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エンジニア1000人調査!
2012年夏のボーナス平均58万円 |
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自分の働きに対して正当な報酬であるかどうはさておき、今年の夏も、多くの企業でボーナスが支給された。全体的には支給額の伸び悩みが伝えられるが、エンジニア職種の人たちはどうだったろう。1000人対象のアンケートから浮かび上がったのは──。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:12.07.19
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昨年度よりは持ち直したものの、伸び悩みは否めない
各調査機関の調べによると、2012年夏のボーナスは、全体的に伸び悩んでいる。損保ジャパンDIY生命保険がサラリーマン世帯の主婦を対象に実施したアンケートでは、今夏の夫のボーナス平均手取り額は、昨夏より6万5000円減少の61万1000円。2002年の調査開始以来、最低の記録だという。
地方経済や中小企業はより深刻で、例えば大阪市信用金庫の調査では、今夏のボーナスを支給する大阪の中小企業は5年連続で減少し、ついに50%を割り込んだ。ボーナス額がいくらかではない、そもそもボーナスが支給されないのだ。
さて、Tech総研が7月に実施した22歳〜35歳のエンジニア1000人対象のアンケート。その結果は──。この夏のボーナスの支給金額の平均値は「58万2200円」。同じ回答群の前年同期(2011年夏)のボーナスは「54万8300円」だから、平均で6%ほどアップしていることがわかる。
ちなみに回答群は同じではないものの、2010年同期のアンケートでは「59.2万円」という数字が出ていた。単純に比較すると、59.2万円(2010年夏)→54.8万円(2011年夏)→58.2万円(2012年夏)という経緯で、東日本大震災の影響を受けた2011年に比べると盛り返しているものの、2010年には及ばない結果となっている。
DATA1 職種別・2012年夏のボーナス額
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Web系エンジニアのボーナスは中位に甘んじている
職種別にみると、電気・機械・化学のものづくり系(以下、EMC系)職種は「59.2万円」であるのに対して、IT系(ソフト系)職種は「57.2万円」。EMC系がIT系を上回るのは例年の現象で、これはIT企業が全体では企業規模の小さな会社が多いことが理由だと考えられる。
職種をさらに細分化してみると、EMC系で支給額が高いのは、1位「光学技術(80.0万円)」、2位「研究・特許・テクニカルマーケティング(70.0万円)」、3位「セールスエンジニア・FAE(63.2万円)」だ。IT系で支給額が高いのは、1位「コンサルタント、アナリスト、プリセールス(88.3万円)」、2位「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理(66.5万円)」、3位「システム開発(汎用機系)(61.7万円)」である。
顔ぶれは例年とほぼ変わらないが、Web・オープン系のシステム開発が、業界的にはいまトレンド職種ともいえるのに、ボーナス額ランキングでは中位の54.3万円に甘んじ、コンサルタント系はもとより、汎用機系のシステム開発からも差をつけられているのは、意外といえば意外だ。
これもまた、所属する企業規模の差だろう。Web系エンジニアは転職業界でいま引っ張りだこだが、実態は従業員10〜20人のベンチャー・プロダクション的な小規模企業に勤める人が過半。経営はなかなか苦しく、ボーナスを潤沢に払えるところは少ない。逆に言えば、それがWebエンジニアの雇用流動性を高めている一因かもしれない。
同じ業界に長く勤めていると、他の業界のことが見えなくなるし、ついつい隣の芝生が青く見えることもある。そこで2012年夏のボーナスを業界別にまとめたのがDATA2だ。金融・保険系は相変わらず強く「85.0万円」でトップ。かつての花形職種マスコミ系は順位を落とし、大手SIer・コンサルファーム、医薬品・化粧品の後塵を拝する。総合電機メーカーは、「71.6万円」でなんとか上位に食い込んだ。
ここで注目したいのは、インターネット関連企業が「63.8万円」と10位にランクされていることだ。これは不動産、商社などを下回るが、コンピュータメーカー、重電・産業用電気機器、家電・AV機器よりは上。日本の産業分野の一角にインターネット産業がきちんと食い込んでいることの証左ともいえる。
