一流と言われる人は「縁」の正しい“扱い方”を知っているーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第3回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「転職において、人と人との繋がりに勝るものなんてない」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第1巻 キャリア3より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を排出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

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人との縁も「ひとつの利息」

転職代理人の海老沢は、英語教師を辞めようかどうかで迷っている井野に向かって「中途半端な英語教師のままで転職をしても、おそらく失敗する」と言い放ちます。

「そうならないためには、縁があるところにポンと入ることだ」と海老沢。成功するには、井野と海老沢をつないだ、桜木のような有力者との縁を利用することが不可欠だとして、「ウチに転職したければいつでもくるように」と告げます。

桜木から言われた「30歳過ぎたら利息で暮らせ」という言葉の意味を考える井野。「人との縁も、ひとつの利息」だという結論に達した井野は、海老沢の誘いに乗ることを決意。10年勤めた龍山高校を後にして、海老沢の下でキャリアパートナーとしての第一歩を踏み出すのでした。

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実際は頼るのが難しい「信用できる人からの口コミ」

「縁が大事」というのは、よく聞く言葉だと思います。ところで、縁とは一体何でしょうか?「縁」を広辞苑などで引いてみると、「人と人とのつながり、関係」とあります。

通常、人との出会いや働く経緯などは、偶然のことが多いものです。先の話で言うなら、井野が龍山高校で桜木と出会ったのも偶然ですし、海老原と知り合うことになったのも、たまたま「転職したい」時期に接点を持ったことがキッカケでした。

世間でも、多くの人が何かを選択する際に、「信用できる人からの口コミ」を重要な判断基準としていることは、複数のデータが証明しています。しかし、実際はそれがいつも正しいのかと言えば疑問でしょう。なぜなら、人はしばしば間違いや勘違いをするからです。

あなたも、知人の紹介を信じて勧めに従った結果、かえってトラブルになって、知人との仲がこじれてしまった、という話をどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。こうしたトラブルを避けるためには、従う側が「この人にならダマされても仕方がない」くらいの覚悟を持つ必要があります。

基準は「自分が成長できる環境に身を置く」こと

それでは、どうやって玉石混交の情報の中から“良縁”を探し出せばいいのかと言うと、方法のひとつに「常に成長できる環境に自分の身を置くことを基準に考える」ということが挙げられます。

たとえば、私の知り合いで現在、金融の専門家として多くの富裕層を顧客に持ち、活動している人がいます。しかしその人も、もちろん始めから金融に詳しかったワケではありません。最初のころはうまくいかない時もあり、その被害額は決して小さくはなかったそうです。

しかし、それでも知り合いは折れることなく金融を勉強し続けました。多くの金融セミナーに顔を出し、伝手を使って正しい情報を探しました。するとあるセミナーで、自分の質問に対して120%の回答をしてくれる人に初めて出会いました。

それまで、どのセミナー講師に質問しても、肝心なところはお茶を濁されるばかりだった知り合いは、その講師に弟子入りし、1年ほどカバン持ちを務めました。当然、ほぼ無報酬でしたが、知り合いはその師匠の下で学ぶことの価値を理解していました。今では独立を成し遂げ、専門家として大活躍できるようになっていったのです。

良縁をたぐり寄せられる人の特徴とは?

エンゼルバンクの主人公・井野が海老沢のところで働くことにした理由は、「自分で転職先を探すのが面倒だった」からでした。とはいえ、実は井野は楽な道を選んでいた訳ではありません。海老沢はあえて井野の気に触るようなことを言いながらも、一方で井野がどれだけへこたれずに仕事ができるのか、様子を伺っていました。井野は無意識に、楽な道ではなく、自らを成長させる環境に身を投じていたのです。

以前、「会社で『必要とされる人』と『そうでない人』の差はどこにあるのか?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス」の中で、「上がり相場に乗る」というお話をしました。つまり会社、業界、市場、人物ともに、大事なのは“伸びしろ”です。伸びしろとは、「成長する余地がある」ことを言います。
大切なのは、自分自身の成長余地に対して、どれだけ興奮を覚えられるか。輝かしい未来にどこまでコミットできるか、です。

「人も仕事も縁」というのは、人によっては「偶然頼み」のように聞こえるかもしれません。けれどその偶然を必然に変えられる人こそが、本当の意味で良縁の持ち主だと言えるのではないでしょうか。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が12刷となっている。著作累計は35万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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