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リクナビNEXTジャーナル

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【まとめサイトの画像転載は違法?合法?】著作権のプロに聞く「コンテンツの守り方と使い方」

注目の企業 ピックアップ

 SNSにアップした画像が、知らぬ間にキュレーションサイトで使用されていた。好きな歌手の新曲をカラオケ店で歌っている様子を動画サイトにアップした。一見、どちらも著作権法違反のような気がしないでもないけれど、果たして…? 

 インターネット時代の著作権法の考え方は複雑かつ変動的。ゆえに、違法性の判断がつきにくく、悩ましく思うことが増えている。

 「情報のシェア」を目的として生まれて以降、日々変貌を遂げ、新しいスタイルのメディアやサービスが次から次へと登場しては消えていくインターネットの世界。そのなかで、著作権法をどのように捉えればよいのか。また、自らのコンテンツを守り、他者のコンテンツを正しく借用するには何が必要なのか。著作権、知的財産権のスペシャリストである、駒沢公園行政書士事務所の大塚大氏に話を聞いた。 

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大塚大氏

駒沢公園行政書士事務所代表。行政書士(特定行政書士)/知的財産管理技能士1級(コンテンツ専門業務)。著作権・知的財産権にかかわる業務、契約書作成や知的財産権取引のコンサルティング、および公認不正検査士(CFE)としてのライセンス監査・不正検査等を行っている。2015年6月より東京都行政書士会知財経営会計部担当理事。

 

「マネしないで!」といえる権利が著作権

――「著作権」とは、そもそも、どのような権利なのでしょうか。

現在、小学6年生にも著作権教育を行っていますが、子どもたちに語りかけるときには、「みな、何かを作りますよね。そのときに断りなくマネされたら嫌ですよね。その『嫌だよ』と言える権利が著作権です」と説明しています。


――他者の著作物を使用する際、引用・転載・転用など、さまざまな言い方がされていますが、その違いはなんでしょう。

 「転用」というのは法律用語ではないので、私たちは使いませんが、「引用」や「転載」は著作権法に記載されています。

 引用は第32条1項に書かれてあり、一定の条件を満たしたら、「正当な範囲内」で使うことができると定められています。一方、転載は著作権法の第32条2項のことで、国や地方公共団体などの機関が発表した資料や報告書について、そのまま記述することが可能です。

 (引用)

第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)

 

 ――「引用」と「盗用」の違いについては? 分量で変わるものなのでしょうか。

 引用の要件を満たせば、場合によっては、著作物全部を利用することも可能です。ざっくり、以下のような視点からの判断となります。

 ・必要不可欠
 ・必要な範囲内
 ・出典明示
 ・使うものと使われるものの区別

 短歌や俳句の評論であれば、著作物全部の引用が必要になると思います。 歌詞も評価のために全文を掲載して分析する「必要」があるのであれば、全文掲載が可能です。

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デジタル時代に入りグレーゾーンが増加

――紙の時代に比べて、デジタル時代はかなりグレーゾーンが増えてしまった気がするのですが、有識者の方々の見解はいかがでしょう。

 著作権法は1970年制定で、もともと紙(アナログ)を対象とした法律なんですね。デジタルに関しては、後から補足しているので、そもそもそこで歪みが生じています。

 たとえば教育現場で、新聞などの資料を先生方は自由にコピーして配布することができるのですが、一度作成した資料をサーバーに保存して、また印刷して配布すると、それは著作権法違反になってしまうといった具合です。教育現場での著作物の使用は、よく議論にあげられています。

 デジタル時代に入り、著作権法違反なのかどうかがわからないグレーゾーンが増えたため、日本でも米国のフェアユース(米国著作権法には、その著作物を公正利用する行為には著作権の効力は及ばないという包括的な規定がある)のような法令を盛り込んだほうがいいのではないかという議論はここ10年くらい続いています。しかしながら慎重論も多く、法改正には至っていません。 

知らぬ間に断りなしの転載を許している?利用規約の重要性

――キュレ―ションサイトやまとめサイトが続々と誕生していますが、個人が自分のブログやSNSにアップした画像を運営側やユーザーがその個人の断りなく掲載し、「著作権法違反だ」と捉えるひともいます。この問題に対して、有識者のみなさんの見解を教えてください。

 意外に思われるかもしれませんが、議論になっていないのが現状です。権利者からの苦情が正式には届いてないせいかもしれません。

 ユーザーが気をつけるべき点としては、SNSサービスやブログサービスに登録する段階で、利用規約をしっかりと読み、その内容を吟味することです。というのも、利用規約内で「著作者であるユーザーが掲載したコンテンツを、他者が許可なく使用することはできない」などと明記されていれば、無断転載された際に運営会社に対してクレームを入れ、取り下げてもらうことはできます。

 しかし、「SNSやブログツールを無料で提供する代わりに、自社のサーバーにアップされたコンテンツは、自由に使わせてもらいます」といった内容が記されていたら、たとえ自分が書いた文章や描いたイラストであっても、他者が自由に使える可能性が出てきます。

 

――ブログサービスやSNSに登録する際、大概は利用規約を隅から隅まで読まないと思いますが…。そこに重大なことが書かれてあるということでしょうか?

