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想定市場規模は2兆円以上!? マイナンバーで変わるビジネス未来予想

 このところ、連日のようにテレビや新聞で目にする“マイナンバー”というコトバ。正式には『マイナンバー社会保障・税番号制度』と言いますが、実際のところ、私たちの生活やビジネスにどう関わってくるのでしょうか? 

 今回は、いまさら人に聞けない“マイナンバーの基本”から、“マイナンバーを使った未来のビジネス予想”まで、まるっと教えちゃいます。

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 ●最低でも2兆円!? マイナンバー特需で、業界がすごいことに!

まずは、マイナンバー制度の基礎知識から押さえましょう。

<ここがポイント!>

◎マイナンバーは住民票を持つすべての人に配布される

◎おもに税金・社会保障の分野で使われる

◎個人だけでなく、法人にも法人番号が配布される

◎番号の配布は今年の10月から。制度は来年1月からスタート

 

 マイナンバーとは、住民票を持つすべての人に1つずつ、国から配布される「12けたの番号」のこと。おもに税金・社会保障の分野で活用されます。これまで、税務署、市町区村、年金事務所、各省庁など行政がバラバラに持っていた税金や社会保障に関する情報を、“1つの番号で管理できる”ようにしたものです。

 給与や株の利益などさまざまな収入と年金など社会保障にかかわる項目がひとまとめになるわけですから、行政としては業務の効率化につながります。同時にさまざまなお金の流れが明確になるので脱税防止にもなる。きちんと税金を納めている人にとっては、とてもありがたく便利な番号なのです。

 

 では、具体的にどう使われるのかというと、例えば、源泉徴収票、支払調書など税関連の書類や傷病手当金申請書といった社会保障関連の書類にマイナンバーが必要となります。制度のスタートは、来年1月ですから、それまでに私たち会社員は、マイナンバーを会社に報告しなくてはなりません。当然、会社側も、マイナンバーを管理するためのシステム改修をする必要がある。そのため、昨年あたりからシステム改修を請け負う情報処理会社や情報セキュリティ会社、業務ソフトウエア会社などに仕事が殺到。一説にはIT業界にもたらされる経済効果は2兆円以上(!)と言われています。なんとも、壮大な話ですねえ。

 

 しかも驚いたことに、IT業界に限定しなければ、その経済効果は数兆円とも! 

 いったいIT業界以外で、どんなビジネスチャンスがあるというのでしょうか。「マイナンバー制度における新ビジネス」を研究している日本総研・総合研究部門の矢野聡さん、堀米剛さんに“今後期待できるマイナンバー・ビジネス”について教えてもらいました。

 

―――IT業界はマイナンバーが追い風になっています。他業界ではどうでしょう。どんなビジネスチャンスがありますか?

 

「すでに役所でのマイナンバーカードの交付や、各企業のマイナンバーの問い合わせ業務、研修など、IT業界以外でも様々な業務が生まれています。でもそれは、あくまでマイナンバー制度を遂行するにあたって発生したもの。マイナンバーそのものを使って、民間企業が新ビジネスを始めることができれば、業界の常識を変えるような画期的なビジネスが生まれる可能性があります

 

―――えっ!マイナンバーって、民間企業がビジネスに利用してもいいんですか?

 

「現段階では難しいです。実はマイナンバー制度は、情報漏えいに対し罰則規定もあるほど、利用に関して法で厳しく定められているんです。しかし今後、規制緩和で民間利用ができるようになれば、金融や広告、配送の分野で革新的なことが起こり得ます。実際、アメリカや韓国などでは、そういった事例があるんですよ」

 

 

韓国では、レンタルビデオの会員番号やネットの書き込みに、住民登録番号が使われている!?

 

―――なんと!アメリカや韓国にもマイナンバーがあるんですか?

 

「アメリカではソーシャル・セキュリティ・ナンバー(社会保障番号)、韓国では住民登録番号が、日本のマイナンバーにあたるものです。日本と違うのは、両国とも民間企業がビジネスに利用している点。例えば韓国のレンタルビデオ店では、“会員番号=住民登録番号”というケースがほとんどです。レンタルビデオ店が返却していない人をブラックリスト化しておけば、住所・氏名変更後に再入会しようとしても判別できますから非常に便利ですよね。韓国では大学の学籍番号も住民登録番号ですから、日本で問題になっている奨学金の回収も容易くできるでしょうね」

 

―――卒業しても就職先が知られたり、何度引っ越しても住所が分かってしまうということでしょうか。そうなると借金から逃れられませんね(笑) 

