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30代エンジニア2180人に聞いた
平均年収の実態と満足度 |
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エンジニアとしてのキャリアを重ね、転職市場価値も上がってくる30代前半。だが、勤務先や職種などによって、年収格差も顕著になる年代でもある。今回は30代前半2180人の年収データを紹介する。同世代の年収と比較し、自分の市場価値を探るヒントにしてほしい。
(総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:13.03.01
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30代前半エンジニアの広がる年収格差
Tech総研が定期的に行っている年収調査から、今回は30代前半(30〜35歳)のエンジニア2180人を抽出し、その平均年収・最高年収・最低年収のデータを紹介する。30歳から35歳までの平均年収、最高年収、最低年収をグラフにしたのが、DATA1である。平均年収は年齢を重ねるごとにアップしている。だが、最高年収と最低年収を見てみると、30歳では最高年収が820万円、最低年収200万円と差が520万円だが、35歳では最高年収額が1500万円であるのに比べ、最低年収額が150万円と1350万円まで広がり、その差は顕著である。ちなみに、30代前半の平均年収額は520万円となった。(DATA1)
DATA1 30代前半の平均年収・最高年収・最低年収の分布
次に、職種を大きくソフトウェア・ネットワークのIT系(以下、ソフト系)と、電気・電子・機械・素材などのハード系(以下、ハード系)に分けて、その平均年収・最高年収・最低年収を出したのがDATA2である。30歳時点での平均年収はソフト系職種(465万円)、ハード系職種(478万円)とハード系職種のほうが高いが、35歳時点ではソフト系職種(562万円)、ハード系職種(553万円)と逆転する。勤務先の業界業種や専門技術分野による影響が考えられるため、さらに職種別・業種別に細分化して年収比較をしていきたい。
DATA2 職種分野別に見た平均年収・最高年収・最低年収の分布
ソフト系職種の年収分布
ハード系職種の年収分布
30代前半(30〜35歳)・ソフト系の平均年収は525万円
まず、30代前半(30〜35歳)・ソフト系の職種別の年収を見てみよう。ソフト系の全体の平均年収は525万円だ。だが、最も平均年収が高い「プロジェクトマネジャー」(733万円)と、「運用、監視、テクニカルサポート、保守」(477万円)の差は256万円と、職種によって同年代でも給与の差異は大きい。「プロジェクトマネジャー」に続いて平均年収が高い職種は「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」(652万円)、「研究・テクニカルマーケティング・品質管理ほか」(579万円)。「基盤・インフラ」(575万円)、「ネットワーク設計・構築(LAN・Web系)」(547万円)、「通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)」(543万円)など、サーバー・通信・ネットワーク系も平均値より高い。
平均年収512万円、最高年収1350万円、最低年収150万円と、年収格差が最も顕著に出たのが、「システム開発(Web・オープン系)」だ。最高額と最低額で1200万円という差が出ている。また、平均年収が500万円未満の職種は「システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系)」(490万円)、「運用、監視、テクニカルサポート、保守」(477万円)である。プロジェクトマネジャー以外の職種は最高額と最低額の差が大きく、同年代・同職種でも年収格差があることがわかる。(DATA3)
DATA3 【職種別】ソフト系の平均年収・最高年収・最低年収
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勤務先の業種別に見てみると、平均年収が最も高いのは「金融・保険系」(744万円)。だが、最高年収と最低年収の金額が950万円もの開きがある。後で紹介するハード系では業種による年収格差が少ないため、職種による企業収益への寄与度、人的資源の稀少性などの要因があるのかもしれない。
「外資系SIer/NIer、コンサルティングファーム」(689万円)、「総合電機メーカー」(660万円)、「専門コンサル系」(656万円)、「大手SIer/NIer、コンサルティングファーム、ベンダー」(650万円)、「医薬品・化粧品メーカー」(622万円)が平均年収600万円を超えている業種。大手や外資系SIerやメーカー勤務エンジニアの年収が高いのはこれまで通りと変わらない。同年代の年収格差も大きい。今回は正社員として働くエンジニアを対象として調査しているが、企業の経営状況に加えてシビアな成果主義評価によるものも大きいと考えられる。
ソーシャルサービスやスマートフォンの普及などでエンジニアニーズの高い「インターネット関連系」に注目してみよう。平均年収563万円と全体より38万円多い程度。業界景気を反映してもう少し高くてもよさそうではあるが、起業したばかりでまだ収益が安定していないベンチャーも多々あると考えられる。企業収益に対する貢献度などの影響が大きいこの業界は、最高1200万円から最低年収300万円とその幅も大きく、プロダクトの成功がそのまま年収に反映されているエンジニアも多そうである。(DATA4)
DATA4 【勤務先の業種別】ソフト系の平均年収・最高年収・最低年収
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30代前半(30〜35歳)・ハード系の平均年収は519万円
