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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.16 成果主義時代の管理職手当はどう変わる?
普通に会社に勤めていればいずれ管理職になることが視野に入ってくる。管理職手当の代わりに残業代がなくなるから、新米管理職は少々年収ダウン。というのはこれまでの年功序列型でのお話。成果主義の浸透で管理職手当はどう変わっていくのだろうか。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:04.05.12
そもそも管理職とは何?
「管理職」というのは、労働法規に厳密な定めがあるわけではなく、あくまでも慣用語。ただ、労働基準法でいう「管理監督者」となり、労働時間規定の適用を受けない労働者として取り扱われるのが一般的だ。管理監督者になると、労働時間、時間外・休日労働や休憩および休日に関する労基法の規定から除外される。簡単にいえば会社は残業手当など支給しなくてもよくなり、休日出勤も命じることができるようになる。

 もちろん、管理職になれば基本給やボーナスも上がり、さらにたいていの企業が管理職手当などの名称で手当を支給するから、総額給与は上がる傾向にある。ところが、昇進以前に長時間の残業などでかなりの額の手当をもらっていると、これがなくなる分、実質給与が下がってしまうというケースもなくはない。

この10年、伸び悩む管理職の給与実態
データ1 月額水準は部長60〜70万円、課長50〜60万円
データ1
出展:労政時報2004年2月13日発行号より
 では、実際に日本企業の管理職は給料をどのぐらいもらっているのだろうか。調査データはさまざまあって金額にもばらつきがあるのだが、ここでは日本経団連・東京経営者協会の2003年度の調査をみてみよう。(※データ1)

 これによると課長クラスの平均月給は約50万4000円、うち役付手当は5万円ちょっとというところだ。部長になるとこれが64万5000円(うち役付手当8万2000円)になる。業種や企業規模によっても格差があるが、ざっくり平均すると、どうだろう。「案外もらってないのだな」という感想をもらす読者も多いのではないだろうか。

 ここ近年、不況のせいで、とりわけボーナスがパッとしないこともあり、管理職の給与も伸び悩んでいる。同じ調査によれば、この10年の伸び率は課長クラスでわずか0.4%だという。デフレ傾向で消費者物価も同じくらい下がっているが、10年前の管理職と比較すると、実質給与は全然増えていないというのが現状だ。
 
管理職こそ成果主義のターゲットに
岡村 匡純氏

岡村 匡純 氏
タワーズペリン東京支店
従業員報酬・業績マネジメント部門
コンサルタント

日本のリーディング企業、公的機関および外資系企業の日本法人等を幅広くカバーし、クライアント企業の人事・組織戦略とその実行施策を提案・サポートしている。
 さて、この管理職給与、景気がよくなれば今後も右肩あがりに上がっていくものなのだろうか。ここでぜひとも知っておきたいのは、いま日本の企業で進む「成果主義」というドラスティックな変化である。

「管理職手当というものさえ、今後はだんだんなくなる傾向にあります。これからの管理職は、成果主義、年俸制などが当たり前になり、年収を決めるのはその人のパフォーマンス次第ということになっていくでしょう」
 というのは、人事コンサルタント会社・タワーズペリンの岡村匡純コンサルタントだ。

 成果主義の導入で、まずその対象になったのが管理職年代の50代である。そしてそれがだんだん下の世代にも浸透しつつある。実際この50代部長クラスの総賃金コストは、能力と成果によって給与資源を再配分したい経営層にとって、会社の賃金改革ネックとなっていた。それを年齢に限らず、能力の高くて成果を挙げている人に高い報酬を支払っていきたいというのが企業の狙いなのである。

 管理職手当が今後なくなっていくのは「その人の業績ではなく、ポストについた手当だと既得権化しやすく、逆にいうとなかなか削減しにくいから。とりわけポストが少なく、かつ技術変化の激しいIT産業ではその傾向が強まる」と岡村氏。ただし、経験の積み上げという色彩の強い工場労働をベースとする製造業などは必ずしもその限りではなく、経験に対するインセンティブという意味で手当が残される場合もある、という見方だ。

たえず高業績が求められる自己責任の時代
 しかし、成果主義の導入はどの企業でも成功しているわけではない。「誰がどのようにその人のパフォーマンスを評価するのかという難しさや、評価の前提にある個人やチームの目標が必ずしも全社的な事業戦略と連動していないという問題があるからだ」と、岡村氏は続ける。

 こうした課題は抱えながらも、しかし徐々に成果主義の給与制度は浸透していくだろう。現在の若手エンジニアが管理職に昇進するころには、それが当たり前になっているはずだ。会社のビジネスや製品をよく理解し、人材マネジメントの能力を身につけ、かつ業績達成のためのリーダーシップを発揮し続けるというのが、一般的に管理職に求められる能力。その能力を失えば、たとえ管理職になったとしても、給与が途中からガクンと下がってしまう場合もある。逆に、保証はない代わりに、これまでの給与制度では考えられない高年収を得るチャンスもあるわけだ。

 だが、すべてのエンジニアが管理職になり、それに見合う金銭的報酬を得たいと思っているわけではない。むしろ、新たな知識獲得や、研究開発などの仕事に没頭できる職場環境で働けることで、会社への帰属意識や、モチベーションが上がるエンジニアが少なくないのも事実。社内でのその役割分担や報酬格差が進めば、今後はそれに見合う評価制度に変化していく可能性が高い。いずれにしても、これからはますます厳しい「自己責任」の時代に入ってきたということなのだろう。

課長職以上になると成果の見返りは「優秀な人材」で?

Tech総研編集部がエンジニア3000人に調査した「エンジニア白書」では、役職別に技術成果への見返りに期待するものを分析。職位が上がるほど、「仕事での時間の自由度」よりも「優秀な部下やパートナー」「権限の拡大」を求める傾向が見られた。

課長職が技術成果への見返りにほしいものは?
データ2
出典:『エンジニア白書』(Tech総研 2004年2月)

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