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全国1200ヵ所設置、保育料は平均約6000円!「ヤクルト保育」が愛され続けるワケ

 待機児童の問題が取りざたされる中、かねてより保育所を設け、子育てと仕事の両立が図れる職場環境として、定評のあるヤクルト。ヤクルトレディの拠点で約2500か所あるセンターに対し、保育所は約1200カ所運営されている。

 「真心」と「人の和」を大切にするヤクルトの保育システムはどのように発展してきたのか。株式会社ヤクルト本社宅配営業部の筒井真理子さんと保育士の資格を持つ君塚奈美さんに話を聞いた。

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▲君塚奈美さん(向かって左)、筒井真理子さん(向かって右) 

ヤクルトの保育システムは「助け合い」から始まった

 現在のヤクルトレディの原型である「婦人販売店システム」が始まったのは1963年。本社でも大々的なPRを行ったことから、それまで専業主婦として過ごしていた女性たちが多く現場で働くようになった。

 当初は、朝のお届けがメインで、一般の人々が目覚める頃には仕事を終えて帰宅するスケジュールだったため、保育は特に必要とされていなかった。その後、時代の移り変わりとともに昼まで業務が発生するようになったため、子どもの預け合いが自然と行われるようになり、徐々に全国的に広まっていった。そうした流れを汲んで、ヤクルトの販売会社が保育所を正式に運営するようになったのが約40年前だ。その結果、保育所に魅力を感じヤクルトレディになる女性の数が増え、ピーク時は約6万人に達した。主婦の働き先が限られた時代に、子どもをしっかりと預けられるシステムを構築したことによって、ヤクルトレディの数は伸び続け、並行してヤクルトの販売本数も飛躍的に伸びていった。

併設型と離接型の2種類ある保育所システム

 現在、約2500か所のセンターがある中で、保育所が併設もしくは離接するセンターは約1200か所。利用者は全国のヤクルトレディのうち7965名で、少子化に伴い、その数は減少傾向にある。

 保育所にはセンターの中や隣にある併設型と、別の場所にある離接型が2種類あり、その多くは併設型だ。1センターに対して、子どもが一人しかいないような地域は、送迎バスを使い、ひとつの保育所に子どもを集めるといったケースも増えてきている。

 ヤクルトの保育所の大きな特徴として、保育料のお手頃感がある。通常、保育施設を利用すると数万円を覚悟しなければならないが、ヤクルトの場合、各地の販売会社によって価格設定は異なるものの、全国平均約6000円と安い。また、二人目の子どもからは半額もしくは割引価格で子どもを預けられる保育所も多い。もともと、ヤクルト保育所は「互いに困っているから、助け合いましょう」という母親同士の交流から始まったため、高額な保育料で経済的負担を負わせないようなシステムが構築されている。

 

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▲ヤクルトレディからのみ購入可能な「ヤクルト400」とカルシウムも摂取できる「ジョア」

異年齢で少人数に合わせた独自のカリキュラム

 ヤクルト保育所は、1歳から2歳の子どもを中心に、1保育所あたり、約10人前後の子どもを預かる。

 共働き家庭の増加とともに、認可外の保育所が年々増えているが、その一方で、保護者から求められる保育のレベルも高くなっているのが現状だ。ヤクルト本社では7年前から全国の保育所にメンテナンスを入れる保育チームを結成。全保育所には、法律に基づいた保育を実現するため、本社の保育チームが作成したカリキュラムを全国の保育所に配布。一般の保育マニュアルは年齢別になっているものが多く、異年齢で少人数の子どもが集まるヤクルト保育所では利用できないことがあるため、異年齢でも遊べる独自プログラムを本社で開発し、全国の保育所に提供している。また、隔月ごとに保育の情報誌が配布され、最新の保育の情報や行事のやり方が共有される。

「異年齢で遊ぶことの最大のメリットは、下の子は上の子から刺激を受けつつ、上の子は下の子への思いやりを育めることです。10人前後の少人数制であるがゆえに、自然と保育士(者)との関わりも密になります。そのため自立が早まり、面倒見のよい子に育つといった声もよく聞きます」(君塚さん)

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「子育てを気軽に相談できる場所」である強み

 核家族化が進む中、身近に保育のプロである保育士(者)に子育てを相談できる環境があるのも、ヤクルト保育の大きなメリットだ。

 「例えば、おむつ外しのトレーニング。本当に初めての子育てをヤクルト保育士(者)から学ぶケースも多々あり、非常に役立っていると耳にします。また、周りが働きながら子育てをしている仲間ばかりなのも、子どもが病気になったときなど仕事の調整をさせてもらいやすく、心強いです」(筒井さん)

 また、本社では、こうした体制をサポートするためにフリーダイヤルを開設。保育士(者)や販売会社がフリーダイヤルで問い合わせできる体制を整えている。相談内容によっては、本社が直接保育士(者)や販売会社に対応することもあるそうだ。

 問い合わせで最も多いのは、児童の病気やアレルギーの受け入れに関する相談。病気も多様化しており、自分たちで受け入れてよいのかどうかの判断がつかないといったケースが増えているという。その場合、本社側で自治体、小児科医などにヒアリングし、内容を確認してフィードバックするようなかたちで対応している。

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 家族全員がゆとりを持って過ごせるワークライフバランスが理想

 共働き家庭で、帰宅時間が遅く、家事が負担になっているという女性は少なくない。けれど、ヤクルトレディのタイムスケジュールは、午後2時から3時には帰宅できることから、残りの時間を家の用事や家族と過ごす時間に充てることができる。ゆえに10年20年と長期に渡り働いている人たちも少なくない。中にはヤクルト保育所で育った人がヤクルトレディとなり、自分の子どもをヤクルト保育所に預けるといったケースもある。

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 「共働き家族で円滑に家族生活を継続させるために大事なのはゆとりだと思います。ゆとりを持って子どもの成長について話せる時間を親がキープするためにも、自分たちがクタクタにならないような環境作りは大事です」(筒井さん)

 「保育士目線で見ていると、子育てしているお母さんたちは、年々孤独になってきているなと感じます。周囲から求められるものも大きくなっているし、お母さん自身の求めるものも大きくなっているのに、子育てを相談できる相手がいないというケースが目立ちます。そういう意味で、ヤクルトには子育て中の女性たちを孤独にさせない文化が根強くあって、保育所にはそれがよく反映していると思います」(君塚さん)

 

取材・文・撮影 山葵夕子