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リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

本当に日本の教育を良くしたいなら「教育評論家」ぶるのはもう辞めよう。

 子を持つ親として、これから自分の子供にどのような教育を受けさせるのか、子供の教育を取り巻く環境はどうなっていくのか、と教育に関心を持つ人も多いのではないのでしょうか。

 二児の父親であり、長男の小学校でPTAの役員もやっている筆者も、常に気にしているテーマです。先日、「SPEEDA×アカデミーヒルズ 「注目業界の5年後を読む」シリーズ 5年後、日本の教育はどう変わるべきか?」が開催されると知り、是が非でも話を聞きたい!と思い、足を運んできました。今日はその内容の一部をレポートします。

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教育経済学者の中室牧子さん(慶応義塾大学総合政策学部准教授)と、教育の最前線で活動されている松田悠介さん(Teach For Japan 創設者・代表理事)、そして保育業界でイノベーションを起こし続ける駒崎弘樹さん(認定NPO法人フローレンス代表)という教育・保育業界の若手エース3名のゲストが語る、「5年後の教育」。当日、ニューズピックス取締役の佐々木紀彦さんがモデレーターを務めた。

 

 投資すべきは「幼児教育」と「教員の質」

 教育経済学者の中室さん曰く「教育経済学とは、教育を経済学で捉え、エビデンス(科学的根拠)から教育を考える学問」とのこと。

 米国をはじめとする欧米では既にエビデンスベースト(evidence based)の教育経済学的なアプローチから先行研究が進んでおり、「どこに投資するのが費用対効果が良いのか?」については既にある程度答えが出ているそう。
 では、一体どこに投資すべきなのか。

 それはずばり「幼児教育」と「教員の質を高める」の2点に尽きるとのことでした。

 教育において、最も収益率が高いのは「就学前から小学校低学年にかけて」で、教育のシナジー効果を期待できるから。

 かけ算が分からなければ因数分解は分からない。
 因数分解が分からなければ微分積分は分からない。

 だからこそ、国民全体のアウトプットを最大化するためには、幼児教育や初等教育が重要なのだそう。


 さらに、その教育効果を最大化するために最も重要な要素は「教員の質を高める」こと。
 「元々の学力水準が同じ子どもを、能力の高い教員が教えた場合、子どもたちは1年で1.5年分の内容を習得し、能力の低い教員が教えた場合、0.5年分しか習得できなかった」という研究結果が出ているなど、能力の高い教員は、子どもの不利な環境を帳消しにしてしまうほどの効果を持つのだとか。
 自分自身の子ども時代を振り返っても、良い先生が担任だった時は授業が楽しく、勉強にも前向きに取り組めた一方、ニガテな先生の授業はつまらないし、どこか前向きに勉強できなかったもの。教員の質を高めることが、子どもたちの学びを促進するということは経験的にも納得できます。

幼児教育で得られる学力の効果は8歳まで!?

 「幼児教育」と聞くと、早い時期から知識を蓄えることで就学後、勉強への理解が深まると考えがちだが、実は早期教育を就学前の子どもに施すことによって、得られる効果はごくごく短期的なものだそう。一次的にIQテストや学力テストの成績は良くなるものの、8歳になる頃にはその差はほとんどなくなってしまうのだとか。 

では早期教育は無意味か?というと答えは「ノー」。
 「認知能力への影響は限定的」なものの「非認知能力を高める効果があった」ことが認められたそうです。
 非認知能力というのは、意欲や忍耐力や自制心、自分を客観視できるメタ認知能力や創造性、社会的適性などの「OS」にあたる能力のことです。 

 つまり、幼児教育は英語ができるとか算数ができるといった認知能力(アプリ)に対しては影響がないものの、勉強がするのが大好きとか、モノづくりが大好きとか、我慢ができるとか、友達と仲良くなるのが得意といった非認知能力(OS)には効果があるということ。
 人間として魅力的で仕事ができる人は、小手先のスキルだけではなく、こうした人間としてのスタンスの部分が秀でていることが多いですよね。
ぜひわが子にもそうした非認知能力を養って欲しいものです。


日本の幼児教育は十分か?

 子どもたちの非認知能力を高める上で、幼児教育が重要であることが分かりましたが、果たして日本は幼児教育にどれだけ力を入れられているのでしょうか?

 その答えは残念ながら諸外国に比べても幼児教育に力を入れられていません。
 例えば、公的支出に占める教育費の割合はOECD加盟国中最下位ですし、国家予算における幼児教育の予算と、「高齢者」向けの予算の比率は何と1:11。つまり、日本では高齢者に対する予算の11分の1しか、幼児教育に対して予算が割かれていないのです。

 その理由は一体何か?

