自分の強みがわからない原因と強みの見つけ方・活かし方のポイント

「自分の強みがわからない」「そもそも自分の強みはわかっていた方がいいのか」。そんな漠然した悩みを抱えているビジネスパーソンへ、自分の強みを把握しておいた方がいい理由、自分の強みがわからない原因、強みの見つけ方・活かし方のコツやポイントをご紹介します。

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そもそも自分の“強み”とは

強みや弱みは、任されている仕事内容や会社の社風、職場の状況によって、いかようにも変わっていきます。

例えば、「好奇心旺盛」な性格は、新しいものや流行りを生み出す広告代理店においては“強み”になりますが、ミスのない着実な仕事を求められる金融機関では「注意力に欠ける」として“弱み”に捉えられることもあるでしょう。

ほかにも、「感情の起伏がなく物静か」な人は、新規営業の仕事をする上ではマイナスになることはあっても、高級ホテルのフロアスタッフにおいては、落ち着いた穏やかな振る舞いにお客様からの信頼が寄せられるかもしれません。

つまり、どんな環境でも不変の強みや弱みというものはなく、あるのは「特徴」だけです。「自分の強みがわからない」と悩むとき、「特徴」と捉え直して考えていくといいでしょう。

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仕事や職場で「自分の強み」を把握するメリットとは

「自分の強み=特徴」を知ることは、仕事のパフォーマンスを高める上で欠かせません。私が人事コンサルティングでさまざまな企業の採用や組織作りのお手伝いをする際、まず行うことは、その企業内の「ハイパフォーマー人材」の特徴を知ることです。

ハイパフォーマーの特徴は、企業によってさまざまですが、どの業界、どんな仕事においても共通する要素の一つに「自己認知の高さ」があります。自分の特徴をしっかり理解する「自己認知」は、あらゆる能力のベースになっています。

学習能力や成長意欲は多くの企業が求めるものですが、自己認知が低いと、できていないことをできると思い込むため、学ぼうと努力したり、改善に向けて工夫を凝らしたりすることがありません。

また、自己認知が低く自分の特徴が理解できていないと、チームで仕事をする際に何をすべきかを正しく捉えることができません。

スケジュール調整が苦手なのに「進行管理をやらせてくれ」と申し出てプロジェクトが難航したり、プレゼンテーションの経験がほとんどないのに「自分が発表する」と前に出て、クライアントから顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったりすることもあるでしょう。

また、自分の好き嫌いや得意不得意を理解していないことで、物事の認識がゆがんでしまうこともあります。好きなものをひいき目に見てしまうバイアスに気付けないのも、弊害の一つ。ビジネスにおいては、客観的事実に基づいた判断が欠かせませんが、自己認知が低いことでそのジャッジが間違ってしまうのです。

自分の特徴を理解することは、仕事で求められる能力を身につけ、パフォーマンスを上げる第一歩といえるでしょう。

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自分の強みを知る方法とポイント

では、自分の強み=特徴を知るにはどんなやり方があるのでしょう。私がおすすめする一つの方法は、“国語力”をつけることです。

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自分の特徴を細かく言語化する

経団連では、企業が学生を採用する際の「選考時に重視する要素」を継続して聞いてきました。それによると、2001年から2019年まで上位5項目は20年間ずっと変わらず、「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」です。

しかし、たとえ企業が「当社はコミュニケーション能力の高い人材を求めている」といっても、“コミュニケーション能力”が示す内容が企業によって異なるため、具体的な意味を正しくとらえることはできません。

こうした多義的な言葉を、一義的なものに言い換えて考えることは、自分の特徴を整理する上でも大切です。

私の人事コンサルティング経験から、「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」を、各企業がどのような意味で使っているのかを整理すると、次のような「よくある意味」に言い換えられることがわかりました。企業が選考時に重視する要素を言い換えたものが以下の表(※経団連調査をもとに株式会社人材研究所作成)です。

●コミュニケーション能力

要素 別表現・関連表現・類似表現 悪く言えば
論理的である 論理的思考力
ロジカル
理屈っぽい
表現力が豊か 話がうまい
わかりやすい
語彙が豊富
口だけで中身が伴わない
交渉力がある 対人影響力
説得力
ネゴシエーション
ゴリ押し
圧が強い

