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発見!日本を刺激する成長業界15 パワー半導体が「電気の時代」をリードする
半導体をスイッチング機器として用いることで、電源や電力を制御するパワー半導体。AV機器から白物家電、電気自動車、クリーンエネルギー、スマートグリッドなど用途は非常に幅広く、「電力のあるところにパワー半導体あり」と時代のキーデバイスになっている。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:11.01.31
2015年には世界市場で約1兆4000億円、関連市場も拡大必至
 直流を交流に変換したり、電流の流れや電圧の上げ下げをきめ細かく制御するパワー半導体は、電力の高効率化や省エネに不可欠なデバイスだ。以前ならインバータが代表例だったが、現在では電気自動車などのモーター制御や、太陽光発電や風力発電などの電源制御など、その用途は拡大の一途である。
 富士経済によれば、2015年のパワー半導体デバイスの世界市場は、2010年比で約30%増の約1兆4000億円になると予測。調査では各分野での注目を「MOSFET」(トランジスタ)、「IGBT」(パワーモジュール)、「SBD」(ダイオード)、「SiC-SBD」(次世代パワーデバイス)としている。パワー半導体を用いたパワーエレクトロニクス機器や材料など関連市場も拡大が必至。「電気の時代」をリードするのはパワー半導体だ。
パワー半導体デバイス世界市場 (2010年は見込み、2011年以降は予測)
日本インター/ハイブリッド車や太陽光発電に独自技術が光る
 パワー半導体の開発企業には、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を得意とする三菱電機のような大手企業以外に、高い技術力と独自の発想力で注目される中堅企業も多い。ダイオード系の製品を主力とする日本インター株式会社は、後者の代表企業である。
潜在需要の先をゆく1.7ミリの薄さ、放熱フィンの一体化
ハイブリッド車用のアルミフィン一体型パワーモジュール
ハイブリッド車用のアルミフィン一体型パワーモジュール
 日本インターのパワー半導体には、単機能に特化したディスクリートと、これらを複合的に組み合わせたパワーモジュールがある。その用途は前者ならデジタル家電や車載製品が主体で電圧30〜600V、電流0.5〜60A程度、後者は産業機器やクリーンエネルギーで電圧100〜1200V、電流30〜800A程度を扱うという。
 同社では顧客の要求に合わせた独自製品も開発しているが、ソーラーセル用のディスクリートである「薄型TO-263SBD」もそのひとつだ。
 ソーラーセルでは、枯葉や電柱などで一部のセルが日陰になると、そのセルの発電が低下することで抵抗作用が働き、全体の発電量が低下する。そこでこの製品は、こうした部分が見つかるとそのセルを避け発電低下を回避する、「バイパスダイオード機能」として機能を備えている。加えてその厚みは1.7ミリと極めて薄く、標準的な製品の3分の1程度という。執行役員で研究開発部長の新井昌行氏は語る。
「屋根の上に載せますから薄く、軽くが当然求められますが、単に薄くすると加工段階の熱で変形したり、樹脂の亀裂から水分が入るなどして電気性能が劣化します。そこで、チップの信頼性能を高めると同時に、パッケージの材料を工夫するなどしました」
 この半導体の素材はシリコン、銅材、モールド樹脂などで構成されており、熱膨張の違いよる剥離問題を解決することが課題だった。そこで樹脂メーカーに相談しながら最適なモールド材を選定したことと、モールド樹脂との密着性を高める特殊加工を銅材のフレームに施すなど他社にないアイデアで、現在では大手電機メーカーの太陽電池に搭載されているという。

 また、この製品のチップを変えた「薄型TO-263アバランシェ保証障型SBD」は、ハイブリッド車のDC-DCコンバータに使われている。ここで搭載されるダイオードには、逆方向に電圧が掛かった場合の破損を回避する保護用回路が必要となるが、これをパッケージの内部に格納していることが特徴だ。ひとつのチップに2つの機能を持たせることで小型化を実現し、順方向の電圧の損失も低減させたという。
「単なる価格競争では収益が出せません。顧客の悩みはどこか、それを技術でどう手助けするか、潜在需要のさらに先の付加価値を考えます。現在でも新しい製品をご提案しているところです」
 そのひとつが、ハイブリッド車向けの「アルミフィン一体型パワーモジュール」。通常、パワーモジュールはベースの下にサーマルコンパウンドを塗布して、熱を逃がす放熱フィンを接続するが、この接触部分に熱抵抗が出るので放熱電気特性が悪くなる。また、ベースは銅材で作られており、その重量は最終的にバッテリー寿命にも影響してしまう。

