【20代の不格好経験】2度起業するも「易きに流れ」て挫折。3度目で、ようやく“やりたいこと”に巡り合えた~ピクスタ代表取締役 古俣大介さん

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今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいた経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、そんな「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第11回:ピクスタ株式会社代表取締役 古俣大介さん

八面六臂株式会社代表取締役 松田雅也さんよりご紹介)

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(プロフィール)
1976年生まれ。多摩大学在学中にインターネットの可能性を感じ、「ネットを使ったビジネスで起業する」と決意、まずはコーヒー豆のEC販売をスタート。大学4年生の時に株式会社ガイアックスにインターン入社し、後に正社員になるも、1年で退職。2002年に飲食店向け販促物のデザイン・印刷会社を立ち上げるが1年後に撤退。2003年に健康グッズのEC事業で2度目の起業を実行する。2005年8月、ピクスタの前身となる株式会社オンボードを設立、現在に至る。

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▲プロ、アマを問わず写真やイラスト、映像などの素材を投稿・販売できる、デジタル素材のマーケットプレイス「PIXTA」。2015年3月6日現在で、クリエイター数15万人、デジタル素材約1060万点がストックされている

■ECサイト運営、二度の起業、いずれもビジネス的には成功したが…

 ピクスタは2005年、私が28歳の時に起業しました。「写真やイラスト、映像素材のマーケットプレイス」というビジネスモデルは、私が人生をかけて取り組みたいと思えたもの。その想いが本物だったからこそ、ここまで来られたのだと感じています。
 
 実はこれが3度目の起業。それまでに2回起業し、いずれもビジネス的には成功したのですが、「自分の人生をかけて取り組むビジネス」とまではどうしても思えませんでした。もっと早く、今のビジネスモデルにたどり着いていれば…。28歳までのいくたびもの紆余曲折が、失敗と言えば失敗でしたね。ただ、この過程がなければ、今の私はなかった。幾度となく心が折れそうになりましたが、私にとっては必要な期間だったのだと思うようにしています。

 真剣に起業を考えたのは、大学2年生の時。ちょうどインターネットが普及し始めた頃で、新しいビジネスがどんどん生まれていました。「自分もネットで新しい価値を生み出し、社会にインパクトを与えたい」と思うようになったのです。ちょうどその頃、ソフトバンクの孫正義さんについて書かれた本を読み、この人のようなエキサイティングな仕事人生が送りたいと思ったのもきっかけでした。

 でも、ネットという軸足は決めていたものの、どんな分野でビジネスをすればいいのかなかなか思いつかなかった。そこで、叔父がやっているコーヒー豆焙煎店に注目、コーヒー豆のECサイトを作れば、地方のユーザーに受けるのではないかと思い、見よう見まねでサイト作りから始めてみました。
 素人が作った簡易的なサイトでしたが、当時そういうサイトが少なかったため、すぐに売り上げが立つようになりました。メルマガを発行するなど手探りで販促策にも挑戦したら、3カ月後には売り上げ30万円を稼ぎ出すまでになりました。

 でも本当にやりたいこととは言えないし、これで起業するのはどうか…と思っていた時に、ネット企業のガイアックスの社長と知り合い、同じくらいの年齢の人たちが自分とは圧倒的に違うスケール感でビジネスをしていることに衝撃を受けたのです。「1カ月でいいから勉強させてほしい」と頼み、インターンで入社し、そのまま正社員になりました。

 コーヒー豆という個人商店から、会社組織に移り、意識ががらりと変わりましたね。当時のガイアックスは、平均年齢22歳ぐらいの若い会社。しかし、大企業や官公庁相手に大きなビジネスを展開している。ネットのような新しいビジネス領域では、若手が主導できることを知りました。
 ますます、ネット領域でビジネスを立ち上げたい!という思いに駆られ、何のメドもついていないのに1年で退職しました。会社を辞め、じっくり自分に向き合わないと、本当にやりたいことなど見つけられないと思ったのです。

■やりたいことをビジネス化したいのに…無職悶々期間に軸がブレる

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 事業を考える時の軸には、大きく「世の中が求めているもの」か「自分がやりたいもの」か、という2つの軸があると思います。私の場合、後者をビジネス化したかったはずなのですが、ガイアックス退職後、半年近く職に就かずに悶々と考え続けていたので、途中で考え切ることに疲れてしまい、軸がブレにブレて「世の中軸」で考えてしまいました。その結果、飲食店のポスターやPOP、メニューなどのネット印刷というビジネスモデルを考え出します。小ロット印刷のニーズは大きいし、ネット受注に向いていそうだと思えたのです。

