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エンジニア給与WAVE! Vol.49 大手企業vsベンチャー 給与や仕事のやりがい、どっちが魅力的?
「大企業は給与は安定しているが、仕事範囲が限定されがち」「ベンチャーはリスクはあるけれど、仕事が面白そうだし、一攫千金の夢もある」──大企業とベンチャー、給与と仕事のやりがいで比較すると、どんな違いが見えるのだろう。それぞれに勤務する約300人のエンジニアに本音のところを聞いてみた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/kucci(クッチー) 撮影/加納拓也) 作成日:05.11.09
やはり国内大手は高水準。意外にもベンチャーは……
 日本企業の給与については、中小よりは大手、国内よりは外資のほうが支給額水準は高く、また、いわゆる“勝ち組”ベンチャーであれば他の一般企業に比べて給与が高いという“定説”がある。転職もこの定説を前提に考えられることが多い。果たして定説はどこまで正しいのか。316人のエンジニアに対してアンケートを行い、これを検証してみた。回答者の属性は、別表のとおりだ。

 まず回答者に聞いた現在の年収である。回答者の年齢や役職の幅もあるので、一律に平均を出すのはあまり意味がない。そこで、一定の年収層に属する人がどのぐらいの比率で分布しているかで企業の給与構造を概観してみた。

 分布の多い順にそれぞれ第2位までを見てみると、国内大手企業は「500万〜600万円」、「600万〜700万円」ベンチャー企業は「400万〜500万円」、「500万〜600万円」、外資系企業は「600万〜700万円」、「400万〜500万円」、国内中小企業は「300万〜400万円」、「400万〜500万円」ということになる。(DATA1)

 データを見る限り、やはり外資系、国内大手が強く、国内中小は弱い。意外にもベンチャーは世評ほど高くはない。あくまでもこのアンケート結果の限りではあるが、「年収600万円以上」と答えた人がベンチャーでは26%なのに対し、外資系では63%、国内大手でも42%いた。「業界内のポジション」を聞いたところ、べンチャーで「最上」「上の方」と回答したのは全体の6%のみ。「ベンチャーだからみな高給与」とは一概にいえないようだ。いわゆる“勝ち組”ベンチャーでなければ、国内大手とベンチャーを比べると、相対的に大手のほうが、給与水準が高いことがわかる。
DATA1 給与金額分布は国内大手がベンチャーを圧倒!
 もちろんなかには特異的に高給与を得ている人がいないわけではない。年収1000万円以上の人の割合だけをみると、外資系8%、ベンチャー企業4%となり、国内大手、国内中小の各1%を大きく上回っている。これは回答者の役職の分布とも無縁ではないだろう。特に、ベンチャーの場合には20代、30代で役職に就くことも可能であり、その場合は給与が大きく跳ね上がるということをも意味している。(DATA2)
DATA2 ベンチャー取締役の月給は100万円超え多し
国内大手企業
ベンチャー企業
外資系企業
国内中小企業
取締役など経営陣-153.6万円-58.5万円
部長クラス35.0万円185.8万円50.0万円46.8万円
課長クラス42.0万円40.0万円73.8万円32.0万円
リーダー・主任クラス41.9万円37.7万円70.1万円35.3万円
役職なし32.4万円36.0万円38.9万円47.3万円
(調査対象者の2005年9月の企業特性・役職別・月給平均金額)
ベンチャーの4人に1人は「今の仕事内容なら、あと100万円もらってもいい」
 では、現状の給与への満足度はどうなのだろうか。ここでは、ベンチャーと国内大手の比較に絞ってみてみよう。
給与制度については、それが機能しているかどうかはともかくとして、おおむね成果主義が導入されている(ベンチャー73%、大手91%)。給与制度への満足度では、不満層(やや不満+かなり不満)がベンチャーで49%、大手では59%に達する。(DATA3)
DATA3 ベンチャーより国内大手のほうが給与満足度は低い
 また、不満度を、「仕事に見合った年収を得ているかどうか」で見ると、次のようになる。(DATA4)
 これを見る限りは、ベンチャー企業のほうに「仕事に見合う給与をもらっていない」と考える人の割合が多く、不満度は高いということになる。
 給与満足度に関しては、回答者から寄せられたフリーコメントも興味深い。ベンチャー企業では、給与額や給与制度への満足度が高い人の中には「経営者と直接交渉して給与を決定しているので」「自分の開発製品の売り上げがあった場合、インセンティブがあるので」といった理由を挙げる人がいた。こうした柔軟な給与決定方式はやはり小回りの利くベンチャーならではだろう。

