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スカイラインGT-R、プリウス、RX-7…懐かしの名車が勢ぞろい!エンジニアが選ぶ!20世紀の名自動車TOP5
空前のクルマブームに沸いた20世紀後半。さまざまな技術やコンセプトが飛び出すなど、クルマへの夢いっぱいだった20世紀の名車、名テクノロジーをひとつ挙げてみるとしたら?―モノ作り系エンジニア200人が選んだ、懐かしの名車を一挙にご紹介!
(取材・文/井元康一郎 総研スタッフ/宮みゆき)作成日:07.04.17
エンジニアが選ぶ!20世紀の名自動車TOP5
 アンケートの回答をみると、古今東西、実に多様なクルマ、技術が挙げられており、モノ作り系エンジニアの視点の広さが浮き彫りになった。興味をそそられる技術のオンパレードのなかで上位に浮上したのは、登場時のインパクトが強かったクルマ、独創性の高いテクノロジー。果たしてエンジニア視点のTOP5は!?
エンジニア視点でテクノロジーが幅広く網羅された20世紀の名自動車ランキング
自動車部門 第1位 日産自動車 スカイラインGT-R
日産自動車 スカイライン/GT-R速さを徹底追求した一点突破型モノ作り
世界のツーリングカーレースを制した
走りのテクノロジー
 エンジニア200人が選ぶ20世紀の名車アンケートで見事、第1位に輝いたのは、89年デビュー、世界のツーリングカーレースで大暴れした「日産スカイラインGT-R(R32型)」。ボディサイズ、車重を最適化しつつ、排気量、駆動方式などの仕様をレースのレギュレーションに合わせて策定するという、日本お得意の一点突破型モノ作りが共感を得た。駆動力配分を前0:後100から同50:50まで連続的に自動配分する電子制御4WD「アテーサE-TS」、電子制御4WS「スーパーHICAS」、600ps超のチューニングにも耐える部品をノーマルエンジンにも多用した2.6リットル直列6気筒ツインターボ「RB26DETTエンジン」など、エンジニアのがあこがれる要素がてんこ盛りなのも人気の秘密か。
カルソニックスカイライン
■1960年代/日本車のレベルが低い時代にレースで50連勝するなどの日本の技術力の高さを存分に見せつけてくれた。(生産管理/35歳)
■1970年代/世間全体の成長へ向けての走りのアピールにインパクトがあった。(制御設計/44歳)
■1980年代/アクティブトルクスプリット4WD、直6ツインターボエンジン、4輪マルリチンクサスペンションなどを採用しており、先進性が高かった。(機械設計/41歳)
■1990年代/N1やGTなど、第一線で活躍した車両の技術がそのままフィードバックされており、その性能にかなう車が存在しなかった。(サービスエンジニア/30歳)
自動車部門 第2位 トヨタ自動車 プリウス
トヨタ自動車 プリウス/21世紀に間に合ったハイブリッドカー
リッター28kmの燃費性能で世界を驚かせた
量産ハイブリッド乗用車第一号
 アンケート第2位となったのは、「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーとともに97年にデビューしたハイブリッドカー「トヨタ・プリウス」。低速トルクが極度に細いが熱効率はディーゼル並みという1.5リットル・アトキンソンサイクルエンジンと電気モーターを組み合わせることで、リッター28kmという燃費性能と実用的な動力性能を両立させた。トヨタはプリウスを開発するにあたり、小型高出力モーター、エンジンとモーターを接続する高強度、高精度な遊星ギア、熱や震動など過酷な環境下でも信頼性が損なわれないパワー半導体、高密度実装基板など、コア部品の量産技術確立をいち早く進め、ハイブリッド乗用車のパイオニア的存在となった。
トヨタ・プリウス
■量産が難しいといわれていたハイブリッド車を97年という早い時期に、世界で初めて一般ユーザー向けに販売した点が素晴らしい。(半導体設計/33歳)
■将来の環境技術のひとつとなる電気自動車の技術の蓄積も視野に入れてハイブリッドを開発したという先読みの企業姿勢と発想がすごい。(回路システム設計/40歳)
自動車部門 第3位 トヨタ自動車 トヨタ2000GT
トヨタ自動車 トヨタ2000GT/美しさと技術を兼ね備えた名車
トヨタとヤマハの情熱が生んだ
世界に通用する初の日本製GTカー
