【祝・世界遺産、逆転一括登録!】沖ノ島ってどんな島?一般人立入禁止の「神宿る」島の“今”を紹介!<後編>

三宮合わせて宗像大社

前編の冒頭でも述べたが、そもそも宗像大社とは

・沖ノ島の田心姫神(たごりひめのかみ)を祀っている沖津宮

・大島の湍津姫神(たぎつひめのかみ)を祀っている中津宮

・九州本土の市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)を祀っている辺津宮

の三宮を合わせた神社の総称である。このため、宗像大社や宗像市・福岡県らは15年間、この三宮と沖ノ島の鳥居の役割を果たしている小屋島、御門柱、天狗岩の3つの岩礁、さらに信仰を支えた宗像族の墓とされる新原・奴山古墳群を合わせた計8資産を「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として世界遺産への一括登録を目指して活動してきた。しかしユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)は今年5月、沖ノ島と3つの岩礁以外の構成資産には世界遺産としての価値はないと判断、それらを除外して登録するよう勧告した。通常、その勧告通りに登録されることが多いため、一時は4資産のみの登録になるかと危ぶまれたが、文化庁や福岡県、宗像市、宗像大社は「そもそも宗像大社は3宮の総称。考古学としての価値と信仰の価値は不可分で、すべての構成要素がそろわないと世界遺産としての意味・価値はない」と、8資産の一括登録を目指し、PR活動を開始。登録の審議が行われるポーランドの会場でもギリギリまで懸命に決定権をもつ委員国の説得に当たった。その甲斐あって、8資産すべての逆転一括登録が実現したのだ。以下、2つの神社も紹介しよう。

f:id:k_kushida:20170707150610j:plain▲福岡県宗像市の海岸から釣川をおよそ3km内陸部へ遡ったところに鎮座する宗像大社総社・辺津宮。 広大な神苑には本殿(写真)を中心に儀式殿、高宮祭場、第二宮・第三宮、神宝館、祈願殿などが点在しているf:id:k_kushida:20170707150923j:plain▲市杵島姫神を祀っている辺津宮の本殿f:id:k_kushida:20170707151022j:plain▲宗像大神降臨の地と伝えられる高宮祭場は沖ノ島と並び宗像大社境内で最も神聖な場所の1つ。ここで古代祭祀が行われていたf:id:k_kushida:20170707151108j:plain▲宗像本土から11キロの沖合に浮かぶ大島に鎮座する中津宮。海を隔て、辺津宮と向かいあっている。島の北側には沖津宮遥拝所があり、晴天時には沖ノ島を拝することができるf:id:k_kushida:20170707151311j:plain▲湍津姫神が祀られている中津宮。ここにも宗像大社の由来となった御神勅が掲げられているf:id:k_kushida:20170707154849j:plain▲中津宮は七夕伝説発祥の地といわれており、織女神社と天の川、向かいの丘の上には牽牛神社がある

宗像大社の神職の1人、吉武誠礼氏も「沖ノ島・沖津宮と大島・中津宮と九州本土の辺津宮の総称が宗像大社なので、三宮同時に登録されないと意味がない」と語っていただけに、今回の逆転一括登録にはさぞかし喜んでいるだろう。

f:id:k_kushida:20170707155008j:plain▲宗像大社の神職の1人、吉武誠礼氏

一方、世界遺産に登録されることの影響も計り知れない。

「私個人の見解ですが、世界遺産に登録されることに関してはメリット、デメリットの両方があると思います。今まで『お言わず様』として守られてきた沖ノ島が世界遺産に登録されることによって、より一層の保護の強化が期待できます。その反面、認知度が高まることによって不法侵入を試みる人や観光目的で島に近づく船が増えるのではないかという懸念もあります。事実、たまに一般の船が港に入ってくることがあるのですが、そのたびにすぐに駆けつけて、緊急事態を除き、すぐに退去してもらっています。島での勤務中は一瞬たりとも気が抜けません。今後も沖ノ島とは島自体が御神体で、遊び半分で近づいたり立ち入ったりしてはいけない神聖な場所だということを丁寧に根気強く訴えていくしかないですね

しかし、世界遺産に登録された後も、一般人の立入禁止や女人禁制などの島の掟や私たち神職の仕事・使命は何ら変わることはありません。これまでと同様、お神様にご奉仕し、この島を守り、未来に伝えていくだけです」

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数千年もの長きに渡り、宗像地域の人々によって崇拝され、守られてきた沖ノ島。現代日本においてこれほど人の立ち入りが制限され、厳しい禁忌が守られている神域はほかにないだろう。先人たちのたゆまぬ努力のおかげで島は古代のままの姿を現在にまで留めている。世界遺産に登録されたことは非常に喜ばしいことだが、今後はより一層、この神宿る島を正しく理解し、守り、後世に引き継いでいくことが求められるだろう。

取材・文・撮影:山下久猛 取材協力:宗像大社、宗像市

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