 一方、国内大手では「評価基準があいまい。管理職の気分で評価が変わっているようにも見える」「一人の評価者が部下全員の査定を付けているのが現状で、公平な査定実施は絶望的な状況」などと、評価システムの中身に対する不満が散見された。
DATA4 ベンチャーは仕事に見合った年収を得られない?
 それでは年収を上げるためにはどうしたらいいだろうか。「年収を2割上げる」ための方策を尋ねると……(DATA5) 両者に大差はないが、ベンチャーでは「管理能力」へのポイントが若干高くなっている。

 やや気になるのは「副業をする」が共に高位にランクインしていること。たしかに年収が会社によって決定されるサラリーマンの場合、副業は年収をアップさせる手軽な方法ではあるのだが、やはりあくまでも本業における仕事の価値を上げることが本筋であることは、忘れたくない。
DATA5 ベンチャーは「管理能力の向上」で年収アップする?
国内大手
1位技術力を高める28%
2位副業をする19%
3位管理能力を向上させる15%
4位数字が出やすい仕事をする12%
5位残業時間を増やす5%
6位社外資格を取得する4%
7位上司や評価者に好印象を持たれる3%
7位語学力をみがく3%
 
ベンチャー
1位 技術力を高める24%
2位 管理能力を向上させる24%
3位 副業をする19%
4位 数字が出やすい仕事をする9%
5位 上司や評価者に好印象を持たれる6%
6位残業時間を増やす6%
7位社外資格を取得する4%
7位語学力をみがく4%
意気軒昂なベンチャー、大手企業にただよう閉塞感
 両者の違いが現れたのは、「給与決定に最も影響があると思われる基準」について聞いたときだ。ベンチャーでは「業績・成果」(46%)「職務遂行能力」(24%)の二つが給与決定の主たる基準であるのに対して、大手では「業績・成果」(36%)「職務遂行能力」(26%)の次に「年齢・学歴・勤続年数」が20%の高率で登場する。年功序列型賃金制度や学歴格差の残滓を払拭できていない大手企業の現状が垣間みえる。

「今後、給与・ボーナスは上がると思うか」という収入予測についての質問では、ベンチャーと大手の違いがより鮮明になる。「かなり/やや増えると思う」というポジティブな予測がベンチャーで42%であるのに対して、大手では28%にすぎない。今後の成長力に期待含みのベンチャーと、市場飽和で閉塞感も漂う大手の違いということかもしれない。(DATA6)
DATA6 国内大手は今後の給与アップが見込めない?
大手VSベンチャー“非給与”メリットとデメリット
 ベンチャーと大手を比較するとき、単に給与水準だけではなく、研究開発環境、社内風土、福利厚生などの“非給与”的条件も加味しなくてはならない。

 株式上場を控える、あるいは上場したばかりのベンチャー企業ではストックオプション制度をとり入れ、将来の自社の株価上昇分を報酬に充てることで、従業員のモチベーションを引き出すところがある。また、ベンチャー企業の創業メンバーであれば、将来の企業買収や事業譲渡などで高額の株式売却益を得るチャンスもある。