DATA2 勤務先業種別の2012年夏のボーナス額
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DATA3 職種別/ボーナス増減について
「仕事内容に比べて50万円程度安い」34.7%
さて、業界統計的な数字も大切だが、Tech総研としては、エンジニアの実感値を大切にしたい。ボーナスは本来、その人の前期の働きぶりや業績を評価するものだから、実際の仕事内容に比べて、多いか少ないかという観点が重要なのだ。
そこでズバリ聞いてみた。「あなたのボーナス、満足していますか」。まず仕事内容に比べて「高い」と思う人。聞くまでもないことだが、これは全くの少数派だ。「仕事内容に比べて50万円程度高い」がわずか1.3%いるにすぎない。
一番多いのは「今回の金額に満足している」の58.2%だが、全体傾向としては、「仕事内容に比べて50万円程度安い」34.7%、「100万円程度安い」4.5%、「200万円以上安い」1.3%と「不満」の声も強く出る結果となった。しかし、100万円程度安いって、実際の平均支給額が約60万円なのだから、「もらったってお釣りが来るぐらいに、私は不満だ」ということなのだろう。こうなると「不満」というよりも一種の「怒気」さえ感じさせるのである。
DATA4 2012年夏のボーナス額に対する満足度
なぜこうも安いのか。それは、ボーナス額を決定する要因にまで遡らなければ見えてこない。
「今回あなたのボーナス額決定に最も決め手になったと思うものは何?」という設問では、「会社の業績」を挙げる人が42.8%と最も多かった。「個人の業績・成果」17.4%、「年齢・学歴・勤続年数」17.5%を大きく上回っている。
DATA5 2012年夏のボーナス額決定に最も決め手になったと思うものは?
この回答から見えてくるのは、以下のような不満の理由だ。
「自分やチームは頑張ったが、会社の業績が悪化しているという理由でボーナスがカットされる。これは不満だ」
実際に、アンケートの自由回答欄を読むと、「評価期間の半年の間、休日出勤が多くほとんど休みがなかったにも関わらず、昨年よりも少ない金額であったのは残念」(独立系SIer/24歳)、「考課会議では高い点が付いているのに、それがボーナス額に全く反映されていない」(システム開発/33歳)といった声が多かった。
満足度の高い回答群の傾向も、コメント欄をみると、手放しでは喜べない。
「仕事に関して、結果やプロセスに関して周囲に劣っているとは思っていない。自分への評価というより、この厳しい社会情勢の中で、それなりの金額をもらえたことで満足している」(鉄鋼・金属メーカー/34歳)
というように、個人業績が評価されないのは不満だが、会社業績がよくないから仕方がないとあきらめの境地なのだ。個人の頑張りと会社の業績が連動しないもどかしさの中で、多くのエンジニアは今年の夏を迎えているのである。
ボーナスの半分を貯金に回す──増税時代のエンジニアの選択
伸び悩むのはボーナスだけではなく、月々の給与もそうだ。ボーナスを月々の出費の補填に使ったり、将来の備えのために貯蓄や投資に振り向ける人も多いはず。「さ、ボーナスが出たからパッと使おう」というのはサラリーマンの行動パターンとして、もはや過去のものになったようだ。
今回のアンケートでは貯金額やローン返済額も聞いてみた。ボーナスから貯金に回す額の平均は、28.59万円。ボーナスの半分は貯金に回すということだ。今年は消費税増税も決まりそうな気配で、景気回復にも楽観的な見通しがなかなかもてない。アリとキリギリスでいえば、アリさん的な選択をせざるを得ないということだろう。ちなみにローン返済額は平均が5.14万円となっている。
一方、消費支出の方はといえば、買い物が平均7.09万円。旅行が3.28万円。親・家族・恋人などのプレゼントが1.38万円と、決して多い金額とは言えない。これでは自分用にiPadを1台、旅行といっても近場の国内旅行がせいぜい、恋人へのプレゼントにいたってはアクセサリーの一つも買えないではないか。
ボーナスが伸び悩み、景気の先行きが不透明なままでは、当然ながら財布の紐はかたくなる。このままでは国内消費の回復は当分望めないが、いま重要なのは自分自身の生活防衛だ──アンケートのすき間から、そんなエンジニアの思いが見てとれる。
DATA6 2012年夏のボーナス額の使い道は何だった?
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