「5W1H」で自分の考えを効率的にまとめよう!自問自答のススメ

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こんにちは、next49と申します。大学の計算機科学系の学科で教員をしております。

さて、みなさんは、何かについて報告や説明をした時に、同僚や先輩、上司の方から「もっとよく考えてみて!」とか「これは良く検討したの?」などと言われたことがないでしょうか。そして、「もっとよく考えてみて!」というコメントに正面から取り組み「よし、いっちょ熟考してみるか!」と考えてみたものの、結局は元の結論と同じになってしまったことはありませんでしょうか?真剣に時間をかけて取り組んだにもかかわらず「本当によく考えたの?」なんて再び言われてしまうなんてことを、私はしょっちゅう経験しました。

一体、どうやったら、「よく考えてみる」ことができるのでしょう?いろいろな方法があると思いますが、もっともシンプルな方法は「自問自答」、すなわち、自分で質問し、その質問に自分で答えるという方法です。

自問自答は、質問を検討対象にぶつけていくことによって、検討対象に対する認識や考えをどんどんと深くしていくプロセスであるとも考えられます。自問自答を行う時に常に同じ質問しか持っていないと、自分の思考に深く潜っていくことができません。これは、南の島でダイビングするときも、北の海でダイビングするときも、いつも同じ装備で潜るのと同じような話です。潜る場所に応じて適切な装備を整えて潜っていくべきです。「質問」は、自問自答で自分の思考に潜っていく際の装備に該当します。

このエントリーでは自問自答入門ということで、前半では自問自答するときのコツを、後半では私が自問自答するときのいくつかの質問例をご紹介いたします。アイディアを企画書に落とし込む時、仕事での失敗を分析して再発防止策を考える時など、よく考えたい時にご活用いただければ幸いです。

どうやって自問自答を行うべきか?

どうやって自問自答を行うべきかについては、いくつか強く推奨したいことがあります。

  • 必ず問の答をアウトプットし、記録する(答を頭の中で浮かべたままにしない)
  • シンプルな質問にシンプルに回答する
  • 「わからない」「答えたくない」「やりたくない」というネガティブな言説も答として認める

必ずアウトプットし、記録する(答を頭の中で浮かべたままにしない)

自問自答を行う際には必ず答をアウトプットしましょう。多くの人は言語化(言葉にすること)が得意だと思いますので、答を言語化しましょう。言語化よりも図示の方が得意な方は絵で書きましょう。答らしきものを頭の中で浮かんだままにしておいてはいけません。多くの場合、それは答ではありません。何らかの方法で形を与えて初めてそれはになります。私は、歩きながらの方が考え事をしやすいので、人気のない道にいって、小声でぶつぶつ言いながら自問自答することが良くあります。

そして、私たちは覚えておくのが苦手です。一方でコンピュータや紙・ノートは覚えておくのが得意です。答を何かに書き留めましょう。あるいは録音しましょう。覚えておくのはそれが得意なコンピュータや紙・ノートに任せましょう。

シンプルな質問にシンプルに回答する

ソフトウェアを設計するときの考え方として「分割・統治」と「モジュール化」というものがあります。前者は、大きな問題を小さな問題に分割し、その小さな問題について解決法・制御法を考えるという発想です。後者は単純な機能を組み合わせて複雑な機能を実現するという考え方です。どちらも複雑なものを複雑なままでは扱わないという共通の方針があります。私たちにとって、複雑な物事を複雑なまま考えたり、複雑なまま取り扱おうとするのは非常に難しいです。そこで、我々が取り扱える程度まで複雑な物事を切り分けることが重要になります。

複雑な事柄に関して検討を行うときには、単純な質問を複数使って複雑さを切り分けましょう。また、質問に対する答を可能な限り簡潔に保ち自分の考えを明確にしましょう。可能ならば1単語~1フレーズ。長くても1~2個の単文で答えましょう。長々と答を述べなければならないというのは、質問自体が不適切か、質問の答において重要なポイントを今の自分が理解できていないという証拠です。

「わからない」「答えたくない」「やりたくない」というネガティブな言説も答として認める

「わからない」「答えたくない」「やりたくない」というネガティブな言説も答として認めましょう。データ不足だったり、知識が足りなかったり、自分の中で禁忌があったりと答えられないことは多々あります。いろいろな角度から質問してみて、それでも結局「わからない」のであるならば、現時点での答がそれです。

そして、「自分は今現在~についてわからないのだ」という認識から、次の問や行動方針が生まれることも良くあります。ぜひ、「わからない」「答えたくない」「やりたくない」を忌避せず、そんな自分を嫌いにならず、現状を受け止めましょう。そして、「次はどうする?」という問で次の行動を導きだしましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

