仕事がキャパオーバーする原因とは?オーバーしやすい環境・人の特徴・対処方法を解説

大量の仕事を抱え、自分の処理能力の限界を超えてしまう「キャパオーバー」。これが続くとミスが増えるだけでなく、体調やメンタル面で不調をきたす恐れもあり要注意です。仕事がキャパオーバーになってしまう原因や対処法、未然に防ぐ対策について、スケジュール管理や業務効率化のメソッドを幅広く提供する、ビジネススキル講師の西村信行さんに聞きました。

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キャパオーバーとは

仕事上におけるキャパオーバーとは、業務の処理能力や許容量が個人の限界を超えていることを指します。仕事がこなしきれずミスが増え、残業が常態化するなどの状態になることが多いようです。

中には慢性的に忙しく、キャパオーバーに気づかない人もいるかもしれません。例えば、以下のような状態は、キャパシティを超えているサインの可能性があります。

  • 明らかに遅れる仕事が増えた
  • 他の仕事が気になり、目の前の仕事に手がつかない
  • 仕事が心配で夜眠れない
  • 朝起きて会社に行くのが億劫

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仕事でキャパオーバーが起こる原因

仕事でキャパオーバーが起きやすい場合、「職場環境」という外的要因と「個人の特徴(仕事への向き合い方)」という内的要因があると考えられます。

キャパオーバーになりやすい職場環境

キャパオーバーになりやすい職場の特徴には、タスクの優先順位付けができていないことがあります。具体的には以下の2つが挙げられます。

1.マルチタスクが多く効率が悪い

多くのタスクを同時に行わなければならない場合、効率的に仕事をこなせず、キャパオーバーを招きやすくなります。1日の中で細かくタスクが切り替わると、「さっきの続きはどこから?」と経緯を思い出したり、「あの仕事どうなった?」と気が散ったりするコストが発生し、作業効率が大きく下がってしまいます。

組織自体が業務の優先順位を明確にせず、プロジェクトを並列にスケジューリングしているため、個人が常に多くの仕事を抱えてしまうケースがあります。一方、業務の特性として複数の組織と仕事をしたり、顧客に対して同時に対応したりするために、マルチタスクが多くなるケースもあります。

2.突発的な割り込みタスクが多い

1日単位や1週間単位で計画されていたタスクに対して、突然割り込んでくるタスクが多くなると、キャパオーバーになりやすくなります。要因としては、急な顧客対応や上司などが割り込み業務を頼むケースなどが考えられます。

ある程度の割り込みタスクが想定される業務の場合、キャパオーバーにならない業務量を設定しておくことが肝要です。つまり通常業務を積み過ぎず、組織としてバッファ管理を行う必要があるでしょう。

キャパオーバーになりやすい人の特徴

総じて真面目で頑張り屋の人は、キャパオーバーになりやすい傾向があるようです。キャパオーバーになりやすい人の特徴について、2つの例を挙げます。

1.完璧主義者である

自分が理想とする「完璧」を実現しようとして業務の細部にこだわる人は、タスクの完成までに時間がかかります。また、「仕事でわからないことを聞くのは恥ずかしい」と考えてしまう傾向があり、タスク内容のすり合わせがしっかりできていないケースもあります。

そのため、完成版を見せたときに「伝えたイメージと違う」と言われて手戻りが発生し、タスクが積み上がってキャパオーバーになってしまうことが多いようです。

2.責任感が強い

責任感が強く、「命じられた仕事は全部自分でやらなければ」と仕事を抱え込んでしまう人も、気づいたときにキャパオーバーに陥っていることがあります。この場合は「仕事に対する責任」の捉え方に思い違いがあっても、周囲に助けを求めることを避けてしまう傾向があります。

