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苦しい時期に知った仕事の“原理原則”こそが、増収増益のカギ【株式会社スノーピーク山井社長の仕事論】

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新潟に、熱狂的なファンを持つアウトドア製品の会社がある。
販売価格は安くはない。しかも安売りもしない。
なのに毎年売り上げを伸ばし、年商44億8000万円(2013年連結)。
2014年12月には上場も果たした。その快進撃の秘密を探るーーー

 

■自分で開発した製品を"自腹で買いたい"と思うか? それが合格ライン
自分たちがユーザーとなってものづくりをする。これがスノーピークの原点です。こういう会社はほかにもあると思いますが、スノーピークが少し違うのは、それを「徹底して続けてきた」ということなんです。

私を含め、社員は皆、かなりのキャンプ好き。私は年に60泊ほどキャンプをしています。 新潟にあるスノーピークの本社ビルは、広さが5万坪程のキャンプ場の中にあるので、そこで寝泊まりをし、そのまま朝、会社へ出社するという社員もいます。

そのオートキャンプ場はキャンプ用品の貸し出しもやっていますので、キャンプ初心者の方からキャンプになれたコアなユーザーの方までさまざまな方が利用されています。そのなかでわれわれもテントを張って、打ち合わせや飲み会をすることも多い。実際にユーザーとして使いながら、ユーザーの立場になって製品の開発をしていくんです。

もう一つ特徴的なのが、スノーピークの製品は、企画立案から製造ラインに乗せるまでをひとりの開発担当者が一貫して担当すること。分業しないことによって、「開発者自らがどうしても欲しい製品」ができ上がります。

製品化の最終ジャッジは社長である私が行いますが、そのときに必ず開発者にする質問があります。「この製品、自分でお金を出して買いたいと思う?」と聞くんです。そこで「いやあ、ちょっと…」なんて言いよどんでしまうものはダメ。お蔵入りです。開発者自ら「自分のお金を出しても絶対買いたい」と思うようなもの。それがわが社の製品の合格ラインです。

私も実際に自社製品をたくさん買っています。これまでに購入した金額を合わせると1000万円は超えているでしょうね。そのくらい自分が欲しいと思える製品を作っているから、自信と責任を持ってお客様に勧めることができる。自分が欲しいと思うものを売ることは、仕事の意欲にもつながるんです。

 

■いい物を作って、そのよさをユーザーに伝えることができれば、必ず売れる
「自分たちがユーザーとなって、欲しい製品をつくる」という考え方は、先代社長であった父から受け継がれたものです。スノーピークはもともとヤマコウといって、ロッククライミングが好きな父が興した会社です。父は当時の登山用品に不満を持ち、オリジナルの登山用品を開発して売っていました。

ただ、父は私に山登りをさせてくれなかったんですね。「お前みたいなおっちょこちょいが山登りをすると大変なことになる」と(笑)。ですから私は、小さいころから平地でキャンプばかりしていました。

キャンプ好きは大人になってからも続いたんですが、私は世間で売られているテントにずっと不満を持っていました。当時のテントは価格こそ1万円前後と安価なのですが、雨漏りもひどいし、風が吹くとすぐ潰れてしまう。そこで私は86年に父の会社に入社してすぐ、自分が欲しいと思えるテントの開発を始めました。「年間50回使用しても5年間ぐらいは十分に使える丈夫なもの」を目標に、当時のテクノロジーで最高の素材を使いました。撥水加工もきちんと施してね。そしたら原価が跳ね上がりまして。販売価格は16万8000円になりました。それでも100個売れたんですよ。そのときに「いい物を作って、その製品の優れている点をきちんとユーザーに伝えることができれば、必ず売れる」という確信を得ました。そこから、ハイエンドなアウトドア用品を提供する現在のビジネスモデルが生まれたんです。

 

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その後、オートキャンプブームが
追い風となり、93年には売り上げ25億5000万円を記録。
しかし、ブームが過ぎた94年からは6期連続で減収減益となってしまう。

 

 

■何をすると頑張れるか。そこに突破口があった
94年から2000年にかけて、6期連続で減収して、25億5000万円あった売り上げが14億4000万円まで落ち込みました。経常利益は4000万円あったものの、どうしたら回復するのか全くわからず、苦しい状態が続きました。

減収が続いた6年間は、新製品開発をしたり、アウトドア大国のアメリカに進出したり、思いつくことはいろいろと試しました。しかし、取引先の小売店から「キャンプブームはもう終わったから、スノーピークはこなくていい」と言われるような状況で、自分たちの存在価値は本当にあるのだろうかと悩みましてね。

そんなとき、社員のひとりがこう言ったんです。「社会的な意義はわからないけど、ユーザーの顔を見ると頑張れる」と。それで、ユーザーの方たちを招いて「スノーピークウエイ」という休日のキャンプイベントを開催してみることにしたんです。

