世界の先鋭的なブランドを扱うパリのセレクトショップ「レクレルール」を始め、世界の有名店で扱われる日本のバッグブランドがあります。その名前は、「コーネリアン タウラス バイ ダイスケ イワナガ」。
日本の伝統的な技術を生かしたラグジュアリーな素材を使い、印象的なデザインを施したバッグは、国内よりも先に、海外の目利きとの出会いによって大きく飛躍しました。それぞれ違うアパレル系企業で働いていた兄弟がブランドを展開することになったきっかけとは?デザイナーであるお兄さんの岩永大介さんにお話を伺いました。
――ブランド誕生はいつですか?
前職のバイヤー時代に海外を回りながら「本当のoriginalityがなければ海外でも日本でも商品として勝負はできない」と感じていました。
その中で、イタリア・ミラノのあるショウルームで、バイヤーから「日本のモノづくりは繊細で丁寧なので柔らかい素材、服は非常にすばらしい物を作るが、物としての主張、強さが足りない。靴、革物などの立体になる物はなかなかヨーロッパでは勝負できない」と指摘されました。
そこから海外を驚かすモノづくりは何なのか?オリジナリティを出すうえで、日本人として何ができるのか?ということを考え、「バッグを通じて日本の文化、アイデンティティを表現して行く」ということをコンセプトに2007年秋冬シーズンよりスタートしました。
――注目されたのは海外からだったそうですね。
前職での出張中に自作のオーストリッチのバッグを持ってパリのマレ地区を歩いていると、NYのジャーナリストに声をかけられ、個人オーダーをもらいました。そこからパリ、ミラノのショウルームのスタッフ、スタイリストなど業界人から個人オーダーが頻繁に入るように。
NYのジャーナリストから「オーストリッチのバッグをレクレルールのバイヤーが気に入っている」との連絡があり、サンプルを見せ、店頭に並んだことから海外の取引が広がりました。
また、WWDなどの業界紙に取り上げられたことで、伊勢丹など日本のバイヤーから声もかかり、国内でも販売されるようになりました。当時、私(兄の大介さん)は30歳、弟(信介さん)は27歳のことです。
――若手のブランドですが、超高級ブランド並みの素材を使われていますね。
価格は高額になってしまいますが、高級素材を使いながら個性のあるクリエイティブなものづくりをするという発想は、世界的にもなかったのだと思います。
handle tote HIGH 藍染クロコダイル 800,000円
もちろん(高級素材を使った100万円を超える商品という)この方向性だけではまだ勝負できないので、(10万円前後の)もう少し買いやすい価格のものでコレクションの幅を見せながらイメージと実売の両面で構成しています。
新作 basilica shoulder 88,000円
――ブランドアイコンはハンドル部分であえて隠しているんですね。
服とは違って人の肌に触れる部分は手だけです。その肌に触れる部分で日本人のアイデンティティと文化を表現したい。素材は日本でなめされた特徴的な素材を使い、付属パーツに船具を使用しています。
ブランドバリューの価値観ではなく、バッグ自体の価値、その背景にある日本の文化、それでいてインターナショナルに通用するクリエーションのバッグを持ってもらう事で、新しい価値観を伝える事が出来るのではないかと考えています。
――若手のビジネスパーソンに向けてアドバイスをお願いします。
まだ、私も発展途上でさまざまな縁と運でなんとかやってきています。人それぞれ持っていると思うのですが、それを、縁や運ととらえるかは自分次第。それらを時間がかかってもいいので、「自分なりの形」にして継続していくこと。「自分なりの形」というのが非常に重要で、試行錯誤の繰り返しが必要です。
ただその中で何か見えてくる物があったときに、その意味が理解できるはず。その時に人は、次のステージにあがったり、壁を越えて行くことができるのではないでしょうか。
人に語れるモノを持つことは、人との縁にもつながるという好例だと思います。もちろん、値段うんぬんではなく、語れるものを持っているかどうか。あなたもモノを選ぶとき、ストーリーも選んでいるはず。いま一度、自分の持ち物を見つめなおしてみませんか?
取材・文:北本祐子 写真提供:コーネリアン タウラス バイ ダイスケ イワナガ