 この問いに対してフローレンス駒崎さんは「政治に対する関心の差から生まれる世代間格差」が原因であると仰っていました。

 少子高齢化社会で高齢者の人口比率が年々高まっているだけでなく、投票率に代表される政治に対する関心に差がありすぎる。民主主義によって選挙で選ばれる必要がある政治家にとって、高齢者にとってよい政策を訴えるのと、若者や子どもたちにとってよい政策を訴えるのと、どちらが合理的か?と考えた時に、答えは自明。その結果、高齢者向けの予算や政策が充実していき、子ども向けの予算や政策の重要度は下がる一方。
 20代、30代の若い世代が政治に関心を向けるようにならない限り、幼児教育への予算は一向に増えないし、幼児教育が充実するようにはならないのです。

自分の街に「推しメン」議員を持とう。

 とにかく予算が不足している中で、どうしたら幼児教育に対する「投資」を増やせるのか。
 「投資」を増やすためには、他でもないぼくら親世代をはじめとする若い世代から、教育や政策を決める政治にもっともっと関心を持ち行動し続けるしかありません。

 駒崎さん曰く、詳細の子育て・教育系の取り組みは、地方自治体ごとで決められることも多いので、知事や市長・区長といった首長を誰にするのか?というのが大事なんだとか。そのために、まずは選挙に行きましょう、と。


 一方で「選挙に行くのと同じくらい大切なのが、日頃から政治の場にコミットし続けることだ」と駒崎さんは続けます。
 例えば、「陳情」や「請願」といった形で議会に申し出ることもできますし、議員さんに対して直接、日々子育てなど生活をする中で感じたことを、こうしたら良いのに、もっとこうして欲しいと伝えるロビーイング(ロビー活動)も有効です。
 「意見したところで一市民の声なんて聞き入れてもらえないのでは?」と思われるかもしれませんが、陳情や請願は基本的にはちゃんと議会で取り上げられますし、議員さんもロビーイングにきちんと応じてくれるそうです。


 ロビーイングに応じてくれるのにも合理的な理由があります。それはやはり「選挙」の時。
 例えば、東京都中央区の区議会議員選挙では、600票を獲得できれば当選できるのだとか。そう考えると一票はとても大きな意味を持ちます。
 目の前にいる市民の期待に答えることで支持を得られるのであれば、そこに全力を尽くすのが議員さんです。
 筆者もひょんなことから市議会議員さんと知り合う機会があって、ことあるごとに話をするのですが、とてもフラットに話を聞いてくれて、筆者の意見を元に議会で質問してくれたりして、想像していたよりもずっと「政治」との距離が小さかったことに気付きました。

自分の街や学校にコミットすると、不思議と愛着が湧いてくる。

 会の終盤で駒崎さんはIKEA効果についてお話をされていました。
「IKEAの家具って、本当に組み立てるのが大変ですよね。でも人間は不思議なもので、自分で一生懸命組み立てた家具には出来合いの家具よりも愛着を持っちゃうんです。値段は同じだったとしても。」曰く、このIKEA効果はあらゆるところで起こるもので、教育現場においても例外ではないと駒崎さんは言います。
 例えばフローレンスが運営している保育園では、保護者参加型の保育園にしていて、行事の準備など至る所で保護者が無理の無い範囲で「保育園づくり」に参加できるようにしているのですが、そうすると当初は「お客様」だった保護者が、気付けば「乗組員(クルー)」になっているのだとか。
 そうなると、保護者の保育園に対する愛着と当事者意識が増し、見る見るうちに保育園全体の雰囲気が良くなり、子どもの表情もイキイキしていったのだそうです。


 これは小学校といった学校教育の現場でも、政治についても同じ。
 義務感ややらされ感でPTAに関わったり選挙に行くのではなく、当事者意識を持って学校や政治に向き合ってみる。
 それが「教育をよりよくする」ための最大の近道なのかもしれません。

「教育評論家」からは今日で引退しよう。

 Teach For Japanの松田さん曰く「日本の教育は遅れている」と主張する人に限って、「学習指導要領」を全然読んでいなかったり、「教育委員会は閉鎖的だ」と主張する人に限って、教育委員会と接点を持とうとしたことも無い、という人が多いのだそうです。
 外野から「教育評論家」のようにあれこれ指摘するのではなく、どんどん教育現場に入って行動して頂いて、一緒に日本の教育を変えてほしい。
そしてぜひ、教育現場で逆風の中頑張って努力をしている教員のみなさんをただ「批判」するのではなく、「応援」してほしい。
そう仰る松田さんの姿がとても印象的でした。


 外野から口出しばかりする「教育評論家」からは今日で引退して、できるところから教育に関わってみる。
 そんなぼくたち国民一人ひとりの小さな一歩が1億回積み重なることで、日本の教育はもっともっと良くなるかもしれません。

著者:西村創一朗

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1988年生まれの26歳。小学校1年生の長男と3歳の次男の二児の父。大手人材総合会社で新規事業企画を担当する傍ら「父親であることを楽しもう」をモットーに活動するNPO法人ファザーリングジャパン最年少理事を務める。大学一年時に高校生の頃から付き合っていた彼女と結婚し、19歳で父親になる。

プライベートブログ「Now or Never」は月間30万PVを超える。ニュースキュレーションアプリNewsPicksでも精力的に発信を続け、フォロワーは30,000人に迫る。