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厳選★転職の穴場業界 第19回 ディーゼルエンジン 世界で過熱するクリーンディーゼル開発最前線
日本ではうるさい、汚い、パワーがないなどネガティブなイメージのディーゼルだが、近年の技術革新により、世界ではクリーンでハイパワーなエンジンとして人気が急上昇。日欧米の自動車メーカーによる技術開発競争もヒートアップし、有力なCO2削減技術となっている。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.12.13
業界動向:欧州では既にシェア5割。世界で需要急増するディーゼル
 環境・エネルギー技術の高度化が求められている自動車業界で今、ディーゼル関連技術が注目を浴びている。90年代以降に多くのクリーン化、ハイパワー化技術が生み出され、元来の長所であった燃費の良さがクローズアップされているからだ。
 年間1700万台前後と、世界で最も多くの自動車が販売されるEU圏では、貨物車のほぼ全量、乗用車も約半分がディーゼル車。日本と米国の比率は極めて低いが、北米でのディーゼル車のシェアは2010年に7.5%に上昇するという予測もあり、原油価格高騰による燃費改善ニーズの高まりから、自動車メーカーの間では北米での新車販売におけるディーゼル車の割合は近い将来、2割を超えるという見方が広がっている。そうなれば日本市場に波及効果が出るのは必至だ。

 ディーゼル車のクリーン化技術を開発しているのは自動車メーカー、部品メーカーはもちろん、有機材料による排ガス浄化を狙う化学、セラミック技術を活用する窯業、触媒材料を有する非鉄金属、プラズマリアクターなどの物理的浄化技術をもつ重工やプラント設計など、多岐にわたっている。国際的なディーゼル技術開発はこれからが本番だ。
注目企業:テックフォーラムで最新技術を魅せたデルファイ
 ディーゼルエンジンのコアテクノロジーである燃料噴射システム、排ガス浄化システムの世界大手であるデルファイが11月15日、日本において技術カンファレンスを行った。ディーゼル関連部品については特に長い時間を割いて、入念にレビューが行われた。
■コモンレールシステム用インジェクター ■次世代ユニットインジェクター
コモンレールシステム用インジェクター 次世代ユニットインジェクター
デルファイが次世代クリーンディーゼルの基幹技術に位置づけている、Multecディーゼル・コモンレールシステム用のインジェクター群。手前左が現行モデル「DFI1.3」、中央が来年登場する噴射圧2000bar対応の「DFI1.5」、右はもっとも先端的なピエゾ素子直動型「DFI3」。前二者は、低コストのソレノイド駆動ながら、既存のピエゾインジェクター並みの応答性をもたせたのが特徴。「DFI3」は次世代排ガス規制をクリアするためのキラーデバイスだ。 大型車向けのクリーンディーゼル技術として注目を集めているデバイスに、カムの力で燃料を高圧状態にし、シリンダー内に勢いよく噴射するという原理のユニットインジェクターがある。シンプルな構造で超高圧噴射ができる半面、精密な制御が難しいという欠点があった。デルファイは噴射ノズルの開閉制御を行うバルブをマルチ化し、排ガスのクリーン化に必要とされている多段噴射(1回の爆発分の燃料を数回に分けて噴射する方式)を実現。
ガソリンと同等のクリーン化を実現するピエゾ直動式の新噴射装置

 ディーゼルエンジン開発で重要な役割を担っているのは、性能向上のカギを握る基幹部品を開発している自動車部品メーカーだ。なかでも燃料噴射ポンプ、排ガス浄化装置は極めて高度な技術力、ノウハウが要求されるコアテクノロジーであり、世界のサプライヤーが自社の技術力の象徴とすべく開発に力を入れている。
 デルファイのレビューで最も注目を集めたのは高圧燃料噴射装置。ディーゼルは空気を吸い込んで圧縮し、圧縮時のエネルギーで熱をもった空気に燃料を噴射して燃やすという仕組みで動いているが、パワーや排気ガスの成分は、圧縮した空気にどのタイミングで燃料を噴射するかで決まってくる。噴射タイミングを正確に、しかもできるだけ短く行う必要があるのだが、それを実現するのが高圧噴射装置だ。高圧噴射装置の代表例はコモンレール式とユニットインジェクター式である。

 デルファイが提示した最新の噴射装置は、コモンレール式向けの圧電素子を使ったピエゾアクチュエーターで、燃料噴射口を開閉するニードルを直接駆動させる「ダイレクトアクティング・ピエゾインジェクター」。従来型のピエゾインジェクターに比べ、ニードルのスピード、制御レベルとも格段に向上しているという。ガソリンエンジンでもクリアは容易ではないアメリカの次世代排ガス規制「Tier2 BIN5」を達成できるという話だ。また、ユニットインジェクターについても、これまで難しいといわれていた多段噴射を実現する新機構を提案した。
「ディーゼル関連の技術開発は本当にチャレンジングな仕事。ディーゼルは既にヨーロッパでは完全にメインストリームとなっていますし、アメリカでも通常のディーゼルやバイオディーゼル(植物油などの生物系燃料を使用)が注目されています。二酸化炭素の排出量が少ないディーゼルの性能を向上させることは、地球温暖化防止のためにとても有用なんです」(日本デルファイ・オートモーティブ・システムズの青木仁孝氏)

