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【世界で勝てる“日本発ネットサービス”を作る!】外資アパレル副社長から「スマートニュース」に飛び込んだマーケティングディレクターの「戦略と勝算」

 SmartNewsやグノシー、LINEニュース、Yahoo!ニュースなど、今話題のニュースが気軽に読めて、自分が興味のある情報も簡単に収集できる「ニュースアプリ」が人気を集めている。誰もがどれか一つはダウンロードしているのではないだろうか。
そんな中、この2月に「SmartNews」が日米1000万ダウンロードを突破した。2012年12月のリリースから2年あまりでの快挙だ。昨夏からテレビCMを開始し、認知度が一気に向上、昨年10月には米国版をリリースしてアメリカでも人気を集め、ダウンロード数が急増したという。

 同社のマーケティングに携わるのは、マーケティングディレクターの松岡洋平さん。米アパレルブランド「ディッキーズ」の日本法人副社長という立場から、昨年9月に転職してきた。松岡さんに、「スマートニュース」に参加するきっかけと、同社のマーケティング戦略、今後の見通しを聞いた。

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スマートニュース株式会社 マーケティングディレクター
松岡洋平さん
京都大学卒業後、アーサー・D・リトルでコンサルタントを務める。その後、ライフネット生命の創業前の準備会社に転職し、マーケティング部長として同社の知名度向上に尽力する。2011年にディッキーズ日本法人立ち上げに副社長として参画、日本におけるブランド展開を主導した。2014年9月、スマートニュースに入社。

■周囲で「SmartNews」が急速に普及していることを体感し、転職

 実はスマートニュースに実際に転職する1年ほど前に一度、お誘いを受けたことがあるのですが、その時は転職するイメージが全く湧きませんでした。すでに一部では話題を集めていたアプリでしたが、私の周りには使っている人がいなかったからです。
 でも、昨年に入って、立て続けに「SmartNews」の人気を体感することがあり、プロダクトとしてのポテンシャルを強く感じて再度話を聞きにいったんです。

 朝の通勤で、毎日同じ時間の電車、同じ車両に乗っていたのですが、いつもはスマホでゲームをしている若い会社員が、ある日を境にゲームではなく「SmartNews」を見るようになったんです。まずこれで「おっ!?」と思いました。
 その数日後に、仕事で大手町に行く機会があったのですが、地下鉄の駅から地上に出るエスカレーターの5段先で、上司が部下に『お前、SmartNews知ってるか?え、知らない?絶対入れたほうがいいぞ、超便利だぞ』と言っているシーンに出くわしたんです。まるでCMみたいなシーンですが、あれ?もしかして、「SmartNews」って本当に来てる…?と思いだしました。

 極めつけは、あるエンタメ系のニュースをスポーツ新聞が洒落のきいた見出しを立てて報じたときのこと。その記事が「SmartNews」の「プッシュ通知機能」で通知された画面を、私の友人3人が別々にFacebookに投稿していたのを見たときは驚きましたね。3人の友人同士は全く接点がなく、居住地も東京、大阪、北九州とバラバラ、でも3人ともわざわざ通知画面のスクリーンショットを取ってまで、ほぼ同時に投稿していたんです。

 その3人がスクリーンショットを上げているのを見たことはないのでおそらく初めて投稿したのかもしれませんが、これまで見たことのない出来事が、わずか数週間のうちにダダダっと身の回りで起こってしまった。「すごく大きな波が来ている」と肌で感じ、その可能性にワクワクしてきたのです。

 元々、ライフネット生命でも売り上げゼロの時代からマーケティングや広告・宣伝・広報に奔走し、ディッキーズでも店舗がない段階からブランド認知を高めてきました。スタートアップ企業ならではの勢いの中に身を置き、成長のために動くのは得意だと思っていたので、何の躊躇もなくすんなり飛び込めました。