 3位にノミネートされたのは、1967年にデビューしたスポーツクーペ「トヨタ2000GT」。四輪車分野への進出を目論むヤマハ発動機と、世界に通用するフラッグシップスポーツを作りたいというトヨタの思惑が一致し共同開発。採算性を度外視し、当時の技術の限界に果敢に挑んだモデルだ。最高出力160psを発生する2リットル直列6気筒DOHC、優れた走行性能を実現する4輪ダブルウィッシュボーン独立サス、高い強度を誇るX型フレームなど、当時の日本の工業技術水準を大きく超えるテクノロジーがふんだんに投入され、最高速度220km/h、最大巡航速度205km/hの性能を誇った。美しいデザインともども、エンジニアにとって記憶に残る名車だ。
トヨタ2000GT
■デザインとバランスのよいエンジンとフレーム構造。当時3つの世界新記録と13の新記録を樹立させた先端的なクルマ。(サービスエンジニア/40歳)
■斬新なデザインであり、今日でもまったく古さを感じさせない。エンジンも技術者のノウハウの集大成であり、ほかが真似できない代物。(回路システム設計/39歳)
自動車部門 第4位 マツダ RX-7
マツダ RX-7/唯一無二のロータリースポーツ
速さだけではない、優れたスポーツカーを
目指すマツダの哲学の集大成
 4位はロータリーエンジンを搭載した世界唯一のスポーツカー「マツダ・サバンナRX-7」。とくにエンジニアの支持を集めたのは、85年に登場した第2世代モデル。最高出力185ps(後に205ps)というハイパワーな13B型ロータリーターボを搭載したばかりでなく、高剛性ながら1200kg台という軽いボディ、前後がほぼ50:50というバランスの良い重量配分など、優れたスポーツカーとは何かということ徹底的に突き詰めた本気モードの仕様策定が特徴的。当時は欧州の高性能車の一部にしか見られなかった対向4ピストンブレーキキャリパーを国産量産車として初めて装備するなど、実際の使用に耐えうる速さを追求するマツダの哲学もエンジニアの共感を呼ぶポイントだろう。
サバンナRX-7
■熟成されたロータリーエンジンと、軽量に仕上げられたボディ。そこから生み出される当時としては究極のハンドリング。(研究、特許/37歳)
■ハイパワーなロータリーターボエンジンを積んだ素晴らしいスポーツカーだった。リトラクタブルを使ったデザインもとてもよかった。(生産技術、プロセス開発/38歳)
自動車部門 第5位 HONDA プレリュード
HONDA プレリュード/伝説的存在のスペシャリティカー
エンジニアの執念の高密度設計が
作り出した低いボンネット
 5位にランクインしたのは、バブル景気のさなかに若年ユーザーを魅了したスペシャリティクーペ「ホンダ・プレリュード」。エンジニアを対象としたアンケートであることを考えると、意外な印象を受ける結果だ。評価されたのは雰囲気、スタイルといったエモーショナルな部分が主だが、そのデザインは、実はテクノロジーによって実現されたものだ。FWD(前輪駆動車)でありながらミッドシップ車並みに低いボンネット高を実現するため、エンジンを後傾搭載したり、サスペンションの取り付け位置などエンジンルームのレイアウトをミリ単位で詰めるという高密度実装的な設計がなされた。また後輪もステアする4WS(四輪操舵)など、走りのテクノロジーも先進的だった。
ホンダ プレリュード
■人目を引く流麗なフォルムの元祖デートカー。4WSなど、当時の先端テクノロジーが比較的安いクルマに装備されたという点も魅力。(機械・機構設計/32歳)
■エンジンを傾けて搭載したり、サスペンションの取り付け部を限界まで下げたりといったレイアウトの高密度化によって美しいデザインを作ったこと。(機械・機構設計/34歳)
モノづくりエンジニア200人が選んだ20世紀のエンジン・テクノロジーランキング
エンジン・テクノロジー部門 第1位 マツダ ロータリーエンジン
ロータリーエンジン
(コスモスポーツ:L10A型エンジン)
マツダ ロータリーエンジン/マツダだけが市販化に成功した独創技術
数々の伝説を生み出した、ピストンを
使わない4サイクルエンジン
 エンジニアが選ぶ20世紀の名エンジン・名テクノロジーの第1位となったのは、世界でマツダだけが市販化に成功したロータリーエンジン。ピストンを使う一般のエンジンと異なり、三角おむすび型の偏心ローターが、それ自身が描くトロコイド曲線に合わせたまゆ型のハウジング内を高速で回転して出力を得るという動きの面白さは、エンジニアの遊び心を刺激するに十分だ。67年に「コスモスポーツ」に初搭載。以後、コンパクトで高出力という特性からスポーツカー、高級車を中心に採用された。71年の「サバンナRX-3」による「スカイラインGT-R」の連勝阻止、91年の「マツダ787B」によるル・マン24時間耐久レース優勝など、レースシーンでも数々の伝説を残した。
