読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる
キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXT JOURNAL】

一人の自由な時間のために。はじめての一人飲みのススメ

コラム ライフ ピックアップ

f:id:blog-media:20160310172802j:plain

外出先や出張先で一人の食事時間を楽しむ中年男性について描いた「孤独のグルメ」や、一人飲み大好きな26歳女子を描く「ワカコ酒」など、一人酒や一人メシをテーマにした漫画・ドラマがブームになっています。

はじめまして。「日毎に敵と懶惰に戦う」というブログで、日々の出来事や酒、食、アートなどについてつづっている在華坊と申します。私も昔から一人飲みが大好きで、自分の住む街でも、出張先でも、一人飲みを大いに楽しんでいます。

ですが「一人飲みを楽しんでいる」と言うと、「一人なんて寂しい」「みんなでワイワイ行く方が楽しいじゃない」と返されることがあります。一人の外食には苦手意識をお持ちの方も多いようです。

そういったご意見も、ごもっともです。私も、一人で飲んでばかりいるわけじゃありません。気の置けない友人とたわいない話をしたり、同級生と昔話に花を咲かせたり、女性と静かなふたりだけの時間を楽しんだり、会社の同僚と普段は話せないような話をしたり、退職間際の人から社内で過去に起きた興味深い話を聞いたり……。それはそれで勿論楽しい。だけど、一人の時間を楽しみたくなるときがあるのです。

仕事に忙殺され、家に帰ったらごはんを食べて、見たいテレビ番組の録画を消化して寝るだけ。気持ちを抜く場所がない。住み慣れた自宅では気分転換できない。今日はまっすぐ家に帰る気分にならない……。そんなときは一人の自由な時間を楽しむため「一人飲み」をしてみてはどうでしょう。

また明日から頑張るために、一人で飲みに行く

まずは「一人で飲む夜」を想像してみましょう。ふらりと、自宅と職場の間にある店に立ち寄る。カウンターに腰を下ろし、しばらくぼんやりとメニューを眺め、頼んだ食事とお酒を静かに楽しんでいると、閉じていた蕾(つぼみ)が少しずつ開くように、ゆっくりとほろ酔いになって1日の緊張が解けてくる……。ときには、約束もしていないのによく店で一緒になる人、利害関係がなんにもない人、名前も職業も家族構成もよく知らないけど飼い猫の名前だけは知っているような間柄の人と、くだらない話をして笑い合います。

どうですか、楽しそうじゃありませんか?

一人の時間を大事にして、気持ちをリフレッシュして、また明日から頑張ろうとスッキリ眠るために、一人で、飲みに行くのです。睡眠中、夢を見るのは脳内の記憶を整理するためだ、という説がありますが、一人で飲む時間も似たようなものだと思います。仕事やその他、複雑な人間関係に揉まれて形を留めなくなっている自分の“形”を整え直し、自分を取り戻し、また明日を迎えるための、大切な時間なのです。

「一人で飲める店」をどう探すか

さて、一人で飲もうとすると、当然、店には一人で入ることになります。はじめての人には、ここのハードルが高い。チェーンの牛丼屋やラーメン屋には一人で入れても、個人営業の店で、多少は腰を落ち着けてみようという店に一人で入るのは難関です。もし雰囲気が合わなかったら、居心地が悪かったら、常連しか知らない独自ルールがあったらどうしよう……と、躊躇(ちゅうちょ)するのも無理はありません。

f:id:blog-media:20160310172807j:plain

最初は「2人」で飲みに行く

私は、はじめから一人で入らなくてもいいじゃない、と思います。例えば、自分の住む街にちょっと気になる店があるとします。まっすぐ家に帰らずに、少し寄り道したくなるような店。そんな店に、まず友人を誘ってみるのです。あまり大勢だとグループのノリになってしまうから、出来れば2人で。そしてカウンターに座って友人と飲みながら、周囲の様子を伺います。

どんなメニューがあるか? 一人でも食べきれる量だろうか? お酒のラインアップは? 一人客も楽しそうに過ごしているか? お客さん同士のコミュニケーションはあるか? 店主の人柄は? そんな様子を観察して、一人で店に来る自分を想像してみます。そしてなんとなく、雰囲気が合いそうだなと思ったら、次は一人で来てみます。合わなそうなら、また別の店を探せばいいのです。

そうやって、気負いなく一人で入れる店が一つ作れれば、別の店を開拓することも難しくありません。最初の店に慣れたら、そこの店主に、あるいはそこで話した人に、このあたりにオススメの店あります? と聞いてみてはどうでしょう。一人客が多い店の店主やお客さんは、近隣の酒場情報のもっとも信頼できる情報源です。雰囲気が合いそうな店を教えてくれることでしょう。

