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「いつまでこんな生活続けるの?」と言われるけど、僕はこの生き方を貫きたい――“自転車冒険家”「僕が自転車で世界を旅する理由」 season1

10年間で27ヵ国、80,000kmを自転車だけで走り抜けた男がいる。その名は西川昌徳(33歳)。

世界各地の旅先で自力で水や食べ物を確保し、寝る場所を見つけテントを張る。パンクなど日常茶飯事。時には命の危険を感じるトラブルに遭遇することもある。それでも彼はゴールを目指し、日々ペダルを踏み続ける。そんな経験を日本中の子供たちに知ってほしいと、小学校での授業や講演活動も続けている。

彼にとって「自転車で世界を旅すること」とは一体何なのか? なぜこうした経験を子供たちに伝えたいと考えたのか? 今年アメリカ大陸縦断の旅から帰国したばかりの彼に、今回の旅、これまで人生、仕事に対する思いを全4回のインタビューでじっくりと伺った。

今回はいよいよ最終回。自転車旅を続ける西川さんに、様々な人が「いつまでこんな生活続けるのか?」ということを言ってくるそうです。果たして西川さんの考えは?

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即効性のあるものに、頼って生きていきたくない

──西川さんはこの生き方を今後も貫いていくつもりですか? 

僕はいろんな人から「お前いつまでそんなこと続けんねん」「そんなんできんの、若い内だけやぞ」とかいろんなことを言われて、ここまで10年間やってきました。

僕が取り組んでいること、つまり旅先でのスカイプ授業や、帰国してからの授業や講演は、学校現場のニーズに入ってません。より正確に言うと、子供が世界を知るというのはニーズなんですが、子供の内面に対するアプローチは明確なニーズとして表面化していないんです。だから価値に置き換えるのはすごく難しい。でも子供たちにとって必ずプラスになることやと信じているし、僕はこれを貫いていくことを決めました。だからそれに対しての迷いや不安は今はないですね。

──まさに生きることそのものが冒険って感じですね。お金、収入の不安とかもないんですか?

実は元々すべての活動をお金に結びつけなくてもいいんじゃないかという思いは自分の中にずっとあったんです。その時はお金にならなくてもいつか何かしらかの形で返ってくることで生きていける、そういうことを信じたいという気持ちもずっともってたんですが、信じきることができないブレーキになっていたのがまさに食べていくことの不安ですよ。でも、今回の体験で、走りながら今までのいろんな出来事とか経験とか考えとかをもう1回新しいフィルターを通して考える中で再認識したことがあります。

僕のやってる活動って現金化しにくいので、段々お金がなくなってきたときに、即効性のあるものに頼りたくなりますよね。どこかに営業しに行った方がいいんじゃないかとかバイトしようかなとか、どうしたらお金がすぐ貯まるかなとか考えちゃう。でも、そういうものが、「こういうことをやってみたい」という本当に心から湧き上がってくる気持ちを鈍らせるんです。

──どういうことですか?

多くの人はある程度保証とか見通しのつくことじゃないとやりたがらないですよね。例えば1時間働いたら800円もらえるから働くとか。でも僕がやってることって1年やってもお金になるかどうかわからない。僕の活動に価値があると思ってくれる人がいなければ単なる旅になっちゃう。

だからずっと信じきれてなかったんですが、今回は不安に感じるレベルを超えてお金がゼロになっちゃった(笑)。でも子供たちのお陰で旅を続けようという気持ちが生まれた。こういうことって今までなかったんですよ。お金がゼロになったらお金を得るために動かないといけないのに、自分の中から自然に湧き上がってくる「まだ走りたい」という思いの部分で動いた。

お金がゼロになったら無理でしょ、普通。生活できないから。でも今回の旅では特別な条件が重なって、非日常の中でお金に頼らなくてもなんとかなるチャンスがあったんです。そこで動いたのが何だったのかというと、人の善意ですよ。僕が今までもしかしたら築き上げてきた信用というか恩の部分が人の動きという形として初めて見えた。人の思いが繋がっていくのが見えた。そして、全然知らない人がその思いをもって僕に接してくれるのが見えた。

それって僕の直接的な恩送りじゃないけど、グルっと回って返って来たという感覚なんですよ。それで最後の1ヵ月間自転車旅をさせてもらえて、自分の思いが成し遂げられて帰ってきたでしょう?だからすべてをお金に紐付けない生き方っていうのを信じていいじゃんって思ったんです。

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▲5月8日~17日までオリンパスプラザ東京で行われた西川さんの写真展にて。13日に開催されたトークショーは立ち見客も出るほどの人気ぶり。大いに盛り上がった。