■まったく斬新な発想で設計されたエンジンで、それまでの内燃機関の常識を覆し、重量出力密度を飛躍的に向上させたのは画期的だったと思う。(制御設計/32歳)
■当時、ガソリンの代替燃料になる可能性があるアルコールや水素でも動くことができると聞いて驚いていた。現在では実現していますね。(機械・機構設計/31歳)
エンジン・テクノロジー部門 第2位 HONDA VTEC
VTEC(NSX_C30A)
HONDA VTEC/市販車世界初の可変バルブ制御技術
“エンジンのホンダ”が実現した
自然吸気でリッター100psの高性能
 第2位は89年にホンダが「インテグラXSi」で初採用した可変バルブタイミングリフト機構「VTEC」だ。エンジンは低回転と高回転でバルブの開閉タイミングや開閉量の最適値が異なる。低回転で効率を上げれば高回転まで回らなくなり、高回転を重視すれば低回転でのトルクが不足する。ホンダはエンジンのカムに低回転用、高回転用の2種類のカム山を設け、運転状況によって両者を適宜使い分けることで、このジレンマを解消した。“エンジンのホンダ”の面目躍如たるメカニカルな機構は当然、エンジニアには萌え要素。デビュー当初は自然吸気でリッター100ps(1.6リッターで160ps)という高性能が売りになっていたが、今日では環境性能面でも重要な技術となっている。
■今日、環境技術の要となっている可変バルブタイミングリフトの先駆け。今は各社製造しているが、当時はホンダ独自の技術だった。(機械・機構設計/37歳)
■高回転時にバルブのタイミングを変え、高出力と運転者の気持ちよさの両方を得た。現在でも十分魅力的なコンセプトだと思う。(生産技術・プロセス開発/30歳)
エンジン・テクノロジー部門 第3位 HONDA ハイブリッドシステム
ホンダ・インテグレーテッド・モーターアシスト(IMA)・システム
HONDA/トヨタ自動車 ハイブリッドシステム/電気利用の面白さを知らしめた新環境技術
エネルギーをムダに捨てない技術は
現在も進化中
 電気モーターと内燃機関を混載し、両者を状況に応じて使い分けるというハイブリッドシステムが第5位にランクイン。試作車レベルではかなり昔から存在したが、97年にトヨタが「プリウス」を市販、1997年にHondaのIMAに採用されたことで一気に身近な存在となった。当初、ハイブリッドは環境技術の代名詞とされていたが、その本質はエネルギーマネジメントの高度化であり、セッティング次第でその余力を省エネにも高性能化にも振り分けられる。また性能ばかりでなく、モーターを使って走ることの面白さをユーザーに知らしめたという点でもエポックメイキングな技術だ。効率向上はモノ作り系エンジニアにとって、もっとも挑戦しがいのあるテーマのひとつであるだけに、関心の高さもひとしおだ。
■電気自動車に一足飛びに行くのではなく、現在のGSのインフラを利用しながら、環境対応を行った点に、発想の柔軟性を感じました。(機械・機構設計/44歳)
■電気モーターと内燃機関を併用させることで、高いCO2削減効果を得た。環境技術の先取りであり、企業のイメージアップにも貢献したと思う。(生産技術、プロセス開発/43歳)
エンジン・テクノロジー部門 第4位 日産自動車 RB26DETT
RB26DETT(GT-R_BNR32_RB26DETT)
日産自動車 RB26DETT/20世紀の自動車史に残る名エンジン
スカイラインGT-RのグループAレース
29連勝を支えたサラブレッドの心臓
 4位は89年にデビューした「日産スカイラインGT-R」に搭載された「RB26DETT」型2.6リットル直列6気筒DOHCツインターボエンジン。車体と同様、レースに勝つことを最優先に仕様決定されたという潔さがエンジニアの琴線に触れるポイントだ。当時のグループAの排気量カテゴリー4.5リットル以下クラスに合致させるため、輸出仕様の2.4リットル直6をレース用としての強度の限界ギリギリまで排気量アップさせ、2563cc(ターボ係数1.7を掛けると4357cc)に。また初期に設定された「GT-R NISMO」バージョンはレースのレギュレーションにもとづき、エンジンの内部部品にレーシングスペックのものが多用されるなど、その価値は280ps/36kgmというスペック以上のものがあった。
■税制区分などを気にすることなく、性能のみにこだわったエンジンであると思う。レースで勝ち続けたことでその能力が実証されていると思う。(機械・機構設計/31歳)
■6連スロットル採用などによる最高のレスポンスとバランス。贅肉をそぎ落としながらチューニングに耐える丈夫なエンジンブロック。(特許・テクニカルマーケティング/37歳)
