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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.11 成果主義時代の退職金はどう変わる?
大手企業でも見直しが進んでいる退職金制度。「退職金前払い」や「ポイント方式」制度をはじめ、退職金制度は多様化し、「長期勤続=退職金増」という構図はもはや崩れてきた。成果主義の影響が色濃く影響し始めた退職金制度。今後どう変わっていくのだろうか。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:04.02.25
退職金はもらうまで「いくら」か分からない!?
データ1
勤続年数が増せば不満も増す!? 転職者の退職金満足度
データ1
   
 生涯で最も大きな金額の報酬を得る瞬間。――退職金にはそんなイメージがある。しかしそれは定年までコツコツと同じ会社で勤めあげた場合のこと。もし、自分がリストラや転職などで会社を辞めたとしたら退職金をいくらもらえるか、はっきりと答えられる人は少ないのではないだろうか。

 Tech総研編集部では2000年以降に転職した経験のある300人のエンジニアに退職金に関するアンケートを行ったところ、自己都合による退職という事情や、勤続年数によって決められる金額に納得する半面、会社に対する自分の貢献度の評価が反映されないことへの不満も多く寄せられた。(※データ1
Engineer's Voice

○少なく感じるが勤続年数が少ないからしょうがない(コンサル/29歳/45万円)
○自分の貢献度に対しては少ないと感じた(機械設計/30歳/27万円)
○相場がわからないためなんともいえない(社内SE/32歳/500万円)
○今までの働きが反映されずこんなものかと落胆した(回路設計/34歳/300万円)
○仕事内容に比べれば妥当な金額だと思う(ネットワーク/32歳/420万円)
○ほかの会社と比較すればよいほうだった(システム開発/34歳/1000万円)
 
データ2
貢献度は将来に繰り越し!?
年功賃金+退職金による長期決済システム
データ2
出典:鍋田周一氏著書『これからの人事がわかる本』より
 もしこのまま、退職金が年功型、つまり長く在職するほど高いという制度が続けば、途中で辞めたり、途中から入社する人は不利ということになる。これまでの制度だと、退職金の上昇カーブは、勤続年数に比例し、20年〜30年前後で大きく跳ね上がる(※データ2)。若いうちは会社に報酬以上の貢献を果たし、その「貸し」の部分を後から退職金で回収するというシステムだったからだ。
 長期終身雇用が当たり前だった時代にはそれでもよかったのだが、逆に転職が当たり前になると、このシステムは働く側にとっては不都合な制度。それぞれの企業での勤続年数が短いと、回収すべき部分をいわば「取りっぱぐれ」ることになる。多くの転職経験者がそのことに不満を感じている。
退職金制度がなくなる?
 しかし、その退職金制度にも近年大きな変化が訪れている。
 「退職金はいずれなくなる方向にあります」と言うのは、日本企業の賃金制度に詳しい、労働経済アナリストの鍋田周一氏だ。

 「退職金は会社に長く勤めれば勤めるほど、たくさんもらえる、きわめて“年功的”な制度です。高度成長期の人手不足時代には従業員の定着を促すという点で意味がありましたが、現在では逆に企業にとって重荷になっています。いわゆる団塊の世代が定年退職を迎えるに至って、多額の退職金支払いに企業は耐えられなくなるのではないか、とさえ言われています」

 企業会計の観点からも退職金は「負債」として計上することが求められるようになってきた。そうなると、多額の退職金はバランスシート上では債務となり、企業の経営評価や格付けを低くする要因にもなるのだ。
退職金前払い、ポイント方式とは?
 そうした事情もあり、数年前から大手企業でも退職金制度の見直しが始まっている。その一つは松下電器が98年に導入したことで有名になった「退職金前払い制度」。退職金の1年分に相当する金額をその都度、ボーナスに上乗せして受け取るというもの。

 企業としては、退職金支払いのツケを将来に回さなくてすむようになる。「遠い先のことなんかわからない。将来のリスクは覚悟するから、それより今、もらっておいたほうが得だ」という若手従業員の意識にも、ある程度合致した制度でもある。

 ほかにも退職金の一部を「401k」など確定拠出型年金に充当する制度や、勤続年数だけでなく在職期間中の能力の格付けで支給額が変わる「ポイント方式退職金制度」などもある。最近の退職金制度の見直し理由を聞いた調査(※データ3)でも「年功重視から能力・業績重視に改めた」とする企業が2割以上あった。
データ3
企業が退職給付(一時金・年金)制度を
3年以内に見直した主な理由(M.A.)
退職給付原資の積み立て不足
27.6%
同業他社世間の水準に合わせた変更
24.0%
年功重視から能力・業績重視に改めた
23.6%
労働者の高年齢化に伴う人件費増大に対処
18.6%
税制上の取り扱いの変更
7.6%
企業年金に関わる法令改正
6.8%
企業会計基準の変更
6.8%
企業合併等による変更
6.3%
中途採用者の増加に対処
5.8%
不明
4.3%
生涯福祉の観点から年金の重要性が高まった
4.1%
出典:厚生労働省「平成15年就労条件総合調査」
   平成15年1月1日現在

 前述のような退職金前払い制度や、在職期間が短くてもその間の貢献度が高ければ、それが退職金にも反映されるポイント制などが歓迎されることになる。あるいは、いっそのこと退職金など全廃してそのぶん賃金やボーナスに回すべしという要望がわき起こるのもうなずける。実際、シチズン時計のように、新卒社員を対象に完全年俸制を採り入れ、その年俸には将来の退職金や福利厚生費用も含むという考え方の企業も登場してきている。

成果主義に移行しつつある退職金制度
 そもそも退職金制度というのは、世界的にみても珍しい日本企業独特のシステムだ。賃金は、その時点でのパフォーマンスで評価してほしいという「時価主義」への期待は、グローバリズムの流れの中ではある意味当然かもしれない。

 また、退職金のために現在の会社をとどまるよりも、転職して新しい仕事への期待に魅力を感じるエンジニアも少なくないようだ。
Engineer's Voice
○退職金より転職できたことに満足している(研究/31歳/150万円)
○早く辞めることができてよかったので金額は気にならない
 (システム開発/32歳/50万円)
○次の仕事への期待感があったのでさほど気にならなかった(半導体/29歳/35万円)
 
 しかし、だからといって「これまで退職金をあてにしてきた人が多い企業では、いきなり退職金制度をやめるのは現実的には困難。中小企業などでは退職金廃止をトップダウンで乱暴に進めるところもあるが、法的にも問題がある」(鍋田氏)。

 また、退職金制度には従業員を一定年数定着させ、そして一定年数たったら辞めさせるという雇用量の調整の意味もあり、いきなり全廃ということができない事情もある。さらに退職金に関する税制にも問題がある。勤続20年以上超えるかどうかで退職金にかかる税率が変わってくる。むろん20年を超えたほうがより優遇されるのだ。こうした問題点が解消されない限りは、退職金全廃が一気に進むとは考えにくい。

 したがって「いずれはなくなるでしょうが、現時点では退職金制度は残しつつ、ただし額は全体として抑制し、その算定方式も成果主義に移行するという方向で見直しが進む」(鍋田氏)ということになるようだ。
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