実は過熱化!? 日本におけるクリーンディーゼル開発競争

 日本ではディーゼルエンジンのイメージがかなり悪く、国産車メーカーは排気ガスがクリーンな次世代ディーゼルの発売にも二の足を踏むありさまだ。しかし、ディーゼル車の技術開発自体は極めて活発で、技術レベルも実は世界最先端である。また、デルファイだけでなくドイツのボッシュ、フランスのフォルシアも日本に開発拠点を置くなど、外資系サプライヤーも自動車メーカーの数が多い日本での、ディーゼル技術開発を強化している。
「国内系も外資系もさかんに新技術を発表していますが、弊社のダイレクトアクティング・ピエゾインジェクターは、性能的に他社を完全にリードできると自負しています。ディーゼル関連のテクノロジーは、メカトロニクスとしても最先端のレベルで、技術力がはっきり表れます」

 デルファイに限らずディーゼル技術のエンジニアが一様に口にするのは、日本でもクリーンディーゼルをはやらせたいということだ。実際、最先端ディーゼルは既に性能面でも静粛性でも、十分にユーザーに受け入れられるレベルにある。
「乗用車のターボディーゼルは近い将来、排気量1当たり100psを超えるレベルにパワーアップします。また、有害といわれている排気ガス中の粒子状物質についても、ほぼゼロにできるめどがつきました。ガソリンエンジンよりクリーンになりますし、それでいて燃費はガソリン車よりはるかにいい。現状でも日本で受け入れられるだけの商品力があると思います」
 日本では目立たない存在だが、世界では普及が進んでいるクリーンディーゼル。次世代技術の開発競争は想像以上にホットなようだ。
アンモニアセンサー
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アンモニアの濃度を選択的に計測する画期的なセンサー。有害なNOxを無害な窒素と水に還元する尿素SCR向けに開発された
ポータブルナビ
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日本円で5万円足らずという低価格ながら、きちんとした経路案内を行うポータブル型のナビ。欧米でブレイク中の製品
青木仁孝氏
日本デルファイ・オートモーティブ・
システムズ株式会社
研究開発部
プロジェクトエンジニア

青木仁孝氏
大学では工学部で音響工学を専攻。卒業後、大手自動車部品メーカーに入社し、パワートレイン開発、特にディーゼル用部品の開発を手がける。その後デルファイに転じ、クリーンディーゼル技術の開発を指揮している。
穴場求人:電気、メカトロ、精密……システム工学系をはじめ多様なニーズ
 ディーゼルエンジン技術は自動車関連企業にとって、国際競争力を左右する重要な項目になりつつある。ディーゼル関連のエンジニアはまったく足りない状態で、完成車メーカー、自動車部品メーカー、素材メーカーなど、幅広い分野で人材募集が行われている。
 リクナビNEXTでは「ディーゼル」をキーワードに検索すれば、大量に求人情報をゲットできる。また、エンジンや触媒の技術者という名目でディーゼル技術者の求人が行われているケースも多々あるため、業種別検索で「自動車」を選んで求人を探すのも有効な手段だ。

 ディーゼル技術とひと口に言っても、エンジン本体、燃料系統やターボなどの補器類、排ガス浄化装置など対象は多岐にわたる。ゆえに要求されるスキルや経験もかなりの幅がある。自動車のパワートレインの開発経験があれば有利なのは言うまでもないが、自動車業界未経験の人材にもかなりのチャンスがあるのが特徴だ。
 もっていると有利なスキルとしてまず挙げられるのはシステム工学。特に機構設計とソフト設計をトータルで理解しているエンジニアは、自動車が未経験でも歓迎されることが多い。電気、メカトロニクス、精密、ロボットなど、制御に関係するエンジニアは、十分ターゲットとなり得るとみていい。

 排ガス浄化システムについては触媒材料やセラミックといった材料系のほか、近年登場した尿素SCR(排ガス中に尿素を噴射して有害なNOx[窒素酸化物]を水と窒素に還元する)のような機械的なものも登場していることから、ここでもシステム工学を理解しているエンジニアが活躍できる素地がある。ちなみに排ガス浄化では、有害物質の濃度を正確に測る必要があるため、センサー関係の開発経験者が歓迎される傾向にある。
ディーゼル業界のエンジニアニーズ
・ 世界的なディーゼル需要の高まりでエンジニアニーズが急増
・ 自動車業界未経験でも、スキル次第で十分に転職可能
・ メカトロや電気などシステム工学に精通するエンジニアは歓迎
・ 排ガス浄化では触媒、化学、センサー関連の経験が生かせる
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 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
部品メーカーを「サプライヤー」、完成品を組み立てる企業を「セットアップメーカー」などと呼びますね。サプライヤーとは供給者の意味。そんなエンジニアがいなければモノは完成されません。本体ではなく部品の開発だと転職に二の足を踏む人もいますが、その奥深さをぜひ知ってもらいたいです。エンジニアは誇りに満ちて働いていますよ。

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