エンジン・テクノロジー部門 第5位 HONDA CVCC
CVCCエンジン
HONDA CVCC/環境技術の草分け的テクノロジー
触媒なしで米大気汚染防止法をクリアした
“ホンダ神話”ゆかりの技術
 3位は70年代に脚光を浴びたホンダの環境技術「CVCC」。70年にカリフォルニア州で大気汚染防止法、通称マスキー法が施行された。クリア不能とまで言われたその規制を、当時はまだ世界トップ水準になかった日本の自動車メーカー、さらにそのなかでも4輪車最後発のホンダが「CVCC」エンジンで触媒も使わずあっさりとパスしてみせたことは、世界の自動車業界に大きな衝撃を与えるとともに、アメリカに“ホンダ神話”が浸透する原動力ともなった。技術の進歩とともに触媒方式に押されて姿を消していったが、シリンダー内の気流や燃焼分布を積極的にきめ細かく制御するという思想は、今日のエンジン開発の最前線においても未だに色あせていない。
■70年代、世界の厳しい排ガス規制にいち早く適応した。他のエンジンと違って性能を犠牲にしなかったのがホンダらしい。(回路、システム設計/44歳)
■早くから環境問題に取り組んでいるという企業姿勢を感じたし、それでいて、吹け上がりの良いエンジンだったと記憶している。(制御設計/43歳)
20世紀の名車を開発したベテランエンジニアの開発秘話
20世紀の名車アンケートで第1位となった日産スカイラインGT-R。当時、市販車最強のGTカーとして彗星のごとく登場。グループAで29連勝を記録、また世界のツーリングカーレースでも無敵ぶりを発揮したGT-Rの開発の中心人物のひとりが、元日産自動車の渡邉衡三さんだ。開発の最前線では当時、何が行われていたのか。
フォードシエラに勝つ!その一心で飛び出した600psカー構想

「R32型スカイラインGT-Rの開発は本当に楽しかった。R32の実験主担になった87年から99年にNISMO(日産のモータースポーツ関連会社)に移るまでの13年間のほとんどの期間にわたって開発に関わりましたが、自分の人生でいちばん充実していたと言ってもいい」
 89年にデビューしたR32GT-Rのハードウェア開発責任者である実験主担にはじまり、R33(1993年)、R34(1998年)ではGT-Rを含め、モデル全体の開発主管となった。初代〜7代目スカイラインを担当した桜井氏を除き、同じモデルを3世代にわたって手がけるのは世界の自動車業界のなかでも珍しいケースだ。

 GT-Rはクルマの性格づけのみならず、開発の過程もかなり破天荒だった。
「R32シリーズを開発しているとき、社内では既に901活動(90年にシャーシ性能で世界トップを目指すという計画)が推進されていましたが、何をもって世界一とするかということから考える必要がありました。ツーリングカー選手権で当時無敵だったフォードシエラRSに勝つという目標から、600psマシンのベースになるようなクルマを作ろうという目標を立てましたが、そのベースとなる車で市販車としての走行性能世界一を達成したいと、開発チームは考えていました」

 タイヤ幅その他の制約が大きいグループAで600psを有効に使うためには、4WDが不可欠。そこで当時、高性能な電子制御4WDが話題となっていたポルシェ959を実験車両として購入。
「いやあ、最初に要望を出したら当然『これ一台で普通の検討用車両が20台分じゃないか。馬鹿言うな』と怒られたんですけどね、決裁者がちょうど疲れていたときを見計らって、いろいろな要望のなかに混ぜて出したら通っちゃった(笑)」

渡邉衡三氏
渡邉衡三氏
1967年に日産自動車株式会社入社。スカイラインGT-RのR32、R33、R34の3代にわたって開発を手がける。99年にニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(ニスモ)に転籍後は、パリ・ダカールラリーを担当。2006年6月に退任。現在は、自動車技術会での講演や自動車技術のテキスト執筆などで活躍中。
幾多の困難を技術だけでなく政治力、機転も利かせて克服した

  ポルシェ959を実際に走らせてみると、その4WDは手動選択方式で、どのような路面状況でも速く、安全に走らせるというコンセプトのものであり、オンロードの走りの性能に特化したものではなかった。そこで日産が技術検討を進めていた独自の電子制御による自動可変トルク配分4WD「アテーサE-TS」の優位性、先進性を確認し、採用を決めたのだという。