●主体性

要素 別表現・関連表現・類似表現 悪く言えば
自律的である 自発的
自分から動く
自走
自分勝手
自由すぎる
責任感がある 自責性
使命感
当事者意識
自分を責めてしまう
活動量が旺盛 エネルギー量
バイタリティ
活発、意欲的
暑苦しい

●チャレンジ精神(挑戦心)

要素 別表現・関連表現・類似表現 悪く言えば
好奇心がある 知的欲求
知識欲
新しいもの好き
飽きっぽい
すぐ別のことをする
達成意欲がある 目標達成意欲
理想主義
野心家
意欲的
欲求不満
喜べない
向上心がある 成長意欲
熟達志向
学習能力
意味がわからないと動けない

●協調性

要素 別表現・関連表現・類似表現 悪く言えば
和を重視する 調和志向
協力的
控えめ
同調する
流される
役割意識がある ポジショニングがうまい
責任感
受動的
自分を出さない
適応力がある フットワーク
スピード感
すぐやる
無思慮
慎重でない

●誠実性

要素 別表現・関連表現・類似表現 悪く言えば
真面目である 勤勉
信頼できる
責任感
融通がきかない
継続力がある 粘り強い
やり切る力
ストレス耐性
方向転換が苦手
信念が強い 正義感
ポリシーがある
頑固
考えを曲げない

上記表では、「悪く言えば」どんな特徴になるかも併せて言語化しています。「自分の強みがわからない」というビジネスパーソンは、自己肯定感の低い方も少なからずいて、「自分には強みなんてない」と口にします。

しかし、前述の通り、仕事内容や職場環境によって強みだと思っていたものが弱みになったり、弱みだと思っていたものが強みとしてパフォーマンスにつながったりします。強みや弱みはなく「特徴」だけがあるため、自分の特徴はすべてポジティブに言い換えることができるのです。

「敏感でストレスに弱い」のは、「感受性が豊か」の裏返しですし、「受動的で自分を出せない」のは、「役割意識が強い」の裏返しです。

アピールできるほどの強みはない…と思い込んでいる方は、表を参考にしながら、自分に対して持っているネガティブな評価をポジティブに言い換えてみましょう。

他者からのフィードバックをもらう

自分の特徴を知る上で、他者からの客観的なフィードバックは欠かせません。周りの同僚や上司、友人に聞いてみるのも一つ。ただ、フィードバックをもらうときは必ず「ポジティブフィードバック」をしてくれる人にお願いしましょう。

「強みがわからない」と自信を持てない中で、ネガティブな指摘ばかりしてくるタイプに向き合うと、ますます落ち込んでいってしまいます。

ほかに、スカウトサービスのある転職サイトに登録するのもいいと思います。転職する予定がなくても、経歴を登録しておくと、さまざまな企業や転職エージェントからスカウトメールが届きます。

文面には、「あなたの〇〇の経歴、△△での経験を拝読して、ぜひ話を聞いてみたいと思いました」など、具体的にどこを評価してスカウトを送ったのかが書かれていることが多く、自己分析のヒントが得られます。

自分では強みだと思っていなかったことが、ほかの企業からすれば魅力に映るのだと分かれば、自身の特徴を改めてとらえ直すことができるでしょう。

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自分の強みを生かして仕事選びをするなら

強みの言語化をした上で、それを仕事に生かしていくには、どんな特徴が求められる仕事内容や企業カルチャーなのかといった企業分析が欠かせません。自分の特徴が強みになる環境を選ばなければ、特徴は弱みにもなってしまうからです。

「チャレンジ精神」を求める企業は多くありますが、事業内容や社風によって、「チャレンジ精神」の中身はさまざまです。

好奇心旺盛な人を求めているのか、達成意欲ややり切る力を求めているのか、改善を繰り返す向上心が必要なのか。「チャレンジ精神」が指す一義的な内容をきちんと理解し、自身の特徴が“強み”になる場を選んでいく。

そのために、今後異動や転職を考えていきたいのなら、異動や転職先の仕事内容や配属部署のカルチャーに関する情報収集を進めていきましょう。企業の求人情報はもちろん、ホームページなどで発信している情報に触れることも大切です。

株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和利光氏

人材研究所・曽和利光さんのプロフィール画像1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。最新刊『定着と離職のマネジメント』(ソシム)も話題に。

取材・文:田中瑠子 編集:馬場美由紀
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