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仮想化やクラウドによるインフラ、太陽光・二次電池エネルギー… これで日本は蘇る! 胎動する新事業とテクノロジー

2009年が明けた日本に景気回復の兆しはまだ見えない。ただ、今年や来年の話ではなく5年先に花が咲き始める産業、それを支える技術も見当たらないだろうか。「それは違う」と今回取材した2人の識者は語る。言い古された言葉だが日本は技術立国だ。今、ひそかに胎動している新しい萌芽を見つけた。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介 イラスト/関根庸子)作成日:09.01.08
ハード系 三菱総合研究所 日本の得意技術でビジネスが立ち上がる
  最初に紹介するのは製造業や重工業を中心としたモノづくり系の事業や技術。5年後、あるいはもう少し先の日本で伸びそうな産業や事業、それらを支える技術やエンジニアについて尋ねた。答えていただいたのは昨年10月まで産業戦略全般を担当していたコンサルタント、三菱総合研究所の上岡広治氏だ。
株式会社三菱総合研究所
金融コンサルティング本部長 参与
上岡広治氏
 今の日本には4つの大きな流れがあります。少子高齢化、資源制約、環境問題、格差社会です。これらによって生じる世の中に合ったビジネスが、新しい産業や事業として成長するのだと思います。特に少子高齢化は日本が最も早く進むともいわれており、見方を変えれば世界市場にいち早く参入できることになります。
 石油ショックが日本の省エネ技術を開花させました。少子高齢化に限らず、危機が来ることでそれを逆手に取ったビジネスや技術の種が生まれてくるものです。今後の日本にかなりのアドバンテージがあることは、これから紹介するいずれの事業でも、日本の技術が強みを発揮していることからわかります。


最も有力な事業は太陽光や二次電池などの環境エネルギー
 日本がトップクラスの技術力をもっている環境エネルギー事業。これから数年かけて伸びるのが太陽光発電とリチウムイオンなどの二次電池でしょう。太陽光なら大量発電はもちろん住宅パネルなどのユース、用途の拡大が予想される二次電池では、特に電気自動車用バッテリーでのニーズが大きいと思います。
 電気自動車は各社で開発中ですし、実用化も近い。家庭で充電できるプラグインなら普及に拍車がかかりますし、石油に頼らない資源制約、CO2排出への環境問題対策にも有効です。こうした環境エネルギー事業では素材、化学、電気などの技術職が必要とされますが、キーとなるのは電気系の制御技術だと思います。

イラスト
 現在では環境問題にも有力な原子力発電のプラント開発が拡大しています。ただ、5年以上先となるとどうでしょうか。造船のように新興国が技術をキャッチアップしていくことが予想されますので、少々不明確です。燃料電池も同様で、特に燃料電池車となると補助金が出てもかなり高額ですので一般家庭で購入するのは難しい。また、水素ステーションなど全国のインフラ整備には技術を超えて行政や社会的な協力が欠かせませんから、実用化への道のりはもう少し先だと思います。
 環境エネルギーは国も後押ししていますし市場規模も大きく、いちばん有力な分野ではないでしょうか。
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日本のお家芸である精密機器とロボットの事業が発展
イラスト  マシンが人をサポートする技術、特に精密機械を使ったロボット事業も成長すると思います。ひとつはパワーアシスト系で、高齢者の介護やモノづくりの現場で働く人を補助するための装置です。後者の例では建設現場があります。今後は労働力不足もあって女性や高齢者の進出が予想されるので、力の弱い彼らの手足に装着して不足するパワーを補うわけです。
 後継者不足や経営難が問題の農業で、農作業のアシストにも利用されると思います。一定の方向に並んだ稲と違って、品種の多い野菜はそれぞれに収穫の方法が異なりますから、こちらが中心になるかもしれません。パワーアシスト系ではモーターやアクチュエーター関連の、メカトロニクスやエレクトロニクスの技術者が必要になるでしょう。