たくさんの質問を用意しておくべき理由とは

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私が好きな夢枕獏さんの小説『上弦の月を食べる獅子』の中で登場するやり取りに以下のようなものがあります。

「… だが、アーガタよ、正しい答が欲しいなら、正しく問うことである。何故なら、正しい問の中には、答が含まれているからである。真に正しい問は、答そのものですらあるのだ―」

「アシュヴィンよ。正しく問うことである。おまえが問うて、答えが得られない時、それは、問が正しくないからである。正しく問いなさい。正しい答えがほしければ、正しく問うことである。それは正しい問の中には、すでに答が含まれているからである。…」

(next49注:「アーガタ」は主人公に対する呼称、「アシュヴィン」は主人公の名前)

私もこのやりとりのように、適切な答へ続く道筋は適切な問からのみ生まれると思っています。

わからないからこそ自問自答しているのに、どうやって適切な問をすればよいのでしょう。まさに鶏と卵のような問題です。

この矛盾をどう回避するべきでしょう?一つの方法は「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」という先人の知恵に従うことです。適切な答が得られる問にぶつかるまで、知っている限りの問を自分にぶつけ続ければよいのです。これが、たくさんの質問を用意しておくべき理由です。

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自分用の「チェックリスト」と「トリガーリスト」を作ろう

上述のように、適切な答を得るためには適切な質問が必要です。そこで、上司、先輩、同僚、部下、家族、友達、恋人、赤の他人との会話の中で「これはうまい質問だな!」と思ったら、それを記録しておきましょう。「どういう場面・状況で何を明らかにするための質問か?」だけをメモしておけば十分です。

質問を集めるというと変な行為のように思われるかもしれません。しかし、物事の確認のために集めた質問集が「チェックリスト」ですし、自分の発想を広げるための引き金として使える質問を集めたものが「トリガーリスト」です。自分用のチェックリストやトリガーリストを作るために質問を集めるのは変なことではありません。その時直接役に立たなくても、発想の引き出しを作ることにつながります。

どのように自問自答をするか、どの時点で自問自答を止めるか?

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高橋 誠著『ブレインライティング 短時間で大量のアイデアを叩き出す「沈黙の発想会議」』やデビッド・アレン著、田口 元訳『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』によると、私たちが思考を進める際には「発散」と「収束」という2つの段階があるそうです。

「発散」段階では、私たちは考えを広げていきます。このとき、話題の展開や列挙した項目などの質は考えません。「収束」の段階では、広げていった考えをある観点でまとめていきます。この段階で似ている話をひとまとめにしたり、突飛な展開を修正したりと質について検討します。この「発散」と「収束」の二つの段階を同時に実行するのは良くないこととして紹介されています。私たちの頭は、着地点を見つけながら発想を展開したり、発想を展開させながら着地点を探したりするのは苦手なようです。

自問自答を行う場合には、自分が今は「発散」のために考えているのか、「収束」のために考えているのかをよく理解して、その上で自問自答を止めるタイミングを考えるのがよいと思います。「発散」も「収束」も客観的な終了タイミングというものは存在しません。自分で事前に終了タイミングを決めておき、それに従って止めましょう。

「発散」の終了タイミング

「発散」の場合は、話題を展開したり、ある事柄について列挙するのが目的なので、量や時間で終了タイミングを考えるのが良いと思います。

  • X分間~1時間というように検討時間で終了する
  • A4用紙X枚分や列挙項目X個というようにアウトプットの量(質は考慮しない)で終了する
  • 事前に用意した質問リストをひととおり適用したら終了する
  • (話題の展開の場合)X段階展開したら終了する
  • 何も思いつかなくなったら終了する
  • 疲れを感じたら終了する(疲れを感じる=集中力が切れている、なので)

「収束」の終了タイミング

「収束」の場合は、許容可能な範囲に展開した話題や列挙した項目を整理することが目的ですので、ある程度の納得が得られるところで終了するのが良いと思います。

  • X分間~1時間というように検討時間で終了する
  • (話題の展開の場合)ある程度の整合性が取れたら終了する
  • (列挙の場合)同じ抽象度ですべての項目についてグループ化できたら終了する
  • 疲れを感じたら終了する(疲れを感じる=集中力が切れている、なので)

ジェームス・W・ヤング著、今井茂雄訳『アイデアのつくり方』では、アイデアを出すときには、一生懸命考えて、その後、しばらくはそのことを忘れるというのが推奨されています。頭の中で延々と考えていても良い結果はでません。自問自答は必ず終了させましょう。

目的・状況別の質問例

ある事柄に関して、少なくとも5つの側面があります。良く言う5W1Hです(What, Why, Who, When, Where, How)。ですので、私は自分がはっきりさせたい事柄に関して、この5W1Hを問います。あるいはその反対「~でないのは?」を問います。さらに、抽象化と具体化を考えたり、立場を変えることで視点の変更を行うようにしています。

また、以下の3つの質問は、どんな場面でも利用可能です。

  • So, what? だから、何なのですか?
  • Why so? なぜそう考えるのですか?
  • What’s next? 次は何ですか?

