【20代の不格好経験】起業のため宣言通り楽天を退職…しかしアイディアが出ず退職を後悔~スターフェスティバル代表取締役 岸田祐介さん

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今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいた経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、そんな「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第3回:スターフェスティバル株式会社 代表取締役 岸田祐介さん

Tokyo Otaku Mode 亀井智英さんよりご紹介)

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(プロフィール)
1977年生まれ。ハンドバック輸入会社の営業職を経て、25歳のときに楽天に入社。「楽天デリバリー」や楽天野球団の立ち上げに携わる。入社5年で楽天を退職し、1年間の「起業準備期間」を経て、2009年にスターフェスティバルを設立。中核事業である宅配弁当のポータルサイト「ごちクル」では、全国有名飲食店のオリジナル弁当を含む6700種類以上のお弁当を販売。現在の月間販売数は約20万食以上。

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▲日常使いできる低価格弁当から「叙々苑游玄亭」「牛たん炭焼き 利久」「梅丘寿司の美登利総本店」などの高級弁当まで、バラエティーに富んだ弁当が揃う

■「30歳で起業」との目標を守るために、ビジネスアイディアもないまま楽天を退職

 失敗をそのまま終わらせると、「失敗した…」というネガティブな記憶が残ってしまいます。だから、今まで大小さまざまな失敗をしましたが、「それを糧に次へ進もう」と、常にポジティブに捉えてきました。振り返っても、失敗して辛かったという経験は、思い出せませんね。
 ただ、起業をしたときにぶつかった「壁」は、一時期本気で思い悩み、出口が見えず悶々とする日々が3カ月以上も続きました。渦中にいる時は、本当に辛かったです。が、「ごちクル」というビジネスが生まれるためには、必要不可欠な経験でもありました。

 25歳で楽天に入社し、弁当配達のポータルサイト「楽天デリバリー」を立ち上げ、その後、楽天のプロ野球加入に伴い楽天野球団の立ち上げにも関わりました。楽天野球団では、主に球団の集客に携わり、どうすれば人は動くのか?を考え抜く日々でした。今まで世の中にないものを生み出し、多くの人に足を運んでもらい、喜んでもらうことに頭をひねる――忙しくもやりがいにあふれ、充実した日々でしたね。

 入社から6年経ったころに楽天を退職しました。10代のころから起業を意識し、大学時代にビジネスを立ち上げた経験もあった私は、「30という節目の年になったら起業しよう」と固く心に決めていたのです。
 ちょうど球団としての楽天が軌道に乗り始め、ビジネスパーソンとしても脂が乗っていた時期でした。仕事は楽しい、責任ある仕事を任されやりがいもある、会社もとても居心地がいい。みんなに「勢いで辞めてどうするの!?」と止められましたね。でも、以前からずっと心に決めていたこと。ここで辞めなかったら一生起業できない!と自分を追い込み、えいやっ!と退職しました。

 ただ、そんな状態で辞めたから、ビジネスアイディアなどはまるで思い描けていませんでした。退職後しばらくは、ただただ「考える」日々が続きましたね。
机の上で、PCを前にうんうん唸って、それこそ100以上のアイディアを考えましたが、どれも心底やりたいとまでは思えない。こうなると、もう袋小路です。先が見えず、突破口もわからず、ただ時が過ぎて行く。それまでのやりがいに満ちた生活とは一変し、初めの3カ月間は「ああ、なんで会社を辞めてしまったんだろう…」と後悔ばかりしていました。

■エンジェル投資家の「うちの前で弁当屋でもやれば?」のひと言が契機に

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ビジネスアイディアに困り果てていた私が、当時頼りにしていたのは、楽天時代の元上司であり、ベンチャーキャピタル「YJキャピタル」のCOOである小澤隆生さん。エンジェル投資家である小澤さんのもとには、起業を志すたくさんの若者が集まっていて、「小澤さんの事務所に通えば何らかの突破口が見いだせるのではないか」と思ったんです。
しかし、いつまで経ってもコレというアイディアが浮かばず、一人悶々とするばかり。そんな私に、ある日小澤さんが言ったんです。「ウチの軒先を貸すから、弁当屋でもやってみれば?」
 
 思い悩むばかりで何も行動しない私にシビレを切らし、思いつくままの言葉で行動を促したのだと思いますが、そのとき、「もしかして、これでは?」とうっすらひらめくものがありました。

 というのも、この3カ月間、ビジネスアイディアを探して紆余曲折する一方で、今までの人生を見つめ直し「何のために起業するのか?何がしたいから起業するのか?」を改めて自問自答し続けていました。その中で、「食に関するビジネスがしたい」という思いに気づいたのです。
大学時代、アルバイト先のカラオケ店が閉店する朝5時から昼までの時間を借りて、近隣の飲食店従業員をターゲットに飲み屋を開き、成功させた経験がありました。飲食って面白いし、多くの人を幸せにできるのではないか――具体的なビジネスイメージまでには至っていませんでしたが、自身を振り返る過程で、心の奥底にあった「思い」が湧き上がるのを感じていました。
また、「自分がいいと思えるモノやサービスを販売し、利用者が喜んでくれて別の人を連れて来てくれる。そんな商売がしたい」という「思い」にも、行き当たっていました。前職で球団の観客動員責任者として働く中で、「たくさんの人が集まる場所でその人たちが喜んでくれる姿を見ることが、私の喜びややりがいにつながる」と実感していたことを、思い出したからです。
 
こんな「思い」に気づいた矢先だったからこそ、小澤さんの何気ないひと言に、「弁当ビジネスは、思いに合致している。もしかして、いけるのでは?」と思えたんです。

■机上で考えるだけでは何も生まれない。行動すれば、目の前の景色が変わっていく

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 初めは、本気で小澤さんのご自宅の軒先を借りるつもりでしたが、過去の経験を踏まえ「夜に営業する飲食店の軒先を昼間にタダで借りてはどうか」と考え、そのスペースで人気弁当店の弁当を委託販売する…というアイディアを立て、弁当店、飲食店に当たり始めました。

 ここで気づかされたのは、「行動を始めたら、目の前の景色が変わる」ということ。ふと、自分は楽天というネット企業にいたのに、なぜビジネスにネットの要素を取り入れていないのだろう?弁当の注文をネットで受けて、販売してはどうだろうか?と思ったんです。
 やっぱり机上で悶々としていてもダメなんですね。こう着状態の時ほど、とにもかくにも動いてみる。そうすれば、新しい何かが見えてくる。そして、その新しい景色に合わせて計画やアイディアを少し変えてみる。すると、初めとは全く違う世界が、一気に開けてきます。

 2009年に今の会社を立ち上げ、順調に事業拡大しています。あのときの悶々とした経験、そして「動き出してこそ、景色が変わる」経験をしたことは、今の大きな糧となっています。
 机の上では、完璧な事業計画なんて作れるはずがない。イメージがついた時点でまずは動き出し、軌道修正しながら作り上げていくほうが、結果的には精度が高い事業計画ができるし、それに、外に出て動いたほうが精神的にもいい(笑)。今後、新たなビジネスを展開する上でも、必ずや役立つ経験だと思っています。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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