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【今、気になるビジネス書の要約】『TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則』

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Dima Lomachevsky/Hemera/Thinkstock

 

近年話題になることも多いのでTED Conferenceについてご存知の方も多いだろう。1984年にサロンとして始まり、2006年から動画が無料公開されたことで、最近知名度が急激に上昇している。TEDでは各界の著名人から、独自の主張を持つ無名のスピーカーまで、幅広い方が講演を行う。その特徴となっているのはプレゼンテーションのスタイルである。TEDのスピーカーは演台の裏に隠れず、全身を聴衆の前にさらけ出し、ボディランゲージを使いながら堂々とプレゼンテーションを行っている。

 

そのようなプレゼンテーションを行う人がいる一方で、話し慣れていると思われる経営者の中にも「私はつまらない人間だ」「プレゼンテーションをするなら死んだ方がましだ」と考える人は多いという。そんな人たちにとって、本書は救世主となりえる書籍だろう。TEDのプレゼンテーターが採用している、プレゼンテーションの構成、話し方、驚きの加え方など、そのノウハウがぎっしり詰まったものだからだ。

 

新商品の営業、社内のスピーチ、投資家向けのビジネスピッチ等のビジネスシーンだけでなく、研究発表、採用面接、政治演説など、幅広い領域でプレゼンテーションが行われており、その巧拙は人生の成功と失敗を大きく隔てるものである。本書はビジネスパーソンだけでなく、学生、研究者、政治家など幅広い対象に極めて有用なスキルを提供する、現代のプレゼンテーションの定番書となるに違いない。(大賀 康史)

 

 

内なる達人を解き放つ

あなたのハートが歌い出すきっかけは?

最近著者は、コミュニケ―ション能力を高めたいと願う経営者に投げかける最初の質問を変えたのだという。スティーブ・ジョブズが「我々のハートが歌いだすのは、テクノロジーとリベラルアーツの交差点だ」と語ったことにならい、「あなたのハートが歌いだすきっかけは何ですか?」と尋ねることにした。それにより、以前よりもはるかにワクワクする答えが得られるのだ。

例えば、カリフォルニア州でイチゴの農家団体トップとやりとりした際の話が参考になる。

質問1 あなたの仕事は?

「カリフォルニア州イチゴ協会のCEOだ」

 

質問2 何に情熱を感じますか?

「カリフォルニア州のイチゴを売り込むことに情熱を感じる」

 

質問3 イチゴ業界のどんなところが、あなたのハートが歌いだすきっかけになるのですか?

 「アメリカンドリームさ。私の両親は移民で畑で働いていた。やがて1エーカーの農地を買うことができて、そこからすべてが始まった。イチゴ栽培にそれほど広い土地は必要ないし、借りればいいから最初から土地を買う必要もない。まさにアメリカンドリームへの足がかりなんだよ」

 

最初の2つの質問よりも最後の質問の答えが、はるかに面白いという事実に気付くだろう。

 

なぜすばらしいキャリアを手に入れられないのか

ウォータールー大学の経済学教授、ラリー・スミスがキャリア上の成功というテーマに強い関心を持つのは次の要因による。それは自分の仕事に幸せと情熱を感じていなければ、すばらしいキャリアを手に入れられない、ということだ。幸せと情熱を感じていれば、プレゼンテーションで聴衆を熱狂させることが可能になる。キャリアと幸福と人々の心を動かす能力はすべてつながっているのだ。

スミスによると、多くの大学生はカネや社会的地位など、誤った動機でキャリアを目指してしまう。その結果、素晴らしいキャリアを築けない。皆、「すばらしいキャリアを手に入れるには、情熱や夢を追いかけなければならない」と耳にタコができるほど聞いても、それに従わない。それに対して、スミスは次のようにアドバイスをしている。

「自分が情熱を持てるものを探し、実行すれば、すばらしいキャリアが手に入る。それが嫌なら、すばらしいキャリアはあきらめろ」。

 

情熱は伝染する

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Ridofranz/iStock/Thinkstock

 

