた彼は「本当は死んだら火葬されてガンジス川に流されるのが夢だけど、僕は貧しいから電気で焼かれて流されることはないんだ」と話していて、衝撃的でしたね。 生まれた家の家業によって、人生がそこまで決まってしまうなんて、すごい世界だな、と。

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でも、日本では比較的、やりたいことができるじゃないですか。僕の家はそんなに裕福ではなかったけれど、努力すればちゃんといい高校や大学にも入れたし、そもそも日本のパスポートがあれば行きたい国にはだいたい行けるので、日本人の僕がやりたいことをやらないのは、逃げでしかなくて、すごくズルいなと思った。世界中にいる“やりたいことをやれない人たち”に対して、失礼だと思ったんです。

だから僕は「やりたいことを、やりたいだけ、やりたい仲間と、やりたい場所で、やりたいときに、やる。やれる自分であり続けること」を人生の軸として定めることに決めました。

いまはやりたいことをやらない理由がない時代

—しかし、当初TABIPPOは学生団体だったんですよね? 卒業後すぐに法人化して、“やりたいこと”である旅に関する取り組みを仕事にしなかったのはなぜですか?

当時の自分はやりたいことができる自分とかけ離れ過ぎていたので、スキルアップのために一生懸命働いて、一生懸命勉強しないといけないなと思ったんですよ。そこで、まずは広告代理店に入って、TABIPPOはボランティアとして続けようと思っていました。

希望通り、広告代理店では部署や新規事業の立ち上げなどマネジメントの仕事をたくさんやらせてもらえて、本当にいい経験をさせてもらいました。毎日深夜まで仕事して、土日も働いて、まったく旅に出る余裕なんてありませんでした。だけど、当時は“これが必ずやりたいことができる自分につながる”と信じて、がむしゃらに働いていましたね。

—法人化したのは、いつのことですか?

広告代理店で2年8ヶ月働いてからなので、2年前くらいのことですね。ある時ふと「TABIPPOの活動の規模だったら、自分たちが生活していくくらいならなんとか稼げるのではないか」と思ったタイミングがあって、TABIPPOを立ち上げたメンバーのうち3人で創業しました。

やっぱり「TABIPPOが自分のやりたいことだよな」という思いが募った結果、という感じです。

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—「やりたいことをやる」という思いに対して、「そんなに世の中甘くない」と言う方もいるのではないかと思います。そうした風当たりの強さは感じませんか?

まったく感じませんね。こういう風に言っていますけど、100%実現できているわけではないですし。「そうしていきたい」という目標の話なんです。

でも今は当たり前のようにインターネットがあって、スマホもあって。以前と比べて、やりたいことをやるための環境が整っているんです。僕が尊敬してやまない四角大輔さんや本田直之さんのような旅人の先輩方からは、「君たちの時代はやりたいことがやれる時代。僕らの時はやりたくても出来ないことも多かった。そういう意味では、今はやりたいことをやらない理由がない時代だよね」と言われて、いい刺激になっています。

事業計画書を書くときは、旅に出る

—「英語ができない」「会社員で休みがない」「お金がない」など、世界一周や旅に興味があっても、なかなか踏み出せない人も多いと思うのですが。

そうなんですよね。 英語については、世界の中で日本人は圧倒的に英語ができないと言われます。……かく言う僕自身も、ほとんど英語はできません。そもそも南米なんてほとんど英語が通じませんが、指差しや身振り手振りを駆使しながらジェスチャーすれば、なんとかなるんですよ。でも「トイレはどこですか?」を言えないことは死活問題なので、それだけは覚えておいた方がいいかな(笑)

働き方についても、日本は長時間労働で有名で、なかなか海外旅行には行けない方が多いですが、決して1人あたりの労働生産性が高いわけではない。

—旅に出ると仕事にも良い影響がありますか?

高城剛さんが「アイデアは移動距離に比例する」とよく言っていますが、その通りだと思います。 僕は事業計画書を書くときにはよく旅に出ます。旅先で考えるときって、東京のオフィスにこもって考えるときとは、全然頭の働き方が違う。だから、ちょっと頭を使ったり、突発的なアイデアが欲しいときは、旅先でやろうと決めています。

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ちなみに、ある程度決められたルールはあるものの、うちの会社では旅をするのであれば、いつでも休んでいいという規則があります。また、“旅するオフィス”と言って、オフィスに出社せずに、例えば鎌倉のカフェで仕事する、といった働き方も認めています。

個人がしっかりと成果を出せたり、お互いの信頼関係がある中でないと難しいんですけど、みんなが旅の魅力を理解して、それらが仕事にどう影響を与えるのかをわかった上でこれをやると、会社が良い方に回るんですよね。僕も年間150日くらいは東京にいないですし。……経営や、マネジメントする上では、実際大変なんですけど(苦笑)

旅する文化をみんなで作りたい

—そもそも、「旅」って一体何なのでしょうか?

TABIPPOでは、“旅とはこういうものだ”というのは、定義しないようにしているんです。その人がやりたいことをやればいい。世界一周じゃなかったら旅じゃないとも、まったく思っていません。

週末にちょっと車で遠出してみるだけでもいい。大雑把に言えば、“その人自身が見たことないものを見る、知らないものを知る、食べたことないものを食べる”という未知の体験を一括りにしたのが、旅なのだと思います。その定義はひとによって様々なので、「旅」はこうあるべきだと語ることはナンセンスだなと。

「旅が好きな人って、ずっと旅してるんでしょ?」と思われがちですけど、職業が旅人という人なんて世の中にほどんどいませんから。旅が特別なことではなく、普通に生活している中に自然と旅が存在するようになるといいですよね。

—最後に、清水さんの今の目標は?

日本人って、パスポート所持率が23〜26%しかいないんですよ。先進国の中だとものすごく低い数字で、海外に出る人が少ないのがもったいないと感じています。

たしかに今はどこでもネットが繋がるし、ウユニ塩湖の写真だってスマホからいくらでも見られる。それでも自分の足で行って、自分の目で見て体験したことは、ネットで得た情報よりも価値のあるものだと思っています。

だからより多くの日本人が海外に足を運ぶ機会を持つことができるように、僕らTABIPPOはこの世界一周という一過性のムーブメントではなく、若者がもっと旅する文化をみんなで創っていきたいんです。

今、イベントで年間15,000人くらい動員しているので、これが5万人、10万人へと増えていったら、どうなるのか。本を1冊出したら平均3〜4万部売れているので、これが30万部、40万部へと増えたときに、どんな世界が待ち受けているのか……。「旅は特別なもの」というイメージを払拭して、旅のイメージをより身近で、価値あるものだというふうに変えていきたいと思っています。

旅を軸にして何でもチャレンジしていきながら、まだ見ぬ景色を見てみたいですね。

清水 直哉

株式会社TABIPPO創業者・代表取締役社長。創設から今までTABIPPOの代表を務める。東京学芸大学にてサッカー漬けの日々を送るが、人生に悩み、世界一周の旅へ。 旅で出会った仲間とTABIPPOを立ち上げる。 卒業後はWEB広告代理店の株式会社オプトへ入社、1年目からソーシャルメディア関連事業の立ち上げに参画。最年少マネージャーの経験などを経て2013年11月に退職、 TABIPPOにて法人登記を果たす。趣味は自分探し、夢は「やりたいことを、やりたいだけ、やりたい場所で、やりたい時に、やりたい仲間と、やり続けること」

WRITING:野本纏花 PHOTO:岩本良介

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