「主体性」とはどういう意味?仕事で主体性が重要視される理由と高める方法

仕事の場においてよく耳にする「主体性」という言葉。「主体性がない」「もっと主体性を持って行動しよう」などと言われることがありますが、そもそも主体性とは何かピンと来ていない人も多いのではないでしょうか。この記事では、主体性の意味と仕事で必要とされる理由、そして主体性を高める方法などについて、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに伺いました。

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主体性とはそもそも何?自主性との違いとは?

主体性とは、自分の意志や判断において、自ら責任を持って行動すること。仕事においては、「目的や課題を自ら設定して、その実現のために考え行動し、結果に責任を持って取り組む力」を指します。

似たような使われ方をする言葉に「自主性」があります。自主性とはやるべきことに対し自ら率先して行動すること。主体性と近しい印象を受けると思いますが、自主性は「やるべきことが決められている」のに対し、主体性は「何をすべきか決められていない」ことに対して自分で考え行動することを表します。

例えば、上司から与えられた仕事に対して自分ら率先して取り組むのが自主性。一方の主体性は、与えられた仕事以外に「今度はこの顧客にもアプローチしてみよう」「こんな提案を試してみよう」などと自分で課題を設定し、目標達成のための方法を自分で考えながら責任を持って行動することを指します。

もしも上司や先輩に「主体性がない」と言われた経験があるならば、普段から受け身で、指示されたことしかやっていない、自分の枠を決めてしまっていてその枠から出ようとしない、などが考えられます。次に説明するように、主体性はこれからの時代、仕事においてますます求められるようになります。主体性が重視される理由を理解したうえで、高めるための習慣を身につけることをお勧めします。

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なぜ仕事において主体性が重視される?

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いわゆる学校の勉強とは違い、仕事には「これだけが正しい」という明確な答えがありません。そして、経済状況や時勢の変化などにより、我々を取り巻く環境も刻々と変化します。そんな中で成果を上げ続けるには、その時々の状況に応じて自ら考え行動できる力、すなわち主体性が必要になります。

そして、仕事においては今後さらに主体性が求められるようになると予想されています。

現在は、変化が激しく先行きが読めないVUCAの時代と言われています。上司はもちろんたとえ企業のトップであっても、今後起こり得ることを予測し正しい判断をするのは難しい世の中にあります。

そんな中、状況を読みながら自ら考え行動できる主体性のある人材は、企業にとってますます必要不可欠な存在に。視座を高く持ち、現状を切り開いてくれる人材として高く評価されると思われます。自分の意見や考えを持って行動できるということは、普段の仕事においても新しいアイディアや視点を取り入れられるということ。現状に常に疑問を持ち業務改善に動けたり、新しいビジネスの芽を見つけられたりする可能性も高いでしょう。

また、リモートワークの増加も、主体性がより注目される理由になっています。

リモートワークは、オフィス勤務に比べると上司の目が届きにくいので仕事ぶりが可視化しにくく、マネジメントの難易度が上がるとされています。そんな中、主体性のある人は上司の目がなくても自分を律しながら行動でき、自ら成果を生み出すために努力できるため、高く評価される傾向にあります。
コロナ禍を経てリモートワークが当たり前になった今、主体性を持った人の活躍可能性はますます広がると予想されます。

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主体性のある人の特徴とは?

主体性があると言われる人の特徴をいくつかご紹介します。今の自分と比べてみて、主体性の度合いを測ってみましょう。また、社内でこの特徴に当てはまる人の行動を観察してみたり、真似してみたりすると、主体性を高めるトレーニングになるでしょう。

仕事を楽しみ、日々イキイキしている

主体性がある人は、与えられた仕事の枠にとどまらず、今必要なことは何か考え行動しているので、常に「(自ら)やりたいこと」が複数ある状態にあります。自分で責任を負わねばならない大変さはありますが、その分やりがいも大きいと捉え、やりたいことに向かってエネルギッシュに行動している人が多いでしょう。

目標達成意欲が高く、困難にも躊躇しない

与えられた役割、指示された目標ではなく、自ら考え設定した目標や課題に向かって行動するので、「自分で決めたことは必ず達成する」という意欲が強く、途中であきらめない人が多いのも特徴です。「今これが必要だ」と確信したうえで行動できるため、新しいことや未知のこと、困難なことであっても躊躇せず取り組むことができます。

失敗から学んでいる&周りにその学びを共有できる

主体性を発揮すると、時にミスをすることもあります。ただ、チャレンジの結果であり、事前に考え抜いたうえで臨んでいるため、失敗からの学びが多いのも特徴。「次はここに気を付けて挑もう」「この課題を改善してから取り組もう」などと今後の糧にでき、結果的に大きな成果につなげている人が多いようです。
主体的に動ける人の多くは自身の成果だけでなく、会社のため、組織のためを考え行動しているので、失敗からの学びをナレッジ化して共有する人も多く、組織にもプラスの影響を与えているケースが多いようです。

