©中村尚儁/集英社
突然ですが、「マンガ」のあるシーン・ある言葉に、ハッと気づきを与えられたこと、勇気づけられたこと、ありますか?
普通に仕事をしているだけではなかなか気づくことのできなかった考え方など、「マンガから学べた!」ってこと、あると思います。そんな仕事に人生にジンジン効いてくるマンガの1フレーズを、筆者の独断と偏見で選定、解説までしてしまうこのコーナー。
今回は、サッカーを舞台に1話完結型で人間模様を描くマンガ『1/11』(中村尚儁 / 集英社)より、組織の都合でやりたいことではない仕事を任された際の向き合い方を説く言葉をご紹介します。
目次
必ずしもやりたい仕事ができるわけではない
就職活動を経て入った会社で、自分の希望する部署に配属されなかった。
「やりたいこと」があって転職をしたのに、人事異動で全然違う部署に配属されることになった。そういった現状に悩みや不満を抱えている方、多いと思います。
組織の中で働いていく以上、自分の希望が通るとは限らず、時に「やりたいこと」ではない仕事を任されることになったりします。
自分のやりたいことがはっきりしている人ほど、そういう状況では仕事に対するモチベーションが下がりがち。ですが組織に所属している以上、そういう機会は誰にでもあるものですから、そこでどう過ごすか、今後の社会人人生に大きな影響を及ぼすものとなるでしょう。
「やりたいこと」ではない仕事への向き合い方を教えてくれる1フレーズがこちら!
“どの花も必要とされたところでただ一生懸命キレイにその花を咲かせようとしてる”
©中村尚儁/集英社
プロサッカー選手として5年目を迎えた青柳大貴は元々フォワードとして活躍していた選手。ですが半年間ケガで戦列を離れている間にフォワードのポジションを他の選手に奪われ、ある日コーチからディフェンダーへのコンバートを命じられることになります。しかし青柳には、そのコンバートを受け入れられない理由がありました。
青柳にはチームのイベントでコンパニオンをやっていた年上の、藍という彼女がいました。彼女は大学生のころスカウトされて小さな芸能事務所に所属し、モデルやコンパニオンの仕事をしながら、いつか有名なタレントになることを夢見ていました。しかしある日、藍から妊娠したことを告げられます。そして同時に、芸能事務所が藍の契約を更新しなかったことも。
藍に結婚を申し込んだ青柳は、「こうなったら俺が成功するしかない」と決意を固めます。そうして挑んだ5年契約のプロ5年目。まさに勝負の年と考えていたタイミングで、ポジションのコンバートを伝えられたのです。
ディフェンダーとしてチームの練習に参加するも、納得ができない青柳は、「ゴール」という結果で認めさせようと無理に攻め上がり、逆にチームに迷惑をかけるなど空回りを続けてしまいます。イライラを募らせ、藍にも八つ当たりをしてしまう中、ついには試合のベンチメンバーからも外されてしまう。納得がいかない青柳は監督とコーチを表立って批判し、1週間の謹慎処分を受けることになりました。
その帰り道、青柳は藍がパートではたらく花屋の前を通りがかり、「手タレ」として指輪広告に使われていた藍の手が、水仕事でカサカサになっていることを知ります。
「ごめん、俺と一緒になったせいで」
きれいな手と褒められて喜んでいた藍の姿を知っていた青柳は、思わずそう謝ってしまいます。
そんな青柳に、藍がこんな言葉をかけます。
売り物の花はね、野生の花と違って生まれて死ぬまで同じところで咲いてるわけじゃないの。どんな人に買われるか、どこに辿り着くか、見当もつかない。…もしかしたら、ずっとお店のディスプレイにいるままかも…。
でもね、どの花も必要とされたところで、ただ一生懸命キレイにその花を咲かせようとしてる。…ねぇ大くん、わたしも同じなの。
私が事務所を解雇された時、あなたは私を『幸せにする』と言ってくれた。その時にもう、とっくに心は決まったの。
…私はもうモデルでも何でもない。ただあなたを支えるあなたの良き妻になろうって。
私の咲く場所はもうTVの画面や雑誌の広告の中じゃない。
私はあなたの隣で咲く花になるわ
今いる場所で全力を尽くせない人は、気づかないうちにチャンスを逸している
現状を受け入れろ。今いる場所から目を逸らすな。その上で自分にできることを全力でこなせ。
自分なんかより余程覚悟を決めて戦っていた彼女のように…
藍の言葉を受けて覚悟を決めた青柳の言葉です。
ビジネスパーソンとして組織の中で仕事をしていく以上、「やりたいこと」ばかりができるわけではないでしょう。しかし、望んだ部署でなくても、望んだ仕事でなくても、一定の結果を出すことが求められるのがビジネスパーソンです。その時に「やりたいことではないから」と、本気で仕事に取り組まなければなかなか結果を出すことはできません。
チャンスというのは、突然やってくるもの。その時その時に全力を尽くさないと、知らない内に「やりたいこと」につながるチャンスを逸してしまっている可能性があるのです。
どの部署も結果を出せる人材が欲しい、というのが本音のところ。だから「やりたいこと」に辿り着くには、まずは自分がどの領域であっても一定以上の結果を残せる人材であることを会社に示す必要があります。
「やりたいこと」以外の選択肢は、見えていなかっただけの可能性がある
青柳は子どもの頃からフォワード一筋でサッカーをやってきました。その中で結果を出し、自信をつけてきたわけですから、青柳にとってはフォワードというポジションでサッカーをすることがごく自然のことだったのです。
ただそれは、ディフェンスに向いていない、という理由にはなりません。たまたまこれまでのサッカー人生でディフェンスをしてこなかったというだけで、実はディフェンスに向いていて、大成する可能性だってあります。実際のサッカー選手の中にも、監督に才能を見出されポジションをコンバートしたことで世界的に有名な選手へと上り詰めた例はたくさんあるのです。
「やりたいこと」が明確にあればあるほど、他に目がいかず、視野が狭くなっているのかもしれません。
どんな仕事でも本気で取り組んで初めてわかる面白さ、楽しさが存在します。しかし「やりたいこと」ではないからと全力で取り組まなければ、その面白さに気付けるはずもありません。
「やりたいこと」ではないことに取り組まなければいけないときこそ、全力を尽くす。このことを常に心がけたいものです。
まずは必要とされたところで花を咲かせよう
「やりたいこと」を明確に持つことは素晴らしいことです。でもそれは、それ以外のことに全力を尽くさなくていいということと同義ではないのです。
やりたいことでなかったとしても、今いる場所で全力を尽くし、結果を残す。
「やりたいこと」につながるチャンスは、そうしなければ得られないと考えるべきでしょう。
また「やりたいこと」というのは、自分がそれまで経験してきたものに基づいて生まれるケースがほとんどです。つまり、自分が経験したことのないことは「やりたくないこと」ではなく、「やりたいかどうか、まだわからないこと」なのです。「やりたいこと」以外いやりたくない、と視野を狭めることなく、もしかしたら「やりたいこと」に変わるかもしれない、という思いでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
監修:リクナビネクストジャーナル