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キャパオーバーになってしまったときの対処法

では、キャパオーバーになってしまった場合はどうすればいいでしょうか。若手のビジネスパーソンが実行できる対処法をお伝えしましょう。

優先順位を整理して上司やリーダーに相談する

同時進行で進めるタスクが多すぎて効率が上がらない場合は、状況を可視化するために下記のようなマトリクスを使い、タスクを「緊急度」と「重要度」で整理してみましょう。

アイゼンハワーマトリクス
出典:西村信行氏提供「アイゼンハワーマトリクス」

これをもとに、どこまでができて、どこはできない可能性があるかを上司やリーダーに、必要に応じてアサイン変更などを相談してみましょう。次のように整理すると、相手も判断しやすくなるでしょう。

  1. 重要かつ緊急度も高い……最優先で取り組む。
  2. 重要だが緊急ではない……スケジュールを取って予定に入れる。(1)で予定が一杯の場合は(2)の時期をずらせないか、(3)を他のメンバーに任せられないか、(4)を実施不要にできないか相談する。
  3. 緊急だが重要ではない……(1)(2)で予定が一杯の場合、(3)を他のメンバーに任せられないか、(4)を実施不要にできないか相談する。
  4. 緊急でも重要でもない……(1)(2)(3)で予定が一杯の場合、実施不要にできないか相談する。

1つのタスクにカタマリで時間を確保する

上述したように、1日のタスクの切り替え回数が多いほど、仕事の効率は落ちます。「今日の午前は○○をやる」「明日は1日△△に取り組む」など、1つのタスクにまとまった時間を確保できるよう、以後のスケジュールの組み替えを検討してみましょう。

割り込みタスクが手に負えないときは報連相する

急に他のタスクが割り込んできた場合、若い人ほど「すぐやらなければ!」と取り組みがちですが、必ずしも優先度が高いとは限りません。まずは今の仕事との優先順位を整理しましょう。

既存のタスクと平行して完了できるのであればいいですが、難しいと思ったら、既存のタスクとの優先順位づけを上司やリーダーと相談するようにしましょう。その際は「どこまでならやり切れそうか」「具体的にどのタスクの優先度を落として欲しいか」を自分なりに整理しておくと、相手も判断しやすくなります。

完成イメージのすり合わせを徹底する

「細部にこだわって要求以上の品質を追求した」「方向性がズレたまま進めて修正を余儀なくされた」など、仕事の進め方が原因でキャパオーバーが生じている場合は、上司やリーダーとタスクの完成イメージを共有することが先決です。

次回のすり合わせ日と内容を話し合って決め、再び認識の相違が起きないように対策しましょう。その際は「次にどの段階(完成度)ですり合わせるか」を明確にしておきましょう。

「人に頼ってはいけない」マインドブロックを外す

社員がタスクに対して負う責任とは「仕事を目的通り仕上げること」であり、「誰がどうやって完成させたか」は、本来重要ではありません。もし自分一人ではできない可能性があるなら、むしろ周りを巻き込んで仕事を完遂することが、「責任を果たすこと」だと理解す必要があります。

フタを開けたときに「結局できませんでした」では、組織にも他のメンバーにも不利益を与えてしまいます。キャパオーバーを自覚したら「人に頼ってはいけない」というマインドブロックを外し、遠慮なく周囲に相談して協力を求めましょう。

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キャパオーバーにならないための予防策

キャパオーバーを防ぐための方法をご紹介します。「チームに働きかける」「個人で工夫する」など、できそうなことから取り組んでみてください。

重要度と緊急度の判断基準をあらかじめ決めておく

マルチタスクが多い職場では、仕事の「重要度」と「緊急度」の判断基準を上司やリーダーと話し合っておきましょう。「どのような軸と尺度でタスクの優先順位を決めるか」で目線を合わせておくと、キャパオーバーを招く前に検討すべきことが明確になり、意思決定のスピードも上がるでしょう。

上記で紹介したマトリックスなどを使い、日常から自分のタスクと優先順位を整理しておくと、思考の訓練になると同時に、何かあったときにすぐ相談ができるのでおすすめです。