自問自答を行おうとする目的や状況によって、この3つ以外にも明確にしておくとよいポイントがあるでしょう。私が自問自答するときに使う質問を目的・状況別にご紹介します。

失敗してしまったとき

メンタル面や自分自身の人間性について自問自答することはお勧めしません。メンタル面については誰かに愚痴を聞いてもらったり、気分転換したりするのが良いと思います。人間性については、もうこの世に生を受けて20~30年経っているのですから、いきなり大幅には変更できないと思います。

自問自答すべきは、自分の心がけや精神的な気合いで失敗しないようにするのではなく、システム面で失敗を繰り返さないようにするにはどうすればよいかということです。たとえば、寝坊してしまったのであれば、目覚まし時計を2個用意するというような方法です。

  • 「今回の失敗に至った経緯はどういうものでしたか?」
  • 「標準的な手順や方法はどういうものでしたか?」
  • 「今回の経緯と標準的な手順や方法を比較したときに異なる部分はどこですか?」
  • 「なぜ、今回はそのような手順や方法で進めることになったのですか?」
  • 「今回のような状況にならないようにするためには、何をどう変えればよいですか?」
  • 「今回のような状況になったとしても、失敗しないようにするためには何をどう変えればよいですか?」
  • 「その変更は自分にとって、不利益を発生させませんか?」
  • 「その変更は他人に対して、不利益を発生させませんか?」
  • 「今回の失敗はお金をかければ発生しないようにできますか?」
  • 「その金額は自分で支払うことができますか?」
  • 「その金額を投じるだけの価値がありますか?」
  • 「他人に助力を求めることで、失敗を回避できませんか?」
  • 「その助力は、助力者にとってどれほどの負担ですか?」
  • 「助力に対して、自分が差し出して交換できるものはありませんか?」

レポートや発表・会議資料を作成するとき

誰かに伝えるための資料を作成するときは、自分の伝えたいことを資料を読む人にどうやって伝えるかという点について検討しましょう。

  • 「このレポート/発表・会議資料(以下、アウトプット)の制限枚数/時間はどのくらいですか?」
  • 「これを読む人/聞く人(以下、読者)は誰ですか?」
  • 「読者の前提知識はどの程度ですか?」
  • 「読者がアウトプットに期待することは何ですか?」
  • 「このアウトプットで一番伝えたいことをキーワードでいうと何ですか?」
  • 「このアウトプットで一番伝えたいことを1文でいうと何ですか?」
  • 「読者の前提知識とアウトプットで一番伝えたい事のギャップはどのくらいありますか?」
  • 「読者の期待とアウトプットで一番伝えたい事のギャップはどのくらいありますか?」
  • 「このアウトプットで絶対に述べてはいけないことは何ですか?」
  • 「~について、**さんならどういう受け取り方をすると思いますか?」
  • 「~について、**さんならどういう質問をすると思いますか?」

企画やソリューションの基礎を固める場合

企画やソリューション(企業の経営上、運営上の問題をシステム的・機械的に解決するための製品およびその運用方法)を考えるとき、そもそもの目的についてよく整理しなければなりません。その部分があいまいだと、後ろの工程で何をやっても無駄になってしまいます。

  • 「何が問題ですか?」
  • 「その問題はどうして解決しないといけないのですか?」
  • 「その問題について現状はどうなっているのですか?」
  • 「その問題が発生する根本原因は何ですか?」
  • 「その解決方法は、どうして有効なのですか?」
  • 「他に解決方法はないのですか?」
  • 「他の解決方法に比べ、あなたの解決方法は何が良いのですか?」
  • 「その解決方法を詳しく説明すると、何を何のためにどうすることなのですか?」
  • 「何がどうなったら、目的を達成できたと言えるのですか?」
  • 「いつまでに、どこまで行うのですか?」
  • 「目的を達成するためにやらなければいけない仕事は何ですか?」
  • 「もう一段仕事を分割するとどうなりますか?」
  • 「もう一回だけ仕事を分割するとどうなりますか?」
  • (何がわからないのかわからないとき)「どこまでがわかりますか?」

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自分が伝えたいこと表現したいことをはっきりさせたいとき

自分が何を言いたいのかということがうまく表現できないことはよくあると思います。以下の質問は、自分の言いたいことを明確化するために、長さを設定したり、年齢・世代の違う話し相手を具体的に想起したりする質問です。

