【“ダサい”を見返せ!】埼玉・川越のクラフトビール「COEDO」が人気の3つのワケ

 夏到来!夏と言えば……かき氷に冷やし中華、それに忘れちゃいけないのが、そう、キンキンに冷えたビール!しかし、最近のビール業界は少し元気がないのだとか……そんな中でここ2~3年売り上げを伸ばし、注目を集めているのが“クラフトビール”です。

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最近よく聞く“クラフトビール”どうしてそんなに人気なの?

 そこで今回は、“地ビール”の時代から約20年、クラフトビールの進化を見つめ続け、世界的なコンテストで高い評価を受けるまでとなった「COEDOビール」を製造する、株式会社協同商事 コエドブルワリーの朝霧重治代表取締役社長に、クラフトビールがどうして人気なのか? 最近では海外からのニーズも高まっているワケについてなど、クラフトビールにまつわるあれこれについて、聞いてきました!!

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朝霧重治(あさぎり・しげはる)

株式会社協同商事 コエドブルワリー代表取締役社長兼CEO。1973年埼玉県川越市生まれ。一橋大学卒業後、三菱重工を経て98年に株式会社協同商事に入社。企画、新規事業などの業務を中心に担当。2003年、副社長に就任。ビール事業の再構築をスタートし、2006年には「小江戸」から「COEDO」にモデルチェンジ。現在「COEDO」は、ヨーロピアン・ビアスター・アワード、ワールドビアカップといった世界の名だたるコンテストで高く評価される「世界最高水準のビール」として、世界中のビアファンから愛されるブランドとなった。朝霧氏自身もビール伝道士として、クラフトビールの魅力を積極的に広める活動を続けている。

http://www.coedobrewery.com

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そもそも“クラフトビール”って何ですか?

――最近よく聞くクラフトビールですが、「いまさら聞くのも恥ずかしい……」という方のために、まずはどういったものをクラフトビールと呼ぶのか教えてください。

朝霧氏:実はクラフトビールには明確な定義はありません。あえて言うならば、小規模の醸造所で職人が手工芸品的に作っているビールのことを指します。日本で広く知られている「ピルスナー」のほかに、「ペールエール」「ヴァイツェン」「IPA(アイピーエー)」「スタウト」など、ビールにはさまざまな種類があり、造られるブルワリー(醸造所)によって、生産スケールも掲げるコンセプトも違うんです。たとえば、私たち「COEDOビール」は、“Beer Beautiful”をブランドコンセプトに、さつまいもを原料にした「紅赤」をはじめとした、さまざまな“ジャパニーズビール”を国内外に出荷しています。日本各地にあるブルワリーそれぞれのバラエティに富んだビールが楽しめるのも、クラフトビールの醍醐味です。

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【人気のワケ1】職人が丹精込めて造ったビール!

――クラフトビールブームでさまざまなビールが出ていますが、その中でも「COEDOビール」の人気が高いのはどうしてだと思いますか?

朝霧氏:まず、最近クラフトビール自体が注目されるようになったのは、単純に「美味しいから」だと思います。20年ほど前に酒税法が改正されて、小規模でのビール造りが可能になったときに起こったのが“地ビールブーム”ですが、あれは「地域経済を活性化させよう!」という行政の施策で、ビール造りを知る人が誰もいないのに、見よう見まねで造りはじめてしまったところが多かったんです。それでは美味しいビールはできないですから、一過性のブームになるのは当然です。その点がクラフトビールとは違います。例えば、パティシエはもともとお菓子が好きな人が学校に通ったり、修行をしたりした後にお店を開きますよね。ビールも同じことで、おいしいビールを造るには、それなりの時間や手間がかかります。今はどこの醸造所でも、ビール造りを学んだ職人が熱意を持ってビール造りに取り組んでいるので、美味しいんです。クラフトビールの美味しさは、職人たちの努力の結果です。私たちはそもそも「ビール造りは甘くない」と考えていたので、ドイツからブラウマイスターを招いて製法や文化を学び、5年かけて職人を育成しました。それが、「COEDOビール」がブームが去っても生き残ることができた理由かもしれません。

【人気のワケ2】世界で“和食に合うビール”が求められている!

――最近では海外でもとても人気があるそうですね。

朝霧氏:そうなんです。最近は、“和食”が無形文化遺産に登録され、世界で認められるようになりました。それと同時に和食に合うビールも求められていて、「COEDOビール」を選んでくれる方々が多いようです。私たちも和食に合うビールを提供したいと思っているので、それはとても嬉しいです。和食に合うビールに求められるのは「繊細さ」だと思います。海外で「COEDOビール」は、雑味がないキレイな味わいだと評価していただくことが多いです。IPAといった、苦味や香りのインパクトがあってこそ美味しい、アメリカらしいビールも、日本の職人が作るとインパクトがありつつも繊細なビールになる。そういった「日本ならでは」の味わいも期待されているところかもしれません。

【人気のワケ3】スタイリッシュな「COEDO」にリブランディング!