会議の時間を集中させる提案をする

組織の問題として、会議が細切れに予定され、メンバーがタスクに集中できないケースもあります。全体的にその傾向がある場合は、会議の予定を特定の日時に集中させることを提案し、チームで話し合ってもいいでしょう。

ちなみに、ここ一番で「絶対自分の仕事に集中したい」という時間帯には、メンバーと共有する予定表に自分向けの会議枠を入れるのも一つの方法です。ただし、組織内の連携に影響するほど過度に利用するのは控えましょう。

スケジュールに十分なバッファを設ける

ある程度の突発的なタスクが避けられない業務であれば、普段から計画タスクにバッファを設ける習慣をつけましょう。その際は、バッファの量についても上司とすり合わせておくことをおすすめします。

突発タスクが多くなる原因の対策を立てる

突発的な割り込みタスクがあまりにも多い場合は、そもそもの原因を探って対策しましょう。

自分自身のタスクの洗い出しが不十分で、後から仕事が増えがちになる場合は、計画の精度を上げて再発防止に努めます。組織の業務管理など自分でコントロールできない問題なら、原因についてチームで議論する機会を設けるように提案してみましょう。

完成イメージを確認してコミュニケーションを密にする

タスクのやり直しで余計な業務を増やさないようにするには、最初に仕事を頼まれた時点で、方向性や最終アウトプットのイメージを十分確認します。そして「どの段階で認識合わせをするか」をあらかじめ話し合って設計しておきましょう。

例えば、次の4段階で上司とコミュニケーションができれば、齟齬が生じることは少ないはずです。

  1. タスクの目的・成果物イメージ・やるべきことの箇条書き
  2. 簡単にまとめた成果物のドラフト
  3. 自分なりの完成版
  4. 指摘部分に対応した修正版

大切なのは「未完成で見せるのは抵抗がある」という意識を外すこと。上司は部下の状況を把握しておく必要があるので、基本的に自分からすり合わせをしてくれるメンバーには安心感を覚えるはずです。

そうなれば双方のコミュニケーションも良好になり、さらに意思疎通がしやすくなる好循環が生まれるでしょう。

責任を持った行動で、信頼関係を積み上げる

「人に頼ってはいけない」と考える理由が、「嫌がられそうで怖い」という場合、自分が頼られたときに嫌なのはどのような人かを考えてみてください。おそらく「後はよろしく!」と丸投げする人や、頼ってばかりで頼られるのを嫌う人ではないでしょうか。

裏を返せば、「これは自分のミッションだ」という当事者意識を持って、真摯な態度で協力を依頼する人や、困っている仲間を常に助ける人であれば、自分も力になろうと思うはずです。使命を果たすために責任感を持って行動すれば、信頼の貯金が増え、本当に必要なときに仲間と協力し合える関係を構築できるでしょう。

キャパオーバーを乗り越えれば成長できる

キャパオーバーになるのは辛いものですが、悪いことばかりではありません。キャパオーバーを経験して初めて、自分の限界値を知ることができ、再発防止への対策を考えることで、仕事を自己設計するスキルが磨けるからです。

以前は手一杯だった仕事もラクにこなせるようになり、自身の成長を感じることもあるでしょう。前向きに捉えて、状況を変える行動を起こしてみるようにしましょう。

プロジェクト管理/ビジネススキル講師
西村 信行(にしむら のぶゆき)氏

新卒で日本IBMに入社し、主に銀行などの金融領域におけるシステム開発を担当。システムエンジニア及びプロジェクトマネージャーとして経験を積む。その後、株式会社リクルート(旧リクルートテクノロジーズ)に入社し、リクルートグループの大規模プロジェクトのマネジメントや新規事業検討プロジェクトに参画、プロジェクト監査も担当する。外資系IT系企業にてDX案件を担当した後、2024年にビジネス研修講師として独立。

取材・文:鈴木恵美子 編集:馬場美由紀
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