土地家屋調査士とは、その名前が示す通り、不動産の表示に関する登記を行うため、土地や建物の調査や測量を行う国家資格です。そして、不動産の表示に関する登記手続きを、依頼人の代理で申請するなどの業務も行います。では、土地家屋調査士の資格を持つ方は、年収の相場はいくらくらいなのでしょうか。また、どのような職場で働いているのでしょうか。リクナビNEXTの会員登録者のデータ(2010年12月~2015年11月)の中から、土地家屋調査士の有資格者を対象に調査しました。
「土地家屋調査士」の仕事
土地や建物の不動産の売買などの際、トラブルが無いよう所有者や境界を明瞭にすることが大切です。そのため、土地家屋調査士は、対象となる現場に足を運び測量することによって、所有者や境界を確認し、面積などの正確な数値を算定します。それらの数値をもとに正確な図面を作成し、登記に関する申請のための書類を準備します。さらに、クライアントの代理で法務局への申請手続きを行います。
こうして不動産の状況や、所有者、債権者を公示し、登記簿に建物の所在を登録します。これを「不動産登記」と言いますが、この不動産に関する表題登記を代理で行えるのは、土地家屋調査士のみとなります。
国家資格である土地家屋調査士の資格を取得するには、法務省が実施する試験を受けて資格を取得する方法が一般的です。筆記試験と口述試験があります。他にも、法務省の職員として登記事務に従事した経験を法務大臣に認可してもらい、土地家屋調査士の認定を受けるという手段もあります。
土地家屋調査士の職場としては、土地家屋調査士事務所や測量会社になります。あるいは、独立開業する人も多くいます。しかし、資格を取得したばかりで、経験も実績もない土地家屋調査士には、なかなか仕事は入ってこないものです。そこで、土地家屋調査士事務所や測量事務所などに勤務して、経験を積むという方法があります。独立開業には、経験や実績を積むことが大切なことです。
土地家屋調査士の平均年収は486.8万円
2010年12月~2015年11月のリクナビNEXTの新規登録者のデータによると、土地家屋調査士の平均年収は486.8万円になっています。その内容を見ると、1,000万円を超える年収の人がいる一方、約100万円という人もいるというのが現状のようです。ばらつきはありますが、一般的な土地家屋調査士の平均年収は、約400万円~500万円と考えられます。
企業に所属する土地家屋調査士の年収は、おおよそ先に述べた約400万円~500万円の人ですが、土地家屋調査士の資格を活かして独立し個人で開業する人もいます。独立開業の場合は、安定して顧客を抱える必要があるため営業も自分で行うなど、軌道に乗って高額の収入を得るまでには努力と時間を要します。また、自営業であるため、実際の収入から経費が差し引かれ、実質の収入は思ったほどでないということもあります。それらの事情から、独立開業の場合は年収額に大きな隔たりができてしまうようです。
土地家屋調査士の資格の他に司法書士、行政書士など有資格者の方が年収が高い傾向
不動産の表題登記に関する申請手続きを行うのが、土地家屋調査士の主な仕事と前述しましたが、他にも、土地の境界に関しても紛争が起きたとき、裁判になる前に、その不明瞭な境界に対してはっきりさせるための手続きである「筆界特定」を行うこともできます。
このような法律に関わる仕事を行う土地家屋調査士ですから、この法律の知識を活かして、ダブルライセンスを目指す土地家屋調査士もいます。例えば、土地家屋調査士とも関連のある司法書士や行政書士などの資格を取得することで、収入がアップすることも考えられます。
土地家屋調査士は、企業に所属して活躍する場合もありますが、独立して開業する人も多くいます。開業した場合、ダブルライセンスにより仕事の幅も広げられ、複数の資格によってより多くの収入を得ることができるようになります。土地家屋調査士の経験を活かし、ステップアップさせることができるのです。
不動産関連では、不動産鑑定士や宅地建物取引士を取得すると、登記簿をより正確に読み取ることができるようになります。不動産鑑定士の平均年収は679.1万円と比較的高く、約1,000万円の年収を得ている人も多数います。また、司法書士と土地家屋調査士の2つを取得すると登記に関する業務すべてにおいて取り扱うことが可能になります。あるいは、行政書士の資格があるとより業務の幅が広がりスムーズに進めることができるようになります。司法書士の平均年収は455.4万円、行政書士は429.6万円ですが、土地家屋調査士とともに取得して兼務すると、特に自営で事業所を開業している人にとっては年収アップにつなげることができて、仕事の幅も広がります。
市圏に需要があり、年収の増加傾向があり
不動産売買の際、表題登記が法律で義務付けられているため、土地や建物の売買がなされている限り、土地家屋調査士の仕事は需要があります。逆に、土地や建物の売買が行われなければ仕事は発生しませんから、不動産の売買などで動きがあることが必要です。その点では新しい団地の開発や駅周辺の再開発などが活発に行われ、マンションなどを含む不動産売買の動きが大きい都市圏のほうが、土地家屋調査士の仕事を必要とすると言えます。新築の家屋だけでなく、転売の際も表題登記は必要です。つまり、不動産の動きの大きな都市圏のほうに需要があり、年収もそれに伴い増加すると考えられます。
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