「仕事と私、どちらが大事!?」のせめぎあい、理由は男性と女性の脳構造の違いにアリ!

 ダイバシティというけれど、本音をいうなら、同性同士で仕事をしたほうがよほどやりやすい…そんな風に感じたことはないだろうか。一度でもそう感じたことのある人は、男性と女性による脳の構造の違いを学んでみてはいかがだろう。

 語感感性アナリストとして活躍する黒川伊保子氏は、もとは人工知能の開発者だ。とっさに感じる人間の快・不快の感情がどのように言葉や行動に移るか、また、情緒がいかに反応するかといった、人間の無意識の領域で起こる脳の活動の研究に長年携わってきた。

 現在はその経験を生かし、脳科学の見地から、性別や年齢によって異なる語感や色、事象の好みなどを人材やマーケティングに役立てるコンサルティング業務を行っている。

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 今回は、「市場の気分」を読み解くエキスパートである黒川氏に、男女脳の違いに関する知識と、その対策についてお聞きした。

1.自己都合をすぐ話したがる女性、あとから思い出して困る男性

 何か物事を頼まれたとき、女性は自分の都合を瞬時に頭の中で浮かべるのに対し、男性はあとから用事があったことを気づいて困ってしまう傾向があるという。

 たとえば、自分が無理なスケジュールだと思う仕事を言い渡されたとき、女性は「土日、子どもの運動会があるのに」「美容院を予約しているのに」などと、自己都合が0.6秒くらいの速さで脳裏に展開するが、男性は、「あ、家族に早く帰ると言っていたんだ」と、思い出すのに数時間かかる脳の構造になっている。よって、自分の都合よりも会社を大切にしている印象は、男性のほうがもたれやすいが、その分、あとから困り、家庭内でトラブルとなるケースが絶えない。

 ここで注意すべき点は、ビジネスシーンにおいては、まず女性はすぐに自分の自己都合を口に出さないこと。例えば、土日出社をしなければ到底終わらないような仕事を頼まれた場合、脳の構造からすると、女性のほうが一般的に顔に出やすいが、せめて言葉だけでもスマートに対応しよう。「土日都合があります」とは決して言わず「月曜日ですか。わかりました。月曜日までなら8割方、完成できるので必要な8割を教えてください。いかがでしょうか」と言いかえるなど、最後まで「自分のために」というニュアンスの言葉を使わないようにするのがポイント。一方、男性は、返事をしてしまう前に、家庭やプライベートで何か約束はしていないかと思い返す癖をつけることで、パートナーとの無駄な衝突を防ぐことが可能だ。

2.女性はプライベート、男性はパブリックを優先する

 いわゆる「仕事と私、どちらが大事なの」というせめぎ合いは、男女間の脳の違いによって引き起こされている。

 男性は、空間を認知するときに、自分より離れているところや、奥行きのあるほうに閾値(しきいち:ある反応を起こさせる、最低の刺激量)が高い。これは、長らく狩りをしてきたためで、遠くから飛んできたものに標準をあわせて、その対象物が一体どれくらいでこちら側に飛んでくるかを認知するためだ。

 加えて男性はその脳で人間関係をも認知してしまう。男性は、国、会社、友達、家族、恋人の順で認知していくが、女性の場合は、順番が逆だ。女性は恋人から認知していくため、男性がパートナーの女性をあと回しにしていると、あと回しにされた女性は「自分は大切にされていないのでは」と不安に感じてしまう。しかし、本来は逆。男性は一番近い存在だからこそ、容易くあと回しにしているのだ。

 男性は、それを分かったうえで、女性であるパートナーや部下には先に声をかけることを心がけ、女性はあと回しにされていたら、「自分は相手にとって近い存在なのだ」と思い、どっしりと構えて待つ。そうすることで、大部分の衝突は解消することができそうだ。

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                         Photo by 足成

3.判断速度最強のアラフォー女性は、語りだしだけでもゆっくりと

 脳の判断速度の特徴として、大きく2つある。1つ目は若年層より年配層が、2つ目は男性よりも女性が、判断が速いという点だ。

 たとえば将棋を打つ際、20代は何百という手が読めるが、年齢を重ねれば重ねるほどその数は絞られ、50代になると、ほんの数手しか読めなくなる。それでも50代が一般的に強い理由は、20代は何百という手からどれが強いのかを見分けることができないのに対し、一方の50代は、勝ち手しか目に入らないからだ。

 特に40代以降の女性の判断速度や言葉を紡ぐ速度は、あらゆる年齢層の男性は敵わなくなる。なぜなら、男性脳よりも女性脳のほうが、耳から入った言葉が、それを処理する働きのある運動野までに届く距離が一般的に短いためだ。

「これは白ですか。それとも黒ですか」と聞かれた際、20代の女性なら「白です…と思うのですが…白ですよね?」といった答えが返ってくるが、これが30代40代の女性になってくると、「もう、白!」と一瞬で判断が行われるようになる。よって、年齢を重ねた女性が自分のスピードで物事を口にしてしまうと、周囲の若い男性たちは、話に追いつけず、どんどん誘導されているように感じて怯えてしまう。

こういったミスコミュニケーションの解決策として有効なのは、どんなに込み入った話であったとしても、語りだしは意図的にゆっくりと話すこと。人間は、最初にこの話はどこへ行くのかという判断をするため、語りだしさえゆっくりであれば、「あの人の話は分かりやすい」と好感をもちやすい。

4.“デキる男”の共通項は“見守る”クセ

 狩りをしていた男性は、もともと「責務を果たす」ことに快感を覚えやすい。「餌を取ってくる」「敵と戦う」など、明確な責務のために行動し、それによるリターンが得られたときに、男性脳は「気持ちがいい」と反応する。ゆえに、マナーを責務と考えて行動している男性たちは、周りから「責務を果たす頼りがいある男性」と好感を持たれると同時に、自分自身もどんどん快活に動けるようになる。

 一流の経営者やビジネスリーダーほど、人を「見守る」責務を全うすることに長けているもの。たとえば、女性や子どもが車を降りたり乗ったりする時、階段の昇り降りをする時、椅子に立ったり座ったりする時の、この3ポイントに注意して「見守る」行動を取るだけで、話さずとも頼もしい印象を与えることが可能だ。ビジネスシーンなら、目上の人が座ってから、自分が最後に座るように心がけ、エレベーターに乗る時は、ほかの人が降りるのを、ボタンを押しながら待ちつつ、最後に自分が降りる習性をつけると、グンと頼りがいのある印象になる。

 いかがでしたか。後編は引き続き、黒川伊保子氏による『「だ」「で」「ど」から始まる言葉の多用で運気停滞!?言葉の語感が脳に与える印象とは』をお届けします。

取材・文・撮影 山葵夕子

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