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【女帝対談:奥田浩美×岡島悦子】アクセサリー勝負病、体力過信病…キャリア女性を蝕む「10大疾病」とその対処法とは?

 IT業界の女帝と称される、株式会社ウィズグループ代表取締役でIT系カンファレンスコーディネーターの奥田浩美さんが、毎月西麻布の「NOMAD NEW'S BASE」で開催している「奥田サロン」。毎回応募開始とともに瞬時に参加枠が埋まる。

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▲向かって左が主催者の奥田浩美さん、右が岡島悦子さん

 6月のゲストは岡島悦子さん。新卒で三菱商事に総合職として入社し、ハーバード大学経営大学院に留学後、MBAを取得。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2007年に「経営のプロ」創出のコンサルティング会社であるプロノバを設立し、ダボス会議運営の世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出された。

 現在、数々の企業の社外取締役を務め、年間約200人の経営者のヒト領域に関わる経営相談に携わる岡島さんも、これまでさまざまな紆余曲折があったそう。同サロンで明らかにされた女性が抱えがちな“10大疾病”とその対処法について紐解いていこう。

キャリア女性が抱える「10大疾病」!?

 岡島さんが、ダイバーシティの女性活躍推進を進める上で、さまざまな企業で話しているのが「キャリア女性の"10大疾病"」。多くの企業でのワークショップ経験などから見えてきた女性が陥りがちなキャリア上の症例を、岡島さんが命名したものだ。最近では若い男性にも多いという。当てはまるものがあるか、まずはセルフチェックしてみよう。

  1. アクセサリー勝負病
    若さとかわいさだけでちやほやされて仕事をしてしまう。スキル構築のできぬまま、27歳くらいを迎えてしまいがち。
  2. 嫌われたくない病
    周囲の人に嫌われないことを一番に考え、能力開発の直線距離を走れない。自己肯定感が弱く、過剰適応的。ビクビクしながら行動する。
  3. 体力過信病
    残業や休日出勤で仕事の穴埋めをする。
  4. 過小評価病
    管理職にならないかと言われても「私なんてまだまだです」とまずは断り、リスクヘッジを図る。
  5. 出世嫌悪病
    お客さまに近いところでプレイヤーとして働くことが一番と思い込み、出世は汚いものと決めつけ、異動や管理職打診の成長の機会を視野から外す。
  6. キャリア迷子病
    入社10年程で後輩たちの活躍も見て、自分は何に向いているのかに「悩む」。「悩む」ことが目的となり、正解を求めたくなり、占いに走ってしまう女性は完全にその重症例。
  7. 白馬の王子待ち過ぎ病
    特に努力をしたわけでもないのに、自分のキャリアがいつか認められ、いつかスカウトが来るんじゃないかと待ち望む。
  8. 努力安心病
    悩んだ挙句、現在の仕事や将来目指す仕事にまったく関係ない資格を取ろうと行動する。仕事よりも努力方法が明確な資格取得の努力に逃げ込む。努力している自分に自己満足するが、その資格をどうキャリアに活かすのかは不明瞭なまま。
  9. 燃え尽き逃避病
    体力過信で仕事を頑張り、キャリア迷子で迷い、白馬の王子も待ち疲れ、資格取得もしたが活用できない…という状態に燃え尽きてやる気が失せている。
  10. チャック女子病
    その言葉通り、背中のチャックを下ろすと着ぐるみの中身はおじさんという女子を指す。後輩女性にも厳しく、身を粉にして働いている痛いイメージのため、ロールモデルとしても想起されにくい。

10大疾病を克服するには「心のベースキャンプ」を持ち続ける

 岡島さん自身、アクセサリー勝負病以外は、すべて経験したと語る。そこから、どう抜け出し、キャリアを重ねてきたのか。ここからは二人の対談形式でお届けする。

 奥田:岡島さんが10大疾病からの解脱し、過剰な承認欲求と決別できたのは、「心のベースキャンプを持てたこと」が大きかったんですよね。心のベースキャンプとは、ソウルメイトでもある旦那様の存在でしょうか。

岡島:嫌われたくない病にも通じる話ですが、意思決定する上で嫌われないなんてことはないんです。厳しい意思決定をすれば日向も日陰もできます。嫌われる意思決定をしても自分を信じられる基盤のようなものが必要。私の場合には、何があっても自分の価値観を信頼してくれる家族と少数の仲間の存在があったことが大きいですね。自分をクールダウンしたり客観視したりする場は必要。最もダメな処方箋はお酒を飲むことですね(笑)。