  • 「言いたいことを一言でいうと何ですか?」
  • 「一言ではいえない理由は何ですか?」
  • 「あなたが言いたいことを50文字/100文字/400文字で表すと何ですか?」
  • 「聞き手が自分の親だとして説明するとどうなりますか?」
  • 「聞き手が中学生だとして説明するとどうなりますか?」
  • 「**さんだったら、自分が言いたいことをどう表現すると思いますか?」
  • 「言いたいことを理解してもらうには何の情報が必要ですか?」
  • 「言いたいことの重要性を理解してもらうためには何の情報が必要ですか?」
  • 「言いたいことを図で表すとどう表現できますか?」

行為に関して洞察したいとき

例えば業務のマニュアル作成や誰かに仕事を教える場合など、自分が普段行っている「行為」を整理して伝えるケースがあります。ですが、「行為」というのはたいてい何かと何かが組み合わさっている、複合的なものです。たとえば、「電話をかける」と言うとき、私生活ならば電話機を使って連絡したい人に電話をかける行為だけを表しますが、仕事の場合には用件を話しながらメモをとらなければならないかもしれません。

このように、状況や目的によって「行為」の中身は変わります。そこで、状況や目的、行為の手順などを分解していきます。

  • 「その行為を行う理由は何ですか?」
  • 「その行為によって何を得られるのですか?」
  • 「その行為における前提は何ですか?」
  • 「その行為は誰がどういう状況のときに行うのですか?」
  • 「その行為は、何をどうすることなのですか?」
  • 「何がどうなったら、その行為ができたといえるのですか?」
  • 「何がどうなったら、その行為は失敗したといえるのですか?」
  • 「その行為を始めるには何が必要ですか?」
  • 「その行為で最初に行うことは何ですか?」
  • 「その行為を終えるための手順は何ですか?」
  • 「その行為以外に目的を達成できることはないのですか?」

何がわからないのかわからないとき

自問自答した結果「わからない」となっても、さらに以下のような質問をすることで自分の理解について整理し、次につなげることができるかもしれません。

  • 「そもそも、それを理解する必要があるのですか?」
  • 「何で、私はそれを理解しなければならないのですか?」
  • 「それが理解できないのですか?それとも納得(賛成)できないのですか?」
  • 「今、私が理解していることは何ですか?」
  • 「参考にしている書籍/マニュアルのうち、理解できている部分はどこですか?」
  • 「わかっていることを図や絵で書くとどうなりますか?」
  • 「わかっていることを表で表すとどうなりますか?」
  • 「あなたに求められている理解の水準はどのくらいですか?」
  • 「誰に助けを求めたらヒントをもらえそうですか?」
  • 「何を読んだらヒントをもらえそうですか?」
  • 「どこに行ったらヒントをもらえそうですか?」

相手が自分に何を求めているのかわからないとき

仕事場では、このようなときに自問自答してはいけません。必ず相手に尋ねましょう。プライベートにおいても、こういう場面で自問自答しない方が楽しく生きていけると思います。

おわりに

自問自答入門ということで、自分に質問するための質問例をいくつかご紹介しました。ぜひ、自分がよく直面する状況用に質問例を作成・編集してください。

また、質問をするのが苦手という方もいらっしゃると思います。そういう方は「ベアプログラミング」と呼ばれる手法を試してみるのも良いと思います。方法は簡単です。クマのぬいぐるみ(お好みのぬいぐるみでOKです。でも、人語を話しそうな形のぬいぐるみが良いと思います)を用意します。そして、そのぬいぐるみに向かって困っていること、悩んでいることを説明してください。ぬいぐるみに名前を付けて、適宜、名前を呼び掛けながら話す方が効果が高いと思います。

自問自答もベアプログラミングも、どちらも「他人へ向けて説明する」という行為を無意識に行わせる働きがあります。何かを他人に説明するとき、必ず、我々は話したいことを整理してまとめることになります。まとめるということは、時系列、空間配置(全体→部分、抽象→具体、目的→方法→結果など)、類似性などを整理するということです。この結果、私たちは自分が何を考えているのかについて、はっきりと自覚することになります

誰かに話を聞いてもらう場合には、聞き手の時間を考慮しなければいけませんが、自問自答やベアプログラミングはいくらやっても他人に迷惑はかけません。どんなに質の低いアウトプットでも気にすることなく、回数によって質を上げることを重視して、いくらでもやってみることができます。

以上、何らかのお役にたてれば幸いです。

著者:next49 (id:next49)

next49

画像のビールはベルギービールのバルバールです。一番好きなベルギービールはデュベルです。
ブログ: 発声練習

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