ミネソタ大学のジョイス・ボノ教授とミシガン州立大学のリーマス・イリーズ教授は、カリスマ性、前向きな感情、感情の伝わり方に関する研究を行った。

その結果、「カリスマ性のスコアが高い人は、書面あるいは口頭によるコミュニケーションで前向きな感情をより多く表現する傾向がある」ことがわかった。情熱、熱意、興奮、楽観性などの前向きな感情は伝染し、聴衆の気持ちを盛り上げるのである。

聴衆を感動させようとするのであれば、とりつかれていると言えるくらいプレゼンテーションのテーマに情熱を持つことだ。本当の自分が持つひらめきや、いらだちや、幸せを聴衆に伝えるのである。

 

【必読ポイント!】ストーリーの技術をマスターする

ペーソスの力

ギリシャの哲学者アリストテレスは、エートス(信頼感)、ロゴス(論理)、ペーソス(感情)の3要素が説得に必要だと考えた。人権問題に取り組む弁護士であり、TEDで「最も説得力があるプレゼン」の1つとして大きな反響を得たブライアン・スティーブンソンは、持ち時間の18分間をどのように使ったのだろうか。プレゼンテーションで話した単語数である4057を分解すると、エートスは10%、ロゴスは25%である一方、ペーソスはなんと65%を占めていたのだ。

スティーブンソンは著者の基本的なコンセプトである、ストーリーテリングが人を説得する究極の武器である、という考えに賛同している。感情に訴える「本物のストーリー」を語る個人やブランドは、ライバルとは比較にならないほど顧客と深い絆を結ぶ。ビジネスパーソンもパワーポイントを使ったプレゼンテーションで、個人的なストーリーを持ちだすことに躊躇する必要はないのである。

 

ストーリーは聞き手の脳にアイデアと感情を刻み込む

プリンストン大学の心理学准教授であるユーリ・ハッソンは、fMRIで脳波を計測しながら被験者に映画を見せたり、ストーリーを聞かせる実験をしている。実験の目的は、脳が複雑な情報をどのように処理するのか解明することである。

ハッソンたちの研究の結果、個人的なストーリーは話し手と聞き手の脳を同期させることがわかった。つまり、話し手の脳で、感情をつかさどる脳の『島』が活性化しているときには、聞き手でも同じ『島』が活性化する。話し手の前頭葉が反応すると、聞き手の前頭葉も反応するというように。

さらに、我々の脳はストーリーを聞いていると特に活性化することもわかった。多くの項目が箇条書きで並ぶパワーポイントのスライドが示されると、脳の「言語処理センター」のみが活性化する一方で、ストーリーは脳全体を巻き込み、言語、感覚、視覚、運動領域を活性化するのだ。ストーリーが「脳と脳のカップリング」を引き起こすことから、プレゼンテーションの説得力を高めるためには、もっとストーリーを語ることが有効なのである。

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 evgenyatamanenko/iStock/Thinkstock

 

シンプルで効果的なストーリーの3つのタイプ

人の心を動かす最高のTEDスピーカーは、3つのタイプのストーリーのどれかを選ぶ傾向がある。1つ目はテーマと直接かかわりのある個人的なストーリー、2つ目は聴衆が共感できるような教訓を学んだ人々のストーリー、3つ目は製品・ブランドの成功あるいは失敗のストーリーである。

・個人的なストーリー

TEDでも特に人気のプレゼンテーションは、個人的なストーリーで始まるものが多い。あなたも個人的なストーリーを語ってみよう。適確な描写と豊かなイメージで、聴衆をその世界に引き込み、あなたと一緒にその場にいるかのような気持ちにさせるのだ。

・第三者のストーリー

学校教育について語ったケン・ロビンソン博士の例を挙げたい。そのプレゼンテーションは、本書執筆時点で視聴回数が1500万回に達し、TED史上最も人気のある講演となっている。

ロビンソンのストーリーを構成したのは自分自身の話でなく、ジリアン・リンというミュージカルダンサーの話である。ジリアンは学校で授業に集中できず、教師には学習障害があると思われていた。そして、専門医の診察を受ける。診察後、医者はジリアンをその場に留め、母親と話をすると言い、ラジオをつけて部屋を出ていく。すると、ジリアンはラジオの音楽に合わせて動きだした。その様子を見せて医者は母親に、「お母さん、ジリアンは病気ではありません。ダンサーなのです。ダンススクールに入れてあげなさい」と言ったのだ。