人気アウトドア雑誌に大きく広告を出したものの、応募は30組。思ったより応募が少なくてがっかりしましてね。でもそこに業績回復のヒントがあったんです。

 

■周囲の反対をはねのけて大改革。ユーザーの不満を解決し増収へ
キャンプ初日、30組のユーザーの方たちとたき火を囲んで話をしていたら、全員から同じ不満の声が上がりまして。不満は2つありました。1つ目は「値段が高すぎる」。もうひとつは「品揃えが悪く、欲しい製品が買えない」と。

これを聞いたときは本当にショックでしたね。確かにスノーピークの製品は他社のものに比べて値段が高い。でも品質はものすごくいいわけですから、納得して使ってくれているのだと思っていました。でも違っていたんですよ。ほかに耐えうる商品がないから、高いけどしょうがなく買っていたわけです。今思えば、ユーザーの顔が見えてなかったんですね。

その日の夜はショックで全く眠れませんでした。このままユーザーの方の不満を放置したら会社が潰れてしまうと思った。それで、この2つの不満を解消するのはどうしたらいいか、テントの中で朝まで考え続けたんです。

出した結論は、問屋を通さないこと。そして、正規特約店制度を導入し、スノーピーク製品のすべてを取扱える店だけに絞ること。土日のイベントが終わった次の月曜日、朝礼で改革案を発表しました。周りの反応? みんな大反対でしたよ(笑)。

結局、問屋を通さず直販にすることで、テントの値段は8万円から5万9800円までコストダウンできました。取扱い店の数は約1000店舗から約250店舗になりましたが、正規特約店制度を導入することで品揃えの悪さが改善されただけでなく、自社製品とオートキャンプの楽しみ方を知り尽くした当社社員を配置するインストアを出店できるようにもなりました。

成果はすぐに出て、実行した年から売り上げは大幅アップ。ユーザーの方から聞いた2つの不満を解消できたことで、会社はV字回復を遂げ、今に至るまで売り上げを伸ばし続けています。

 

■ユーザーの要望を製品に反映すれば、必ず会社のファンになってくれる

以来、キャンプイベントを毎年数回開催し、私も特別の事情のない限り毎回参加するようにしています。アウトドアの場で同じユーザーとして一緒に楽しみながら話をすると、お互い本音が出やすいし、話も盛り上がる。そこから出たユーザーの要望を製品に反映させるように努力すれば、お客様は会社のファンになってくれるんです。

振り返って考えると、苦しかった6年間があったからこそ、スノーピークの進むべき道を見つけることができたのだと思います。危機は仕事の“原理原則”を教えてくれるんですね。

苦しい状況には、必ず原因があるものです。辛いことですが自分を客観的に見て、その原因を探ることが何より大切だと思います。

いかに「自責化できるか」が勝負です。環境のせい、景気のせい、周りの人のせいなど「他責化」していては、いつまで経っても問題解決には結びつきません。

「自責化」すると、もうひとついいことがあります。周りの人が助けてくれるんです。自分に真摯に向き合って状況を改善しようと努力している人には、必ず助けてくれる人が現れます。味方ができれば、力が湧く。自然といい方向に向かうものですよ。

 

【Profile

やまい・とおる●1959年、新潟県三条市生まれ。明治大学を卒業後、外資系商社勤務を経て86年、父が創業したヤマコウに入社。新規事業としてオートキャンプ用品の開発に着手し、アウトドアブランドとしてのスノーピークを築く。96年の社長就任と同時に社名をスノーピークに変更。2014年12月には東京証券取引所マザーズに上場を果たした。

 『武蔵小杉に"アーバンアウトドア"を提供する新しい形のアウトドアショップがオープン』

 

2014年11月22日、話題の商業施設である「グランツリー武蔵小杉」に、『スノーピーク武蔵小杉』がオープンした。『スノーピーク武蔵小杉』は「体験して、納得して、手に入れる」をコンセプトとし、製品を通して様々なアウトドア体験ができる新しい体験型アウトドアライフストア。アーバンアウトドア(都市型アウトドア)の新たな提案拠点となるべくつくられた。機材の貸し出しもしているので、初心者でも近くの公園や河原で気軽にアウトドア体験ができる。

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所在地】〒211-0004 神奈川県川崎市中原区新丸子東3丁目1135番地1号 グランツリー武蔵小杉3F 【営業時間】10:00~21:00 不定休 【アクセス】駐車・駐輪場あり電車/東京急行電鉄・JR東日本「武蔵小杉駅」から徒歩4分【電話】044-982-3120

 

※リクナビNEXT 2015年1月14日「プロ論」記事より転載

EDIT/WRITING高嶋ちほ子 PHOTO栗原克己