 もうひとつの方向はMEMSなどを用いた医療機器の分野です。現在でも飲み込むタイプのカプセル内視鏡がありますが、こうした超小型かつ高性能な医療機器が広がってくると思います。製品自体を開発するメカやエレの技術に加えて、データの送受信や機器の制御で通信系の技術が必要になると思います。
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融合技術によるクルマや食材などの安全・安心サービス
 安全や安心を実現する事業で、日本が強みをもつ融合技術が生かされるでしょう。典型的な例は自動車で、センサーで前走車を探知してブレーキを自動制御する衝突防止機能や、瞳の動きやまばたきの回数などから警告する居眠り防止装置などです。既に実用化されていますが車載の安全技術はより一層高まると思いますし、トヨタ自動車が実用化を進めるパーソナルモビリティ(センサーなどによる安全機能を備えた1人乗りの電気自動車)なども、高齢化時代に沿って一般化していくと思います。

 社会問題化している食の安全・安心への技術も進むでしょう。含有物や成分の計測技術もそうですし、味をデジタル化して不純物などを発見する味覚センサーが進化すると思います。ここでは、取得したデータが安全か否かを照合するためのデータベースも必要になります。
 このようにメカに電気や通信、センシングとデータベースといった組み合わせの融合技術が、安全・安心のためのビジネスを支えていくと思います。
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こんな分野にも注目! 需要の消えない健康・美容マーケット
 トイレの尿から自動で健康診断ができたり、クルマのハンドルを握ると脈拍や血圧が測れたり……。日常的に使うさまざまな機器が測定器を兼ねて診断を行う、健康というより医療予防マーケットです。
 再生医療を使った美容分野も期待大。例えば、自分の皮膚から培養した新しい皮膚を顔に移植して、しわのないツルツルの肌にする。臓器の再生はまだ先でしょうが、このような肌、あるいは歯の再生はそう遠いことではないでしょう。関連する求人情報
多くの局面で“擦り合わせ”のできるエンジニアが求められる
 技術の融合が今後のトレンドになると思います。自分の専門分野だけではなく、周辺の技術や前後の工程を理解して、擦り合わせのできる人が求められてくる。精密機器の機械設計が専門であっても関連する電気の知識がある。あるいはどのような前段階があって自分の仕事が発生し、次にどのように使われていくのかを意識できる。
 口にするのは簡単でも現実的にはかなりの努力がいる。しかし、それができるエンジニアに今後はスポットが当たるのだと思います。

2030年に向けての「場」の技術ロードマップ2030年に向けての「感性」の技術ロードマップ
出典:三菱総合研究所
ソフト系 ガートナー ジャパン アイデアを実用化する日本の技術に期待
  昨年10月に「2009年以降に企業ユーザーにとって戦略的に重要な意味を持つ10のテクノロジ」を発表したガートナー。ただ、5年、6年先のビジネス事情となればまた話は違ってくる。今後のソフト系の技術とビジネスについて、富士通研究所でネットワークの研究開発にも携わった田崎堅志氏に話を聞いた。
ガートナー ジャパン株式会社
リサーチ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー担当
バイスプレジデント
田崎堅志氏
 ワールド・ワイド・ウェブ(インターネット)が進化する中、それに物理的な世界を組み合わせた「リアル・ワールド・ウェブ」の新しい使い方が始まるのだと思います。
 現在では電子マップのストリートビューやGPSを使ったロケーションサービスなどがその一例として挙げられますが、今後は仮想化やクラウドコンピューティングなどをベースにした、より効果的で効率的なサービスが生まれるでしょう。
 これからのソフト技術は、いつでもどこでも使えるコモディティなインフラになると思います。そこで必要とされるのは、アイデアの実用化を得意とする日本人エンジニアの技術力です。


企業と事業を大きく変えるリアルタイムのインフラ
 今までのITは新幹線のようにスピードは速くても、置かれた障害物を察知して避ける「俊敏性」はありませんでした。企業の情報システムは処理は早くても、サブプライム問題のような急速で甚大な変化を察知して、どこに人を集約してどの部門を整理して次なる事態に備えるといったことに、効果的な対応はできなかった。私たちがリアルタイム・インフラストラクチャー(RTI)と呼ぶのは、ITを電子的、物理的な情報と結びつけ、ポリシーに基づき、極力人手に頼ることなく自動的、自律的に変化に対処させる仕組みです。
 これらをIT側で支えるのが仮想化やクラウドコンピューティング、あるいはWeb指向アーキテクチャであり、リアルを電子化するのは日本が強いセンサー、音声認識、画像処理などの技術です。これは企業経営に限らず、収穫が天候、気温、植生、機械、人力など多くの要素に左右される農業や、突発的に起こる自然災害にも応用できます。