ロビンソンが行った「全人格を育てる」というTEDでのプレゼンテーションは、このストーリーを介して感情に訴えることができ、その結果聴衆の記憶に残すことができたのだ。

・ブランドの成功ストーリー

消費者は商品がどこで誰がつくっているのかを知ると、その商品に強い愛着を感じるようになる。すべての商品にはストーリーがあると考え、それを効果的に訴えることが、ビジネスを推進するために必要となるのである。

 

驚きの瞬間を演出する

汝、お決まりの芸を披露するなかれ

2009年2月のTEDでのビル・ゲイツのプレゼンテーションは驚きと感動を与えた。ゲイツは世界の貧困や乳幼児の死亡の問題に聴衆を巻き込むため、何とプレゼンテーション会場に蚊を放つ、というデモを行ったのである。

ゲイツは次のように話した。「ご存じのとおり、マラリアは蚊が媒介します。みなさんにも体験していただこうと思って、今日は何匹か連れてきました。ちょっとばかり自由にしてやりましょう。貧しい人しかこんな体験ができないというのも、おかしな話ですから」。

そのような驚きの瞬間を体験すると人は感情的になる。感情が高ぶると、スピーカーのメッセージが記憶に残り、行動の変化をうながしやすくなるのである。それは、感情体験が引き起こす神経伝達物質のドーパミンの分泌による。その体験に「これは忘れない!」と書いたポストイットを貼りつけるようなものなのだ。

 

「うっそー!」の瞬間

著者は感動体験や感激の瞬間を、「うっそー!の瞬間」と呼んでいる。その場にいなかった友人に説明するときに、最初に口にする場面である。それではどのようにすればその瞬間を作りだせるのか。5つの方法を紹介しよう。

1.小道具とデモ

距離を意識してもらうために会場にテープを貼ることや、商品の小ささを強調するために象徴的な入れ物を見せることなど、小道具は驚きを与える便利なツールである。

2.意外感のある衝撃的なデータ

TEDの人気プレゼンテーションでは、ほぼ全てでデータや統計、数字が使われる。大切なのはその伝え方である。参考に2つの例を挙げよう。

・なぜ我々は海を軽視するのでしょう。宇宙を探検するNASAの年間予算1年分は、海を探検するNOAAの予算1600年分に匹敵します。

・一般人の100人にひとりがサイコパス(精神病質者)です。この会場には1500人がいますね。ということは、みなさんのうち15人がサイコパスなのです。

3.写真、画像、動画

ビジュアル資料にはパンチがある。感情に訴えるようなビジュアル資料を示すことで、聴衆の心を動かすことが可能になる。

4.記憶に残るヘッドライン

未来学者スチュワート・ブランドは、バイオテクノロジーはデジタルテクノロジーの4倍の速さで進化している、と言及した。それに加えて、絶滅した生き物を復活させられると主張し、「人類はマンモスを復活させるだろう」、という印象的な言葉を伝えた。

これはジャーナリズム・スクールでいう「サウンドバイト」と呼ばれるもので、短く刺激的で、繰り返しやすく、SNSやニュースメディアに取り上げられやすいものである。

5.個人的なストーリー

個人的なストーリーを伝えることで、ガードを下ろし、聴衆との壁を取り払うことが可能である。あなたを見る聴衆の目が変わるようなストーリーを語るのだ。多くのビジネスパーソンが語る個人的なストーリーは、とても感動的なものなのである。

 

 今回紹介した本

『TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則』

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著者: カーマイン・ガロ著、土方 奈美訳
価格:1,944 円
単行本: 380 ページ
出版社:日経BP社(2014/7/23)

著者情報

カーマイン・ガロ
世界の有名ブランドを支えるコミュニケーションコーチ。CNNとCBSのアンカーや記者を務めた。インテル、シスコ、コカ・コーラ、ファイザーなど多くの企業で講演した経験を持つほか、Forbes.comでは連載も持つ。国際的なベストセラー『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(日経BP社)などの著者でもある。妻と2人の娘とともに、カリフォルニア州プレザントン市在住。

※本記事は、本の要約サイトflierより転載しております。

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