【トレンドハンターの目】”世界のお母さんを裏切れない”開発者の気持ちを込めた「世界のKicthenから」

キリンビバレッジの人気清涼飲料水のシリーズ「世界のKitchenから」は、2007年の誕生以来、7年で23品を開発・発売してきた。6月17日に発売した「世界のKitchenから Sparkling Water」は、2回にわたるモロッコ取材を経て、生まれた。

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「無糖炭酸水の市場の伸びには注目していました。カテゴリーのイメージとしてはまだ醸成されていませんが、実飲用はされており、炭酸水市場を盛り上げられる商品を作りたいと考えるようになりました」と同シリーズの開発に携わったマーケティング部商品担当の図子久美子さんは語る。

そこで出会ったのが、モロッコのお母さんが花を蒸留してつくる「フラワーウォーター」。現地では、料理、ジュース、デザート…さらには化粧水、目薬など、生活には欠かせないものだと判明。

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PHOTO by YOKO TAKAHASHI

さらに、それはほのかな香りなのに、あると生活がパッと華やかになる。そこから、花を蒸留したほのかな香りの贅沢さに着目。日本人にも親しみやすい、けれど新しいエルダーフラワーを素材に決めた。

「ほのかな香りなので、食事時にも、普段の水分補給にもぴったり。今までにない新しい炭酸水ができたと確信しています」

■30~40代のこだわる女性に、あえてぶつけた清涼飲料水ブランド

コンビニなどで売られる清涼飲料水というと若者向けを想像するが、実は同ブランドのメインターゲットは、30~40代の女性だという。

「たくさんの人に飲み物を届けられるメーカーだからこそ素材や製法を選び、お母さんが家族を思って作った、自家製のような味わいの飲み物を作りたい。そのヒントを、世界中のお母さんからもらいにいこう! そういった思いからスタートしました」

素材のもつ滋味や、ひと手間かけて料理することの意味を理解し、ブランドコンセプトや商品をより評価してくれるのは、30代から40代の女性。目を引くことが求められる飲料水のパッケージでもその思いを貫いてきた。結果、30代から40代の女性はもちろん、10代後半から20代の男女にも広く親しまれ、現在までのシリーズ化につながった。

■試作はマーケティング担当者の「自宅のKitchenから」

試作は、担当者が自宅のキッチンから始める。世界のお母さんが作る料理やデザート、ときにはお酒などもヒントにしながら、「ここがおもしろい!」というところを大切に、飲料を作ってみる。

「それをチームや味覚開発を担当する開発研究所と共有し、最終的な製品まで作り上げていきます。 世界のお母さんの作るものをそのまま持ってくるのではなく、『ここ!』というポイントをしぼり、日本のみなさんに好きだと言ってもらえる味にすることを大切にしています」

■開発で一番大切なのは「粘ること」

いざ、このコンセプトを商品化しようとすると、素材や製法で社内で実績がない手法も多く、チャレンジの連続だという。

「でも、そんなときは、『お母さんを裏切れないなぁ』『お母さんはここにこだわってたなぁ』と、個人的にはそんなことを思いながら、どうにか粘ります。だからこそ、今までにないおいしさができると感じています。このブランドはカテゴリーのしばりがなく、できあがりも誰にもイメージできません。だからこそ、担当者がゼロから作れます。

開発が進み、お母さんに会いに行き、感じて、考えて、日本で作っていたコンセプトとは異なる方向性に進むこともあります。そんなときは、現地に行ったのはあなただからと、その意見を尊重してもらえます。責任も大きいですが、自分の考えや経験がそのまま商品に繋がる、ものすごく面白い開発に携われています」

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売れるための商品開発にはリサーチや市場動向は無視できない。しかし、最終的に大切にしなければならないのは、開発者本人が好きであること。当たり前だけどとても大切なことを守り続けてきたから、「世界のKitchenから」は、長く愛されるシリーズへと成長している。

取材・文:北本祐子

あらゆるトレンドネタを収集し、新聞、雑誌、Webなどさまざまな媒体で発信する編集者/ライター。趣味は海外逃亡。国内は将来のためにとっています。

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