イラスト
 ただ、課題はあります。拡張性と弾力性がクラウドコンピューティングの大きな特徴ですが、企業が第一に求める信頼性や安定性はまだ不十分。これが解決できればコストのバリアが低くなり、RTIはより身近なものになるでしょう。一方で、リアルを電子化するセンシングなどの技術もまだ高度化が必要です。
 RTIや関連機器の開発と普及には、ネットワークやアプリケーションをはじめとするすべてのIT系エンジニアの英知が必要になります。将来的にはかなり大規模な産業になるでしょう。
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LTEやで電子マネーが広げるモバイルコンテンツビジネス
イラスト  携帯電話で100Mbpsの速度を実現する通信規格、「LTE」(long term evolution)を使ったサービスが2010年ごろから立ち上がりそうです。これだけの高速なら容量の大きい動画も流せるようになり、現在でも拡大中のモバイルコンテンツ市場にさまざまなビジネスが生まれてくると思います。サービスとはプロダクトとコンテンツを合わせたものですから、機能が特化した小型端末とゲームソフトをセットにして、低価格で販売するなども十分に考えられます。

 支払い機能では電子キオスクなどの充実で利用者が増加するでしょうし、電子ポスターのようなデジタルサイネージが広告手法として一般化すれば、人が動く場所には個人に合った情報があり、そこで買い物もできてしまうかもしれない。ここにも事業の芽が生まれると思います。
 こうしたビジネスでは製品開発に携わるハード系職種に加えて、ネットワークやインフラ、Webアプリ開発などの多様なITエンジニアが必要になります。
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ソフトウェアを用いたルーティングのセキュリティ技術
 市場規模は小さいのですが、ネットワーク技術の中でセキュリティ装置に注目したいと思います。近年でもレイヤー4-7スイッチ、ロードバランサー、IPSやIDSなど技術の高度化が進んでいます。ディープパケットインスペクションに代表されるように、ルーターはパケットの中を流れるデータをリアルタイムで読み取って、ウイルスをチェックしたり、URLからデータを送る方向を決めたりしています。

 これはある程度標準化されているハード側の仕組みであり、パケットの頭の部分を見ているわけですが、より深い部分をソフトウェアで認識してルーティングする技術が、中長期的に開発されていくと思います。ソフトウェアルーターは既にありますが、技術開発によりセキュリティ機能を格段に向上させるというわけです。
 ネットワークより上位のアプリケーションになりますので、まさにWebアプリ開発のエンジニアが必要となります。
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こんな分野にも注目! 標準化はトレンドダウンにつながらない
 インターネットは標準化が進みましたが、標準化とはインタフェースを決めてさまざまな機能を追加するモジュール化でもあります。Web指向アーキテクチャもSOAもひとつの機能をアップしてほかとの接続性を向上させるモジュール化であり、RTIも同じです。
 モジュール化が進むと競争や新規参入が難しくなるといわれますが、きめられたインタフェースさえ守れば「何でもあり」ということ。好例がブラウザで、一時はIEの独壇場でしたがFirefoxユーザーは多く、昨年はChromeも出てきた。今後はそのモジュールがより明確になり、競争が始まるのだと思います。関連する求人情報
アイデアを形にできるエンジニアがより評価されてくる
 研究開発には先端性が求められますが、人のアイデアを使える形にする実用化や製品化も大切な技術。サイエンティストというよりエンジニア的な日本人はここに強いのです。もちろんアイデアを出す人も増えてくるでしょうが、インターネットの速度と信頼性が向上して技術のインフラ化が進んだ数年先には、こうしたニーズは山ほど出てきます。
 アイデアをリアルに落とせる日本人エンジニアの技術力は、もっと評価されることになると思います。

先進テクノロジのハイプ・サイクル:2008年
※ハイプ・サイクルとはテクノロジーやアプリケーションの成熟過程と市場に及ぼす影響を分析するためにガートナーが考案した手法。
出典:ガートナー(2008年7月)
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
この取材は偶然2日続いたのですが、おかげで元気になりました。記事を読んで、リアリティがあると感じませんでしたか? 多くのエンジニアがこの不況で苦しんでおり、特に派遣の方や期間工の方は「クビ」を宣告されるばかり。冗談じゃない!! 私は日本と日本のエンジニアに期待しています。

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