■CMよりも、プロダクトそのものの魅力を高めることが集客の王道

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 昨夏からのCM投入が認知度向上につながり、新規ユーザーが急激に増えていると思われがちですが、実際には「SmartNews」というプロダクトが魅力的であれば、新規ユーザーが増えるし、その後も使い続けていただける。プロダクト自体の魅力を高めていくことが、費用対効果の高いユーザー獲得方法の「王道」であると考えています。あくまでCMは副次的なものにすぎません。プロダクトとそれを支えるエンジニアが生命線なのです。

「SmartNews」を構成しているのは、主に新聞や雑誌など各メディアの記事。ビッグデータ分析により、ユーザーが求める話題の記事の傾向をつかんで表示することももちろん重要ですが、読者にとっての“良質な情報”そのものを増やすことが、プロダクトの価値に直結します。そのため、どんな記事がどんな人に読まれているのか、記事の読まれ方なども、より良い記事作りにつながるよう各メディアにフィードバックしています。
 例えば、閲覧数は多いけれど情報量に比して滞在時間が短く離脱が早い記事は、見出しはキャッチーで目を引いたものの、記事の内容は期待を満たさなかったことを示唆しています。こういう細かい分析を素早く行い、フィードバックすることで、さらに読者に支持される記事作りにつながると考えています。

 また、幅広い読者のニーズに応えるために、標準チャンネル以外にコンテンツを追加できる「チャンネルプラス」の拡充にも注力しています。いわゆるメディアだけでなく、「EXILE TRIBE」といったアーティストのチャンネルや、原宿のファッションやカルチャーを紹介する「HARAJUKU」、10代に人気のFM番組「SCHOOL OF LOCK!」(3月末までの期間限定)など、ファンが多く情報提供価値の高いコンテンツ作りを試行しています。
 アーティストのファンは、メディアくくりで情報を収集することはなく、自ら検索して情報を取りに行くでしょう。そんなユーザーに対し「ここに来ればニュースがまとめて見られる」状態を作ることで、ユーザーの獲得・定着を図っています。今後は、エンターテインメント分野に限らず、ニーズの高いジャンルのコンテンツ・ホルダーとの提携を増やしていく計画です。

 また、このほど「インターナショナル版」もリリース。世界で話題を集めている英語メディアのニュースが閲覧できるほか、「その国や地域で注目を集めているニュース」が表示されるので、情報の幅がワールドワイドに広がります。

■米国版を足掛かりに、世界市場に挑戦

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 今後は海外展開をさらに積極化する計画です。
 昨年10月に、米国版「SmartNews 2.0」をリリース。まずは市場が大きいアメリカから着手したわけですが、ウォール・ストリート・ジャーナルオンラインの創刊に携わったリッチ・ジャロスロフスキーなど、米メディア界で著名な人材を招へいできたことも追い風となり、リリース後すぐに米App StoreやGoogle Playのニュースカテゴリで1位を獲得。現在も上位を維持しています。

 米国での成功を足掛かりに、まずは英語圏での展開を始めましたが、ゆくゆくは英語圏以外への進出も視野に入れています。「SmartNews」の仕組み自体は言語を問わないので、記事を配信するメディアとの関係作りさえスムーズにいけば世界中への展開が可能。ニュースアプリをはじめ日本発のネットサービスが世界に進出している例はまだ多くありませんが、「SmartNews」は本気で世界市場に挑戦しようと考えています。

 もちろん国内でも、コンテンツのクオリティ向上、支持されるメディアの発掘、さらなるアルゴリズムの改善など、プロダクトの魅力をさらに磨くことで、さらにユーザー数を増やしたいと考えています。
 モバイルが普及する以前、デスクトップPCの時代は、「ヤフトピ(Yahoo!トピックス)」の認知度と存在感は圧倒的でした。今も「ヤフトピに載っていたあのニュース」というテーマで、皆が会話する…というシーンは多いと思います。人々の会話が、「SmartNewsに載っていたんだけど…」から始まるシーンを数多く作り出す。これが国内市場での私のミッションです。

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:中 恵美子