若くして責任ある仕事に抜擢されている

任された仕事をこなすのではなく、自身の枠を超えて考え行動できる人は、視座が高く組織や事業もけん引できる人材だと判断されやすくなります。任された仕事をこなしている人に比べると、より責任ある仕事、より大きな仕事を任されるチャンスも多いでしょう。その結果、早い段階でマネジメントを任されたり、新しい事業を任されたりと、若くして抜擢される人が多いのも特徴です。

「主体性を高める」方法とは?すぐにできる鍛え方を紹介

主体性を高めるためには、まずは普段の習慣を変えるところから始めましょう。日々の行動の変化が、主体性のトレーニングにつながります。

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小さなことでいいので「自ら考える」習慣をつける

与えられた仕事を漫然とこなすのではなく、「今の仕事でより成果を出すにはどうすればいいか」を考える習慣を身につけましょう。例えば、この事務仕事を今より早く終わらせるにはどうすればいいか、この資料をより効率的に作るにはどんな工夫をすればいいのかなど、日々の仕事に「考える」を組み込んでみましょう。

ピンと来なければ、例えば上司の視点やクライアントの視点など、仕事で関わる人の視点に立ってみると、新たな課題が見えるようになり、やるべきことが見えてくるかもしれません。さらに、周りの人に自分の意見を伝えて感想を聞いてみるのも、考える習慣を高めるうえで有効です。

これまでと行動を変えてみるのも、「考える」を習慣づける一つの方法。大それたことをするのではなく、いつもはただ参加するだけだった会議において「何か発言すると決める」とか「小さなことでも何か情報共有する」などと行動を変えてみると、「何を発言すれば会議の場が有益になるか」「皆に情報共有をするには普段どんな行動を取ればいいのか」などと思考をめぐらす習慣ができるでしょう。

どんな仕事も意味があると捉える

主体性がある人は、どんな雑務であっても「それに意味がある」と捉え、前向きに行動しています。「毎日のルーティン業務だから」と軽く受け流していては、考える習慣も身に付かないし、新たな発見もありません。

たとえ雑務であっても、その仕事が存在するのには意味があります。一つひとつの仕事に「意識して臨む」ことで、仕事に対して興味が湧き、主体的に関わろうと思えるようになるでしょう。

例えばですが、取引先に対する見積書を作るというルーティンワークであっても、「A社は以前に比べて取引額が増えたな。業績が好調なのだろうか」とか「B社から〇〇の発注が増えているな。新商品に使われている素材だから、売れ行きがいいんだろうな」などと考えることで、次第に自社の取引の傾向がつかめるようになったりします。気づいた傾向を上司や営業担当者に提言すれば、新しい価値創出につなげられるかもしれません。そしてこれこそが、主体的な行動です。

仕事に向き合う姿勢が変われば、雑務の中でのミスが軽減できたり、業務効率化のポイントが発見できたりするでしょう。少なくとも、日々の雑務の意味がわかることで、今よりも仕事が楽しくなると思います。

新しいことにチャレンジしてみる

全く未知の分野にチャレンジする過程では、誰しも「これを成功させるには(修得するためには)どうすればいいか」とじっくり考え、目標を決めて行動します。この経験が、自ら考え行動する(=主体性を高める)トレーニングになります。

どんなチャレンジでも構いません。仕事以外のことでももちろんOK。新しい習い事を始めて1年間続けてみる、新たな趣味を見つけ修得する、新しい資格の勉強にチャレンジするなどでもいいでしょう。

たとえば「筋トレを始める」というチャレンジに、「1年で〇キロ痩せる」とか「半年で〇キロのバーベルを上げられるようになる」などと目標を決めて臨めば、食事や生活習慣なども考えるようになり、自然と日々の行動も変化するでしょう。このような経験を少しずつ増やすことで、仕事でも自然と主体性を発揮できるようになると思われます。

「主体性がある」と言われている人の行動を真似てみる

前述した「主体性がある」と評価されている人の行動を観察し、真似てみるのも有効です。可能であれば、同じチームの人など、日常的に仕事ぶりに触れられる人をロールモデルにするのがベスト。思考や行動に直に触れる機会を増やすことで、より大きな学びにつながるでしょう。また、主体性のある人の近くにいることで、その人に引っ張り上げてもらえたり、仕事のチャンスをもらえたりする可能性も高まります。

本人に「普段どんなことを考え、行動しているのか」「この仕事のどんなところにやりがいや楽しさを感じているのか」などとヒアリングするのもお勧め。デキる人の視点を聞くことで視野が広がり、自身の行動を変えるきっかけにもなるでしょう。

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粟野友樹さん組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
粟野友樹さん

大学・大学院にて人材教育ファシリテーションの経験を積み、大学院を修了後、GMOインターネットグループ、外資系金融機関、パーソルキャリアを経て2018年より現職。これまでに約500人の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

EDIT&WRITING:伊藤理子
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