【応募作品488,916点の頂点】「宣伝会議賞とボクとおかん」アイデアは人生の中にあるようだ

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 突然、変な髪型で驚かせてしまい、すみません。合田ピエール陽太郎と申します。ビヨンセやアリシア・キーズ、安倍なつみなど、歌姫大豊作の1981年に生まれた、寿司大好きな自称コピーライターです。
 私ごとで恐縮なのですが、先日の第51回宣伝会議賞にてCMゴールドを受賞した経験があります。CMゴールドという賞は、全応募作品488,916点の中からCM企画でもっとも優れている作品に送られる賞のことです。

 今回、ボクがどのように考えて、このCM企画ができたかをご紹介させていただきます。

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■フリーになったら寿司が食べられなくなった

 ボクは2013年のはじめに某面白法人を退社してフリーになりました。でも、フリーは名前の響きほどカッコイイものでも、楽なものでもありませんでした。企業に企画を持っていっても話すら聞いてくれません。話を聞いてくれたとしても「面白いのはわかるんですけど、しょせん素人ですよね?」と言われる始末。仕事をもらうことができませんでした。仕事がなければ、収入も減ります。すると、大好物の寿司が食べられなくなってしまったのです。
 仕事を得て、じぶんがコピーライターとしての力があることを証明しなければならない。そこで見つけたのが宣伝会議賞。宣伝会議賞というのは、協賛企業さまから商品やサービスなどの「課題」を出してもらい、アイデアをコピーや絵コンテの形で応募し、プロのコピーライターやCMプランナーの方たちが審査する公募制の広告賞です。受賞すれば、コピーライターとしての力があることを証明できると思い応募することにしました。そして、「近所の回転寿司屋で、腹いっぱい食べてやる」と心に誓ったのです。

■きっかけは、母が好きな曲。たくさん考えたら、アイデアに気がついた

 受賞したCM企画を考えるにあたって、考えたことがあります。なぜ協賛企業のECCに通わないかということです。「義務教育で勉強したし、なんとなくなら英語ができる」と考えているからだと思いました。そこで、日常にありそうな英語の勘違いを盛り込んだCM企画を考えました。Light(光)とRight(右)を勘違いしてしまうものなどです。しかし、どれもピンとくるものがありませんでした。
 いくつかCM企画を考えていたときのことです。ふと小さい頃の記憶を思いだしました。母が好きだったホイットニー・ヒューストンの歌です。「これって、別れの歌だったはず」。自然とあたまのなかで、この歌が結婚式で流れているシーンが浮かんできたのです。
 今思えば、母が好きでよく聴いていたという経験があったからこそ、この作品ができたのだと思います。生き方以上の、コピーは書けないのだと実感しました。

■記憶を失った授賞式

 応募締め切りから半年後の結果発表当日。次々と各賞が発表され、受賞者が壇上に上がっていきます。「このまま、呼ばれないのでは…」。ボクは不安でいっぱいになりました。そして、CMゴールドの発表。「合田ピエール陽太郎」と名前が呼ばれたのです。さまざまな感情で頭がパンクしたせいか、その後の記憶がほとんどありません…。
 しかし、審査員の方からいただいたコメントは忘れません。「発見と表現が秀逸だ」「結婚式という誰でも知っていることを切り口にしたからわかりやすい」とお言葉をいただけました。
 多くの人が体験することを切り口にしたのがよかったのだと思いました。“結婚式”が、どのようなものかをみんな想像できます。多くの人が知っていることを、表現に使うことで、みんなが理解してくれると学びました。

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■知らない友達がどんどん増える

 受賞後は以前のように企業に企画を持っていっても話を聞いてくれないということがなくなりました。また、ありがたいことに案を採用してくれるクライアントも増えてきたのです。受賞したことでさまざまな変化があったのですが、一番驚いたことは知らない友達がSNS上でたくさんできたことです(知らないのに“友達”というのも変ですが…)。そのご縁で飲み会に参加させていただく機会も増え、舌の上でとろける大トロやワサビ巻きをご馳走してくださるパトロンまで現れて涙が出るほど幸せでした。
 しかし、街を歩いていてサインをせがまれることも、知らない女性がいきなり玄関の前に立ってることもなく、生活面はほとんど変わっていません。なぜかと考えてみると、ボクはアピールが不足しているとわかりました。名が売れているコピーライターは、商品だけでなく、じぶんを売るのも、うまいのです。業界紙に作品を載せたり、本を出版したりと、じぶんの名前を売るアクションを起こしています。ボクも何かしらのカタチで、「合田ピエール陽太郎」をアピールしていかなければなりません。もう、寿司が食べられない生活はコリゴリなので。これから、ばんばん上へ上へとのぼっていきたいと思います。

取材・文:合田ピエール陽太郎

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名前にピエールとあるが、ハーフではない。だが、先々代ぐらいに外国の血が入っていると家系図に記されているらしい。その家系図を探し続けるコピーライター。2013年、第51回 宣伝会議賞CMゴールド 受賞。

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