 そうしたマネー・インセンティブ以外にもベンチャーならではの魅力はいくつもある。ベンチャーは大手にはない事業や研究開発を目的に設立されたものがほとんどだろうから、組織の作り方も大手のまねをしていたのではベンチャーとは呼べない。とりわけ研究開発型ベンチャーであれば、たんに大手企業の下請けに終わらないために、技術の独創性を重んじる風土はおのずと形成されているはずだ。そのあたりも、給与水準だけでは推し量れないベンチャーの魅力の一つだ。

 しかし、すべてのベンチャー企業がそうだというわけではない。ベンチャーはたえず経営の不安にさらされている。社員はがむしゃらに働くものの、経営環境の変化しだいでは会社そのものが消滅するリスクはつねにある。その点では、すでに一部上場している大手企業では社会的影響が大きいため消滅の危機は低く、長期的なキャリアプランを立てるにも事例が豊富で確実性が高いかもしれない。また、ベンチャーはたとえ創業期の危機を脱して成長路線に持ち込めたとしても、一定の事業年数を経れば組織が大きくなり、ふつうの大企業と変わらなくなる。いずれはコミュニケーションの断絶などの病弊を抱え込む懸念もある。
ベンチャーに高い転職志向。求めるのは給与と安定だけではない
 会社選択においては、こうしたメリット・デメリットを、自分の志向性との関連でどう考えるかが重要になる。

 アンケートでは今後の転職意向についても尋ねている。「今すぐ/2〜3年後に転職する意思がある」人の割合は、ベンチャーでは70%に達し、大手の47%を大きく引き離す。よりよい環境を求めて転職をもいとわないというチャレンジスピリットは、ベンチャー企業在勤者のほうが高い。逆にいえばベンチャーのほうが、現状に満足できない人が多いということでもある。

「もし転職するとしたらどのような企業がよいか」の設問には、ベンチャー企業では「自分の技術力や仕事を正当に評価してくれる」(50%)「自分の今の技術を生かせる」(46%)、「優れた技術者が多数いる」(38%)といった技術評価への関心が高くでている。また「労働時間、休日などゆとりある生活ができる」(40%)、「通勤時間が短くてすむ」(40%)など生活の時間的なゆとりを求める志向もけっして小さくない。

 これが大企業となると、「技術志向が高い」(41%)が抜きんでて高く、「自分の今の技術を生かせる」(35%)、「労働時間、休日などゆとりある生活ができる」(31%)などが続く。

 ちなみに、「業績の安定度」や「給与が同業他社よりも高い」ことを転職の条件に挙げる人はベンチャー、大手ともに案外少ない。給与や安定も大切だが、その前に技術志向を優先させたいのが、エンジニアならではの転職志向だ。それに加えて、現在は得られていない「ゆとりある仕事」が実現できれば満足、ということなのだろう。

 大手であれベンチャーであれ、ますます切迫する工期短縮化やコスト削減の要請に日々呻吟するエンジニアの日常が、今回のアンケートからもうかがわれる。
[ 調査概要 ]
■回答数
316サンプル


■年齢
25〜39歳


■調査期間
2005/10/17〜10/20
■所属
  ・外資系企業(48サンプル)

  ・国内大手企業(100サンプル)

  ・国内中小企業(100サンプル)

  ・国内ベンチャー企業(68サンプル)

各所属企業ともリーダー・主任クラスが3〜4割を占めるが、ベンチャー企業では回答者の10%は取締役などの経営者である。
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  宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ  
宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
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最近、取材しているとよく聞くのが「勤務先の業績不安なので、大手企業の安定に憧れる」「もっと経営や、プロジェクトや開発全体に携われるベンチャーに転職したい」というような、ベンチャー志向、大手志向についての話。では給与をはじめとする報酬に対してはどうなのか? そんな素朴な疑問から調査を実施しました。膨大な調査項目から今回は一部分を紹介しました。さらにエンジニアが仕事と会社を選択する志向性や傾向については、また別のレポートにてお伝えしたいと思います。
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