ちょっと雰囲気が合わない店に入ったとしても、自分は一人飲みには向かない、とは思わないでください。その店が合わなかっただけのこと。また別の店を気軽に訪れてみてください。「しまった」と思ってもすぐ店を出られるよう、はじめての店ではいきなり沢山注文せず、1品2品頼んでから様子を見てみたほうがいいと思います。

女性は小さなビストロからはじめてみる

女性の方は、最初は小規模なビストロをオススメします。小料理屋だと男性ばかりで馴染みにくかったり、バーだとその店のルールのようなものがあったり、出会い目的の人がいたり、とっつきにくいこともあります。ビストロなら、比較的客層が若く女性客もいますし、濃密すぎる人間関係があまりないことも多いです。また、料理に拘(こだわ)りのある店がほとんどなので、料理を媒介に店主や他のお客さんとの会話のキッカケが作りやすい。まずはビストロからはじめて、近所の入りやすいバーなどを教えてもらう、というのもいいでしょう。

とにかく、店探しは「慣れ」です。キッカケはなんでもいいからまずは一人飲みの実績を作り、あとは店の外観と雰囲気はこんなふうに繋がるのだな……という回路を少しずつ組み立てていきましょう。

出張先でも「一人飲み」できる店を探してみる

その土地の味や酒を味わったり、店の人や他のお客さんにその地域で話題になっていることを教えてもらえたりと、出張先での一人飲みもオススメです。存外、酒場で得た情報が、翌日の仕事の会話の端々に生きたりもします。

私がはじめて一人で入った店も、出張先の松江の居酒屋でした。ガイドブックで見付けた雰囲気のよさそうな老舗の店でしたが、店の外からは中の様子が見えず、満員だったらどうしょう、逆に誰もいなかったらどうしよう……と店の前を数回、入るか入らないか迷いながら、行ったり来たりしました。

ガラリと引き戸を開けると、優しそうな女将さんが笑顔でいらっしゃい、と言ってくれて、緊張がだいぶほぐれました。店には、外国人観光客の4人グループがおり、出てくる食べ物の一つ一つに歓声をあげたり、店の方とも身振り手振りを交えながら楽しそうにコミュニケーションしたりしていました。ずいぶん長い時間いたみたいですが、妙に安いお会計で出て行ったそのグループを横目で見ていて、気負って注文する必要はないし、店での過ごし方は人それぞれなのだな! と、気持ちが楽になったものです。

観光客だけでなく、地元の人も多く利用していて、客層に多様性があることが、この店の雰囲気をよくしている理由の一つだったようです。以降「地元の人も観光客も出張者もそれぞれ利用していそうな店」が出張先で店を選ぶときの一つの目安になりました。

一人の時間は、自分だけの自由な時間

f:id:blog-media:20160310172804j:plain

さて、そうして一人で入った店で、どう過ごすか。一人飲みについて語っている記事には時々、メニューは迷わず選べとか、オススメを聞くなとか、スマホを弄(いじ)るなとか、堅苦しいことが書かれていることがあります。一人飲みには難しいルールがあるわけではないので、そんな忠告に身構える必要はありません。もちろん、泥酔しないとか、暴れないとか、注文もせずにいつまでもダラダラ居着かないとか、カウンターで寝ないとか(すみません、私は時々寝てしまいます……)、最低限の常識は必要です。

一人の時間は、自分だけの自由な時間。仕事のあれこれや私事の煩わしさから離れて、自由になる時間に難しいルールはいらないのです。いいじゃないですか、スマホ弄っていても。写真を撮ってもいい店なら、Twitterにアップして、タイムラインの向こうにいる人と会話しながら飲む、そんな一人飲みも、また楽しい。誰とも話さずに静かに考え事をする。お客さん同士や、お客さんと店主の会話に耳を傾ける。興味深そうな話ならちょっと混ざってみる。またそこから離れてお酒と向き合う、あるいは本を読む……。

形にこだわらず、自分なりの過ごし方を見付けてください。自分はふらりと入った近所の飲み屋で知り合った人を媒介に、本に寄稿させてもらったり、落語会の前座をやらせてもらったり、展覧会に参加したり、イベントに呼ばれて登壇して喋ったりと、様々な不思議な縁がありました。仕事とも家庭とも違う、まさに「サードプレイス」と呼べる場所を見付けられたのです。しかし、それも運次第、人それぞれ。自分なりの、大切な一人の時間を見付けてほしいと思うのです。

著者:在華坊 (id:zaikabou)

在華坊

1978年生まれ。横浜、野毛在住。出張ついでに飲み歩くことが楽しみな会社員。横浜の話題や出張の旅先での酒場めぐり、美術館めぐりの話が多いブログ「日毎に敵と懶惰に戦う」を2004年から11年間更新中。