次に30代前半・ハード系の平均年収は519万円。製造業の不景気を反映してなのか、同年代のソフト系と比較して6万円低い金額となった。平均年収が600万円を超えた職種はなく、最も高かったのは、「半導体設計」(569 万円)、次いで「研究、特許、テクニカルマーケティングほか」(563 万円)となった。500万円未満の職種は「サービスエンジニア・FAE」(494万円)、「運用、監視、テクニカルサポート、保守」(350万円)。(DATA5)
DATA5 【職種別】ハード系平均年収・最高年収・最低年収
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だが一方で同年代と比べて平均より高い年収を得ているハード系エンジニアもいる。「半導体設計」はリストラを行う半導体メーカーも多い一方、大手サプライヤーや大手メーカーからの人材ニーズは高い職種。また企業の命運をかけた次世代製品の研究開発職も同様であり、その貢献度が報酬に反映されているようだ。同年代・同職種での年収格差が大きいのは、「生産技術、プロセス開発」「品質管理、製品評価、品質保証、生産管理」「サービスエンジニア・FAE」。勤務先業種で見てみると、年収が低い業種は「半導体・電子・電気部品メーカー」「家電・AV機器・ゲーム機器メーカー」が多く、高い職種は「自動車・輸送機器メーカー」「総合電機メーカー」「医療機器メーカー」が多く占めていた。(DATA6)
DATA6 【勤務先の業種別】ハード系平均年収・最高年収・最低年収
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「満足している」の中身はあきらめや妥協によるものも……
最後に30代前半エンジニアの年収に対する満足度を紹介する。「満足している」と回答しているのはソフト系(51%)、ハード系(58%)と半数以上を占める。だがその理由を聞いてみると、以下の「エンジニアの生声」で紹介しているように、その満足の中にはあきらめや妥協によるものも少なくない。勤務先の経営状況を考えれば十分であると考えていたり、同業他社もそんなに変わらないだろうと思っているようだ。(DATA7)
ハード系エンジニアの中には、休みが取れることや社員食堂や寮などの福利厚生があるから、貯蓄もできるし生活にも困っていないという声も多い。「不満である」人たちの声は、「仕事で成果を出しても会社の業績が悪いために年収に反映されない」というものが多く、仕事と成果に見合った報酬を得ていると考えているエンジニアは少ない。
だが、調査データで示したように、同年代でも業界や職種によって年収は違ってくる。たとえ転職する意思がなかったとしても、いまの自分のキャリア価値を確認しておくことは重要だ。現在の年収が自分のキャリアと技術力とマッチしているのかを把握するためにも、こうした年収相場や転職の選択肢などを定期的にチェックすることをおすすめしたい。
DATA7 30代前半の年収満足度
■満足している(ソフト系)
去年よりは上がっているので不満はない。昇進や昇給など自分の能力を評価してもらった成果なので妥当だと思う(1200万円/34歳/通信機器メーカー/汎用機系システム開発)
不景気なのに、もらっているほうだと思う(1200万円/30歳/インターネット関連系/Web系システム開発)
年齢からすればそれほど低くない。ただし、今後は昇給しにくくなっていくため、将来が不安ではある(30歳/500万円/ソフトウェア・情報処理系/オープン系システム開発)
やりがいがある仕事でかつ、まわりの同年代よりやや高い収入だから(32歳/694万円/大手SIer/オープン系システム開発)
■満足している(ハード系)
給与水準だけ見れば悪くはないけど、経営状態が悪化しており、いつ倒産してもおかしくない。将来が不安である(30歳/370万円/機械関連メーカー/機械・機構設計)
特別高い金額をもらっていないが、その分休みなどをしっかり取らせてもらえるから(34歳/800万円/精密機器メーカー/生産技術)
独身で会社の寮に住み、社員食堂含めて三食は安価に食べることができ、交通費は全額負担してもらっているので、収入の多くを自由に使うことができるから(35歳/580万円/機械関連メーカー/機械・機構設計)
自分がやってきた仕事をしっかり評価してもらったと思う(30歳/600万円/産業用電気機器メーカー/回路・システム設計)
■不満である(ソフト系)
同僚と比べて仕事内容に見合った給与ではないと感じる(30歳/450万円/ソフトウェア・情報処理系/Web系システム開発)
学歴と年齢から考えてもう少し高い給与水準であって欲しい(31歳/470万円/独立系SIer/オープン系システム開発)
会社や仕事への貢献度より、通信教育を受講して修了する、資格を取るなどの教育制度で定められた基準をクリアするだけで年収が上がる(35歳/400万円/重電・産業用電気機器メーカー/制御・システム開発)
入社時から全然収入が変わらない(34歳/700万円/インターネット関連/Web系システム開発)
■不満である(ハード系)
せっかく開発チームで成果を出しても、経営陣が個人的に気に入らなければ評価されない(31歳/460万円/サービス系/機械・機構設計)
大手の年収ぐらいほしい。もっと自由に好きな車に乗りたい(33歳/350万円/半導体・電子・電気部品メーカー/半導体設計)
責任と仕事量は増えているが、給料の昇給と比較すると割りに合わない気がするから(34歳/750万円/半導体・電子・電気部品メーカー/生産技術)
主任に出世はしたが、数年前より20〜30万円程度下がっている。不景気なのはわかるが…(32歳/650万円/セラミック・セメントメーカー/機械・機構設計)
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