 試しにネット経由ではなく、飲食店に直接営業を掛けて反応を見たところ、すぐに受注をいただけました。急ごしらえでデザインも引き受けるようになり、1つ1つの受注をこなしていたら、あれよあれよという間に200店舗もの顧客ができていました。
しかし、印刷物に対する個店の要望はフォーマット化しづらく、これをネットビジネスにするのは難しいという結論に達し、顧客に頭を下げて会社を畳むことに。私自身、200店舗との細かいやり取りや集金、デザイン制作に振り回され、ひたすら辛い毎日だったのです。これが「自分が本当にやりたいもの」だったら、もしかしたら違う結論になっていたのかもしれません。

 実は当時、印刷物の素材として、ネットの写真素材やイラスト素材をフル活用していました。このときに今のビジネスアイディアがひらめいていればよかったのですが、また回り道をします。

 会社を畳み、収入がなくなったので、当時空き家になっていた元実家に引っ越し、すきま風が吹く部屋で膝を抱えながらひたすら次のビジネスを考え続けました。二度目の悶々期間です。ただ、このときも3カ月程度で、中途半端に「自分に向き合う」ことを止めてしまいました。オカネもない、アイディアも浮かばない状況を見かねて、雑貨商の父から「うちの健康雑貨をネットで売ってみない?」と声を掛けられたのです。生活費を稼ぐために少しやってみるか…と始めたところ、これがまた売れちゃったんです(笑)。このときにはすでに兄が勤めていた会社を退職して一緒にやっており、半年後には月の売上高が500万円、2年目には年商1億円にまで成長しました。

 生活は潤いましたが、またもやジレンマに陥りました。自分の手で、ゼロから新しい価値を生み出したいと思って、起業を目指したんじゃないのか?って。

■幼少期まで振り返り、「自分のやりたいこと」にとことん向き合う

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 同じ後悔は、もう二度と繰り返したくない。退路を断って仕事を止めてしまうから、身近なビジネスに手を出してしまったのだと反省し、健康雑貨のECサイトが安定し始めた頃から、「仕事の合間に、起業アイディアを考える」という方法を取りました。今回はすでに安定収入があったので、「稼ぎつつ考える」時間が確保できたのです。

 自分のルーツから振り返り、自分は何がやりたいのか?をじっくり時間をかけて考えました。
 両親ともに小売業を営み、物心ついた時から「商売」は身近なものだった。でも、コーヒー豆、印刷物、健康雑貨を扱ってみて、いくらモノが売れても「物売り」にモチベーションを感じない自分に気づいた。では、時間を忘れてのめり込めるようなものって、なんだ?

 そんな時に、ひょっと頭に浮かんだのが、マンガやアニメ、ゲームなどの「クリエイティブ」でした。子供の頃からマンガやアニメ、小説が大好きで、10代の時には自分でもマンガやイラストを描いていたのですが、「自分には才能がない」と諦めた経験があったのです。それ以来、「世の中にオンリーワンのクリエイティブを生み出せる人はスゴイ!」とクリエイターをリスペクトし続けていました。そんな方々を支えるサイトを生み出せないか?とふとひらめいたのです。

 ちょうどその頃、CanonのEOS Kissが大ヒット。一般人も一眼レフカメラを持ち始め、画像投稿の個人サイトが人気を集めるようになりました。同時期にブロードバンドも広がって、一眼レフで撮った2、3MBの画像もバンバンネットにUPできるように。画像投稿サイト自体は、何ともショボい作りのものばかりなのですが、そこにUPされる画像のクオリティーはどれも高い。何より投稿者からの「熱量」をものすごく感じたんです。
 印刷物を作っていた時代に写真素材を使うことが多かったため、投稿作品はどれも十分商用活用できるものだと確信できました。撮影者の「熱量」を発揮できる場所を提供し、もっと世の中に活かしたいと思い、2005年8月に「PIXTA」を立ち上げました。実に、1年近く考えた末での決断でした。

■将来に迷ったら、「好きなこと」さえ選べば何とかなる

 PIXTA設立後、もうすぐ10年になりますが、ここまで迷いなく、楽しみながら、事業を拡大し続けることができました。心の底から「これがやりたい!」と思えたものならば、たとえ壁にぶつかろうとも、トラブルに見舞われたとしても、逃げずに向き合えますし、乗り越えるための策を一生懸命考えられる。今までのビジネスとは、自分が発する「熱量」が違うと、改めて感じています。

 今、何をすべきか?どんなキャリアを歩むべきか?誰もが一度は悩むテーマだと思います。
 私は、将来に迷ったら「自分の原体験に基づいた好きなこと」をすればいいと、実体験から思います。好きだと思えるならば、どんな困難があっても続けられるし、困難を打破するアイディアだって自然に浮かぶでしょう。やりたいことがどんどん浮かび、新たなイノベーションも生み出せるはずです。
「好きなこと」がにわかに思い浮かばなかったら、自分の人生をじっくり振り返ってみて、今までのめり込み、没頭してきた経験を書き出してみるといいでしょう。その中からきっとヒントが見えてくるはずです。

※次回は、古俣さんのご紹介で、株式会社Viibar代表取締役の上坂優太さんが登場します!

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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