「モジュールと放熱フィンを一体化させると同時に、フィンの材質を軽いアルミに変えました。これにより接触熱抵抗が低減し、モジュールの重量が2割軽減、容積も従来比で3割低減されました。熱疲労の低減された結果、冷熱サイクル耐量は3倍以上に向上しています。お客さまからも高い評価をいただいています」
 同社では現状のシリコン素材での製品開発を進めると同時に、SiC(炭化ケイ素)などの新素材にも取り組み、低炭素社会の実現に向けた、電気エネルギーの効率的な利用に貢献したいとする。
「例えば中国では、パワー半導体を搭載したインバータなどパワー半導体がまだ一般化していませんし、将来的な電力不足も危惧されています。そのため、電源のアダプターなどに熱規制などが出てくるなども考えられます。ますます電力の効率化や省エネが求められますから、弊社が貢献できる余地が拡大すると思います」
新井昌行氏
執行役員
ディスクリート事業部 副事業部長
兼 研究開発部長

新井昌行氏
電気系の経験者が中心だが、異業界への広がりも期待
下部に一体化されている放熱用のアルミフィン
下部に一体化されている放熱用のアルミフィン
太陽光パネル用の「薄型TO-203 SBD」(100円玉の下)
太陽電池用の「薄型TO-263SBD」(100円玉の下)
 日本インターのパワー半導体開発は、シリコンウェハーの購入から始まり、ウェハーの上にダイオードやMOSFETを作りこむ前工程と、作られたチップをパッケージ化して生産する後工程、そして販売までを手掛けている。
「弊社の社員は大学工学部の電気出身者が多いですね。仕事柄、物性を含めた量子力学の知識は必要になりますから。細かく理解できないと問題点や付加価値の判断ができないので、やはり基礎は大切です。ただ、素材関連の仕事もありますから、化学系の出身者もいます」
 そのうえでパワー半導体に携わるエンジニアについて、経営企画部戦略企画室の仲野久利氏は次のように語る。

「前工程なら、ウェハーの素材の仕様やデザインが決められて、購入できるくらいのスキル。チップの開発では、ダイオード、MOSFET、IGBTなどシリコンウェハーを使った設計や開発の経験、製造工程の知識は必要でしょう。後工程であれば、量産までのプロセスを改善するプロセスエンジニア、製造段階では生産技術エンジニア、評価エンジニアなども必要になります」
 大手企業では前工程のウェハー担当、後工程のパッケージ担当などと分業化されているケースもあるが、同社は異なる。ディスクリートとモジュールで事業部を分けており、それぞれ前工程と後工程とで専門性は違うものの、エンジニアは全領域の知識を求められる。その理由は、顧客から電気特性などのニーズを聞いて開発する案件が多いからだ。
「お客さまのご要望があって弊社の開発部隊などが話を伺うわけですが、ディスクリートとモジュール、前工程と後工程を理解していないと対応ができません。例えば、前行程でできないことを後工程でカバーするなどの発想は生まれませんし、コスト意識も育ちません」

 日本インターに限らず、パワー半導体の用途や市場が拡大するに従って、異業界のエンジニアが参入する機会が増えるかもしれない。上記の「アルミフィン一体型パワーモジュール」のように、パワー半導体と別材料との融合が進んできたからだ。
「例えば、自動車サプライヤーなどにいる、放熱フィンの熱設計や冷却技術がわかるエンジニアです。2次元の回路設計ではなく、3次元でモノが見られる機構設計者などが必要になるわけです。特にモジュール系では、製品が搭載される先の自動車メーカー、サプライヤー、家電メーカーなどが考えられます。異業界からは、顧客企業の業界知識を持つFAEなども含まれるでしょう」
 同じ半導体であっても、スイッチングデバイスとしてのパワー半導体と、シリコンの表層部分に演算回路を組み込むメモリとでは、集積度も仕組みも領域も異なる。パワー半導体には、半導体メモリとは異なるユニークな視点が求められるのだ。新井氏は強調する。
「技術的な経験、幅広い知識、これらは当然必要ですが、人が目に付けないようなところに視点を当てる人ですね。標準的な発想のままでは新しいものはできません」
仲野久利氏
経営企画部 戦略企画室
室長代理