世の中のニーズに応えられれば、それは「仕事」になる

──なるほど。そこでも仲間の存在が大きく影響したんですね。

僕のやってることをずっと見守ってくれてた仲間は何かトラブルが起こる度に僕にメッセージを送ってくれたわけでもないし、コメントを書いてくれてたわけでもないですよ。でも僕が彼らのことを意識せずにFacebookに書いた「それでもまだ旅を続けたい」という言葉を受け取って、彼らは動いてくれた。それはたぶん、僕が発信したことが彼らに届いてて積み重なったものが彼らの行動に繋がったと思うんです。

よく「恩送り」とか「ペイフォワード」と言われていることは、僕も信じたいな、できるときにはやりたいなと思って今まで生きてきたけど、ほんとに一周グルっと回って返ってきたという強烈な体験というのは今までなかった。でも今回のこの体験で、もうこれ信じ切っていいなと思ったわけです。

僕がずっと子供に言ってきたのは「世の中のニーズに応えられれば仕事になる」ということ。でも僕がやってることはみんなが声に出して「ほしい」と言うわけじゃないけど、もしかしたらどこかで求めている人がいるかもしれないという潜在ニーズにタッチしていると思ったんですよ。それはおそらくこれからの社会でいつか日の目を見る時が来ると思えたから、僕がやってることは間違いないという自信がついたんです。だから、確かに仕事としてやる場合、お金は必要で、現金化できるラインに達している活動と達していない活動があるんですが、後者の活動の方のウエイトをもっと増やしてもいいんじゃないかと思ったんです。

短期的、直接的な見返りよりも“ペイフォワード”を信じたい

こういうことをFacebookに書いた日、めっちゃおもしろいことが起こったんですよ。大学病院から講演の依頼が来て、先生と打ち合わせをしたら思いが同じだったのですごく盛り上がってぜひこういう感じでやりましょうということになりました。その時は講演料の話なんかもしてないんですよね。先方が出せる額をいただけたらいいかなと。なぜなら僕自身がやりたいと思ったことだから。そしたら帰宅した後に先生から「申し訳ありませんが捻出できる予算が全然ないということがわかりました」というメールが来たんです。

最初はおっとっと…って思ったけど、すぐに「待てよ。早速来た。これチャンスや」って思ったんです。こういうふうになりたいなと思ってFacebookに書いたやつの、第1弾がその日のうちに来た。今回、自分がこうやりたいという旅が現実になったように、僕がこうありたいと思ったことが早速来た。最高やないかと。

そんで、この話をたまたま会ったいつもお世話になってる人に何気なく言ったら、なんと「じゃあ俺がそれを仕事にする」とその場で返ってきたんですよ。うれしいしびっくりですよね。また来た!って思いました。

これなんかわかりやすい例ですが、こういうことがこれから増えていくんじゃないかなと思いますね。そもそもお金ってめっちゃ不安定じゃないですか。ある国の大統領が代わるだけであっちゅう間にお金の価値が上がったり下がったりするし。政治や経済のことって自分ではどうしようもないことですよね。

あ、今思いついたんですが、安定しないものに寄りかかるよりも、安定してるものに寄りかかった方が自分の心は健康でいられますよね。それが多分「恩」の方。自分が裏切らなければあんまり増減しない。裏切ればあっという間になくなって、積み上げるのにも時間がかかるけど、すごく信頼していい価値なんじゃないかなと思います。

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▲福島県新地町の駒ヶ嶺小学校での帰国報告会にて

──では今後も経費やギャラが出なくても、自分がやりたいと思ったらやるんですか?

相手の思いを聞いて僕がやりたいと思ったらやるんじゃないですかね。多分、今回のこの気付きは時間が経っても消えにくいと思います。今やろうとしている授業や講演はそんなにお金もかからないし、体一つでその日その場所に行けるだけの交通費さえあればできることだから。

いろんな人にごはんをごちそうしてもらってるんですが、今までは西川が情けない、頼りないと思うからごちそうしてくれてはるんやと思っていたのですが、それを自分が生み出している価値と置き換えてみたらおこがましいけど理にかなってるんですよ。僕が提供する価値を受け取った人ができる形で返してくださってる。それがごはんを食べさせてくれることだったり、家に泊めてくれることだったり。サービスの交換ですよね。僕が何かをあげて、その代わりに何かをいただくという。おもしろいですよね(笑)。

──これからも旅を続けるということですが、今後の旅の予定は?

今回、時間的なリミットでメキシコシティまでしか行けなかったので、今年(2017)の6月にまたメキシコシティに飛んで、そこからスタートして、当初のゴールに設定していた南米コロンビアを目指します。

──また行くんですね。今度の自転車冒険も旅の無事を祈ると同時に、どんなことが起こるのかも楽しみにしてます。

ありがとうございます。頑張ります(笑)。この記事を読んでくださった人も今日ここで僕の仲間になっていただければうれしいです。

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文/写真:山下久猛 写真提供:西川昌徳