2009年に古川健介氏とともに株式会社nanapiを立ち上げ、主にシステム開発面を担当し、現在では月間1800万UUを超えるHowtoサービス「nanapi」の技術基盤を築いた同社取締役CTO和田修一氏。
その和田氏にnanapiの成長ベンチャーでエンジニアとして活躍することの楽しさや苦労、nanapiのエンジニアたちの働き方を聞いてみました。
nanapiをCTOとして成長させ、自身はエンジニアとして楽しむ
私は前職ではインフラが専門だったので、nanapiを立ち上げたときはアプリ開発の経験はありませんでした。もちろん基本的な知識はあったので、自分で勉強しながらnanapiを作ってきました。
nanapiを創業したときは家賃を節約するために八王子の実家に帰ったんです。八王子から代々木のオフィスまでの通勤時間は片道だいたい1時間くらい。その電車の中でコードを書いていました。隣のサラリーマンにうるさいと怒鳴られたこともありましたが、とにかく必死でコードを書きまくってた。自分がやりたいと思ったことであれば、時間はいくらでも捻出できると思っています。
もちろん、CTOはただ技術だけをやっていればいいわけではありません。経営はもちろんですが、優秀なエンジニアを採用することもCTOのミッションです。私は自分より優れた人しか採用しないって決めています。おかげさまで私より優秀なアプリエンジニアが採用できているので、フロント開発は任せて自分はインフラエンジニアに戻り、彼らにインフラを快適に使ってもらえるようにしています。
一緒に働きたいと思うエンジニアは、技術スキルはもちろんなのですが、やはりインターネットやサービスを作ることが好きな人ですね。好きであれば、そのために必要な技術を勉強することも苦にならないし、コードを書くことを楽しんでいます。興味がある技術について聞いてみたり、GitHubなどを見せてもらえば好きな人のコードってすぐわかります。
すごいコードを書けるということより、好きでコードを書いているかが重要なので、GitHubのアカウントがあるというのは重要なポイントですね。コードを見れば、どういう視点でサービスを設計しているか、重視している点が何かとかが伝わってくるんです。コードをどう勉強しているかが大事だと思っています。
nanapiのエンジニアたちが担う役割とは
nanapiは、ディレクターとエンジニアというようなはっきりとした役割を分けてないんです。サイトの設計はデザイナーと一緒に考えて作るし、厳密な工数分けとかはしていません。エンジニアが使いやすいサービスを考えて、一緒にいいサービスを作るというのがnanapiの開発スタイル。正しいことを「正しい」と言える文化がある。上司が言うから正しいとか、ずっと使ってきた技術や手法だから正しいとか、前例があるから正しいとかではなく、誰もがチャレンジできる環境であり、正しいことを正しいと言える会社なんです。
例えばnanapiはPHP5.3を使って開発しているのですが、もうすぐサポートが終了してしまう。その対策としてセキュリティホールを埋める守りの対策だけではなく、ゼロから考え、他の言語で書き直すことも含めて一番いい選択肢を考えます。ルールだからこうしなくてはいけないではなく、最適な手法をちゃんと考えて実践できる開発環境を作っていくべきだと思っています。
大手企業とベンチャーはどっちが楽しい?
いつかは起業するという人は、結局起業はしないんじゃないかと。転職するか残るかだけは、決めて動いたほうがいいと思います。ベンチャーはリスクがあるといいますが、リスクを何ととらえるかだけですね。給与はベンチャーでも大手水準で出せるようになってきているし、終身雇用なんてどこの会社でも保証なんてない。自分の腕で食べていくとしたら、磨き続けるしかないんです。
これからはゼネラリストタイプが求められる時代になっていきますし、そうでない人は淘汰されていくと思っています。nanapiのエンジニアはPHPだけではなく、プラス2~3言語使えるし、UNIXも全員さわれます。
また技術面だけでなく、UI/UXへの思いもみんな強い。CTO経験者もいれば、海外の制作会社でを経験した上でnanapiでサービスを作りたいと言って転職してきた人もいます。nanapiはサービス軸で会話するからみんなの志向もぶれません。
エンジニアだからといって、テクノロジーぽいことだけ考えているわけではなくて、こういう機能を作りたいというユーザー目線も大事にしています。
例えば社内記事コンテストというイベントがあるんですが、社員全員がハウツーを投稿し、ユーザー数を競っています。お互いの足をひっぱらなければ手段は問いません。自分でSEOを考え、Twitterで宣伝したりします。
もちろん社長の古川も書きますし、私も必死で書いてます。3カ月で10キロ痩せるハウツー書いたので、よかったら読んでください(笑)。こうやって、記事を書くとき投稿機能を考えるきっかけになるし、ユーザーとして考えられる。nanapiのサービスをよりよいものにしていくためにこうした試みも続けていきたいと思っています。
※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。