仲野久利氏
パワー半導体関連のエンジニアニーズ、今年が「元年」になるか
多彩な業界、多様な対象、経験者なら選べるフィールド
 電源や電流の制御に用いられるパワー半導体デバイス、あるいはパワーエレクトロニクスなどの製品は、上記のようなハイブリッド車などの自動車、太陽電池のようなクリーンエネルギーのほか、実に多彩な分野で利用されている。
 例えば、パソコンなどのAV機器から、エアコンや冷蔵庫といった白物家電、NCなどの工作機械やロボットなどの産業機械、エレベータや無停電電源装置(UPS)のオフィス用途、発電所やスマートグリッドといった大型施設もそうだ。そのため、開発企業も総合電機メーカーやパワー半導体専業メーカーはもとより、自動車メーカー、サプライヤー、家電メーカー、産業機器メーカー、重電系メーカーなど業界は広範になる。
 そのため、特に経験者であれば、強みを生かせる分野や携わりたい対象などを、ある程度は確認しておく必要があるだろう。
モーター、インバータ、電池など有力業界への参入チャンス
 エンジニアに要求されるスキルは主に電気系が主体となる。サイリスタ、MOSFET、IGBTなどのパワー半導体チップの開発経験、パワーエレクトロニクス製品向け半導体の設計経験、インバータなどでの回路設計経験などがあれば当然有利。あるいは、パッケージやパワーモジュールの実装経験などだ。
 パワー半導体の設計では、放熱処理や経年劣化に関する知識も必要とされる。例えば、照明機器の熱解析や熱シミュレーションの経験があり、回路設計の知識があるようなエンジニアであれば、入社後に専門知識を吸収する前提での転職も可能だろう。異業界からの転職者であれば、「接点」を探すことも大切だ。
 用途として特に注目されているのがモーター、インバータ、電池など。そのため、インバータの開発に携わったエンジニアであれば、家電メーカーから自動車系メーカーへの転職も十分に可能。ほかの分野からこれらの有力業界に転身するチャンスとも言える。特にアナログ回路の設計者は人材不足が続いているので有利だ。
シリコン代わるSiCやGaNで化学系職種へも期待大
 プロセスエンジニアも重宝される。パワー半導体やパワーエレクトロニクスのデバイスは、高性能化とともにコストダウンが至上命令。プロセスや生産管理のわかるエンジニアや、生産技術系の職種も求められるはずだ。
 化学・材料系のエンジニアへの可能性も広がる。長い間パワー半導体の素材として使われてきたシリコンに変わって、SiCやGaN(窒化ガリウム)などの新素材開発が急伸しているからだ。これらを使えば思い切った小型化や、電力損失の大幅な削減が可能になる。
「確かにシリコンの限界は感じています。物性にも、集積度を上げるための微細化にも限界がきているのでしょう。ただ、パフォーマンスはよくても価格がまだまだ高い。量産効果はまだ出ていないと思います」(新井氏)
 求人企業は化学メーカーや材料メーカーがメイン。本格的なエンジニアニーズは少し先かもしれないが、これらの新素材や関連素材の開発経験者は要チェックだろう。
 パワー半導体関連のエンジニアニーズは数年前から顕在化しているが、今年はまさに「成長業界」となりそうだ。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
パワー半導体は以前から取材したいテーマでした。とても素人チックなのですが、最初に知ったとき、「半導体はこんなふうにも使えるんだ」という新鮮さを感じたからです。そんな技術って多いですよね。これからも追いかけたいテーマです。

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