【20代の不格好経験】営業力を得たくて就職したのに、配属は技術部門。目論見が外れ意気消沈~キラメックス代表取締役社長 村田雅行さん

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今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいた経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、そんな「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第5回:キラメックス株式会社代表取締役社長 村田雅行さん

カタリズム株式会社代表取締役 山野智久さんよりご紹介)

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(プロフィール)
1983年生まれ。2006年、新卒で楽天に入社し、システム構築・運用、システムの調達、交渉、契約などシステムインテグレーション業務に従事する。2年後に退職し、準備期間を経て2009年2月、キラメックス株式会社を設立。クーポン共同購入サイト「KAUPON」運営(現在は事業譲渡)を経て、現在はすべての人にIT教育を届けるスクール「TechAcademy(テックアカデミー)」などを運営する。

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▲初心者向けプログラミング講座からiPhoneアプリ開発キャンプなど、オンラインとオフラインを組み合わせてすべての人にIT教育を届けることを目的としたITスクール。村田さんは「IT人材不足の解消」をミッションと捉え、この事業を立ち上げた

■起業に役立つ営業スキルをつけるため、2年限定と決め楽天に入社

 高校時代、自らが所属するバンドのホームページを作ったことがきっかけでインターネットでの情報発信に興味を持ち、大学1年の2002年に、個人で情報サイトを立ち上げました。当時はまだそのような個人サイトが少なかったこともあり、アフィリエイトなどですぐに収益を得られるようになりました。大学4年間でネットに関する知識やウェブサイト構築の技術力もつき、「ネットビジネスで起業し、世の中にない新しいサービスを生み出したい」と考えるようになりました。

 ただ、ネットの知識や技術力だけでは、企業経営はできません。会社の仕組みを理解し、事業拡大のための営業ノウハウを習得するべきだと考え、2年間限定で会社勤めをしようと決断。「大手のネット企業ならば、起業のために必要なことが幅広く学べそうだ」という理由で、楽天を就職先に選びました。
 希望はもちろん、広告営業。面接の席で「営業希望」と言い続け、研修後に提出する配属希望でも「営業部門」と書いて提出しました。2年間、営業に打ち込んでスキルを身につけ、あわよくば社内の優秀なエンジニアを仲間に巻き込んで、3年目に起業しよう…と意気込んでいました。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

■二度に渡って意に沿わない配属が決まり、落胆。退職すら考える

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 しかし、配属されたのは、技術部門。営業スキルをつけるために就職を選んだのに…あらゆる目論見が外れ、落胆しましたね。
 とはいえ、せっかく入社したのだから…と気持ちを切り替えました。どうせ技術部門ならば、楽天らしい仕事で表舞台で活躍したい。アプリケーションエンジニアとして、楽天のサービスを生み出し、支える役割を担って経験を積もう。これは自分がネットビジネスを立ち上げる際にも必ずやプラスになるはずだ…と前向きに考え、自らモチベーションを高めました。技術部門での新人研修中には、かなりやる気も高まり、「先輩たちはやさしく仕事を教えてくれるし、いろいろ勉強もさせてくれるうえにお給料もくれるなんて、会社っていいな」なんて思うようになっていました。

 しかし、2カ月の研修後の本配属で、与えられた役割はサーバー構築や運用を担当するサーバーエンジニアでした。
 研修期間中に、アプリケーションエンジニアに就きたいという思いは伝えていました。またも、希望が通らなかった…同期の多くは、希望がかなっているのに…。2回も目論見が外れ、この時ばかりは本気で落ち込みました。「意に沿わない仕事をするぐらいならば、とっとと会社を辞めて自分でビジネスを立ち上げたほうがいいのでは?」と真剣に悩みましたね。

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■機会を無駄にせず、プラスにしてやろうと頭を切り替える

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 辞めるか辞めないか、結論が出ないまま本配属となり、サーバーエンジニアとしての仕事が始まりました。そんな精神状態だったため、始めは覇気のない新人だと思われていたかもしれません。
 でも、配属先の先輩方は、皆さんすばらしい方々でした。仕事について一から教えてくれて、わからない点がないか、つまずいてはいないか、常に気にかけ、親身になってくれたんです。そんな環境の中で、私の気持ちも徐々に変化し、「せっかくの機会だ、起業のためなどは抜きにして、目の前の仕事にとことん打ち込んでみよう」と思うようになりました。
 サーバーエンジニアの仕事は、サーバーシステムの設計・構築・運用、障害発生時の応急対処・予防対策、セキュリティ対策など業務範囲が幅広く、OSの知識やセキュリティの知識なども求められます。全く興味のなかった分野でしたが、やってみると意外に面白く、ウェブサービスを作る上で非常に重要なものだということを知りました。それに楽天ほどの規模になると、1つのデータセンターに数千台のサーバーがあり、そこに数千万もの人がアクセスします。サービスの「要」となるサーバーをこの手で触れるってスゴイ!とワクワクさせられましたね。意に沿わない役割であっても、まずはやってみることで気づきがあり、成長があるのだと、実感しました。

 その後、役員の方が起業する予定の私のためにと、会社のお金の動きやビジネススキルが身につくよう、システムの調達、交渉、契約業務に携わる部署に部署異動させてくれました。そこで1年経験を積み、計画通り2年で楽天を退職。ネットビジネスを立ち上げる準備としてアプリケーションを独学で勉強し、2009年にキラメックスを設立しました。
 立ち上げ時のメイン事業だったクーポン共同購入サイトの開発は、ほぼ一人で行いました。学生時代からのネットの知識や経験などがベースにはなりましたが、楽天でのサーバーエンジニア経験が大いに活きたと感じています。

 希望の配属先ではないから、やりたいこととは違うから…と楽天を早々に辞めていたら、自分で一から開発することはできなかったでしょう。もちろん、ビジネスアイディアだけを自分で設計し、他の誰かが作ったシステムに乗せることは可能だったと思いますが、「価値があると思える新しいサービスを、一からすべて自分で作れた」という自信と楽しさが、今の私の原動力になっています。

 人間は万事塞翁が馬。与えられた機会が意に沿わないものであっても「この機会を自分のものにしてしまおう」と前向きに捉え、貪欲に吸収しようとする姿勢があれば、夢や目標は叶えられるものだと信じています。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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