 

「逃げられないということは、その分、“個人の信用”にもなるということです。アメリカでも韓国でも、クレジットカードや住宅ローンなどの信用情報に社会保障番号や住民登録番号が利用されています。銀行の預金口座の情報やクレジットカード、住宅ローンの返済履歴をもとにした信用情報で判断されるわけですから、きちんと払い続けている人にとっては、“返済履歴が大きな信用材料”になるんですよ」

 

―――なるほど、ブラックリストではなくホワイトリストですね。日本では会社に長く勤めていることが、金融機関における大きな信用材料のひとつとなっていますが、金融機関がマイナンバーを信用情報として利用できるようになれば、融資に対する常識も変わってきそうです。レンタルビデオ店の会員番号が住民登録番号ということは、どんな属性の人が何を借りたか正確に分かるわけですから、マーケティングにも役立ちそうですね。

 

「韓国ではレンタルビデオ店だけでなく、オークションサイトのIDが住民登録番号だったり、インターネットの掲示板に書き込みをする際にも住民登録番号を入れなくてはならないケースがほとんどです。商品を購入した人の性別・年齢・居住地などを正確に知ることができるわけですから、消費動向分析といったマーケティングに役立つだけでなく、ターゲットにぴったり沿った広告を打つことができるでしょうね。これは非常に効果的です。日本で同じことができたらサイトの広告料がぐんと上がるでしょう」

 

―――確かに広告業界にとっては、ビッグチャンスですね。しかし、そこまでピンポイントに広告が送られてくると、なんだか気味が悪い気もしますが…。

 

ヨーロッパでは、国が管理する個人情報をもとにダイレクトメールを送る!?

「個人情報先進国のヨーロッパでは、国が管理する個人情報をダイレクトメール送付に利用するという事例もあります。個人情報そのものを企業に渡すというわけではありませんが、ターゲットの年齢・性別などに合わせて、ダイレクトメールの発送を代行してくれるのです。たとえば、60歳に退職者向けの金融商品の案内を送るとか、子どもを産んだ女性におむつの広告を送るとか、子どもが6歳になったら親にランドセルの広告を送るとか。ターゲットを正確に絞り込めるので、無駄がありません」

 

――――確かに非常に便利ですが、日本で実現するのはハードルが高そう…。日本で可能性があるとすればどんなビジネスでしょうか?

 

「大企業にとって、大きな経費削減につながることは比較的早く動きがあるかもしれません。例えば、リコール通知など。現在、家電やパソコンなどの部品に不備があった場合、メーカー側は回収・修理をするために、テレビCMやハガキなどを使って不特定多数に通知しています。購入者全員がカスタマー登録をしているわけではないし、中古品購入者もいますから、現時点では莫大な費用を投じて不特定多数に広報するしかない。もし、家電量販店やリサイクルショップで商品を購入する際にマイナンバーを登録するなど、購入者とマイナンバーを確実にひもづけるシステムができれば、数年たっても購入者を特定することができるようになります。リコール通知はその人だけに送ればいいわけですから、大幅な経費削減につながるんです」

 

――うーん…、確かに画期的です。しかし、便利過ぎると悪用の危険性も出てくるのでは? 海外ではどんな犯罪事例があるのでしょうか。

                                                                                                    

なりすまし口座、スイスに財産隠し・・・海外の犯罪事例、恐るべし

「アメリカや韓国で多いのは、圧倒的になりすましです。クレジットカードを勝手に作られて借金をされてしまったり、犯罪や脱税用の銀行口座を勝手に作られたりといったことですね。そのため日本では、そのような犯罪を防止するために、マイナンバーの情報漏えいに関し、罰則を設けるなど、厳しく管理していく方針です」

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―――日本でも2018年からは銀行口座を新設するときに、マイナンバーの記載を求められますから、マイナンバーを第三者に言うときは気をつけなくてはなりませんね。ほかにはどんな犯罪がありますか?

 

「なりすましではないですが、海外では隠し財産を持つためにスイスなど国外に銀行口座を持つ人が多い。日本でも自国のお金がどんどん海外に流れてしまう可能性があります。これにどう対応していくかが、今後の課題になってくると思います」

 

―――お金持ちって、いろんな抜け道を考えるんですねえ(笑)。資本の海外流出は、経済の衰退にもかかわってくることですから、早急に何らかの対策が必要かもしれませんね。本日はどうもありがとうございました。

 

取材・文/高嶋ちほ子