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キャリアのタグは、数と希少性が鍵

奥田:キャリア迷子にならないために、岡島さんの言う「自分マーケティング、タグの掛け算」も重要だと思うんです。私自身も25年間、JavaOneやGoogle,IVSなど、ITのイベントプロデューサーで事業をやってこれたのも、タグの掛け合わせとその希少性が強みだったから。IT人材白書の委員を引き受けてみて改めて実感したのですが、この年齢でIT系について語れる人はたくさんいるけど、Web系、さらにスタートアップ系×若い人材×女性にまで通じる人…となると私くらいしかいない(笑)。

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岡島:仕事で誰かをキャスティングするときって、だいたいタグで脳内検索をかけるんですね。多くの人は「強み」といった途端に、タグを大きく取りすぎる。例えば、「営業」だけではタグの単位が大き過ぎます。「大口の法人営業」や「地方」「小売り」に強いとか、タグの単位を小さめに因数分解して、掛け算にしていかないと、タグの数や希少性という比較優位性は出てこないんです。

奥田:岡島さんも私もキャリアを研ぎ澄ませるための努力を惜しまない。時には辛いことも多々あるけど、人には一部しか見せない。だからこそ、肩肘をはって頑張っている人はいるけど、ダメなとこはダメなのだとはっきり言える。

岡島:自分の旬(市場性)を保とうとしたら、常に変化し続けないといけない。例えば、少し居心地が悪いくらいの場所にあえて行くことも、自分が成長するうえで必要なんですよね。近しくて付き合いの長い人だけ話していると、コンテキストが共有できるので心地よいのですが、それだけだと時代の最先端なものから遠ざかってしまう気がするんです。

 だから、私はなるべくアーティストやスポーツ選手の方など、異能な人たちとも付き合うようにしています。今一番注目されている組織開発方法である複雑系の組織開発には、異動や新陳代謝など、一定のゆらぎのメカニズムを入れることが必要と言われています。個人の能力開発もまったく同じで、メンターを持つとか、心の友を持つとか、異能の人たちと接することで、常に自分を固定化しない、ゆらぎのメカニズムを内在させる、あえて居心地が悪いところにいくこともゆらぎのメカニズムを保つ秘訣なのです。

恋愛とビジネスは似ている!?

奥田:でも最も重要なキーワードは「恋愛、チャーミングさ(enchantment)」ですよね。

岡島:恋愛とビジネスってとっても似ているところがあって、どちらもサービス精神が重要なんです。enchantmentって魔法をかけるという意味で、「何となくあの人に言われるとやってしまう」という「巻き込み力」のことです。一緒にやりたいと思う人をよく観察して、その人の心のスイッチはどこにあるのか探してそこに働きかけ、やろうとしていることに共感してもらうことが大切。 

 私は人の目利きのプロだし、組織のリーダーシップ開発支援などを長年やってきているので、心のスイッチのありかを直観的に見つけることができます。しかしながら、それも徹底した調査と事例分析と努力をしているから。私たちにしかできないというものはそれほどありません。0.1ミリを動かすために、皆さんが想像できないほどの努力をしているし、たくさんの失敗を経ているからなのです。

 10大疾病の解決は健全な自己肯定感を持つことと、相手へのサービス精神にすべてつながる。そう語る奥田さんと岡島さんは、華麗な経歴を持ちながら、自分にとって一番いい時期はこれから来ると信じているという。そのために人知れない努力を水面下で続け、チャンスを手に入れるための打ち手は欠かさない。棚ぼたを手にいれるためには、棚の下にいる必要があるからだ。

 そして、ここで話されたことが、キャリアに悩む人や次の世代につながっていってくれれば嬉しいと締めくくられた奥田サロン。主宰の奥田浩美さんは、6月23日に書籍「人生は、見切り発車でうまくいく」を出版する。スタートアップ企業の経営者たちが師と仰ぐ「女帝」にガツンと喝を入れられたい人はぜひ読んでみてほしい。

WRITING&PHOTO:馬場美由紀

 取材したエンジニアの数は2500人以上。エンジニアが大好きな技術系ライター。家にあるマンガは4000冊以上。酔ったら記憶なくす記憶飛部所属。ころ部部長。