――その他にも「COEDOビール」が人気のワケ、ありますか?

朝霧氏:2006年に「小江戸ビール」から「COEDOビール」にリブランディングしたのですが、このときから地ビールではなくクラフトビールというコンセプトを意識して提唱してきました。それまでの「小江戸ビール」は、地ビールのイメージが強くて、なんというか……お土産物的で「ダサい」と思われてしまっていたんです。私たちが本拠地を置く埼玉県も「ダサい」と言われていた時代があったので、まずビール造りやクラフトマンシップの素晴らしさを知っていただくために、「ダサい」というイメージをなくす必要があったんです。美味しいものにこだわる人たちに認めてもらうために、デザインやブランドコンセプトは、スタイリッシュで都会的なイメージにこだわりました。でも、欧米のまねをするのではなく、ネーミングに「瑠璃」「紅赤」「伽羅」「白」「漆黒」といった「日本の伝統色」を取り入れるなど、「日本のビール」であることは忘れないようにはしていました。そもそも僕は生まれも川越で、健全な郷土愛でビール造りに取り組んでいるところがあるので、埼玉県も地ビールもこれ以上「ダサい」と言われたくなかったんです。その気持ちがバネになって、リブランディングが上手くいったのかもしれません(笑)。

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キーワードはグローカル!「COEDO」の今後の野望とは?

——今後の、海外も含めた戦略を教えてください。

朝霧氏これからは、“グローバル”と“ローカル”の良い点を取り込んでいく、“グローカル”の時代ではないかなと思っています。今までは、川越の東京に近いという便利さを武器にマーケットを広げてきましたが、最近ではもう東京を飛び越えて、海外との関係性が増えてきたんです。今こそ“日本の地ビール”に戻れるときが来たかなと。つまりは、世界から見たら日本もローカルですよね。一度は「ダサい」と言われないためにローカルを否定して、職人が造る味を前面にコミュニケーションしてきたわけですが、クラフトビールが注目されはじめた今こそ、改めて地域のものであることを大切にしたいというか。だから、現在、ヨーロッパ、アメリカ、アジアを始めとした12カ国に出荷していますが、海外に工場を建設する予定も、都内に店舗を出す予定もありません。今だからこそ、日本の、埼玉の川越という土地から世界に発信する“グローカル”なビールを目指して行きたい。これからはそれが私たちの“強み”となっていくと思います。

クラフトビールのツウな楽しみ方

——最後に、クラフトビールのツウな飲み方を教えて下さい。

朝霧氏:ワインのテイスティングや日本酒の利き酒って緊張しませんか? でも、ビールは「とりあえずビール」でおなじみのカジュアルなお酒ですから、予備知識なしで楽しんでいただけると思います。でも、あえて言うとするなら、クラフトビールは本当にバラエティに富んでいるので、一気に飲まずに、色や香り、味わい、残り香などをじっくりと味わってみると違った楽しみ方ができると思います。あとは、食事から入っていただくのもいいと思います。「この料理に合うビールを下さい」と言えば、すぐ選んでくれますから。わからない場合はお店の人に聞くのが一番です。お店に醸造所が併設されている「ブルーパブ」や「タップルーム」などに行って、お隣りの方に聞いてみるのもいいと思います。ビールがきっかけで出会いが広がるのも、また楽しみのひとつだと思います。

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左から定番の「紅赤」「瑠璃」「伽羅」「漆黒」「白」。素材と製法によって、色も味も香りもまるで違う。

ここでしか飲めないビールを提供する「ラボ」をオープン!

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 6月15日には、ビール事業開始当初にブルワリーとして活用していた場所を再整備し、「ラボ」をコンセプトにした醸造所「COEDO Craft Beer 1000 Labo」をオープン。1000リットルの小さなタンクでバラエティ豊かなさまざまなビールを試作し、併設したタップルームで実験的な取り組みを公開していきます。クラフトビールの世界を深く知ることができるセミナーやワークショップの開催など、業界の垣根を越えたコラボレーションも推進していく予定です。

 併設のタップルーム「香麦- xiangmai-(シャンマイ)」 では、モダンクラフトチャイニーズとともに定番の5種類+シーズナルビールのほか、ここでしか味わうことのできない実験的なビールも飲めるとのこと。そして、地元の方は容器を持ってくればビールを持ち帰ることも可能にしていきたいのだとか。家庭でできたてのクラフトビールを楽しめるとは、なんとも贅沢。地元・川越の方はもちろん、遠出しても来る価値のある場所として、これから注目を集めそうです。

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COEDO Craft Beer 1000 Labo(コエド・クラフトビール・ワンサウザンド・ラボ)&Taproom 香麦- xiangmai-(シャンマイ)

埼玉県川越市福田59-1 TEL:049-228-0800

アクセス:JR川越線川越駅 東武バス福田 徒歩3分

EDIT&WRITING:石本真樹  PHOTO:疋田千里

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