 そのとおりです。中には、事業として広告収入を得るために、「自社のプラットフォームにあるコンテンツを第三者に貸すことを許可している」とまで書かれている利用規約も存在します。自身が作成したコンテンツを無断で使用されたくなければ、まずは利用規約をしっかりと読み、自分のページにアップしたコンテンツが、その後どのように使われるかをあらかじめ検討することが望まれます。

 

――ただ、複数のSNSやブログツールを使用している場合、すべての利用規約を見比べるのは大変です。ブログサービスの利用規約内で「コンテンツを第三者に貸すことを許可している」と書かれてある場合に、個人のページで「無断転載・無断引用禁止」といった一文を書いたら、どちらが優先されますか。

 著作権者がその意思を明記していたら、勝手に使用することは原則禁じられています。けれど、引用禁止と書いてあったとしても、必ずしも自分の主張が通るわけではありません。また、他人が著作物全体を引用できるケースも存在します。たとえば、写真の論評を書く際の写真の引用です。当然のことながら、一部だけを抜き取ったとしても、全体を見せないことには、その写真の論評は書けないですよね。

 結局のところ、著作権法に沿ったやり方での引用であれば、たとえ私人が「引用禁止」と書いたとしても、それは使用可能ということになります。基本は、合法的なやり方で引用しているのであれば、よいということになります。

 

――そのほか、気をつける点はありますか。

 文章であれ、写真であれ、イラストであれ、自分が公に出す場合は、「著作権上では引用されてもかまわない」という認識を持つことでしょうか。但し、裁判になったときは証拠になるので、使用されたくないという意思がある際は、しっかりとその意思をわかりやすいところに記載しておくことをおすすめします。

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著作権法違反が認められなくても違法と判断されるケースも

――複数メディアに掲載されている見出しをコピペしてリンクを貼って、まとめサイトを制作し、そのページ内に広告バナーを置く。こういったサイトは違法になりますか?

 かつて「読売オンライン事件」というのがありました。読売新聞社が、ビジネス上の、金銭が絡む契約を結んでYahoo!に記事提供していたのですが、そのビジネスモデルを他社が真似て、見出しを勝手に使用していたため、読売新聞社が著作権法侵害で訴えた事件です。結論として、その裁判では、新聞の見出しは短いので著作権法違反は否定されたうえで、すでにあるビジネスモデルをないがしろにしたことを不法行為として認め、被告側に損害賠償の支払いを命じられました。なので、現状では裁判をやれば違法だということになります。


――とはいえ、そういったサイトは極めて多いようにも感じますが。

 合意には、「明示の合意」と「黙示の合意」があります。「ここにあるコンテンツは使用していいですよ」とその意思が明確で、はっきりしている場合は「明示の合意」、何も言わず黙っているのが「黙示の合意」です。著作権法の建前からすると、違法であっても、権利者が黙認であれば「黙示の合意」があるという解釈も可能ですし(適法)、権利者が実際に動かない場合は、適法違法について議論しても仕方がないようにも思います。

 一方、別のサイトにアップロードされた違法コンテンツへのリンクを集めた、いわゆる「リーチサイト」については、著作権に関する審議会でも議論の対象になっています。 

クリエイティブ・コモンズ、TPP…国際間で広がる著作権議論

――YouTubeで自分の好きなアーティストの音楽動画をアップしたり、演奏したりした場合、どこまでが著作権法で守られる範囲内で、どこからが著作権法違反になるといった定義はあるのでしょうか?

 YouTubeに関していえば、JASRACが管理しているコンテンツは非商業目的の公開ならOKです。2008年に両者の間で楽曲使用許諾契約が結ばれ、ユーザーがJASRACが管理する楽曲を演奏したり、歌ったりした動画をYouTubeに投稿できるようになりました。但し、CD楽曲やプロモーションビデオは違法です。また、企業が主体となった利用もNGです。

 このルールは日本国内のみで、あくまで日本の楽曲を日本で使うことに限っています。別途許諾を得ない限り、外国に住んでいる人が日本の楽曲を使用して演奏する動画を投稿する場合は、原則として権利処理が必要になります。YouTubeは、その国の著作権法に沿って、原則ルールを定めています

 

――多言語翻訳ツールの普及により、海外サイトの翻訳記事も広く見受けられます。海外サイトのコンテンツを翻訳した記事の著作権はどのように判断すればよいでしょう?

 著作権は、ベルヌ条約などによってミニマムのところで世界共通して保護されます。ですから、無断で翻訳して、そのまま掲載してはいけません。裁判になるときは原告側の国で行われるのが原則です。

 

――クリエイティブ・コモンズの画像に関してですが、どこまでの範囲なら画像アプリを使うことができますか?

 使い方のルールが決められていて、改変についても「改変禁止」となっていなければOKです。使い方の組み合わせとしては6種類あります。

 

――TPPの知財に関しても、協議がされているそうですね。

 一番大きな話だと、著作権の保護期間が現在50年ですが、これが70年まで引き伸ばされることが閣僚級レベルでは合意しています。あとは現在の法律では、権利者が被害届を出さないと事件になりませんが、親告がなくても警察が独自に動けるようになるといった「非親告罪化」についても議論されています。こちらに関しては表現の自由を狭めるのではないかと懸念する声も多いです。
 

――最後に、知らぬ間に著作権法違反をしないために何を心がけておけばよいでしょう。

 私たちが小学校の著作権法教育で教えているのは、まず「他人へのリスペクト(敬意を払う)」です。「他人のものを使う際は、誰々さんの著作物ですと必ず出典を明示しましょう。その際は、好き勝手に貼り付けず、きちんと作法どおりに行いましょう」と子どもたちには伝えています。あとは、必ず自分の意見や自分の言葉を書くためのツールとして、著作物の転載や引用を行うことです。他者の著作物をコピペして、言葉尻だけを変えるのは、もちろん違法です。

 

取材・文 山葵夕子 写真 ヒダキトモコ