「走行性能ナンバーワンを証明するために、欧州の高性能車が開発に使用しているということで、世界一過酷と言われるニュルブルクリンクで、量産FRトップクラスだったポルシェ944ターボの8分40秒に勝ちたいね、という話になり、挑戦することになりました。これも『国内専用車なのに何で外国のサーキットなんか走らせる必要があるんだ』と散々文句を言われたけど、実際に走らせなければ、このレベルに達することはできなかったと確信しています」

 こうしたエピソードは枚挙にいとまがない。GT-Rに限らず、世界一を目指すプロジェクトの多くは、正攻法だけでは達成できないものだ。開発チームは、目の前のさまざまな持ち前の技術力、政治力、機転などを駆使し、頂上を目指すひたむきさが知恵を生み、目の前のさまざまな困難をクリアしていった。こうして名車、新生スカイラインGT-Rは生み出されたのだ。

 渡邉氏は一線を退いた現在も、スカイラインファンのための講演や、自動車技術会のテキスト執筆などを通じて自動車に関わり続けている。もし今、もう一台クルマを作るなら、どのようなものを世に問いたいかを聞いてみた。
「私はあらゆる面でバランスの取れたクルマを作るのは苦手。今でも走りの性能を極めるクルマを作ろうとすると思う。V12エンジンなど、記号性と時代性を取り込んだ夢のあるやつを。特定の性能目標を追求するという観点では、マルチタスクを求められるファミリーカーではなく、極端に言えばトラックや戦車だって面白いでしょうね。あと、これは決まった指標がないだけにとても難しいことですが、走りの楽しさ世界ナンバーワンはぜひ追求してみたいところです」
渡邉衡三氏
渡邉氏 R34GT-R Vspec R34GT-R Vspec
渡邉氏は自身が開発を指揮したR34GT-R Vspecを今もプライベート所有している。ダウンフォース効果と空気抵抗削減を両立させたリアスポイラーを採用、また床下をディフューザーで覆うなど、ボディ全体でサーキット走行時の空気の流れを最適に制御しているのがこだわりのポイント。ニュルブルクリンクでは7分59秒のスーパーラップを記録した(R33型)。
コラム 未来につなげ!時代を先取りした20世紀のこれぞ名発明
1970年の大阪万博で活躍したEVタクシー
1970年の大阪万博で活躍したEVタクシー
(写真提供:ダイハツ自動車)
電気自動車
ネックとなっていたバッテリー性能の向上で
ふたたび脚光浴びる
 自動車といえば内燃機関ばかりではない。自動車が発明された当初から、電気自動車はさまざまなフェーズで積極的に試されてきた。日本でも終戦直後にたま電気自動車が発売され、70年の大阪万博ではダイハツのEVタクシーなどが登場した。当時はエネルギーを蓄えるバッテリーの性能がネックとなり、電気自動車がエンドユーザー向けに広く普及することはなかった。だが今日、リチウムイオン電池の性能向上など、ウイークポイントだったバッテリーの強化が急速に進んでいることから、ふたたび電気自動車への期待が高まっている。大型車両に必要な航続性能を得られるまでにはなお多くの技術革新が必要だが、軽自動車サイズの電気自動車については、すでに市販のメドがつきつつある。
天ぷら油自動車
天ぷら油自動車
(写真提供:油藤商事)
天ぷら油自動車
一見原始的、実は進歩的なバイオ燃料技術
カーボンニュートラルでCO2削減めざせ
 90年代後半、天ぷら油で走る車が話題になった。ディーゼルエンジンはもともと、燃料特性の許容性が広く、不純物を取り除いてやればてんぷら油でも十分に走行可能である。当時は通産省、運輸省(当時)などは自動車関連諸税の関係でいい顔をせず、また一般ユーザーからも「天ぷらの臭いがする車」「コストがかかり意味がない」などと馬鹿にされる始末だった。が、天ぷら油自動車はレッキとした、CO2削減技術のひとつとして注目されているバイオディーゼル車の一種である。てんぷら油の廃油に含まれる不純物を徹底吸着する超臨界流体技術などが発達すれば、大量の廃油を再利用しながらカーボンニュートラルとみなされるバイオ燃料の流通量を増やせる。ぜひ見直されるべき技術だろう。
ランクル 給油の様子
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
実はこのアンケート、6位以下はかなり票が割れて、自動車は70車種、エンジンは80種類近くの名車、名エンジンが挙げられました。渡邊さんいわく、すべてが完璧な自動車よりも、目的に特化してずば抜けた車を作りたいという言葉通り、エンジニアの皆さんのそれぞれの志向、技術的観点などで数多くの自動車が挙げられたのでしょう。20世紀を飾る名自動車はまだまだ星の数ほどありそうです。

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